星達のオーケストラ   作: 龍也/星河琉

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第64話 誰が為の意志、誰が為の覚悟。

 

 奇妙な空間だった。ゆっくりと目を開けた音羽(おとは)の視界に映っていたのは、見慣れた筈のスクールアイドル部の部室。だが、それは白黒写真を貼り付けたかのように、或いはまるで絵画の中に入り込んでいるかのように。色の無い、そこに自分が居るという認識が感じられない、ひどく無機質な空間に音羽は立っていた。音羽は暫く辺りを見回して確信する。ここは、自分が知っている結ヶ丘高校スクールアイドル部の部室ではないと。

 

「ここはきっと……僕らの部室じゃない。早くここから出なきゃ……僕には、やるべきことがあるんだ……」

 

 音羽は最近、すみれをセンターとして輝かせる為にやれることを探しており、ようやくその糸口が見つかったところだ。故に不可解なこの場所に長居する訳にはいかない。出口を探そうと再度周囲に目を向け始めたその時。声が響いた。

 

『……ない』

 

「えっ?」

 

『……出来ない。()()、何も出来ない。何も出来やしない』

 

「っ!? なっ……だ、誰っ!?」

 

 突如として聞こえてくる、何者かの言葉。脳内に直接言い聞かせられるような感覚が音羽を襲う。周囲には自分以外の誰かの姿は無く、音羽の問いに答えが返ってくることもない。ただ、音羽に対し『何も出来ない』という言葉のみを繰り返す。壊れたレコーダーの音声を聞いているかのような不気味さが感じられた。

 

「違う……僕は……力になるんだ。皆の、すみれちゃんの……助けになるんだっ!」

 

 身体を色んな方向へ向けながら、正体不明の声に対して叫ぶ。自分はもう、無力な存在でありたくない。そう心に決めたのだ。無力なまま終わらせはしないと。皆の役に立つのだと。その決意は、今も揺らいでいない。

 

「僕は、僕は……僕はっ……!」

 

 そのまま続く言葉を声に出そうとした瞬間、彼の視界が揺らぐ。辺り一面灰色だった景色から一変し、目が眩む程の光が音羽の視界を覆い始めていく。その光が徐々に無くなり、見える景色が暗闇となった瞬間に、音羽の意識は現実へと引き戻されていった。

 

 

 

 

「……はっ!」

 

 気が付くと音羽は自室のベッドの中に居り、自分が設定した最も聴き触りが良く、爽やかな色が見えるアラーム音がスマホから鳴り響いている。時計を見てみると、自分がいつも起床している時間帯であった。

 

「夢……か」

 

 今が翌日の朝で、先程見ていた奇妙な景色や謎の声は夢であったと認識し、安堵したように音羽は軽く息を吐く。だが、あの言葉を自分に言った声の主の正体は結局分からず、音羽の頭に謎を残したままであった。夢の中での記憶は朧げになることが多く、内容を思い出せないことだってあるのだが、今日見た記憶は鮮明に思い出せてしまう。『君は何も出来ない』と、自分に対してはっきりと言われた事も。音羽にそれを言ったのは一体誰なのか。考えてはみるものの思い当たる人物は1人として存在せず、皆目見当もつかないまま、未だ止められないアラーム音だけが音羽の部屋に響いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 放課後。音羽はスクールアイドル部の部室へ足を運び、皆と共に席に座していた。先日の一件からすみれも部に復帰しており、練習に参加するようになった為にスムーズにダンスやフォーメーション合わせが出来るようになり、少しずつではあるが、日々ラブライブに向けて皆がひとつになっていくのを音羽はその目で感じ取っている。

 

 今日はダンス練習ではなく、ラブライブ地区予選に関してのミーティングが開かれており、音羽の席には地区予選で使用する予定の曲の内容と歌詞が書かれたプリントと、最近行っている練習メニューが書かれたノートが開かれていた。千砂都(ちさと)が進行役を務めて会議が進められ、音羽は頷きながら話を聞いているものの、時折何か思うところがある様子でプリントを眺めていた。それに気付いた千砂都は軽く笑みを浮かべながら声を掛ける。

