星達のオーケストラ   作: 龍也/星河琉

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#9 踏み出した一歩、その先に待つのは。

 

欢迎欢迎(ファインファイン)〜! イツモこんなカンジで集まってマス!」

 

「お菓子もい~っぱいあるよ! あ、今度たこ焼きも持ってくるね!」

 

「おぉ……ありがとうございますっす……!」

 

 私立結ヶ丘高等学校の1年生、桜小路(さくらこうじ)きな子がスクールアイドル部に入部を果たした翌日。放課後に部室を訪れたきな子はメンバー全員が揃うのを席に座して待っており、先に入室していた可可(クゥクゥ)千砂都(ちさと)から手厚く歓迎されていた。彼女は未だ緊張が抜け切れていない様子で返答すると、すみれもきな子の方へ近付き、彼女の為に差し出されたお菓子が入った籠に手を伸ばす。

 

「チョコも~らいっ」

 

「コラッ! きなきなが先に取るデス!」

 

「堅いこと言わないでよ!」

 

「きなきなが先デスぅ~!」

 

「わかったってば! あぁもうっ、離れなさいったら……!」

 

 きな子よりも先にお菓子を手に取ったすみれに可可は苦言を呈しながら彼女の腕に抱き付いてチョコを手放させる。可可はきな子を『きなきな』と呼ぶようになり、スクールアイドル部に入部してくれたきな子に積極的に世話を焼いており、先輩として1年生をしっかり育てるのだと張り切っていた。きな子が2人のやり取りを見ているうちに、部室の扉が開く音が聞こえた。

 

「あっ、お待たせ! きな子ちゃん!」

 

「お待たせしました、きな子さん」

 

「きなちゃん、遅れてごめん!」

 

「どうもっす……」

 

 可可とすみれが取っ組み合いをしている最中、かのん、(れん)音羽(おとは)が続けて部室に入って来る。各々きな子に挨拶をした後にリュックをテーブルに置いた。

 

「かのんは先生のお手伝いするって聞いてたけど、あんた達は? 生徒会にしては随分遅いじゃない」

 

「新入生が増えたことで生徒会の仕事も増えたので、処理に少し時間がかかってしまいまして……」

 

「僕達2人でやれば全然問題ないんだけど、しばらくは部に来れる時間遅くなるかも……ごめんね」

 

「良いよ良いよ! 気にしないで!」

 

 元々かのんから先生の手伝いをすることになったと連絡を受けていた為にかのんがいつもより遅れた事は自然であるが、恋と音羽が普段よりも遅く入室したことに気付いたすみれが2人に問う。2期生が入学したことで生徒会で行っている仕事が増えており、昨年よりもそれらの処理に時間が掛かっている為に部に来るのが遅れてしまったのだと2人から伝えられる。生徒数が増えればその分生徒会の負担も増えるのは仕方のない事であり、音羽と恋はそれを重々承知の上で今日もしっかりと仕事を終わらせてから部に来ている。今後暫くは生徒会の仕事がある日は遅れる可能性があることを皆に告げると、かのんは2人に気にしないでと伝え、音羽はほっと胸を撫で下ろした。ともあれ、これでスクールアイドル部のメンバーが全員揃った為、練習を始められるようになった。

 

「コウやって全員揃ッタラ、練習開始デス!」

 

「『ラブライブ!』に向けて……っすか?」

 

「そうデス。スクールアイドルの夢のステージ ! ソレが『ラブライブ!』なのデス!!」

 

「わぁっ……! ここに、きな子も……!」

 

 可可がスマホで『ラブライブ!』で使用されたステージの画像をきな子に見せる。こんなに大規模な会場で、自分がステージに立っているのを想像したきな子はうっとりとした様子でスマホの画面を見つめる。目標はもう既に決まっている。全員で『ラブライブ!』に出場し、今年こそは優勝を勝ち取る。それが皆の夢であり叶えたい願いである。その夢をきな子とも共に見られるようになったことで皆のモチベーションは一気に上がっており、かのんは明るくきな子に声を掛ける。

