食べ歩きがしたいだけ   作:二三一〇

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 食べたいだけの人生でした。
 どこまで続くか分からないけど、初投稿です。


屋台売りの洋梨のケーキ

「ひもじい……」

 

 掠れる様な、声がした。自分の声色だと知った時には、軽く絶望した。もはや音にもなっていない。自らの呼吸音の方が大きいのだ。その呼吸も、浅く、早い。明らかに酸素が足りないけど、それを吸い込む力もない。

 

 死ぬのか。

 

 重すぎる瞼を堪えて開けてみれば、そこには自分の部屋の天井が見える。ただ、電灯は点いておらずに暗いまま。表が僅かに赤いところを見るに夕暮れか朝焼けか。いずれにしても、身体を動かすこともままならない身にはどうでもいい事だ。

 

 なんで、こんな状態になっているのか。薄ぼんやりとした意識の中で考えてはみるが、答えは見つからない。

 それどころか、眠くなってくる。

 

 こんな状態で寝る……死ぬのか?

 

 身体が動かず、声も出せず。考えることすら出来ないというのは死んでいるのと変わらないだろう。こうして意味もない事を考えることすら、もうやりたくない。

 

 おなか、へったなぁ……

 

 それが、おそらく今生における最後の言葉だった。聞く者は誰もいないので、それに意味は何もない。

 

 

 

『それは可哀想ね……』

 

 

 

 だから。

 ふと聞こえた女の声も、どうでもよかった。

 

 ただ、ただ。

 空腹だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふん、ふん、ふーん♪」

 

 うまくもない鼻歌を披露しているのは、機嫌がいいからである。日課の魔術師の鍛錬も、剣の稽古もほっぽり出してする街の散策とは実に爽快だ。

 いやー、父ちゃんが留守の時はありがたいなぁっ!

 

 小さな路地を抜けて大通りへ。この辺はまだ公邸の近くなので食料品を扱う店は殆ど無い。ギルド関連や、神殿関係の建物とかばかりだ。なので、大通りを南へ進む。人の通りが多くなってくると、そろそろ商業地区。

 飯時を過ぎたというのに肉の焼ける匂いや果物の甘い匂いが鼻を刺激する。思わず駆け出したくなるけど、そこまで俺は節操なしじゃない。どんな時でも冷静に、落ち着いて。金はあるんだ、俺のじゃないけど。

 

「うはぁ〜♪」

 

 浮足立つのを必死に堪えて辿り着いたそこは、俺にとっての楽園であり、理想郷。ああ、“全て遠き理想郷”とはこんなに近くにあったのか……

 

「お? また来やがったな、小僧。今日は何にする? モモか? それともモツか?」

「おっと、おっちゃん。まだここで食うとは決めてないんでね」

「かー、いけ好かねえガキだな」

「へへっ じゃあねー♪」

 

 屋台の親父さんにそう答えるには若干の理由があった。今の俺は、そんなには食べられないのだ。肉の串なら一本、黒丸パンなら半分ほどでギブってしまう貧相な胃袋なのだ。昼飯を食わなければもうちょい食えると思うのだけど、せっかく用意された物を食わないなんて、俺にはできない。

 

 食事に貴賤は無いのだ。ただそこにあるものを食べる。それだけが真実であり、己の律する自由である。

 

 なんてくだらない事をつらつらと考えつつも、屋台をチェックする眼は片時も止まらない。とはいえ、出てる屋台は殆どいつもと変わらぬ面々である。新しい屋台が来る事もあるが……て、おお? 新しい屋台、あるやん! 俺は小走りでその屋台へと近付いた。

 

「おっちゃん、これなーに?」

「おう、これは王都で有名なクーヘンいうものだよ」

 

 屋台に置かれた見本は偽物じゃない。あと、ガラスなんかも高価なのでこういった屋台で使うのは稀だからそのまま。衛生的に問題だけどこの世界でそんなことを気にする奴はもっと稀である。

 