 

「おーとくんっ。どうしたの?」

 

「あ……ごめん。ちょっと……考え事してて」

 

 真剣な表情からすぐに笑顔を作って千砂都にそう返しながら、再度地区予選に使う曲の内容に目を通す。そこで、音羽が最近感じたことを正直に話すことに決めた。そして……自分がしたいこと、やらねばならないことも。

 

「地区予選で使う曲……これで、良いのかなって思って」

 

「ん? どういうこと?」

 

 千砂都が音羽にそう聞き返し、他のメンバーも彼女と同様に疑問を抱いている様子であった。少々の間の後に、音羽は言葉を続ける。

 

「……ずっと、考えてたんだ。何で結ヶ丘の皆が、すみれちゃんがセンターじゃない方が良いって言ったのか。最近になって、それがわかった気がするんだ」

 

 それを聞いたすみれは腕を組んだ状態で音羽の方に視線を向ける。一同も彼の言葉を聞く為に無言で音羽を見つめていた。

 

「地区予選で使う『Day1』……僕はすごく好きなんだ。かのんちゃんの、皆の想いが詰まった良い曲だと思う。でも、この曲を聴いて、そのダンスを見た皆は……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と思ったから、そう言ったんじゃないかなって」

 

「言われてみれば……確かに『Day1』は、誰がセンターを務めても成立する曲なのかもしれません。歌詞も、皆さんの意見を取り入れて改良を加えたものですし」

 

 顎に手を当てながら、音羽と共に作曲を担当した人物である(れん)も納得したように頷きを示した。音羽の視線の先にあるプリントに書かれている、ラブライブ地区予選で用いる曲、『Day1』。これは元々かのんが作詞し、それに合わせて音羽と恋が作曲して形にしたものだ。そこに各々の意見や気持ちを取り入れたことで、最終的に出来た歌詞にはかのんだけでなく皆の想いも乗せられた曲に仕上がり、結ヶ丘の生徒はこの曲を聴いて、『これなら地区予選を突破出来る』と確信していた。だが、すみれがセンターを務めない方が良いという意見が出ていたのもまた事実で、音羽はその要因を以前から考え続けていた。思考を続けた結果、音羽から導き出された答え。それは、『この曲はすみれがセンターでなくてはいけない程の唯一性が感じられないこと』だった。

 

 無論、それは決して悪いことではない。メンバー全員がセンターを務められる曲であるなら、様々なアレンジを効かせることも可能であり、尚且つそれならステージ上の全員が輝くということにも繋がっていく。しかし、音羽は『本当にそれで良いのか』と、疑問を持つようになった。それが本当に、すみれをセンターとして輝かせることになるのか、と。そこで、音羽はやりたい事が生まれた。『全力でサポートする』とすみれに伝えていたことを実現出来る手段が思い付いたのだ。

 

「すみれちゃんをセンターで輝かせるなら、誰でもセンターを務められるって印象を抱かれる曲はあんまり良くない気がする。だから……()()()()()()()()()()()()()()()ような、すみれちゃんだからこそ輝ける曲を……今から新しく作りたい」

 

「えっ……!?」

 

 恋が音羽の言葉に驚愕すると同時に、すみれの眉が一瞬動く。現状、ラブライブ地区予選まで2週間と少ししか猶予が残されていない状況でまた新たに曲を作るとなると、全体のフォーメーションやダンスの振り付け等を初めから考え直さなくてはいけない。それに加え、最終的に『Day1』が完成したのはかのんが詞を考えてきた日から数えて2週間。1つの曲を作るのに最低でもそれだけの時間がかかる中、そこにダンスも組み込むとなると2週間では余りにも時間的猶予が足りない。

 

