デスゲーム漫画に転生したっぽい   作:石鹸枠どこ?

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in to the VR

「ここが未開拓領域(フィールド)……。仮想の舞台なのにプレッシャーを感じる」

「SC-POWが削られていく。アカリ、どっちにいけばいいの?」

『目標地点は北西十五キロメートル地点です。真っ直ぐ行くと途中で大地の割れ目に突き当たるので、まずは北に進んでください』

 

 俺たちはウィズが構築したVR世界の未開拓領域(フィールド)に立っていた。

 アーサーの言う通り、データでしかないはずの偽物の未開拓領域(フィールド)は、ゆっくりと俺たちのことを溶かす酸に浸かっているかのような焦燥感を俺たちに与えてくる。

 エルザが俺たちのナビゲーターであるアカリに指示を仰ぐと、アカリは特に緊張した様子もなく答えた。

 

「先頭は僕が行くよ。といっても、暫くは平原みたいだから隊列は関係無いかもしれないけどね」

 

 アーサーを先頭に北を目指して歩いていく。

 未開拓領域(フィールド)に存在する有害物質を弾くためにSC-POWを活性化させているからか、徒歩の感覚で歩いているにも関わらずぐんぐんと距離が稼がれる。

 十五キロ先が目的地と聞いたときは遠いと思ったが、実際はそうでもなさそうだ。

 そもそも、開拓を行うためにはもっと広い範囲の探索が必要になる。十五キロなんて子供のお使いレベルかもしれない。

 

『アーサーくん、ストップ。グライドさんはフラッグを立ててください』

「了解。結構重いから序盤で減らせてよかったよ」

 

 アカリの指示で地面に機械を突き刺す。フラッグは直径三十センチ、長さ五十センチほどの筒状の物体で、俺は今までこれを背負って歩いていた。バトルスーツだけではなく、SC-POWの効果を増幅・拡張する様々な装備を身に付けた上でなお重いと感じるので、実際はかなりの重さなのだろう。

 

 地面に刺さったフラッグが起動すると、フラッグを中心に特殊な生地で作られた小さなテントが現れた。このテントは原生生物であるTS(サーマルシーカー)からフラッグを守るためのものだ。

 

『フラッグ、正常に機能しています。周囲の地形情報の収集が終わるまで待機してください』

 

 テントの中でフラッグが地形や地層などを調べていく。俺たちの役目は基本的に色々な場所にフラッグを立てて地形を調べることである。

 

 また、開拓拠点(フロンティアベース)を中心としてフラッグを増やしていくことでNA-ENGが溜まっている場所を効率的に発見することが出来るようになり、より遠い場所まで探索できるようになる。

 フラッグはとても大事なものなのだ。

 

『フラッグが南東にTS(サーマルシーカー)の反応を検知しました。近いです。目視できますか?』

 

 俺たちのナビをするアカリだが、景色の共有は行われていない。俺たちの装備のひとつに、機能を縮小して小型化したフラッグのようなものがあり、そこから送られる情報をもとにアカリは俺たちに指示するのだ。

 当然、本物のフラッグの範囲内ならば情報の精度は高くなり、指示はより具体的かつ正確なものになる。

 

「何もいないみたいだけど」

『……TS(サーマルシーカー)反応、遠ざかっていきます。早いです! 反応、ロストしました』

 

 アーサーが双眼鏡片手に南東を探すと、アカリが情報を更新した。どうやらすごい速度でフラッグ範囲内から消えたらしい。

 

「そんなに早く動いたら砂煙のひとつでも上げそうなものだけど」

「雲の上かも」

 

 地面を見ていた俺とは逆に、空を見上げるエルザの視線の先には分厚い雲があった。確かに、雲の向こう側にいたとすれば黙視は不可能だ。

 

『フラッグによる探査が完了しました。西側にNA-ENG溜まりが複数あるみたいですね』

「回収しにいくか?」

 

 俺たちのSC-POW残量はまだ七割近くある。だが、回収出来るときに回収した方がいいのかもしれない。

 

「戦闘になったとき、どれくらいのSC-POWを使うのか僕たちにはわからない。出来るだけ貯めておいた方がいいと思う」

 

