ウマ娘 ワールドダービー RTA 称号「沈黙も栄光も超えた先」取得 DLC使用チャート 作:星ノ瀬 竜牙
これはサイレンススズカがメインのお話なので)初投稿です。
札幌記念のプペペポピ-
その日は真夏の曇り空だった。
幸いにも雨に降られることはなく、ターフは間違いなく良バだろう。
「あわわ、人が沢山だべ〜!?」
スペシャルウィークは地元である
北海道で普段は見ないような大勢の観衆を見て目を回していた。
「無理はしないようにね……スペちゃん?」
「はいぃぃ……気を付けますぅ……」
「うーん、やっぱりG2といえど、重賞は重賞。
人混みに埋もれて二人とも、迷わないようにね」
スペシャルウィークとサイレンススズカ、彼女たちのトレーナーである
竹ユタカ。彼は二人がはぐれないように注意する。
「はい。それにしても、人が多いですね……」
「まあ今回は……G1ウマ娘が二人出走する事になってるからね。
しかも片方はエアグルーヴだ。注目もされるさ」
「トリプルティアラですからね……例年より多いのかしら……?」
「そうだね。前回の、マーベラスサンデーと挑んだ時よりは遥かに多い。
まあ……札幌記念自体がG2に格上げされたばかりだし……今後の秋のG1前哨戦としての舞台にもなってくるからね。
……とはいえ、基本的にはエアグルーヴを見に来た人の方が多いだろうけど」
なにせトリプルティアラだ。三冠だ。当然注目度は段違いである。
サイレンススズカのふとした疑問にユタカはそう答える。
そんな二人の会話を聞いてん?とスペシャルウィークは気付いたことをトレーナーであるユタカに聞く。
「トレーナーさんって、もしかして凄い人ですか!?
私でも名前を知ってるヒトたちばっかり出てきてますよ!?」
そう、マーベラスサンデーやエアグルーヴ。
他にもスーパークリークとかナリタブライアンとか。
彼の口から出るウマ娘の名前は日本において知らない人は居ない。
そういえるウマ娘たちだらけなのだ。
当然スペシャルウィークもそんな反応になる。
「うーん、僕が凄いわけじゃないけどね?
僕は基本サブトレーナーとしてやれる事をしてあげただけだし……
どっちかというと……あの才能の塊のウマ娘達を発掘してくるシリウスのトレーナーが凄いって言うべきじゃないかな?」
いやほんとあの人に僕が良いなーって思ったウマ娘大概目をつけられてるんだよね。とユタカは苦笑した。
「……そうですか?エアグルーヴはよく、トレーナーさんが居なかったらティアラを取れてないって言ってますけど……」
「たまたま一番最初に気付けたのが僕だったからだよ。
体調崩したり、脚に負担が掛かってたりとかね。エアグルーヴは悩み事を一人で抱え込むタイプだからね」
「確かに……エアグルーヴはそういう所があるかも……?」
「君もだぞ。サイレンススズカ」
トレーナーの言葉に納得するスズカに対して
苦笑しながら釘を刺す。彼女とて人の事を言えないのだ。
「え?」
「そうですよ!スズカさん!私やエアグルーヴ先輩も居るんですからちゃんと相談してください!!」
「あ……その……あの件は本当にご迷惑をおかけしました……」
あの事に関しては私怒ってます!とぷんすこ!と膨れっ面になるスペシャルウィーク。
迷惑をかけたくないからこそ黙っているのだろう。結果としてそれで迷惑を掛けてしまっており本末転倒だったのが、サイレンススズカの移籍の件であった。
「うん、まあそれはもう終わったことだから掘り返すのはこの辺にしておいて……
トレーナー用の観客席があるし、そっちに行こうか。
最前列じゃないからしっかり見れるかと言われたらアレだけどね。
場所は分かるかい?僕は、エアグルーヴの様子を見に行かないといけないから」
「はい!地図もあるので大丈夫です!!」
「……スペは前科があるの忘れてない?」
「うぐっ!?そ、それを言われると弱いです……」
スペシャルウィークは過去にやらかしている。
無論、その時は土地勘のない場所だったが故のやらかしなので仕方ないのだが……
スペシャルウィークは確かに北海道出身である。
だが、札幌に居た事は無い。平凡な田舎娘であり、北海道の中でも比較的都会である札幌に来た経験は少ない。
当然札幌のレース場に来たことなどなく、土地勘なんてないのである。
つまり土地勘のない場所で迷ったスペシャルウィークは完全な前科ありになっている。
「……スズカ、君は……場所は分かるよね?」