『ま、見本だしな。まさかこれをぽんと出すわけじゃないだろ』

 

 屋台の奥には棚があってそこから出してくるのだろう。この手の物を屋台なんかで焼けるわけないし、どこかで作っているんだろう。気を取り直して見本のケーキをしげしげと観察する。

 

 少し甘い匂いのするそれは、たぶんケーキの類だと思う。でも、父ちゃんが買ってきてくれたそれとは明らかに違うようだ。

 全体的に茶色っぽくて焼け焦げにムラがあり、いかにも固そうな見た目。贔屓目に見ても黒パンの出来損ないの様だ。

 屋台で売る物だし大した物ではないとは思いつつも、値段を見る。げっ、一切れ大銅貨1枚だと? それを見て店主がニヒヒ、と笑う。

 

「坊主の小遣いじゃあ買えねえだろ? 親御さん連れてきな(ニヤリ)」

 

 明らかにこちらを下に見た態度に少しイラッときた。高いが出せないわけじゃないんだからね? 俺は懐の革袋から大銅貨を出すとパチリと置いた。

 

「えっ……も、もしかしてどっかのお坊っちゃんかい?」

 

 明らかに狼狽した様子の店主。大銅貨一枚とは一般的な平民が一日過ごすのに必要な金額だ。少なくともこの街、サンクデクラウスでは俺が生まれた頃からあまり変わっていないらしい。

 

「金は出したろ。早く出してくれよぉ」

「は、はい。ただいま!」

 

 いきなり下手に出る店主に少し呆れるが、木のケースから出してきたそれは、見本とあまり変わらないモノだった。けど、きちんと収納していたおかげか乾燥してないので香りもちゃんと分かる。これは洋梨(ビルネ)だね? 木の皿に置かれたそれに手を伸ばすけど、その前に。

 

「【生活魔術 手の洗浄(ハンドウォッシュ)】」

 

 手を覆う水の塊がどこからともなく現れて、手の汚れを洗い流して消えていく。その様子を見ていた店主が納得するように頷く。

 

「坊主、生活魔術士(ソーサレス)か。それじゃ納得かな」

 

 生活魔術(ソーサリー)は生活にあると便利な技術として扱われている。洗浄はわりと上級な方で、初歩的なのには光とか加熱、冷却などがある。

 

 街にはこの生活魔術を仕事に使う人たちも多い。魔力の多い子供などは率先して覚えている。便利で小遣い稼ぎも出来るからだ。

 

 さてはともかく。

 今日のひとときを愉しもうか。

 俺は手づかみで梨のケーキを口に運ぶ。

 

 ……ほう。

 見た目は洗練されてないけど、味はなかなか、悪くない。洋梨自体の甘味が上手く出ている。洋梨はコンポートしたのじゃなくて生か乾燥させたのを戻した奴かな? 余計な甘さが無いからね。そもそも精製糖が高いから屋台売りのお菓子には多くは使えない。だから、これは正解。

 

 焼き加減もムラは若干あるものの全体の仕事としては丁寧だ。

 ダマになってると食感も悪いし、最悪お腹を壊す(経験談)いや、そんなわけ無いだろ? と思うだろ? 子供の腹ナメんなよ? まあ、衛生の概念の乏しい環境だから別要因だったかもしれないけどね。

 そんで生地だけど、驚くべき事に混ぜ物無しの小麦百パーセントだ。だいたいこっそり大麦やらライ麦やら混ぜるんだよ。こういう屋台売りだと。理由としては、まあやっぱり値段が上がるから。

 実際に大銅貨一枚というオヤツとしては有り得ない金額となっている。食べてみれば妥当な……というよりアシが出てる可能性もある。

 

「どうだい?」

「うん、美味しいよ。でもこれ、おっちゃんが焼いたんじゃないよね?」

 

 そう聞いてみると、悪びれずに頷く店主。聞けば、新しく街区に店を出したミハイル氏から卸してもらってるそうだ。

 

