世界が平和だったころ(真・女神転生Ⅴ)   作:アズマケイ

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後50日で滅ぶ東京

2022年度大学入学共通テストまであと113日をきった。進学希望の僕は1月15日16日から毎日手帳を見てはため息である。進学希望者を追い立てるように夏休みを終えた学校は本格的に受験モードになり、週末は毎日実力テストがねじ込まれるようになった。そうこうしているうちに中間テストの日程が発表され、僕の手帳はいよいよテスト勉強とテストだらけになってしまった。

 

学校と寮の往復だけではノイローゼになりかねないからと自然とテスト終わりは太宰たちと街に繰り出すことが増えた。下手をしたら夏休みより遊んでいるかもしれない。高校生だし寮の制約もあるから時間の制限こそあるが、カラオケやら映画やらイベントをみつけてはみんなで行くことが増えていた。

 

よくよく考えてみれば卒業したら高校生料金では遊べなくなるんだから気分転換程度なら遊んだほうが得だろう。

 

外で太宰がまた動画をとっている。悪魔の目撃情報がある政府施設の近くにある映画館が最近の僕らの遊び場だった。よくもまあこんな小さな映画館見つけたものだと思う。僕も全然知らなかったが品川の映画館だけあって上映数は多いわりに空いているから助かる。

 

「やっぱりこれ食べないと秋って感じしないよね」

 

「そうですね、タオさん」

 

今日は珍しく敦田妹以外のメンツがいる。磯野上だ。仲がいいのはやっぱり敦田とバイト先が同じだからだろうか。

 

「きみも食べなよ、伊世くん。今日はきみがメインなんだから」

 

茶化してくる磯野上に僕は笑う。

 

ラクロス部高校最後の夏を終えた磯野上は大会の間学校を休んでいたために僕がノートを貸したのだ。ついでに部活をやっているあいだは大会近くになると日直をかわりにひとりでやってきたからか、奢らせてくれといってきかないので遊びに誘ったのである。

 

「伊世くんノートのおかげで赤点免れてる感あったもん、ほんとありがとう」

 

部活が終わってもなぜかノートのコピーを欲しがる磯野上から返してもらったノートをしまう。コピー代まで律儀に渡してくるからめんどくさくなって今回奢ってもらったのだ。

 

太宰にくらべてなんてまともな金銭感覚なんだろうと思う。さすが。

 

秋になるたびに食べているお月見バーガーセットをつまみながら、僕らは太宰の動画の撮影が終わるのを待っていた。

 

「今日はなにみる?」

 

「私、またそばかす姫みたいです」

 

「私も!」

 

「僕はもういい、別の見るよ」

 

「そうなの?なにみる?」

 

「いや、合わせなくていいよ。見たいのみればいいだろ、磯野上」

 

「まあまあ、なにみるか教えてよ。面白そうなら考えるつもりだから」

 

「そうか?」

 

「うん」

 

今から行く映画館の上映スケジュールが表示されたスマホを受け取った僕は、ざっと目を通した。

 

「クーリエか攻殻機動隊」

 

「また極端だね」

 

「映画行きすぎて話題作もう見尽くしたからな」

 

「あはは」

 

「なら僕もクーリエみようかな」

 

「敦田も?」

 

「さすがに三度目はちょっとな。今日は磯野上いるし、いいかなと」

 

妹に付き合ってみたものの、さすがに三度目は遠慮したいらしい。

 

「太宰どっちだと思う?」

 

「あいつ、また東京リベンジャーズ見るっていってなかったか」

 

「あれ、そうだったか?」

 

「ああ」

 

「なら映画館でみんな見終わったらご飯食べて解散て感じになりそうだね。なに食べたいか考えといてね、伊世くん」

 

「え、晩御飯も奢る気か、磯野上。いいよ、今のやつで」

 

「だって伊世くんマックのお月見セットだけじゃわりにあわないよ。太宰くんはいつも焼肉奢ってるみたいだし。私だけ格安ってわけには行かないよ、さすがに」

 

「そうか?」

 

「そうだよ。映画だって普通に自分で払う流れだし」

 

「あのな、磯野上。さすがに全部奢らせるわけにはいかないって」

 

「じゃあ私はどうやってノート代払ったらいいんですか、せんせー」

 

僕は笑うしかなかった。

 

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