「大丈夫です。この道の突き当たりを行ってそこから階段を登れば……」
「よし。それが分かってるなら大丈夫。スペの事……頼める?」
「はい、分かりました。スペちゃん、私が案内するわね」
「あ、はい!分かりました!」
二人と別れて、エアグルーヴの居る控え室へ向かう。
珍しく、緊張している自分にユタカは苦笑いを浮かべてしまう。
ただ、その緊張を彼女に伝える訳にはいくまいと深呼吸をして控え室に入る
「…………」
控え室ではエアグルーヴが目を閉じ精神統一をしていた。
あ、これ邪魔したやつだ。彼はすぐにそう認識した。
「邪魔しちゃったかい?」
「む、貴様か。トレーナー。
邪魔ではない、今ちょうど終えた所だ」
「そっか、なら良いんだけど。
体調の方はどうだい?同じ日本とはいえ、夏場の気温とかはこっちは低い方だから……
何か調子がおかしかったら言って欲しい」
「それに関しては問題ない。寧ろ調子が良い方だ。
流石にチューリップ賞の後のようになったりはせん」
エアグルーヴの言葉に苦笑を浮かべる。
あれはトレーナーとして本当に取り返しのつかない事をしてしまう可能性があったのだ。
チューリップ賞の直後だったからこそ不幸中の幸いだった。
これが桜花賞直前だったりしたら目も当てられない事になっていただろう。
「あれは、本当にごめん。不調をもっと早く気付けたら良かったんだけど」
「気にするな。私が黙っていたのが悪い。
……情けない話だがな」
「……お互いまだまだ未熟だって理解出来て良い機会だったけどね」
「違いない」
お互いの欠点というか、
まだまだ一人前というには程遠い事実を叩きつけられた事は数知れず。
去年の出来事のはずなのに、昔の事のように感じていた。
「……トレーナー、今日のレースだが」
「あー……うん、僕から言えることはないかな」
「指示はなし、か」
「正直に白状すると、今の君のレースでの実力を僕は知らない。
実際にレースを見るのは去年の秋華賞以来だからね。
前走のマーメイドステークスは父が見ていたし……ビデオで確認はしてるけど、この目でしっかり見るまで判断はしないつもりだよ。
だから、今日は君の走りを魅せて欲しい」
彼女が培ってきた全てを、女帝としてのその走りをトレーナーは見たい。
即ち、全力で走ってこい。そういう事だった。
先行なのか差しなのか、それすら伝えないのは放任主義も良いところだ。
彼とてそれは理解している。それでも彼女の今の実力を知るには
これがちょうど良いのだ。彼女が練る戦術、走り。それら全てを把握するために。
「任せておけ、貴様のウマ娘が、
女帝がどれほどのモノか、スズカやスペシャルウィークに魅せてやる。
これが、今お前達が教わっているトレーナーによって培った走りだとな」
「前も言ったけど、買い被りすぎだよ。君の才能あってこそ成立したやり方だからね。
……僕は切っ掛けを得る機会を作っただけだし」
「それが出来るトレーナーが少数なんだ。戯け」
彼女の言う通りである。才能を活かし、そのうえで伸びるトレーニングや走り方を鍛え上げれるトレーナーは中央とて限られてくる。
現にサイレンススズカは非凡な才を持ちながらそこで伸び悩んだ。
故に、彼ほどの才能を持ちながらウマ娘への理解が深いトレーナーは貴重だと言われている。
無論、これは今三強のチームと呼ばれるシリウス、リギル、スピカのトレーナーにも当てはまることではあるが。
「……まあ、褒められるのは素直に嬉しいしありがたく受けとっておくよ。
ありがとう、エアグルーヴ」
「そ、そうか……なら良い」
ブンブンと尻尾を動かし、耳を跳ねさせるエアグルーヴを見て
相も変わらず、尻尾や耳に感情が出るなーなんて苦笑いを浮かべる。
これは彼が秋華賞の時に気付いた彼女の癖だ。
顔に出ない分、ウマ娘らしい感情表現が尻尾や耳に出やすい。
エアグルーヴは顕著な方だろう。
黙っている理由はその方が色々と楽だから。というトレーナーとしてはかなり酷いが、人間らしい楽をしたいという考えからである。
それに彼女の集中を欠かせる訳にもいかないし。とそれっぽい言い訳を心の中でしておく。
「さて、そろそろ時間だね」
「む、もうそんな時間か……貴様と話すとすぐに時間が過ぎる」
「それはごめんな?」
「責めているわけじゃない。寧ろ、緊張が程よく緩む。
先程よりは調子が良い」
「そかそか、なら良かった」
彼女は無自覚に、彼との会話が楽しいことを告げているが彼女は気付いていない。