 

「うん! 一緒に頑張ろ!」

 

「かのん先輩……はいっす!」

 

 先輩達の期待に応えられるように、きな子は気合いを入れて練習に臨もうと今一度自分に言い聞かせるのだった。

 

 

 

 

 

 

「はわわわぁぁぁぁぁぁぁ~っ!」

 

 十数分後。かのん達5人は練習着に着替え、きな子は自分の練習着をまだ持っていない為結ヶ丘高校より支給されるTシャツと短パンを身に付けて練習を行っていた。バランス感覚を鍛える為に皆で体幹トレーニングをしていたが、きな子は同じ姿勢を保つことが出来ずにすぐバランスを崩し、前のめりに倒れ込んだところを間一髪のところでかのんが受け止めた。

 

「大丈夫!?」

 

「うぅっ……しゅいません……」

 

「ううん。初めは誰でもそうなるよ! 焦らずに少しずつやってこ?」

 

「が……頑張ります!」

 

 かのんに励まされ、きな子は気を取り直して再度体幹トレーニングを始めるも、やはりすぐに転倒しそうになった為皆から再度止められる。千砂都が練習内容を変えようと提案し、次にきな子は皆と一緒に腹筋トレーニングに挑戦するが1度も上体を起こせず、普段使わない筋肉に痛みが生じるだけであった。

 

 ランニングもしてみるもののすぐに5人と距離を引き離され、必死に走る速度を早めてもまったくと言って良い程に追い付くことが出来なかった。

 

 ランニングから帰って来た後はダンスの動き合わせをし、音羽のカウントと共に一同は身体を動かして最後にポーズを決めて動作を止めるという一連の練習を軽く行ったのだが、きな子はいつの間にか5人が立っている位置から大きく移動してしまっており、ガニ股で両手を上げるという本来自分達が想定していたものとは異なる奇妙なポーズをとっている始末である。きな子は苦笑いを浮かべながら、ゆっくりと皆の方へ振り向く。彼女と目が合ったかのんもまた、『最初はやっぱりこうなるよね……』と言わんばかりの苦笑した表情を見せるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱり……ダメっす……」

 

 一先ず休憩をとることにした『Liella!』一同は各々腰を下ろしたり、水分補給をして身体を休めていた。そんな中きな子は落ち込んだ様子で安座しており、俯き加減の姿勢で弱々しく声を上げる。

 

「まだ初日だよ?」

 

「そうデスよ! 没关系,没关系!」

 

 可可は中国語で『大丈夫』の意を持つ言葉できな子を励まし、かのんは不安にさせないように笑顔で彼女を元気付ける。そもそも自分達が日頃の練習メニューをこなせているのは昨年からの積み重ねがあるからであり、きな子が入部初日から練習に着いて行くのは到底不可能で、致し方ない事なのは皆理解している。故にかのん達はきな子を咎める気は毛頭ないし、まだまだこれからだと思っているのだが、きな子は自分の体力のなさと出来の悪さを今一度痛感し、ひどく落ち込んでいるのが現状であった。

 

「昔から運動は苦手で……いつも1人で置いてかれてたっす……」

 

 きな子は小学生時代の下校中、周りの児童が追いかけっこをしながら帰っていた時、きな子もそれに乗じて走るものの追い付くことが出来ず、終いには転倒して暫く動けなかった事を思い出す。元々体を動かす事を苦手としているのは自分でもよく分かっている為、先輩達と練習してみたらこうなることは容易に想像できていた。予想できていながらもいざ自分の力量がこうして浮き彫りになると苦しいし、自分はこの先『Liella!』としてやっていけるだろうかという新たな不安も生じる。より一層俯くきな子を見て可可は更に励ましの言葉を掛ける。

 

「そんなコト心配ないデス! ダレモが初めカラデキル訳デハないのデスカラ!」

 

「そうそう。この子なんて入った時腹筋1回もできなかったんだから!」

 

「ソレはモウ過去のコト! ククも必死デ……」

 

