魔術も呪術も一緒でしょ! 仲良くしてえええ(吐血) 作:かりん2022
夏! 繁忙期である!!
前田さんこと前田 利彦はこの時ばかりは依頼を受ける。
ちょうどスカウトされていた縁もあり、ちょうどよかろうということで、輪、前田、傑は同じ依頼に派遣されていた。
ぶっちゃけまれによくある暗殺依頼である。等級違いです。呪霊が成長したんですというオーソドックスなあれだ。
理由? 若様が夏油と輪にデレててイラッとした。それだけである。
前田を巻き込んだ理由? 夏油と輪に会いに来た前田に兼道と直哉がデレてて某家と某家がイラッとした。それだけである。御三家全てを敵に回したのだ、当然の帰結だった
2級ということで向かった所にいたのは、ぱんぱかぱーん、念を入れて特級だった。
ただ、悲しいかな。前田はあまり呪術界に深入りしていないので、わざとだと気づけなかった。もっと言えば、特級になっていることを上層部は気づいていないだろうと判断した。
そして、前田は禪院家に殴り込みをかけて次期当主を攫ってきた男である。
「ステューピファイ(麻痺せよ)!! はい、夏油君取り込んで」
傑は味を変える薬を飲んで、呪霊を取り込む。
「ふぅ。毎回こうだったら良いんですけどね」
「私は夏しか働かないしな」
「前田さん、僕ちょっと練習したい」
「いいよ。フォローする」
そういうことで、何事もなく戻ってきた一行。
ごまかせると思っているが、そんなはずがない。だって罠依頼だったんだから。
上層部は賢いので、何度も同じ罠を仕掛けて怪しまれるような真似はしない。
なので今度は前田と傑&輪ペアに分けて罠依頼を出した。
流石に一年生単独依頼は怪しまれるので、出来ないが。
結果はまさかの双方生還。
今度は、他のメンバーと組み合わせて依頼を受けさせ、報告書を精査。
結果。輪は弱い。若様への寄生虫。死ね。
呪霊に襲わせた所、前田に助けを求めて、瞬時に現れた前田が呪霊を討伐。
夏油。報告してない特級呪霊を取り込んでいる事が判明。恐らく前田経由。
そういえば、前田は3級で夏しか働かず、ソロでの任務が多い。隠し事をしていると言っているようなものではないか。
ついでに五条に確認。呪力術式共に雑魚。
こうして、前田にお手紙が来たのである。
『この前の依頼は間違いで特級でした。ごめんね。でもお前も強さ偽ってたよな? 後ろ暗いところでもあるのか? 黙ってて欲しけりゃ傘下に入れ。それか昇級試験受けて高専に勤めろ。もし呪具のおかげだったら売れ。いい値で買うぞ。両方断れば査問に掛ける』
前田は、ため息を付いた。
魔法使い組に相談したところ、輪はストレートに五条に手紙を見せた。
上層部には名家である。さすが輪、頼りになる。
「前田さんがこんな手紙もらって困ってるんだ。なんとかならない?」
「ウケる。めちゃくちゃだな。あれ、でも前田雑魚じゃん?」
「前田さんは雑魚じゃない。私が持ってる特級、全部前田さんが取り込ませてくれたものだし」
「マジ? あんな屑術式と屑呪力でどうやってんの?」
「あっ……」
「切り札見せたくないし弱い者いじめ大好きだから、昇級試験嫌なんだってさ、前田さん」
「なんだよそれ。俺も見たい。上層部魔窟だしさ、一度絡まれたらしつこいぜ」
五条の様子に、輪はため息を付いた。どうやら、五条はまだ権力の行使は出来ないようだ。既に会議で決まったことなら、特定の人間を魔法で誤魔化してという方法も通じない。
「自分、パパに頼んだろか?」
「俺も赤井さん(加茂家の教師)に聞いてみる」
「……俺も実家に声かけてもいいけどさ、実家に借り作るの嫌なんだよな」