彼はそれをあえて指摘していない。指摘したら厄介なことになりそうだ。とトレーナーは直感的に、そして経験談から理解しているからである。
少なくともオグリの食費やスーパークリークによるタマモクロスとナリタタイシンの身に起きたあの悲劇は彼のトラウマである。
今なお、タマモクロスやナリタタイシンに顔を合わせた時申し訳なさが表情に出るほどには。
ごめんね、本当に。心の中で再び二人の被害者に謝罪した。
「では、行ってくる」
「……エアグルーヴ」
「なんだ?」
「また、魅せてくれ」
「ああ、任せておけ」
遠回しながら、彼女に勝ってこい。と伝える。
彼女は彼のそんな意図を理解して、くすりと柔らかい笑みを浮かべる。
「しかしトレーナー。
貴様、随分と
「うへぇ……堪忍や……親父に似てるって言われるのは色々と複雑やで……」
エアグルーヴの言葉にぐへぇ……と素の関西弁が出てくるほどには複雑だった。
「父を超えたい」という彼の思いとしては、似てくるというのは複雑なのである。
───────
「あ、トレーナーさん!こっちです!!」
エアグルーヴの様子を見終えて、観客席にやってきたトレーナー。
それに気付いたスペシャルウィークがぶんぶんと手を振り、
気付いた彼は、彼女たちのもとへ行く。
「トレーナーさん、エアグルーヴの様子はどうでしたか……?」
「絶好調、かな。身体に違和感とかはなかったみたい」
「そうですか、良かった……トレーナーさんは、このレースどう見ますか?」
「そうだね……やっぱり無難な所だとこのレースで注目されるのはエアグルーヴと
一昨年の皐月賞ウマ娘で、マイルチャンピオンシップを獲ってるジェニュインだと思う」
そう、この札幌記念で注目されるのは
間違いなくエアグルーヴとジェニュインだ。
お互いG1を制したウマ娘。
当然、今ここに来ている観客はその対決を見に来ている。
「……無難なら。という事はトレーナーさんは別のウマ娘を……?」
「まあ、ね……警戒すべき子は多いさ。
それに、ジェニュイン……彼女はここ直近だとあまり調子が良さそうじゃないからね。
走りにも前ほど得意分野の『先行』にキレがないんだ」
だからこそ警戒すべきではあるが、最重要ではない。
そう彼は踏むことにした。
「……なるほど、それはエアグルーヴには?」
「伝えてないよ」
「ええ!?トレーナーさん伝えなかったんですか!?」
「……余計な思考を彼女に与える訳には行かないと思ってね。
エアグルーヴ自身、ジェニュインは警戒の対象にいるのは確実だ。
だからといって他のウマ娘に対しても警戒を怠る娘でもない。
そんな中で、わざわざ……あのウマ娘調子悪そう。って伝えて油断させる訳にもいかないからね」
油断大敵。そしてレースに『絶対』はないのだ。
エアグルーヴが普段の力を発揮出来ればこのレース、敵はないだろう。
だが、油断すれば足元をすくわれる。それがウマ娘のレースだ。
だからこそ、油断させない為に。彼は伝えるつもりはなかったのである。
「まあ、それに……今のエアグルーヴの全力を見たいからね。
僕から余計な口出しして……エアグルーヴの実力を測り兼ねることだけはしたくなかったって所かな」
「な、なるほど。トレーナーさん、しっかり考えてるんですね!」
「そりゃ担当トレーナーだし。ウマ娘の足を引っ張るのはね……」
……まあ、彼女ならそれでも勝てそうだけど。なんて事は口には出さずに内に秘めておく。
「一応シンボリルドルフや、ブライアン。スペ達との併走である程度把握はできたつもりだけど……ターフでしか、出せない力。みたいな不思議なものがあると僕は思ってるからね。こういう場所で見ておきたかったんだ」
「あ、分かります!デビュー戦しかまだ出てないですけど……
なんだか、レース場で走ると……不思議と力が湧くんですよね!」
彼の言葉になんとなく心当たりがあるのか
スペシャルウィークもサイレンススズカも、
そういえば。なんて自分のレースを思い返していた。
『G1ウマ娘達を見ようと、徹夜組も含めまして
今、この札幌記念に4万5000人を超える観客がやってきています。
例年よりやはり多いですね』
『そうですね、特に札幌記念は今年に施行条件の変更があり
グレードが格上げされG2となりましたから。秋のG1前哨戦として注目も高まっているのでしょう』
実況と解説の声が、トレーナー達の耳に入り始める。
『エアグルーヴ、ジェニュイン。注目されている二人のG1ウマ娘。
どちらも調子は良さそうです。活躍を期待したいところです。