 すみれもきな子のフォローに回り、初めは可可も腹筋が1度も出来なかったことをきな子に教えると、可可はムッとした表情ですみれに食ってかかる。それはあくまで過去の話だと弁解しようとする可可の頭をぐいっと引き寄せ、すみれは急いで彼女に耳打ちする。

 

「この子を安心させる為でしょ! 話合わせなさいよ!」

 

 きな子にこれ以上自信を失くさせない為にすみれは可可がスクールアイドルを始めたばかりの頃の話を出して彼女を安心させるように指示する。そう言われた彼女は小さく頷き、明るい表情を作ってきな子の方へ向き直る。

 

「そうデス! きなきなの方が昔のククよりズットすごいデス!」

 

「そうなんっすか……?」

 

「ハイっ! トッテモ!」

 

 可可の力強い返答によりきな子は納得したようで、先程よりは幾分か気分が晴れたようであった。

 

「そうそう。だから前向きに! ……そうだ! きな子ちゃん、センター立ってみて!」

 

「き、きな子がっすか!?」

 

「うん!」

 

 自分がセンターポジションに立ってみないかというかのんの急な提案にきな子は面食らうが、彼女は笑ってきな子に手を差し出す。恐る恐るかのんの手を掴んで立ち上がり、ゆっくりとセンターへ移動する。きな子の両隣に位置しているすみれと千砂都が彼女の手を握る。こうして、『Liella!』のステージに立つメンバー6人が初めて並び立ち、きな子は緊張と嬉しさで上擦った声を出した。

 

「気持ち良いでしょ?」

 

「はいっ!」

 

 かのんの問い掛けにきな子は明るい声で返事をする。ステージではないものの、初めて立ってみたセンターはとても心地良くて、心が躍った。いつか自分がこの位置に立ってライブをする日が来るかもしれないと思うと、徐々に心臓の鼓動が早まっていく。今の自分にとっては夢物語も良いところだと自覚しているが、こうなれば良いという夢想は止められない。かのんは空を見上げながら言葉を続ける。

 

「これが『ラブライブ!』のステージになったら、応援してくれる人がたくさん集まってくれて……私達に力をくれるんだ!」

 

「素敵っす……!」

 

「だから、元気出して!」

 

「千砂都先輩……」

 

「きなちゃんが笑顔でスクールアイドルができるように、僕達も頑張るから!」

 

「音羽先輩……! きな子、頑張るっす!」

 

 皆の前に立っている音羽が柔和な笑みを浮かべてきな子にそう伝える。かのん達だけでなく、『Liella!』には音羽というサポーターも居る。自分を支えると言ってくれた音羽を信じたい、彼の期待に応えたいと思うきな子はやる気を出し、今の自分に出来ることをしようと強く思うのだった。

 

 

 

 

 

 

「きなきな、コレ……ドウゾ!」

 

「強化メニュー?」

 

 きな子が練習を始めて初日ということもあり早めに練習が終了し、きな子を除く6人は話し合いの為暫く部室に残るので先に帰ってて良いと言われたきな子は話し合いの邪魔にならないように真っ直ぐ家に帰ろうとした際、可可から呼び止められる。

 

「ククが体力ゼロだったトキのヒミツのメニューデス! きなきなにあげマス!」

 

「おぉっ! ええと……午前5時起床。柔軟の後はランニング3キロ……すごく事細かに! ありがとうっす!」

 

 可可は嘗て自身が体力作りををする際に使っていたメニューをきな子に手渡し、彼女はそれを受け取って内容に軽く目を通すと、とても細かくメニューが書き連ねられていた。中にはハードな内容もあるが、先輩がこのメニューを使って練習していたと考えると理に適ったものなのだときな子は認識し、可可に素直にお礼を述べる。室内で2人のやり取りを見ていたかのんが部室の扉を開け、きな子に話し掛ける。

 

「でも、無理しなくて良いよ。あくまで自分のペースで!」

 

「はいっす! 明日からも頑張るっすよ〜!」

 

「ふふっ。あんまり気負いすぎないようにね?」

 

