デスゲーム漫画に転生したっぽい   作:石鹸枠どこ?

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奴隷やAIに優しくするのは主人公の基本技能


バトルスーツはラバースーツでも全身タイツでもなかった

 生徒手帳の上に浮かぶウィズの説明によると、更衣室は本当に着替えるための部屋のようだ。着替えながら雑談なんて時間が発生しない、大変効率的な設備が用意されている。

 

 主な機能はロッカーに端末をかざすと、一瞬で着替えが完了するというもの。

 制服に着替えるときはもう一度端末をかざして着替える衣装を選択すればいいらしい。

 ちなみに、今回着用するのは作戦行動中も使うバトルスーツだ。

 実際の作戦行動中はスーツの上から更に色々の装備を身に付けるため印象が変わるのでスーツだけを見る機会はほとんどなかったが、原作で装備が破損した時なんかにはその下にチラッと見えてた気がする。

 

 勝手な印象だが、インナースーツとなるとピッチリとした体のラインが出る服だと思っていたが、更衣室から出てくるやつらを見るに極度に生地が薄いという印象はない。

 また、単色のデザインというわけでもなく、部位別に若干色が違ったり、脇腹と背中を通って両手両足を繋ぐような白い線が書かれていたり、胸元や手の甲にはエンブレム的なデザインがあったりと見た目も悪くなかった。

 

『以上で説明を終了します。ベース内でご不明なことがありましたら是非呼び出してください。囁き補助することが私の楽しみですので』

「また何かあったら頼む」

 

 説明をを終えたウィズが消える。声をかけろと言われたが、生徒手帳に呼び掛ければ今のようにもう一度ウィズが現れるのだ。

 ウィズはSegeの名に負けない高性能AIなのだ。囁きなんて付いていることから対人補助AIという印象があるが、実際は施設内すべての設備と情報の管理を行う開拓拠点(フロンティアベース)の中枢のような存在である。

 俺たちのような新米を個別にサポートするくらい負担にすらならないということだ。

 

「ロッカーは三つだけか」

 

 入り口が空いたので更衣室に入ると、中はそこそこ広い部屋だった。

 しかし、設置されている大きな箱があるためスペースとしてはそこまで広くない。

 着替えるために体を動かす必要がないからスペースを確保する理由がないのだろうか。

 

 空いているロッカーに生徒手帳をかざすと、一瞬の認証のあとに制服からバトルスーツに衣装が切り替わった。

 体をひねって確認してみるが、体に張り付くような不快感はない。全裸とは違うが、それに近い解放感。ピッチリとした服なのに部屋着として利用していたフリーサイズの服よりも快適なのは少し不思議だ。

 許されるのなら制服の下にもこれを着ていたいとすら思う。

 

 しばらくバトルスーツの調子を確認していると、手足を繋ぐ白いラインがわずかに光りだした。水色の光は明らかに異質で、更衣室の光源を反射したものではなく、明らかにこれ自体が発光している。

 

「ウィズ、この光っているのはなんだ」

『SC-POWを循環させることで消耗を少なくするスーツの機能ですね。不具合ではございません』

 

 更衣室から出てきたやつらのスーツは光ってなかった。何か問題があるのではと早速ウィズを呼び出すと、即座にロッカーにあるモニターに現れて解答してくれた。

 どうやらウィズが出てこれるのは生徒手帳の上だけではないらしい。

 

「インナーにそんな機能も付いているのか。オンオフはできないのか?」

 

 常に光っているとしたら、制服の下に着るのは難しそうだ。

 

『SC-POWの制御を行うことで可能となります。制御方法を読み上げることは可能ですが、訓練兵の皆様にはこのあと訓練施設でSC-POWの扱いについての説明がありますので、そちらを優先した方が良いでしょう』

「そうか……ならこのまま訓練施設にいくことにする。問題はないんだよな?」

『スーツの補助によりSC-POWの効果が現在の訓練兵の平均の約1.8倍ほどになり、身体能力が向上しているため反乱分子として拘束される可能性がありますが、スーツの機能に問題はありません』

「問題おおあり!」

 

 光ってると目立ちそうでイヤだなと思っていたら、実害すらあった。

 確かに、スーツを着る前よりも更に力が増している感覚がある。非戦闘職員を殴り倒すくらいわけないだろう。

 

「教官とかに事情を説明してなんとかならないのか?」

『少々お待ちください……。ツルッパ職員を呼び出すことに成功しました。ツルッパ職員の誘導に従って訓練施設へ移動してください』

「助かる。俺はしばらくここで待っていればいいんだよな?」

『問題ありません』

 