「ちょっと待ってて」
輪は前田に電話をしてこそこそと話をする。
「前田さん、3人のこと描いてくれるって。三人揃ったのを三セット。前田さん絵が凄く上手いからさ」
「ほんまに? ええの? 嬉しいわ!」
「いいな! それぞれに着せたい服持ち寄ろうぜ!」
「はぁ……下手に描いたら承知しね―からな」
ということで、まずは兼道の分を描くことになった。
兼道が選んだ服は、魔女っぽい服である。
直哉は着物。
悟は制服を選んだ。別にケチったわけではなく、特別な学生時代を残したかったのである。
当日、前田は大量の額縁を持ち込んだ。
「なんだよ、ここから選べってか?」
「いや、全部使うよ。これでも最低限に絞ったんだ。じゃあ、着替えてそこに座って」
それから一日つきあわされた。五条はヘトヘトで、不機嫌である。
しかし、見ている傑と輪はひたすら羨ましがり、硝子も興味深そうに見ている。
直哉と兼道に至っては有頂天ではしゃいでいる。
「よし、描けた。どうかな」
そこで、悟は唐突に気づいた。へばっているのはモデルが疲れたからじゃない。
絵に呪力を取られていたからだ。
絵の中では、イライラしている悟を直哉と兼道が宥めていた。
絵が! 動いて! 喋っていた!!
「はあ!??」
同じセットの絵は移動できるらしく、絵の中の悟はリビングや森を見て回り、ソファーに身を落ち着けた。
「時折、呪力を補充する必要があるのだけれど。御三家の友情の品ということで、そこもまた良いんじゃないかな」
「すご……」
「次は自分やで! この服着てやぁ!」
「私も疲れたから、明日ね」
「まえ……利彦」
「なんだい?」
「俺と傑と輪で描いて」
「「えええええええええええ!!」御三家の友情は!?」
「それも描いてもらうけど! お金出すからさ、同級生皆と、親友二人の二枚欲しい!」
「オレたちとの絵はいらないの!? 義務なの!?」
「悟くん、酷いわぁ! 自分は甚爾くんと描いて!」
「俺だって、俺だって、うわあああああああああああああ!!」
「泣くな兼道、兼道の金で私とツーショットで描いてもらおう? 私がもらうけどな」
阿鼻叫喚である。
「一応、絵の具とかも特殊だしほいほい描けるものではないんだが……。そうだな。今回のお礼とは別に一年生と直哉、1人1セット描こうか。出世払いでいいよ」
前田はもみくちゃにされた。
そして、結果が以下である。
悟……悟、傑、輪の三人。
輪……悟、傑、輪の三人。
傑……悟、傑。
硝子……同級生皆。
直哉……甚爾、直哉、悟。
兼道……同級生皆+前田+夜蛾。
夜峨……同級生皆+夜蛾。
人間関係が透けて見える事態となってしまった。
結局前田は10セット描くことになってしまったのだが、次世代御三家の庇護を得られるのならプラマイプラスだろう。御三家の絵はそれぞれ実家へとお礼に贈られ、残りは部屋に飾ると手狭になるので学校に飾ることとなる。
以降、校舎半壊事件がピタッと無くなり(絵が傷つくから)、夜蛾は胸をなでおろすのだった。
罠依頼? 輝ける才能の前田様に仕掛けるわけがないでしょ!
もっと若様描いてくださいお願いしますな〇〇家と〇〇家と〇〇家のおかげでむしろ前田の依頼は減った。
代わりに絵を書いてほしいという依頼が殺到して、また前田は頭を痛めるのだが、それはまあ既定路線である。
呪力が充填される限り、呪霊や侵入者を知らせてくれたり定時に起こしてくれたりする仕様が発見され更に大騒ぎになるのだが、その時には前田は雲隠れしていたのだった。
夏が終わったからね。仕方ないね。
そうして、罠依頼と絵のモデルで夏は過ぎていったのだった。