星達のオーケストラ   作: 龍也/星河琉

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第51話 星を結ぶ者、照らされざる者。

「……それでね、すみれちゃんが新しい振り付けをすぐに覚えてたんだ! 皆『難しい』って苦戦してるのに、すみれちゃんはそつなくこなしててさ!」

 

「まぁ、すごいわねぇすみれちゃん。音羽(おとは)も負けていられないんじゃない?」

 

「素晴らしいな。私はダンスに疎いから、月並みな言葉しか言えないが……」

 

 音羽は今日もスクールアイドル部での活動を終え、自宅に帰ってきてから詩穂(しほ)湊人(みなと)と共に食卓を囲んでいた。今日は音羽の好物であるカレーに加え、テーブルの真ん中には詩穂特製のサラダが配置されている。3人で夕食を食べながら、音羽は今日あった出来事を嬉々として両親に語っていた。かのん達を語る音羽の声音はいつも弾んでいるが、最近は普段よりも増して楽しそうにスクールアイドル部の話をしている。嬉しそうな音羽の顔を見て、思わず2人も笑みを溢した。

 

「音羽、最近いつにも増して上機嫌じゃない? 何か良いことでもあった?」

 

「え、うそっ……顔に出てた?」

 

「出てる出てる。私達じゃなくても誰でも気付いちゃうわよ」

 

「フッ。態度が表情に出やすいところは今も変わっていないな」

 

「うぅ……皆にそう言われるから気を付けてるつもりだったのにぃ……」

 

 スプーンを口に運びながら2人はそう答え、音羽は両親にさえも表情が分かりやすいと言われた恥ずかしさで頬を赤らめる。部のメンバーからも前に同じことを言われていた為、音羽はポーカーフェイスを覚えようと色々と試行錯誤したようだが、あまり意味を成してはいないようだった。恥じらいを打ち消す為に音羽もカレーを咀嚼し、飲み込んだ後に自身が最近喜びが表情にまで出ている理由を考え、何故かはすぐに自分でも理解が出来た。

 

「……僕達スクールアイドル部のグループ名が決まったからかな。それが、何だかすっごく嬉しくて」

 

「ほう。どんな名前になったんだ?」

 

 湊人が興味を示し、早速名前を音羽に問う。

 

「『Liella!(リエラ)』って名前。『結ぶ』とか『輝き』って意味が込められてる。かのんちゃんが考えてくれたんだ!」

 

「『Liella!』……良い響きだな」

 

「ステキじゃない。結ヶ丘らしい名前にしてくれて、(はな)さんもきっと喜んでると思うわ。ね、あなた?」

 

「ああ。花さんの願いを、受け継いでくれたんだな。本当に……かのんさん達には頭が上がらないよ」

 

 詩穂も結ヶ丘高校創設者である葉月花と交流を持っており、良好な関係を築けていた。『結ぶ』という意味が込められたスクールアイドルのグループ名に決まり、詩穂と湊人は花のことを思い出しながら心底嬉しそうな様子で言葉を交わす。その両親の姿を見て、音羽が最近抱いている気持ちがもっと熱を増したのを心で感じ、音羽はかのん達にまだ言っていない事柄を2人に話そうと決めた。

 

「グループ名が決まって、ラブライブにエントリーしてから……もっと皆の役に立ちたいって思った。僕も皆みたいに……想いを繋いだりできないかなって……思うんだ」

 

「想い、かぁ……探せばいくらでも手段はありそうだけど……」

 

「どんなことをしたいかにもよるな。音羽、お前は皆の為にどうしたい?」

 

「んー……色々あるけど、今は皆がひとつの目標に向かって頑張れるように、結束力を高めたいかな。その為に何かできないか考えてる」

 

 グループ名が『Liella!』に決まり、ラブライブの地区予選に出られるようになった自分達にはやはり相応の目標意識が必要ではないかと音羽は感じていた。ラブライブという大きな目標が自分達の前に現れた今、それに向けてグループの結束力を高めて予選を突破出来る足掛かりを生む何かが出来ないかを、音羽は真剣に考えていた。彼の言葉を聞いた2人も軽く思考しており、数秒後に詩穂が沈黙を破った。

 

「皆の『結束力』を高めたいなら、共通のお守りとか作ってみるのはどう? 皆が同じものを持ってれば、いざという時に勇気を貰えたりもするんじゃない?」

 

「お守りかぁ……」

 