「心得たっす! じゃあ、お先に失礼しますっす!」

 

「はーい。お疲れさま! また明日ね!」

 

 かのん達に手を振った後、きな子は駆け足で階段を降りていく。彼女の姿が完全に見えなくなったのを確認してからかのんは静かに扉を閉め、可可と2人で席に座った。

 

「ふぅ。ひとまず、無事に練習終われて良かったね!」

 

「そうだねぇ。あともう何人か、1年生が入ってくれると良いんだけどね……」

 

「ええ。やはり1人では、どうしても自分だけ遅れているように感じてしまいますよね……」

 

 かのんの言う通り、きな子が練習に参加した初日は事故や怪我等なく終われた事は喜ぶべきではあるが、時折きな子が寂しそうな目をしていたことから、1年生が自分1人だけという心細さがあるのではないかと千砂都と恋は思っており、あと数名ほど1年生が入部してくれれば御の字といった状況である。

 

「やっぱり、1人は寂しいよね。僕、また1年生を勧誘してみるよ!」

 

「生徒会の仕事忙しいんでしょ? 大丈夫なの?」

 

「うん! 仕事は恋ちゃんと分担してできるから大丈夫だよ!」

 

「そうですね。やりきれない程の量ではありませんし、(わたくし)達で分担すれば問題ありません。お気遣いありがとうございます。すみれさん」

 

「そう? なら良いけど」

 

 引き続き音羽が1年生を勧誘すると名乗りを上げると、皆のサポートだけでなく生徒会の仕事もある中で勧誘まで行うのはキャパオーバーではないかとすみれが心配して音羽に大丈夫なのかと問うと、恋と共に仕事が出来るから問題ないのだと彼は明るく返答する。恋も自分が居るから大丈夫とすみれに伝え、彼女は2人の言い分に納得の意を示す。幼馴染で且つ今までも2人で生徒会の仕事をこなしていたことを考えると心配はないだろうとすみれは信じ、とりあえず勧誘は再度音羽に任せることにするのだった。

 

「勧誘はまた音羽にやってもらうから、私は部室の前で受付でもやろうかしら。あんたもやる?」

 

 すみれも音羽に負けじと自分に出来ることをしたいと思い、受付窓口として1年生を迎える役割を担いたいと申し出る。すみれはなんとなく隣に居た可可に一緒にやるか聞いてみると、彼女はふふん、と鼻を鳴らす。

 

「ヤルデス。すみれヒトリデハ心許ないノデ!」

 

「さらっと失礼なこと言ったわね……まぁ良いわ。かのん、それで良い?」

 

「うん。それで行こう! おとちゃんもありがとう! すっごく助かる!」

 

「ううん! きなちゃんに寂しい思いはさせたくないし、早く新入部員見つけないとね……」

 

「暫くはこの体制で様子を見てみましょうか。ポスターも掲示していますし、興味を持ってくださる方が居ると良いのですが……」

 

 1年生がきな子1人だけというのは彼女にとって辛い事は言うまでもなく、初めから誰かと共に練習が出来た1期生のメンバー達には理解し切れない苦しみが伴っているだろうと感じ、早急に新たな1年生を入部させられるように音羽は勧誘活動に力を入れることを決める。きな子を1人にさせたくないという気持ちが最も強いのは音羽であり、彼の過去の出来事が起因しているからこそ彼女に寄り添いたいと願っていた。スクールアイドル部の一員として頑張ると言ってくれた彼女の為に、音羽は部員を増やせるように行動する決意を固めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 その日の夕方。結ヶ丘高校普通科に所属する1年生、若菜(わかな)四季(しき)はお手製のゴーグルを目に掛けた状態でじっとスクールアイドル部の勧誘ポスターを見つめていた。クラスメイトであるメイが熱烈に推しているこのグループ。時折見せる語り口から、魅力的であるのは間違いない事だけは分かる。ストローが付いた紙パックのマロンジュースを飲みながらその場に留まっていたところに、誰かがスクールアイドル部に続いている階段を駆け降りて来る気配を感じ取った。その人物は四季と同じクラスに居る桜小路きな子だった。恐らくスクールアイドル部の練習が終わったであろうと予想した四季は、機嫌良く走り去って行った彼女の後を追うことを決め、先日自分の手で開発したばかりのハンドルグリップがないセグウェイを足に固定し、きな子が走って行った方角へ前進させた。