「ディクルト通りに出来た店だよ」

「あれ? あそこはイェルナーさんの店じゃなかった?」

「ミハイルは居抜きを買ったらしいからそこじゃないかな? オレもこの街出身じゃねえから、よくは知らないんだ」

 

 確かにイェルナー氏はそろそろ田舎に帰るとか言っていたけど。まあパン窯を備えた物件なんてそうそうは無いし、新しく作るのも大変だしね。

 

「でも、おっちゃん。売り上げちゃんと貰えてる?」

「はぁ? 変なとこ気にする坊主だなぁ。一日大銅貨ニ枚もらってるぜ? 食い詰めた冒険者の稼ぎにしちゃあ割がいいだろ?」

 

 屈託なく笑いながらそう言った店主は、なるほど冒険者崩れか。わりとガタイがいいのはそういう事ね。けど、聞かれて素直に答えるのは商売人には向かないかなぁ。人が良いのだろうけど、ね。

 

 総評として、味はいいけど値段がわりと高めなので売り上げ的にはキツイかもしれない。オレ個人だったら間違いなく買うけど、街の人には敷居が高いかなぁ。それに、どうせ買うならミハイル氏の店で買う方が良さそうだし。

 

「ごちそうさま。おっちゃん、美味しかったよ」

「おう、ありがとよ」

「でも、ここで売るのはちょっと値段が高いかなぁ? 冒険者街の方が売れると思うよ」

 

 この辺りは街の中でもごく一般的な階層、つまり平民たちが通う商業地区だ。現に肉串や野菜売りなどの提示する値段も懐に優しい価格だし、買いに来る人間も少しよれたりくたびれた平服の人が目立つ。

 このお菓子はその層には買えない。お腹すいたと駄々をこねる子供に買ってやれるほど安くはないのだ。結果としては興味はあるけど手は出せず。今日も今日とて閑古鳥と相成るわけである。

 

 子供や女性は甘いものには目がないのは洋の東西を問わず、時代を経ずに変わらない不変の法則である。こういう物はその方向に訴えるべきだ。個人的には女性冒険者などがいい。小腹が空いた時にちょっと入れるには丁度いい量だと思う。少なくとも一般の町人よりは財布の紐が緩い。彼らに貯蓄とかの概念はあまり浸透していないのだ。何せ次の日には死んでるかもしれない職業である。食べたいものを我慢したりはしない。

 冒険者街の端に店を出したらどうか。あの辺りなら気のいい店主も多い。客寄せ目的で軒先を貸してくれる人もいるだろう。そう言うと、店主は苦い笑みを浮かべた。

 

「いやあ、さすがに冒険者相手には商売したくない」

「え?」

「知り合いとかにあったら気まずいだろ?」

「ああ、なるほど」

 

 これは失念。冒険者崩れなら冒険者と知り合いでもおかしくはない。ましてやここはサンクデクラウス。(そば)迷宮(ダンジョン)を抱える街だ。あちこちから冒険者はやってくる。知り合いに会う確率は高いだろう。

 

「ときに、なんでやめたの?」

「それ聞いちゃうのかよ、坊主。イイ性格してるぜ」

 

 そらどうも。異世界に転生したとはいえ元はいい年していたんだ。この年齢の頃の純粋さはとっくに忘却の彼方である。ああ、でも。逆に考えたら子供らしい考えなしの発言とも受け取れるね。

 店主のおっちゃんは、脚をパンパンと叩いて示す。動きがぎこちないのは、それが紛い物だからだ。

 

「足首がっつり頂かれてよ。あの商売は出来なくなっちまったのさ」

 

 冒険者というのは過酷な仕事である。身体が資本な割に支援はほとんど得られない。冒険者ギルドが僅かな額面を支払うだけという細やかな互助制度しか無いのだ。それでも一般の平民から比べればマシなのだけど。

 

「それは……大変でしたね」

 

 平坦に言おうと思っていたんだけど、何だか気持ち沈んでしまった。店主が気にもしてない様子なのは幸いだった。

 