 音羽は頷きながら手を顎に当てる。他の部活動でもメンバーで共通の物を持って一致団結を掲げる事が多々ある。詩穂のアイデアを聞いた湊人も彼女の言葉に便乗する。

 

「お揃いの物は、何かを示す『証』にもなる。私も……母さんと一緒にこれを持っているからな」

 

 そう言いながら湊人はYシャツのボタンを外し、音羽にも見えるようにそれを表に出した。彼の首にはネックレスチェーンに通された銀色の指輪がぶら下がっており、その指輪は湊人の隣に居る詩穂も左手の薬指に嵌めていた。

 

「指輪?」

 

「ええ。結婚してる証でもあるし、それ以上に……私達を繋ぐお守りとしての意味を込めてお父さんがくれたものなの。こういうのがあれば、誰でも嬉しいんじゃないかしら?」

 

「安心感もあるしね。お守りであれば、普段から身に付けられる物の方が尚良い。ミサンガやネックレスあたりが当てはまるな」

 

「……良いかも! 僕、皆にお守り作ってみたい!」

 

 両親から意見とアドバイスを聞いた音羽は俄然やる気が出た様子で2人にそう言い、彼の中で皆で共通の物を何か作りたいという気持ちが芽生える。

 

「音羽なら、きっと良いものが作れるさ。何せ、『Liella!』という()()()()()を支えている無二の存在なんだからな」

 

「期待の新星?」

 

 音羽が首を傾げて湊人にそう聞くと、彼は静かに頷きながら麦茶が入ったコップを手に取った。

 

「結ヶ丘高校を背負うスクールアイドル達……皆それぞれ違う『音』や『輝き』を秘めている。私から見れば、彼女達は『星』だ。空に光輝く、未知の可能性を持つ星なんだよ」

 

「お父さん……!」

 

「その『星』達を消えないように結ぶ存在が……他でもない、音羽なのよ? ふふっ。凄い役割を担えてるわねぇ……」

 

 詩穂は優しく微笑み、音羽が如何に重要な役割を担っているかを再確認する。サポーターである音羽はスクールアイドルとしてステージに上がる事は無いが、彼が居ることでスクールアイドル達が安心して活動を行える。その彼が皆を想って『役に立ちたい』と口にしている。その想いや行動が、音羽に皆信頼を寄せる要因なのだろうと湊人と詩穂は気付いており、部の力になろうと毎日頑張っている息子を誇りに思っていた。

 

「僕が……皆を結ぶ……」

 

「その星達が、どんな光を放つのか楽しみだな」

 

「あなた、さっきから比喩表現多いわよ。職業病出てる」

 

「おっと。すまない……心が熱くなってしまってな……」

 

「大丈夫だよ! お母さん、お父さん。ありがと! ごちそうさま!」

 

 夕食を食べ終えた音羽は食器をシンクに置いた後、すぐに自室へ戻っていった。彼は2人の言葉から何かヒントを得られたようで、詩穂と湊人は今日も楽しそうな音羽の姿を見られて、安堵したようにほっと息をついたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 次の日。音羽はスクールアイドル部の練習が終わった後にすぐ雑貨屋へと足を運び、お守りを作る為の材料を揃えた。いつもなら皆と足を揃えて帰る筈の音羽が先に帰るという珍しい事態に一同は不思議に思うが、『そういう日もあるか』と考えた為に音羽にメッセージアプリで詮索したりはしておらず、彼は家に帰って食事を済ませた後にすぐお守り作りに着手した。

 

 ペンチを用いてチェーンを切り、雑貨屋で手に入れたチャームを通す為に形を変える。こういった作業が初めての音羽は1つ1つの作業を慎重に丁寧に進め、スクールアイドル部のメンバー達の顔を浮かべながらそれらを作っていた。

 

 かのん、可可、千砂都、すみれ、恋。『Liella!』の5人がひとつになれるように、結束力を高められるように。初めてで些か不慣れな中、音羽は真剣にお守り作りに集中し、時間を忘れて作業に没頭したのだった。

 

 日付が変わる直前、音羽が6つ目のお守りを作り終えたところで手を止める。今作っていた物を机に置き、音羽は背筋を伸ばす。

 

「……できたぁーっ!」

 

