篠藤義一は大学生である。彼は大学のサークルでミュージシャンをやっている。この日彼はライブの打ち上げに出ていた。
「へいタクシー!」片腕で女性を支えながらもう一つの方の手を挙げ叫ぶ。10秒くらい待ち自動で開かれたドアに乗り込み運転席に座っている男に聞かれる。
「お客さん、どちらへ?」
「峩先ホテルまで」峩先ホテルはここから40分ほどで着くまあまあのホテルだ。知り合いが経営していて割引してもらえる。帰るのが面倒くさくなりタクシーにした。
「...お客さん、最近悪いことしてるやつ見てません?」 20分位たった時、唐突にそんなことを聞いてきた、今までは職とか今やってることとか聞いてきたのに変なことを聞くもんだと思った。
「はぁ...悪いこと...ですか」正直質問の意図が読めなかった。
「えぇ、悪いことです。なんでもいいんですよ」
「うーん...そんな急に思いつかないですけど...そういえば僕、昔スリとかやってたんですよ。そん時の仲間のひとりが捕まったらしんですよね。そんくらいですかね。」
この時は酔っ払ってたしタクシーの運転手なんて二度と関わらないから良いだろうとか思ってた。
「...どんな罪で?」
「...?確か傷害致死だったかな。...でもなんかおかしかった気がするんですよね...。あん時のあいつ病的というかおかしかった気がするんですよね」
「そうですか。いいことを聞けました。ありがとうございます。」
そうタクシーの運転手が言い山道に入った。ちなみに峩先ホテルは街の中心地ど真ん中にある。
「...なんで山道に入ってるんですか?」
「近道があるんです。すぐ着きますよ」
「はぁ...」5分ほど沈黙が続きエンジンが止まった音がした。...まだ全然山道なんだが。
「...なんで止まってるんですか」少し凄みながら言う
「貴方、昔スリとかしてたっていいましたよね」
「...だからどうしたんですか」
「...私殺人鬼なんですよ」
「は?」言ってる意味がわからない。ドアを開けようとしたが鍵がかかってて出られない。と、思ったけどドアが開いた。
「出てもいいですよ。峩先ホテルはすぐそこです」
「ーー零崎を執行する」
外へ出ると一面に森が広がっていた。そういえば彼女を残していたんだった。思い出しタクシーの方へ振り返ると
ーー窓を開いてこちらに銃口を向けている男の姿があった。
「あ!?」
ーーあれ?私寝ちゃってたのか。
「お客さん、着きましたよ」
「あれ?義一くんは?」
「あぁ、男の方なら途中で降りましたよ。これ、預かったホテル代です。」といって封筒を手渡される。
「あ、ありがとうございます。」
「それでは」
そういってタクシーは去っていった。