 新兵が武器を持って一人で施設を歩いているよりも職員に案内されている方が億倍いいだろう。理想は武器を預けることだが、スーツを着ていくように言われてる以上それはできないしな。

 

「待っている間暇だし、もう少し聞いていいか?」

『なんでしょう?』

「更衣室って結構狭いだろ? 今はスーツだからいいけど、この上に装備をごちゃごちゃつけたらすれ違うことすら難しいんじゃないか?」

 

 キャラクターによって装備はデザインから配置から様々だったが、最低限統一されていたものに肩と腰か太股辺りにつける装備があったはずだ。

 当然横幅が広がるので、すれ違うのは厳しくなる。

 

『更衣室は戦闘用の装備を装着することを想定されていません。大規模出撃の際には新設の専用のドッグが利用されるので、更衣室の窮屈さは問題にならないかと』

 

 じゃあ更衣室はなんのためにあるんだと聞いてみると、以前からここで暮らしていた職員のための施設だったようだ。色々施設があるので、着替えが必要な機会は少なくないらしい。

 

 ……確か、開拓拠点(フロンティアベース)は二十年以上前から存在していると考察していた奴がいたはずだ。

 当初から訓練兵を派遣して実地で訓練させることで開拓の手とすることが考えられていたとしても、開拓拠点(フロンティアベース)の中心部に近い空間に何十年後のための施設を用意している訳がないか。

 

「君がウィズの言っていたグライド・エフィルくんだね。僕はツルッパ。早速訓練施設に行こうか」

「よろしくおねがいします」

 

 ウィズの解答によって更衣室への疑問が解消すると、スキンヘッドの青年が現れた。白い歯を光らせて笑うその姿は、禿げコラ被害にあったイケメンそのものだった。

 

 訓練兵と職員の上下関係がわからないが、とりあえず施設に従事している期間の大小で言えばこっちが格下なので頭を下げる。

 別に下の立場には威張り散らすというわけではないが、年が近そうなツルッパ相手だとつい気楽に接してしまいそうなので改めて意識し直した形だ。

 

「ウィズ、色々ありがとう」

『仕事ですので』

 

 ロッカーのモニターに浮かぶウィズに別れを告げて更衣室を出る。ツルッパは俺の行動を感心したように見ていた。

 

「本国でもAIの扱いは改善されたのかい?」

「……どうなんでしょう」

 

 本国の話はしないでくれ! 俺が困っているのに気づいたのか、ツルッパはそれ以上追求することなく話を続けた。

 

「第三世代に君のような人が良かったよ」

 

 第三世代……俺たち訓練兵とナビゲーターを引っくるめた呼称だろうか? 第一世代が開拓拠点(フロンティアベース)を作り上げた人たちだとして、第二世代はなんだろう?

 まあいい。今後は俺も第三世代という呼称を使わせてもらおう。

 

「着いたよ。教官たちに話は通ってるし、スーツの機能を発動させたのは君だけじゃないようだ。安心するといい」

 

 訓練施設に到着すると、そこには沢山の第三世代がいた。講義室の時は後ろに座っていた人間も多かっただろうから気にならなかったが、この人数は圧巻だ。しかもその大半がバトルスーツ姿である。

 

 ツルッパがスーツを光らせたのは俺だけではないと言ったので入り口から探してみると、確かに何人かスーツを光らせている奴を発見出来た。俺の光は水色だが、赤や紫、黄色とそれぞれ光の色が違うのはどんなカラクリだろうか。

 バトルスーツは原作で注目されたことはなかったし、この訓練エピソードも殆どカットされていた気がするので俺にはわからなかった。

 

「ありがとうございました」

「仕事だからね。また会おう」

 

 入り口でツルッパと別れて広い訓練施設の端の方で時間を待つ。軍隊としての側面もあるので、キチンと整列しているのが当然だと思っていたが、それぞれグループを作ってまばらに散らばっているようなので、これでいいのだろう。

 

「それでは、SC-POWを実際に扱うための訓練を始める!」

 

 少しすると、五人の教官がやって来てそう告げた。

 その中には、講義中に俺とルベルを指したマサムネ教官の姿もあった。というか、マサムネ教官は横に並んだ五人の真ん中に立っていた。

 マジで無礼は許されなさそうな立場だな。




ツルッパは二十代前半くらいの爽やかイケメンです
マサムネは四十代くらいのイケオジです
ルベルは十代半ばくらいの熱血入ってそうなイケメンです
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