星達のオーケストラ   作: 龍也/星河琉

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第66話 絆、解けたとしても。

 

音羽(おとは)と仲直りしてほしい』。可可(クゥクゥ)がすみれに伝えたその願い。可可だけでなく、かのん達も音羽とすみれが仲直りする事を望んでいる。スクールアイドル部内で人間関係の不和が起きているのを見過ごす訳にはいかない。且つそれが原因で活動に支障をきたす訳にもいかない。早急に解決しなくてはいけない問題である。

 

「そうだよすみれちゃん。おとちゃんと話して、仲直りしよう?」

 

「最近、すみれちゃんらしくないちょっとしたミスが続いてるのは……おとくんとの仲違いも原因の1つだと思うんだけど、違うかな?」

 

「アナタが音羽にナニを言ったのかは知ってイマス。……謝ってクダサイ。謝って……仲直りスルデス。アナタだって……本当はそうシタイんじゃナイデスかっ!?」

 

 すみれと距離を詰め、未だ自分と目を合わせようとしない彼女に対して可可は本心を確認する為にそう聞いた。すみれが音羽に『普通じゃない』と教えたことは皆知っていて、それを彼に謝罪した上で仲違いを解消してもらいたいというのが皆が抱いている考えなのだが、まだすみれ本人からどうしたいのかを聞けていない状況だった。可可にそう言われて、すみれがようやく口を開く。

 

「……無理よ。私に、そんな資格はない」

 

「すみれちゃん……どうして?」

 

 すみれの返答は、音羽と仲直りする事は『無理』だというものだった。彼女がそのように言った理由が分からず、千砂都(ちさと)は心配そうに聞き返す。すると、すみれは悲しそうに視線を下に向けた。

 

「音羽は何も悪くないのに、傷付けて……言う必要ないことまでぶつけて……それなのに今更謝って仲直りしようだなんて、虫が良すぎるわよ」

 

「すみれさん……」

 

「それに……私は音羽と友達に戻りたいなんて、思ってないから」

 

「ドウしてソウなるのデスか!? アナタはアナタナリに……音羽のコトを大切に思ってイルのではナイのデスか!!」

 

「あんたに私の何がわかんのよ。誰があの子のことを大切に……」

 

 そう言いかけたすみれの言葉が、可可や他のメンバーの表情を目にしたことで止められる。皆悲しげな目ですみれを見ており、今口にしようとした言葉は彼女の本意ではないというのは考えずとも分かることだった。

 

「……ごめん。さすがに無理あるわね。……そう。音羽は私にとって大切だし、特別よ。だけど……一方だけが特別って思うのなんて、そんな感情……意味ないでしょ」

 

「すみれ……?」

 

「音羽に何かされても、それを他の人にもしてるって思うと……『嬉しい』って思えなくなった。私のことを見てくれてないって思い込んで、音羽に『ひどい』って思う奴なんて……友達でもなんでもないでしょっ……!」

 

 両手を強く握りしめながら、すみれは感情のままに誰にも話していなかった心境を吐露し始める。かのん達は無言のまま、すみれの言葉を聞き入れる。一度吐き出してしまえば、もう止められない。感情の波が、どんどん押し寄せてくる。

 

「勝手に期待して、勝手に裏切られた気になってっ……! そんな奴に……音羽と関わる資格なんてない……! 音羽はきっと、もう私を友達だって思ってない。だからもう……良いの。良いったら……良いのよ」

 

 すみれが音羽と友達に戻りたくない理由。それは、すみれが彼に対して抱く罪悪感が原因であった。何の落ち度も無い音羽に理不尽に怒り、酷い言葉を浴びせ、拒絶した。そんな自分が、音羽に謝罪して仲直りを求めるなど、余りにも虫が良すぎる所業だとすみれは考えていた。いくら自分が音羽を特別に思っていても、当の本人が自分に対してそう思っていないのなら。自分を、特別に見てくれないのなら。そんな感情は無意味だとも感じている。すみれにとって、音羽と和解する事など最初から無理な相談だった。もう、どうしようもない。やりようがない。そう心に言い聞かせ、諦めた。けれど一同にとっては、その事柄は決して『無理』だとは思っていなかった。