 

 足にセグウェイを装着している事によりみるみるうちにきな子と距離を詰めて行き、四季はきな子のすぐ近くまで移動し、彼女の耳元に口を近付けた。

 

「ちょっと」

 

「へぁっ!? ひぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」

 

 不意に耳元で囁かれ、きな子は仰天して尻餅をつく。その声の主はセグウェイを用いて華麗に周囲を旋回した後に動作を止め、きな子の前に立つ。彼女が見上げた先には制服の上に白衣を羽織っている四季が居り、ゴーグルを額に当てて橙色の瞳を露わにする。

 

「わ……若菜さん……?」

 

「時間、ある?」

 

 四季からそう問われたきな子は一体彼女に何をされるのだろうと戦々恐々としながらも小さく頷き、2人は話がしやすいように学校の裏庭へと移動するのだった。

 

 

 

 

 

 

「座って」

 

「はい……」

 

 裏庭のベンチに腰掛けた四季は、とんとんとベンチを軽く叩いて自分の隣に座るように促す。彼女に言われた通りきな子は恐る恐るベンチに座り、不安気な表情で四季を見る。きな子にとって四季はクラスメイトであるものの、普段から無口で掴み所がない人物だと思っていて、今まで彼女が笑っているのを見たことがなく、他の生徒と違って表情が滅多に動かない。故に四季のことを少し怖く感じており、2人で何を話せば良いか分からずに数秒間沈黙が続く。しかしこのままこうしていても良くないと思ったきな子は思い切って四季に話し掛ける為に口を動かす。

 

「えっと……若菜さ……」

 

「どんな感じ?」

 

 きな子が声を発したと同時に四季は一言彼女に問う。何のことを指しているのかいまいち分からず、彼女は首を傾げる。

 

「と、言いますと?」

 

「スクールアイドル部」

 

「もしかして……興味あるっすか!?」

 

 まさか四季からスクールアイドル部という単語が出てくるとは思っておらず、一瞬驚いたものの、それ以上にきな子はもしかしたら……? と期待に満ちた思いで四季にスクールアイドルに興味があるのか聞くと、数秒の間があった後にこくりと首を縦に振る。

 

「うん」

 

「わぁっ! じゃあ若菜さんも一緒に……!」

 

「……()()()

 

「……メイ?」

 

 自分が興味があると勘違いされないように四季はボソッと付け加えるようにメイの名前を出す。その名を出されてきな子はメイという生徒が米女メイのことを言っているのだとすぐに顔と名前が一致する。入学式前日に木陰で黄色い声を上げていたり、廊下で自分を睨んだ次は驚愕した顔で見つめてきたり、この前は『Liella!』のことを詳しく教えてくれたりと、彼女とは何かと話す機会があった。きな子がメイのことを認識したのを見計らい、四季は彼女に質問を続けようと言葉を紡ぐ。

 

「それで? スクールアイドル部は、怖い先輩とか居ない?」

 

「先輩は皆優しいっすよ! 練習はたしかにちょっと厳しいっすけど……でも、『ラブライブ!』目指すんなら仕方ないっす!」

 

「『ラブライブ!』……」

 

「……?」

 

 四季が小さくその単語を口にした後にベンチから立ち上がり、またしてもセグウェイを用いて小さく弧を描きながら旋回する。きな子は不思議そうに彼女の姿を目で追うと、四季は先程のようにきな子の目の前で動きを止め、ベンチに座しているきな子を見下ろす。

 

「お願いがある」

 

「えっ……?」

 

 普段通りの真顔で出された、ただ一言の言葉。何がなんだか分からないままだが、四季の『お願い』とはなんなのかをきな子は伺ってみることにしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




走り始めたばかりの君に。




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