ウマ娘 ワールドダービー RTA 称号「沈黙も栄光も超えた先」取得 DLC使用チャート   作:星ノ瀬 竜牙

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凱旋門賞があるので初投稿です。

今日だぞ!ほら見ろ!


あっそうだ。先駆者兄貴がサイレンススズカで新しいRTAを走り始めたからみんな、見ようね!
ちなみに秋天のタイミングが被っちゃって
やべぇよ……やべぇよ……ってなったのはここだけの話ゾ


秋の盾を掴むのは

正直に言えば。エアグルーヴが万全な状態に整えれたのに対し、サイレンススズカは万全の状態にできた。とは言い難い状況であった。

 

「二人とも、ごめんね。本来ならもうちょっとしっかり調整できたはずなのに」

 

ただただ申し訳なさそうに、トレーナーであるユタカは頭を下げる。

エアグルーヴは全力の勝負を望んでいたし、サイレンススズカもまたそれに応えようという気持ちでトレーニングに励んでいたのである。

 

だからこそ、万全とは言い難い状態で秋の天皇賞でぶつかる事になった現状に彼は罪悪感を抱いていた。

 

「私のことは気にしないでください、トレーナーさん。

……それより、トレーナーさんの体調の方が心配です。大丈夫ですか……?」

 

「……全くもってその通りだ。貴様、今何徹目だ?」

 

「えっ?ああ……ウン、ダイジョウブダヨ?」

 

エアグルーヴとスズカ、二人の視線にいたたまれなくなったのかすーっと目を逸らす。

このトレーナー、数日の徹夜ならしれっとやってのける。

そのせいか目許に隈が少し浮かんでいた。目付きも普段より鋭い。というか悪い。

後の天才皐月賞ウマ娘がここにいれば

「私みてェな目になってるぞ、お前」と突っ込まれるぐらいには。

 

「私が言い出した事が理由とはいえ、少しぐらいは仮眠を取らんか戯け!

貴様が倒れてしまえば元も子もないんだぞ!」

 

「あだだだ、ごめん!?」

 

エアグルーヴに軽く頬を抓られ、謝罪をする。

彼女なりの心配の表れでもあった。

素直に言えないのが彼女らしいな。と横でスズカは思っていた。

 

「まったく……貴様はもう少し自分の体調を整えんか。

己の体調管理もままならない者がトレーナーとして勤まると思っているのか」

 

「うーん、これ以上ない正論。

でもそれブーメラン刺さってるよね、エアグルーヴ」

 

エアグルーヴもまた、過去に体調を崩し

桜花賞を取りこぼしかける所だったのである。つまり似たもの同士であった。

ところで、いつまで夫婦喧嘩を見せられるのかしら。スズカはそう思った。

 

「…………」

 

「あいてっ、ちょっ、尻尾で無言で叩くのやめて」

 

「んん"っ"!兎にも角にもだ。貴様はこのレースが終わったら少し休め。

トレーニングの調整ぐらいは私達でもできる。それに厳しいのであればそれこそ他のトレーナーの伝手があるだろう」

 

「ああ、まあ……確かにエビちゃんとか居るけども……」

 

現在リギルのトレーナーの補佐を務めている己の同期の顔が過ぎるユタカ。

そのトレーナーは今、ちょうどスペシャルウィークと同期である

エルコンドルパサーの事を見ている真っ最中であった。

 

「うん、まあそれは今後に回すとして」

 

「回すな」

 

「回すとして!今回の天皇賞・秋、僕が言えるのは……全力でぶつかってこい」

 

小細工はお互いに仕組ませない。

ただ全力で、エアグルーヴとサイレンススズカにはぶつかってほしい。

無論、他にも強豪が集うのがこの天皇賞・秋だ。

去年の天皇賞・秋の勝ちウマ娘だっている。そのウマ娘達も全力で走る。

だからこそ、真正面からぶつかり、勝って欲しいのだ。

 

「……!」

 

「……当然だ」

 

「うん、その顔を見れて安心したよ。

……エアグルーヴ、全員まとめて差し切る気で走れ。

スズカは、エアグルーヴも喰らいつけないと思わせるぐらい全力で逃げ切れ」

 

二人はこくり、と頷いた。

それを見て彼は満足そうに頷いた。

 

「そろそろ時間だ。行っておいで」

 

それ以上は語らなかった。

結局、レースは誰かが勝って誰かが負ける世界である。

エアグルーヴが勝ったとしても、スズカが負けるし、その逆も然りだ。

どちらも負ける可能性だって有り得る。だからこそ彼は勝ってこいと言うつもりはなかった。

 

エアグルーヴが先に出たあと、スズカは立ち止まり、トレーナーに振り向く。

 

「あの、トレーナーさん……」

 

また、あれが起きたら。何も見えなくなったらどうすればいいのか。

スズカは不安げにトレーナーに声をかける。

仕方なさそうに彼は笑って、スズカに語り掛ける。

 