「実家帰るにも金はいる。もっとも、まだ生きてるか分からんし。厄介な奴が帰ってきたなんて言われかねんから二の足踏むよ」

 

 聞かれてもいない事を言い始める店主。実家に帰ると言うが、果たしてどこなのだろうか? 同じ領内ならまだしも、別の領地とかだとかなりの金額が必要だろう。

 

「ま、食うためにも働かなきゃならん。やったこと無い屋台売りでもやらなきゃいかん、てことさ」

「なんか……ごめんなさい。辛いこと聞いたみたいで」

「いいってことよ。お前さんは客だし、子供だ。知らないことは知ってきゃいいのさ」

 

 そう言った店主のおっちゃんの笑顔は明るかった。世の中を見限らず、恨んたりもしていない。生きる事を諦めない人の顔だった。

 

 かつての自分はそうであったか。

 それは分からない。何せ身動き出来なかったし。空腹で動けないとかあるんだな、とどこか他人事のように感じていた。

 

 そんな自分の嫌な記憶を思い出したので、俺は店主に別れを言って離れたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「ユーノ、また抜け出してきたの?」

 

 そう呆れ声で聞いてきたのは、冒険者ギルドの案内係のお姉さん、ユッテさんだ。年の頃はまだ二十歳前、そばかすが多いけど三編みのくすんだ金髪はなかなかに魅力的である。しかも胸は意外と大きいので狙っている奴も多いと思われる。

 初めてここに入り込んだ時に話しかけてきたのが彼女だ。近所の悪ガキがいたずらに入り込んだと思ったのだろう。失礼な話だ。

 

 それはさておき。今日は用があってきたのだ。もちろん、さっきの店主の話だ。聞いてみると彼女も沈痛な面持ちとなった。

 

「アルトガーさんよね、それ」

 

 ギルドの喫茶スペースにて話をする。ちなみに俺は子供用の台を置いて着席という晒し者扱いである。小さい身体が悪い。自分と彼女用に紅茶を頼むと革袋から小さな銅貨を三枚取り出し給仕の男性に渡す。

 

「悪いわね。お小遣い、少ないんでしょうに」

「女性に払わせるのは甲斐性がないと父に言われてますんでね」

「きみ、やっぱり年、誤魔化してない?」

「当年取って七歳です。今年の冬には洗礼式があるんですよ」

 

 数えで七歳となる一年の最後の日。街中の子供たちを集めて行われるのが洗礼式だ。それはともかく、甲斐性云々は父ちゃんが本当に言っていた事なのであしからず。目深に被った帽子を直しながら、彼女の話の続きを促す。

 

「右足の足首からすっぱり無くなっててね。治癒術師がいなかったら死んでたって話よ」

 

 今の時刻はだいたい夕の二。前の世界で言うと午後四時辺りだ。早めに仕事を収める人がちらほら出てくる時間であるが、まだ夕方ほどではない。ギルドの仕事はだいたい夕飯時がピークになるので今は休憩時間なのだ。

 

「神殿での再生は無理だったの?」

「それが出来るほどには稼いでなかったのよ」

 

 それなりに稼げる冒険者なら手足の欠損を治してもらう事は出来なくはない。ここの神殿は規模が大きく、使い手は聖女と呼ばれる程の大司教までいる。本当に蘇生まで出来るらしいのだから、伝説級だろう。なので、金さえ積めば何とかはできるのだ。世の中の不変の法則その2、地獄の沙汰も金次第と言うやつである。

 

「脚がやられちゃあ冒険者なんてやってられないし。どうしてるのかと思ったら、ちゃんとお仕事してたみたいで安心したわ」

 

 紅茶にシロップを垂らしてくるくると回すユッテ。ちなみにこのシロップはポーションだったりする。煮詰めた砂糖水に魔力を注ぎながらかき混ぜると出来る。元々砂糖なだけあって傷みにくいのでわりと広まっているのだ。主にこの辺りで。

 