 開放感と共に部屋に大きな声を響かせ、机上に置かれたお守り達を眺める。上手く作れたかどうかはやや自信に欠けるものではあるが、音羽の気持ちや願いが込められていることに変わりはない。これを手に取った皆が喜んでくれることを信じ、音羽はベッドに身体を横たわらせ、毛布を掛けることなく静かにそっと瞼を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日の放課後、音羽は生徒会の活動を終わらせた後、恋と共に部室に入る。いつも通りそこにはかのん達が居て、2人が来るのを待っていた様子である。

 

「よし! 全員揃ったし、今日の練習始めよっか!」

 

「あっ、ちょっと待って! ……練習の前に、皆に渡したいものがあるんだ!」

 

「渡したいもの?」

 

 千砂都が練習を始めようとしたところで音羽がそれを止める。千砂都達は音羽の言う通り屋上へ向かう足を止め、一旦部室の中心へと集合する。音羽はリュックから昨日作ったお守りが入れられた5つの小さな紙袋を取り出し、それをかのん達に順番に配った。皆すぐさま封を開けて掌の上で軽く振るうと、その袋から銀色のアクセサリーが飛び出した。

 

「おとちゃん、これ……ネックレス?」

 

「そう! 名付けて……『星結び』! 僕達が『Liella!』である証を何か作りたくって。お守りも兼ねて、皆の分作ってみたんだ!」

 

「キ……キレイデスぅ!」

 

 星結びと名付けられたネックレス形のお守りには、名の通り小さな星の形をしたチャームがチェーンに通されており、光にかざすとそれがキラキラと光る。湊人が先日口にしていた『期待の新星』という単語から着想を得て、星型のチャームを用いることを決め、星のように輝いていけるようにという願いを込め、『Liella!』の活動方針である歌で想いを結ぶことを掛け合わせ、音羽はそのお守りを『星結び』と名付けたのだ。

 

「皆でお揃いの物を持ってれば、結束力が高まるかもって思って……ど、どうかな?」

 

「星結び……うんっ! 良いと思う! おとちゃんありがとう! すっごく嬉しい!!」

 

「おとくん、もしかしてこれ作る為に昨日早めに帰ったの?」

 

「そうだね。『皆にお守りを作りたい!』って思ったらいても立ってもいられなくって……」

 

「どうりでせっかちだった訳ね。言ってくれれば作るの手伝ったのに」

 

「あはは……ごめん。秘密にするつもりはなかったんだけどね……」

 

「ふふっ。音羽くんらしいですね。……この星結び、ずっとずっと……大切にします」

 

「恋ちゃん……!」

 

 恋は星結びをまるで宝物を扱うかのように両手に乗せており、『大切にする』と言われた音羽は嬉しい気持ちが心に広がっていく。

 

「音羽、いつもアリガトウゴザイマス! クク、コレを着けてモットモット、頑張りマス!」

 

「恋ちゃん、結ヶ丘ってアクセサリーオッケーだったっけ?」

 

「派手な物はいけませんが、こういうネックレスであれば練習中に身に付けるのは問題ないかと」

 

「じゃあ大丈夫だね! おとくん、ありがとっ! 着けさせてもらうね!」

 

 千砂都が結ヶ丘の校則を恋に聞き、練習時に着けられることを確認できた彼女は指で丸を作りながら笑みを浮かべた。

 

「これは、僕達が『Liella!』である証と……友達の証! 皆で一緒に、同じ目標に向かって進みたいんだ!」

 

「私も、おとちゃんと同じ気持ち! 一緒だから、怖くない! ラブライブ地区予選突破を目指して……がんばろーっ!」

 

「「「おーっ!」」」

 

 皆で声を合わせて星結びを持った手を上に掲げ、ラブライブに向けて共に同じ目標に向かって進む決意を固めたのだった。

 

 

 

 

 練習着に着替える為に一同が更衣室に向かい、音羽も先に屋上で皆を待機してる中、未だ部室の中で、音羽から貰った星結びを眺めているすみれが居た。

 

「友達……」

 

 音羽が先程言っていた、星結びは自分達が『Liella!』の証であると同時に、友達の証でもあるという発言。その言葉がすみれの心に突き刺さる。彼に対して友達で居たい、居続けたいと思いたい筈なのに、それを望んでいない自分もまた、心の中に居座っている。

 

「……音羽。あんたは……どう思ってんのよ」

 

 誰も居ない部室で、彼女は一言そう呟いた。

 

 

 

 

 

 




その先に待つのは、希望か、波乱か。




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