 半ば無茶とも言える音羽の提案に、部室に沈黙が流れる。せっかく音羽がそのように意見を出してくれているのだから、承諾したい気持ちは確かに皆の中にある。しかし、現実的に考えると、音羽のしたいことは到底夢物語だと言わざるを得ない。ラブライブ運営に提出する曲の変更期限とダンスの振り付け等を考慮すると、曲作りに使える時間は多くとも1週間。もしくは1週間を切らなくてはならない。歴の長い業界人や、ましてやプロでもない一介の学生が僅か1週間足らずで曲を作る事など、その道の素人でさえ至難の業であることを理解しているのは言うまでもないだろう。

 

 それでも。たとえそれが無茶だと分かっていても。無理難題だと言われようと。我儘だと言われようと。音羽は自分がすべきだと思った事柄に、一点の迷いは無かった。

 

「これが……酷いワガママってことはわかってる。無理を言ってるってことも。けど……僕はそうしたい。すみれちゃんと約束したんだ。『全力でサポートする』って。だから……」

 

「おとちゃん……」

 

 かのんは以前から変わらない音羽の健気な様子を見て、心が揺らぐ。賛同したいのは山々だが、全てが上手く行く程現実はそう甘くはない。いくら音羽といえども無理がありすぎる願いが故に、賛成しようという意志に一歩踏み込めないようであった。言い淀むかのんの隣で、千砂都が音羽の目を見ながら問い掛ける。

 

「おとくんが言ってたことは、私もちょっとだけ感じてたんだ。すみれちゃんのサポートをしたい気持ちもわかる。その上で聞くね、おとくん。今言ってたこと……本当に、出来る?」

 

 純粋に、千砂都は音羽に今言っていた事が可能かどうか。不可能でないかを問う。千砂都もかのんと同様に音羽の気持ちを汲みたいと思っており、可能な限り要望に応えるつもりもある。だが、今回ばかりは彼女も安易にそれを受け入れる訳にはいかない。音羽の意志を確認してから、許可を下すか否かを決める。そういうつもりで千砂都は音羽に確認しているのだ。彼の意志がどれだけのものなのかを試す為に。すると、すぐに彼から千砂都に言葉が返された。

 

「出来る、出来ないじゃないよ。千砂都ちゃん」

 

 音羽は、優しい口調と表情で一言そう言葉にした。すみれをサポートする為に全力を尽くす。音羽はそう誓った。ならば、やるべきことを為す。そして彼女との約束を果たす。自分はもう、無力では無いのだから。音羽はそっと瞼を閉じ、自身の周りに居る人達に言われた言葉を今一度思い出す。

 

『おとくんはかのんちゃんの……いや、皆の役に立ててるよ!』

 

『信じてマス。いつも音羽がソウ言うミタイに、ククも……信じたいデス』

 

『誰にも奪えない、音羽だけが持つ大切な技術なの。今までの努力を、否定しちゃダメ。私が悲しくなっちゃうわ』

 

『その才能を、皆の為に使えば良い。傷付けることに怯えるのではなく、傷付けさせない為にやれることを探すんだ。今の音羽ならそれができる』

 

 大切な者達が、自分に掛けてくれた言葉。普通じゃない自分に絶望した時、両親が掛けてくれた言葉。それが、音羽の心に熱を灯し始める。確かに自身は他の人達と比較すれば普通じゃないのかもしれない。おかしいのかもしれない。きっと、異常だ。でも、だからこそ……不可能を可能に出来るかもしれない。到底『無理』だと思われている事を、現実に出来るかもしれない。希望と絶望、それらを内包する自らの才。その才を、皆の為に使う。父である湊人がそう教えてくれたように。誰かを傷付ける事に怯えるのではなく、傷付けさせない為に。その才を、力を使う理由はただ1つ。皆を助ける為だ。自身を受け入れてくれた、仲間達の為に。

 

『誰が何と言おうと、私達は音羽くんを受け入れます』

 

『たしかに他の人とはちょっぴり違うかもしれないけど……おとちゃんはおとちゃんだから』

 

 目を閉じても浮かんでくる、大切な人達の表情。暗闇に落ちそうになった心を、救ってくれた言葉達がある。

 

『君は、何も出来ない。何も出来やしない』

 