 

「……アナタは、音羽のコトが好きなのデスね」

 

「……! ……ええ、そうよ。『Liella!』の仲間として、あの子が好きよ。でも、それが何だって言うの? 今更関係ないでしょ!」

 

「ダッタラ尚更デス! 仲直りスルべきデスよ!」

 

「はぁ!? あんた、人の話聞いてた? それはもう無理だって……」

 

「デハ聞きマスが、すみれを友達だと思っていナイというのは、音羽カラ直接聞いたのデスか?」

 

「それは……」

 

 可可の問いにすみれは反論出来ず、押し黙った。自分のことを友達だと思っていないというのは、あくまですみれがそうだと思い込んでいるだけであって、音羽と直接話した訳でも、その言葉を聞いた訳でもない。故にすみれは言い返せずに、可可の目を見つめる事しか出来なかった。返答を数秒待った後に、千砂都がすみれに話しかける。

 

「おとくんに、そう言われた訳じゃないんだよね?」

 

「……そうね」

 

「ダッタラ……アナタはタダ逃げてるダケデス! 音羽のコト、コレッポッチもわかってナイデス!!」

 

「だから……あんたに何がわかるのって言ってんでしょっ!?」

 

「わかりマセン! アナタが何故音羽と向き合おうとしナイのか……チットモわかりマセン!! 音羽が……誰のタメに『曲を作り直したい』って言ったと思ってるデスか!!」

 

「っ……!」

 

 両者一歩も引かず、強い語気で言葉をぶつける。可可は音羽と向き合おうとしないすみれに本気で怒り、彼の気持ちを考えながら、目に涙を溜めてすみれに訴えかける。

 

「音羽はずっとアナタのタメに……チカラになるタメに頑張ってキタのデスよ! ナノニ……アナタが音羽と向き合わないでどうスルのデスか! コノ期にオヨンデ逃げるナンテ……ククは許しマセン!!」

 

 可可はずっと、地区予選の為に努力する音羽の姿を見てきた。一緒に衣装作りをして、センターの証を生み出し、『Day1』も音羽と恋のお陰で出来上がった。地区予選に向けての全てに音羽が携わり、曲もダンスも形にしてきた。そして今は、すみれの為に新しく曲を作りたいと自ら申し出た。それは……すみれをセンターとして一層輝かせる為。本気ですみれと、ラブライブと向き合って行動している。それをよく知っているのは、近くでその姿を見ていた可可や(れん)、かのんや千砂都であった。

 

「すみれちゃんがそう思っちゃう気持ち、なんとなくわかるよ。でも……おとちゃんはすみれちゃんのこと、今でも友達って思ってるよ。じゃなきゃ……すみれちゃんの為にここまでしないんじゃないかな?」

 

「すみれちゃんが気付いてないだけで、おとくんは……しっかりすみれちゃんを見てるよ。おとくんがすみれちゃんを見る目は、特別なものだって私は思う。だからすみれちゃんもさ、おとくんを見てあげて? 仲直りしないままは……寂しいからね」

 

 かのんと千砂都は普段の音羽の姿を見て、すみれに対してどのような感情を向けているのかを理解している。曇りひとつない、尊敬の眼差しをすみれに向けているのを分かっているからこそ、音羽にとってすみれのことが大切じゃない訳が無い。友達ではないと思っていない筈が無いと確信を持って言えるのだ。それは、彼の幼馴染である彼女も同じである。 

 

「音羽くんにとってすみれさんは何なのか、友達だと思われていないのではないか、と。不安になる気持ちは分かります。ですが……それを決めるのはすみれさんではありません。だからこそ、すみれさんは音羽くんと向き合うべきではないでしょうか。ご自分の気持ちに蓋をしていては……本当に伝えるべきことも、伝わらないと思います」

 

「あんた達……」

 

 恋もまた、音羽と擦れ違いを続けてきた人間で、その経験からすみれの辛さも苦しさもある程度理解が出来る。大切な人と向き合う事の恐怖も人一倍知っている。けれど、一歩を踏み出す勇気があれば、想いを伝える事が出来れば、止まっていた状態からまた前に進める事も知っている。恋は仲間であるすみれに自分と同じ轍を踏んでほしくないからこそ、普段はあまり見せないような厳しい語気ですみれを諭した。かのん達の言葉を聞いたすみれの心が、僅かに揺れ動く。