「うん。そのアルトガーさんの売ってる洋梨のクーヘンがすごく美味しかったんだよ」

「へえー、そうなんだ。君がそう言うなら、試す価値はあるかな?」

「大銅貨一枚だから売上は芳しくなさそうでね」

「なるほどねー。まあ、廃業した人なら現役の人には会いたくないよね」

 

 分かるわー、と言いつつ紅茶を含むユッテ。所作が綺麗なのはこの子が貴族の家の子供だからである。とは言っても騎士階級、士爵の三女なんだけど。

 

「で、ユーノはそれの宣伝に来たと言うわけ」

「そうだよ。いつまでも雇って貰えるとは限らないし」

 

 ミハイル氏は店を出したばかりだと言っていた。つまり、アルトガーの屋台は宣伝のために出しているようなものだ。屋台が軌道に乗っても、本来の店の都合で首を切られる事も十分有り得る。

 

「うん、わかったわ。知り合いとかに声かけておくわね」

 

 二つ返事に胸を撫で下ろすと、紅茶に手を伸ばす。前世ではそこまで好きではなかったけど、ここでは珈琲は高級品だ。冒険者ギルドなんかでは出る訳はない。

 くぴり。

 

「……」

「あはは。やっぱり渋いよね〜」

 

 徐ろにシロップに手を伸ばす時に姿にユッテが笑った。子供舌なので、仕方ないのだ。第一、茶葉を淹れっぱなしの作り置きとか人様に出すものじゃないだろ、金返せ。心のなかでぶちぶちと文句を言いつつ、シロップの甘みで癒やされる。もう、これそのまま飲んでも良くね?

 

「今ここにいるってことは、お留守なのかな?」

「ん。明日には戻るって」

 

 くぴくぴ。

 ちょっとずつ飲んでいるとユッテがにっこり微笑んできた。

 

「うーん。やっぱりかわいいね〜♪」

「そういうのはやめてね。これ以上は出せないから」

 

 そう言って革袋からお金を出そうとすると、手でやんわりと止められた。年頃の女性が自ら触ってくるとか、(はした)ないですわよ!?

 

「そんな女じゃないわよ、わたしは」

「え、でも父さまは褒めてくる女性は金目的だって」

「……何教えてんですか、あのひと」

 

 ジト目とかいいですね、刺さりますよ俺の好みに(歪んだ性癖) その顔がいきなり綻び、余計にドキッとする。

 

「お迎えが来たみたいよ?」

「えっ」

 

 触られていた腕に力が入る。まるで逃さないように。彼女の視線が出入り口に向いていた。そしてそこには。

 

「……探しましたよ。ユーノさま」

 

 疲れた様子のその女性に、ユッテが答える。

 

「お疲れさま、フラン」

「助かりました、ユッテ。確保してくれて」

「今日は遅いから来ないかと思いましたよ?」

 

 訳知り顔で話す二人に、俺は項垂れた。今日のお出かけはこれで仕舞かぁ。

 むんずと掴まれて、抱え上げられる。いくら俺が幼児だとしても、力強すぎない? まだまだ余裕ありそうな彼女は、ユッテに頭を下げて礼を言う。

 

「またね、ユーノさま」

「ああ、またね。ユッテ」

 

 こうなる事も織り込み済みで来たのだから已む無し。俺を抱えた女がいい笑顔で言う。

 

「さ、ユーノさま。お帰りになりましょう」

「ああ、そうだね」

 

 そうして人攫いのように抱えられて、冒険者ギルドを後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 後日。アルトガーの屋台は次第に客が増えたらしい。ユッテの社交力、ヤベェと再確認。ミハイル氏の店にも行ってみたいのだけど、その機会が無いのでおあずけを食らっていたら、夕食のデザートにあのケーキが並んでいた。

 

「ユッテからのお届け物です」

「……いただきます」

 

 洋梨のクーヘンにフランの紅茶は良くあっていた。これくらいの甘さがいいんだよなぁ……

 

 

 


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