 夢に出てきた謎の言葉も音羽の脳裏に浮かぶ。だが、その言葉に飲まれる訳にはいかない。自分には、果たすべき事があるのだから。

 

『普通だとか普通じゃないとか関係ない。おとちゃんは、私達にとって大切な友達。それはこれから先もずっと、変わらないよっ!』

 

 頭に浮かぶ否定が、彼女の言葉でかき消された。彼女の為に、迷いを振り切る。熱がどんどん音羽の心に伝播していく。絶望を希望で振り払ったその刹那、彼は顔を上げる。そして真っ直ぐ、前を向いた。

 

「……()()()。必ず完成させる。完成させてみせる。僕が皆を……すみれちゃんを輝かせるんだ」

 

 決意を宿した音羽の瞳は、普段の様子とはまるで別人のように思え、一同は音羽の並々ならぬ気迫に息を呑む。千砂都も皆と同じく少々驚いていたが、安心したように歯を見せて笑みを作った。

 

「そうこなくっちゃね。わかった。曲、新しく作ってみよう」

 

「……! 良いの?」

 

「おとくんがそう言うなら、曲もダンスも……もっと良くできる余地があるってことでしょ? やれることは全部やった方が良いじゃん? その方が、悔いは残らないしね」

 

「千砂都ちゃん……!」

 

「ワガママではありマセンよ! 音羽がクク達のコトを考えてくれテルのデスから! 断るワケありマセン! ククも賛成デス!!」

 

 可可(クゥクゥ)も千砂都の言葉に便乗し、普段より俄然心を躍らせている様子で音羽の言葉に賛同の意を示した。それを見た恋も表情を綻ばせ、隣に居る音羽と目を合わせる。

 

「私も賛成です。やると決めたのなら、絶対に貫き通す。それが音羽くんですから。私は信じています。音羽くんなら……必ず出来ます!」

 

「そうだね。あんまり時間はないけど、私達がおとちゃんをフォローする。ダンスの振り付けとか……なんなら、作詞は私がやる。だから、おとちゃんのしたいことをしてほしい!」

 

「恋ちゃん……かのんちゃん……!」

 

 2人も快く音羽の提案を承諾する。最初から音羽を信じているのはかのんと恋であり、音羽があそこまでそうしたいと願うのならば、相応の理由があるというのは真っ先に理解が出来た。地区予選を勝ち抜く為にも、出来ることは全てやり切った上でステージに立ちたいと思うのは皆同じ。より良いパフォーマンスにするのなら、曲もダンスも今以上に向上させなくてはならない。音羽にとってもかのん達にとっても無理難題ではあるのだが、かのんには不思議とそれが不可能ではない気がしていた。音羽があんなにもはっきりと『やる』と言ったのだから。ならばそれを全力で助けるのが仲間。かのんは音羽が自分達のことをそんなにも考えてくれていたこと、熱く自分がしたいことをはっきり述べてくれたこと。それらの事が非常に嬉しく、千砂都と共に微笑み合った。

 

「ごめんね……こんなワガママに……」

 

「ううん。おとちゃんがやるって決めたことなら、やるべきだと思う。これはワガママじゃない。私達が、地区予選の為にできる最後の仕上げだよ!」

 

 かのんは音羽のやりたい事に肯定の意を示し、優しく笑う。その反応に彼は喜びを露わにするが、1つ気付いたことがあった。地区予選でセンターを務めるすみれ本人からまだ何も意見が出ておらず、ましてや承諾もされていないのだ。それを思い出し、音羽はすみれに恐る恐る話しかける。

 

「あのー……すみれちゃん? 僕、すみれちゃんの為に新しく曲を作り直したいんだけど……良い?」

 

「聞いてるわよ。私をナメてんの?」

 

「違うよっ! 確認したかっただけ!」

 

 すみれが自分の話を真面目に聞いていない可能性があると思った音羽は念の為今話していた内容を改めてすみれに伝えると、彼女はしっかり彼の話に耳を傾けていたようで、分かりやすく眉間に皺を寄せてみせる。それを見た音羽は慌てて手を胸の前で振る。その様子にすみれは小さく笑みを浮かべた。