「大丈夫だよ、スズカ。もし、そうなったとしても───────」

 

 

───────

 

日本における秋のG1レース。その始まりは今現在はスプリンターズステークスからである。

尚、過去には年末G1の1つとして開催されていたこともある。

そしてG1に格上げされた最初のスプリンターズSを勝ち取ったのはシリウスに所属していたバンブーメモリーというウマ娘。ユタカがサブでありながら担当を務めていた相手でもあり、当時のレコードを更新した事でも有名であった。

そしてその記録は打ち破られていない。今年のスプリンターズSの勝ちウマ娘になったタイキシャトルという栗毛のウマ娘もなせていない大偉業であり今後数年更新されることがないのは全くの余談である。

 

そして日本の秋のG1レース、スプリンターズSの次に行われるG1レースは

昨年エアグルーヴが勝ち取った秋華賞、

そしてスーパークリークやメジロマックイーンが勝ち取った菊花賞。

次に、この天皇賞・秋の順である

 

天皇賞・秋は伝統ある古くから続くG1だ。あのメジロという名家ができた当初から目標としていたレースである。と言われれば驚く者も多いだろう。

 

トロフィーの形からとられた「伝統ある秋の盾。勝ち取るのは誰か」というフレーズが使われるのも有名な話である。

 

「トレーナーさーん!こっちでーす!」

 

ブンブンといつものようにスペシャルウィークは手を振って

トレーナーを出迎える。レースを最も間近で見れる観客席の最前列にスペシャルウィークは居た。

 

「ごめんごめん、待たせたねスペ」

 

「いえ、大丈夫ですよ!今は私より、エアグルーヴ先輩やスズカさんの方が大事ですから!」

 

今回のレースの主役はエアグルーヴとサイレンススズカである。

何故スペシャルウィークが居るのかといえば答えは単純。

G1レースの空気を実感してもらう。そういうトレーナーの目論見での見学であった。

 

「トレーナーさん、スズカさんは大丈夫でしたか?」

 

「トレーナーとしては大丈夫!って言いたいんだけどね。万全ではないよ。

少なくとも、調子は少し悪そうだ」

 

「そうですか……」

 

どうしても不安が残るのは事実であった。

スランプ気味なのはポールスターの面々は理解しているし

トレーナー自身もなんとかこのレースで抜け出す方法を掴んで欲しい。

とそう思って予定通り出走を決めたのである。

 

「やれる事は限りなくやった。

あとはもう、スズカ自身を信じるしかない。

僕らがしてやれるのは信じること。あとは本人次第だよ」

 

「……ですね!全力で応援します!」

 

スペシャルウィークが横でけっぱるべー!と意気込む中

ユタカはターフの状態や、他のウマ娘の様子を観察する。

 

天気は晴れ、バ場は良。パワーよりスピードがものをいうレースになるか。

そして警戒すべき対象は、2番人気になったバブルガムフェロー。

そして札幌記念で降しこそしたが、やはり未だその実力は健在といえるジェニュイン。エアグルーヴと競った前走より調子を戻してきてるな。と予想を立てていく。

 

「スペ、このレース。注目されるのはなんだと思う?」

 

「へ?このレース……ですか?えっと……1番人気ですし、トリプルティアラも持ってますし……エアグルーヴ先輩じゃないですか?」

 

「うん、その通りだ。けど……もう1つあるんだ。

出走ウマ娘の走ったレースを見なければ難しいけどね」

 

「他のレースですか?」

 

「そう。この秋天、ティアラ路線を走ったのはエアグルーヴだけなんだ」

 

そう、エアグルーヴのみがティアラ路線を走ったウマ娘となっている。

他の出走ウマ娘は全員クラシック路線を走っていたウマ娘だ。

 

「スズカも含めて、エアグルーヴ以外のウマ娘は全員クラシック路線を走っている。

……未だに日本のウマ娘のレースは格差が酷い所があるんだよ。

障害物競走だったり、ダートだったりね。そしてその1つがクラシックとティアラだ。

例にあげたダートや障害物競走と比べるとマシだけど……偏見があるんだ」

 

「偏見ですか……?」

 

「うん、偏見だよ。ティアラのウマ娘はクラシックのウマ娘に勝ちきれない。ってね。

そんなことはないんだけど、同じG1の中でも桜花、オークス、秋華より

皐月、ダービー、菊花の方が高く見られやすいんだ。そしてティアラのウマ娘がクラシックもティアラも関係ないG1で勝つ前例が少ないのもひとつの理由かな」

 

メジロラモーヌという初めてティアラ三冠をとったウマ娘ですら

有マ記念でクラシックを走っていたウマ娘に敗北しているのである。

無論、距離の適性等もあるだろう。それでも三冠ウマ娘が勝てずに沈む。

レースに絶対はない。という現実を叩きつけられてしまうが故に、何処かそういうレッテルが貼られるようになってしまっていた。

 

「二代目ティアラ三冠ウマ娘。その名で期待されているけど信じてる人はどれだけ居るのかって感じかなぁ……」

 

本当、トレーナーをしているとこういうのに敏感になるから嫌だなぁ。と肩を竦めて苦笑を浮かべてしまう。そんな少し弱気な珍しい姿を見せるトレーナーに、スペシャルウィークは大声で喝を入れる。

 

「そんなの関係ないですよ!トレーナーさん!