今年は例年に比べ、気温も涼しい札幌ですが
この札幌レース場は熱気に溢れていますね』
『ええ、人も溢れかえっています。
こんな札幌レース場はなかなか見れませんよ?』
「やっぱり人……凄く多かったんですね……」
「まあ片方は三冠ウマ娘なわけだからね……こうもなるさ」
実況と解説の言葉を聞き、あ、やっぱり。なんて苦笑いを浮かべてしまう。
『さて、ファンファーレが鳴り響……おっと?どうした事でしょう?』
『機材の不調でしょうか?ファンファーレが少し音割れしてしまいましたね』
『えー、耳に違和感を感じた方がいらっしゃいましたら
お近くのスタッフにまでお声をおかけください。対応に当たります』
ファンファーレが機材の不調で音が割れ不協和音になって流れてしまう。
当然、聴覚が人間より鋭いウマ娘であるスペシャルウィークとサイレンススズカは耳を塞いでいた。
「…音が……」
「耳が、痛いですぅ……」
「……ゲート前のメンバーにまでは影響が出てないのが幸いかなぁ、これは」
不協和音で調子が狂うウマ娘もザラにいる為、
演奏者は気を付けなければいけないのがファンファーレである。
今回は幸いにも、レースに参加するウマ娘達に悪影響はなさそうだった。
『気を取り直しまして、1番人気から紹介致しましょう
1番人気は、やはりこのウマ娘を置いて他に居ない!
トリプルティアラのウマ娘、女帝 エアグルーヴ!』
実況のエアグルーヴの紹介と共に観客席からは大歓声が湧き上がる。
『秋のG1前哨戦となったこのレース。
実力を遺憾無く発揮し、秋のG1レースに向けて仕上げて欲しいですね。
前走、マーメイドステークスでは1着を取りましたが
本レースは、なんとあの「シリウス」から、
新設されたチーム「ポールスター」に移籍しての初レースとなります。
新たなチーム「ポールスター」の追い風になるかも注目しましょう』
『そして2番人気はこのウマ娘、
前回のマイルチャンピオンシップの優勝ウマ娘、ジェニュイン!』
『シルバーコレクターとしてのイメージも強いでしょうが
彼女のここぞという時の粘り強さに注目したいですね。
このレースで女帝に打ち勝ち、この先の秋のG1レースを狙いに行きたいところです』
『3番人気はこのウマ娘、アロハドリーム』
『前走、函館記念では1着を取っていますね。
このレースでもその実力を遺憾無く発揮出来るでしょうか?
注目が集まります』
『4番人気は───────』
実況と解説が、レースに出走するウマ娘達の紹介を挟んでいく。
それと同時に場内の歓声と熱気が高まっていく。
「すごいです、これが……」
「重賞のレースの熱狂だよ。
スペ、今回は……エアグルーヴをしっかり見ておくといい」
「え?エアグルーヴ先輩を、ですか?」
「ああ、エアグルーヴは君と同じで先行と差しを得意としてる。
普段の併走以上に……学べることはたくさんあると思うからね」
「は、はい!分かりました!!」
「あとは……スズカ、君もだ」
「え?私も……ですか……?」
意外そうにサイレンススズカはトレーナーを見る。
彼女は逃げを得意としている。それは既にトレーナーも把握している。とスズカは思っている。だからこそあまり学ぶことは無いと思っていた。
「さすがに参考にしろとは言わないよ。
ただ、君のレースへの熱を、想いを……思い出させるなら
同世代の彼女が1番良い。そう思ったんだ」
「トレーナーさん……はい、分かりました」
トレーナーの言葉に、すっと気合を入れるように頷き
サイレンススズカは集中して、レースを見ることにした。
そんな彼女の様子を見て、トレーナーは頷くと
「……さて、と。どう出る、エアグルーヴ」
彼女に問い掛けるように、呟くのだった。
「──決まっている。女帝として、私は……私らしく走るだけだ」
そんな彼の言葉に答えるようにゲートの中で1人呟く。
『大歓声に見送られながら、4コーナーのポケットより
芝の2000m 札幌記念 各ウマ娘ゲートイン完了!』
『さあ、スタートが切られました!!』
女帝達の目の前のゲートが開き、
札幌記念が始まった──
ドラグーン型兄貴、ミズルギ兄貴
tukaieZ8兄貴、静刃兄貴、神無月真那兄貴
ねむネコ兄貴、UtaLyz兄貴
SF兄貴
恵戸せとら兄貴
評価ありがとナス!
あっそうだ。お気に入り1300人超
評価130人超ありがとうございます。
こんな便乗作品に評価とお気に入りしてくれるのウレシイウレシイ……