 

「マエに音羽が言っていマシタ。『皆、仲良くしていてほしい』、『皆と一緒に居たい』と」

 

「あの子が……そんなこと……」

 

 音羽が可可の家に来た際、彼が可可に伝えた願い事をすみれに伝える。音羽はいつも、皆のことを第一に考える。だが、そこに音羽自身が含まれていないような気がしていた。可可はずっと、それが気掛かりだった。ならば、そこに音羽も含めれば良いと。そう決めた可可は、一層音羽を大切にしようという気持ちが芽生えた。大切な仲間として、音羽と一緒に居ることを、力になることを誓ったのだ。

 

「ソノ『皆』には、音羽も含まれてイルんデス! クダラナイ意地を張ってナイで、マズ音羽と話してクダサイ!」

 

「くだらないって、あんたねぇ……」

 

「クダラナイデス。マダ言われてもナイコトを想像して、本当のキモチを隠そうとスルなんて……コレだからアナタはグソクムシだとイウのデス」

 

「今それは関係ないでしょ……」

 

『グソクムシ』と言われたすみれは眉間に皺を寄せながら可可の発言に突っ込む。だが、可可は表情ひとつ崩さずにすみれを見つめる。真剣な眼差しを彼女に向け続けていた。その視線に耐えかねたすみれは、固く握った拳を緩めて大きく息を吐いた。

 

「……あ〜もうっ! わかったわよ! 新曲ができたら、1回ちゃんと音羽と話してみるわ。まったく……あんたと話してると、ウジウジ悩んでる私がバカみたいに思えてきたわ」

 

「フン。サイショから、ソウ言えば良いのデス。……まぁ、アナタがちゃんと音羽を大切に思ってイルミタイで、安心しマシタ」

 

「可可……」

 

「私も。それを聞けて安心した。すみれちゃんがおとくんを大切に思うなら、おとくんに何を伝えれば良いのか、自ずとわかるはずだよ!」

 

 千砂都はにかっと笑いながらすみれにそう言う。彼女もまた音羽と同様に優しい人柄であるからこそ、心の奥底にある本音を表に出さずに仕舞い込んでしまうことがある。それを乗り越え、音羽に自身の気持ちを伝えれば、きっと仲直り出来る。一同はそう信じて疑っていなかった。

 

「音羽くんに、すみれさんは必要な存在です。私は、すみれさんのように音羽くんを叱ったりは出来ませんので……すみれさんの存在が、音羽くんを奮起させる事にも繋がると思っています」

 

 恋は微笑を浮かべながらすみれに優しく伝える。厳しくも、その中に確かな気遣いと優しさが含まれるすみれの叱咤は、確実に音羽の成長を促している。

 

「すみれちゃんの気持ちは、絶対に無意味なんかじゃない。無意味なもので終わらせちゃいけないと思う。その為にも……おとちゃんと仲直りしてよ。多分……いや、絶対! おとちゃんだってそれを望んでるから!」

 

「絶対、ね。根拠はあるの?」

 

「あるよ。一緒に居ればわかるもん。すみれちゃんだって、ほんとはわかってるんじゃないの?」

 

「……さぁ、ね。この話はもうやめにしましょ。練習、やらなきゃだし」

 

「ふふっ。そうだね! じゃあ皆、練習始めよっか!」

 

 すみれの様子を見てかのんは安心したように笑みを浮かべ、彼女の言葉通りに練習を始めようと音頭をとる。自身の胸中にある気持ちを形にするのは、もう少し先。音羽が曲を完成させてから。すみれはそう心に決め、左手首に巻いている星結びを見つめる。言葉ではああ言っていても、音羽から貰ったこのお守りを外せなかった事実こそが、彼との繋がりが断たれる事を恐れるすみれの内心を表しているかのように、かのんの瞳にはそう映ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




心のドアに、隠されし想い。


今年も星トラを読んでくださった皆様に心より感謝申し上げます。
来年もよろしくお願い致します。

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