 

「今回はすみれちゃんがセンターだから、すみれちゃんが嫌ならもちろんやらないよ。今まで通りの曲とダンスで地区予選に出るから」

 

 あくまで音羽のしたい事はサポーターとしての提案と意見であり、メインでパフォーマンスを行うのはかのん達5人。そして方針の最終的な決定権があるのは勿論、センターポジションのすみれである。そこで尊重されるのは言わずもがなセンターを務める人物の意見で、彼女が音羽の提案を拒否すれば、今までと同じく『Day1』を用いたパフォーマンスとなる。たとえ4人が音羽の意向に賛成でも、すみれが嫌だと言うなら承認はされない。あくまでもすみれや皆を優先する、といった音羽の言動にすみれは1度溜息を吐いた。

 

「良いも何も、作曲は元々あんたと恋に任せてたんだから。私はそれに従うだけよ」

 

「……! じゃあ……!」

 

「……好きにやんなさい。あんたに合わせるから」

 

 すみれが、音羽の提案に乗った。彼は一瞬、それが信じられなかった。あまりにも早い承諾。無茶を言っているのだから、普段から理知的で現実的な思想を持つ彼女から否定されるのではないかと音羽は思っていた。だが返ってきたのは、自分のやり方に合わせるという言葉。すみれも、自身の提案した事に乗ってくれた。その事実が、彼の心の底から喜びの感情を生む。

 

「ありがとうっ! すみれちゃん! 皆っ!」

 

「ううん! そうと決まれば、ダンスとフォーメーションの見直ししなくちゃね!」

 

「クク、いくらデモお手伝いイタシマス! 今度はククが音羽のチカラになる番デス!」

 

「なんでも協力しますよ。音羽くん!」

 

「皆っ……! 僕1人ででも、やろうと思ってたのに……」

 

「もう、水臭いよおとちゃん! こういう時こそ、皆で協力し合おうよ! おとちゃん1人に……負担はかけさせないから!」

 

 無理を言っているのも、余裕の無い状況にさせてしまうのも自分なのだから、音羽は作曲の全てを1人で行うつもりだった。ダンスの練習は勿論、フォーメーションを覚える為の反復練習も必要になってくる以上、負担をかけさせない為に自分だけで曲を作ろうと考えていたようであった。だがかのん達はそれを認めようとはしない。パフォーマンスは、部の全員で完成させるもの。誰か1人の無理によって成り立つものは、本質的に見れば決して良いものなどではない。皆で作り上げるものにこそ、相応の完成度が伴うのだ。

 

「すみれちゃんも、おとちゃんに協力してあげて? センターなんだし、色々話し合いも必要になってくるだろうから」

 

「わかってるわよ。地区予選の為だもの」

 

「すみれちゃん……!」

 

「……一緒にやるわよ。よろしく」

 

 音羽にそう伝えてすぐに、すみれは彼から目線を逸らした。けれど確かに音羽は聞こえた。『一緒にやる』と。あの一件から2人は特に会話をした訳ではなく、互いに言いたいことを伝えられていない状況なのだが、音羽は今は悠長にそれをしている場合ではないと理解している。彼は、仲良しこよしがしたくて部に居る訳ではない。仲が良好であるのは良い事。それは分かっている。しかし本来の目的はそうする事ではない。部の皆の役に立つ為にここに居るのだ。音羽が抱くすみれと話したい、分かり合いたいという想いは言ってしまえば私情でしかない。それも、ワガママだ。なればこそ、言葉ではなく行動で示す。音羽はそう誓っているのだ。すみれとの約束を、本当の意味で果たす時が来た。

 

「よろしくね、すみれちゃん。僕らで作ろう。誰も見たことのない……僕らの世界(ステージ)を!」

 

 決意を新たに、少年少女は更なる境地へ足を踏み入れるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




瞼を閉じて、心で見る。




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