「西に行っても道は平気?」

『割れ目は斜めに存在しているので、西に行った場合はそのまま北上することはできません。少し東に戻る必要があります』

 

「そっちにフラッグの設置ポイントはあるのか?」

『いえ、フラッグの範囲は割れ目まで届いているので、設置ポイントはないです』

 

 本当なら、この判断はナビゲーターであるアカリが行うものだ。しかし、アカリは実際にナビゲーターとして動くのは初めて。

 すべてを丸投げするのはチームとして無責任だし、俺たちがどのような判断をするのかというのもナビゲーターには重要な情報だと思う。

 

「北にはNA-ENG溜まりはないのか?」

『あっ、フラッグ範囲内ギリギリにひとつだけあります』

 

 フラッグ範囲は狭くはないが、広大な未開拓領域(フィールド)と俺たちの移動速度を考えるとそこまで広くもない。西へいく往復の手間を考えたら、北でNA-ENGを回収したあと、範囲外でも見つけるのがいいんじゃないだろうか。

 

「平原だし、TS(サーマルシーカー)はこっちが先に見つけられるだろうから戦闘はあまり考えなくていいかもな。このまま北に行こう。アカリはNA-ENG溜まりの捜索をよろしく」

 


 

「SC-POWが五割を切ったか……。西にいかなかったのは判断ミスだったかもしれない。すまん」

「NA-ENG溜まりから回収できるSC-POWの量が思ったより少なかったのが原因だし、気にしないで」

「三人だから仕方ない」

 

 北へ進み、二つ目のフラッグ設置を済ませて待機しながら判断ミスを謝った。NA-ENG溜まりでSC-POWが思ったより回復できなかったのが原因だ。

 一人で行動しているなら十分な量だったかもしれないが、三人一組で行動するとなると消費量は三倍、回復量は1/3である。NA-ENG溜まりの規模にもよるのかもしれないが、ひとつでは賄いきれないわけだ。

 

「それにしても、敵が出てこないね。現実もこんな感じなのかな?」

「もっとたくさん出てくると思ってた」

 

 アーサーの言う通り、俺たちはまだ一度もTS(サーマルシーカー)に遭遇していなかった。それどころか、TS(サーマルシーカー)反応があったのも雲の上を移動していたと思われるTS(サーマルシーカー)一匹だけだ。

 俺も原作の戦闘シーンからしてもっと出てくると思っていたので拍子抜けだ。ただ、よく思い出してみれば原作では大体何らかの事件があった。なので、何もない平時ならばこんなものなのかもしれない。

 

『うーん……』

「どうかしたかい?」

『NA-ENG溜まりを発見したんですけど、その近くにTS(サーマルシーカー)反応が複数あるんです』

 

 TS(サーマルシーカー)との戦闘はSC-POWの消耗と怪我のリスクがある。できるだけ避けるべきなんだろうが、NA-ENG溜まりの存在も無視できなかった。

 

「初戦が複数ってことになるけど、僕は行った方がいいと思う。消耗が三倍というなら殲滅速度も三倍だよ」

「じり貧になって退却はイヤ」

「そうだな。消極的な選択ばかりというのも良くないか。アカリ、NA-ENG溜まりの規模はどんなもんだ?」

『さっきのNA-ENG溜まりから得られたSC-POWから考えると、ほぼ全快出来ると思います』

 

「やるしかねぇか……」

「各々自分の武器を確かめる感覚でいいのかな? あとで回復できるとはいえ、SC-POWの消耗は避けるべきだし、訓練の趣旨からしてもSC-POWでごり押しってのは違うしね」

 

 ああそうか。SC-POWを回復できるなら使えるだけ使って楽に倒してしまえばいいと思っていたが、それも避けた方がいいのか。

 片手剣……。とりあえず選んでみたが、俺に武器が扱えるんだろうか? 武道なんてまともにやったことないぞ。

 

「楽しみ……」

 

 俺の不安をよそに、エルザは自分の武器であるショートスピアを手に好戦的な笑みを浮かべていた。やっぱり何か世界観がおかしい気がする。

 VRMMOが一般的になった世界だとこれが普通なのか?

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