私たちはただエアグルーヴ先輩やスズカさんを信じる!トレーナーさんが言ってたことですよ!」

 

「はは、うん……その通りだ。スペって強いなぁ……ちょっとビックリや」

 

ぽろ、っと素の方言が出るぐらいにはスペシャルウィークの言葉に感心させられてしまった。

確かにその通りである。自分が誰よりも信じてやらなきゃいけないよなぁ。と頬を叩き気合いを入れ直す。

 

それと同時にファンファーレが鳴り響く。

 

『伝統の秋の盾。勝ち取るのはいったい誰か!

時折そよぐ、涼しい秋風。秋晴れの良バ場となりました!

今年は16人のウマ娘による戦いとなります!』

 

『カラッとした良い天気です。

レース出走のウマ娘も最高のコンディションで挑めるはずですよ!』

 

『では、1番人気から紹介致しましょう。

1番人気は、ティアラ三冠ウマ娘、エアグルーヴ

並み居るクラシック路線ウマ娘を蹴散らすか?

プリティキャスト以来のティアラ路線ウマ娘の天皇賞・秋勝利なるか!』

 

『前走の札幌記念では圧勝を見せております。

この天皇賞・秋で唯一のティアラ路線ウマ娘です。

札幌記念に続き、女帝の恐ろしさを刮目する事になるのでしょうか?』

 

エアグルーヴが実況に合わせて手を挙げる。

それに続くように歓声がどっと沸きあがる。

 

『素晴らしい歓声ですね。やはりティアラ三冠ウマ娘。

この天皇賞・秋を征し、シニア秋三冠を成す姿を見たいというファンはやはり多いようです』

 

『では、続きまして2番人気はこのウマ娘。

前回の天皇賞・秋制覇のウマ娘、バブルガムフェロー

史上初の天皇賞・秋連覇を目指して、時代は私にありか!』

 

『前走、毎日王冠では1着を取っております。

史上初の秋の天皇賞、連覇となるのでしょうか?ファンの期待も大きいですね。

彼女の勝負根性の強さは誰にも負けません。期待しましょう』

 

バブルガムフェローにもまた、同様に歓声が沸きあがる。

前回の天皇賞・秋の制覇者だ。当然多くのファンは連覇を期待する。

いつかのメジロマックイーンが春を連覇したように、秋にもまた期待が掛かっていた。

 

『続いて3番人気はこのウマ娘、

G1レース2勝のウマ娘、ジェニュイン。

サクラチトセオーにハナ差で敗れた2年前の秋。

あれから三度目の挑戦。今度こそ秋の盾を勝ち取れるのか』

 

『前走の札幌記念より遥かに仕上がっています。

彼女の脚はこういう時にとても恐ろしいです。三冠ウマ娘、前回覇者も降してしまうか?期待が高まりますね』

 

『そして4番人気はこのウマ娘。

唯一、クラシック級より参戦、サイレンススズカ

その物静かな表情の裏には、抑えきれない闘争心が眠っているのか?』

 

『底のしれないスピードは驚異的の一言です。

彼女の逃げ足は並の逃げウマ娘と比べ物にはなりません。

エアグルーヴと所属を同じとするチーム、ポールスターのウマ娘。

ポールスター対決は一体誰が征すのでしょうか?』

 

「あれ、スズカさん……思ってたより調子良さそうじゃないですか?」

 

すっと、気合いが入った様子でゲート入りを待つスズカの姿を見てスペシャルウィークはきょとんと首を傾げる。

 

「んん……?僕からは喝を入れたつもりはないんだけどなぁ……?

エアグルーヴが何か言ってくれたのかな……?」

 

はて、と先程より調子の良さそうなスズカを見て疑問符を浮かべるが

トレーナーとして見れば調子が良くなっている事は良い事である為

まあ、今は良いか。とほっとしながらレースの行く末を見守る事にした。

 

『このレース、前走同様無理には抑えない走りをするつもりだと思われます、サイレンススズカ』

 

『そうですね。他にずっと逃げるウマ娘が居ませんからね。

サイレンススズカがそのまま逃げるという図になるとは思いますが……』

 

『そこでイナズマタカオーがどう出るかという形でしょうか』

 

『サイレンススズカよりも内側に居ますからね。期待しましょう』

 

『さあ、大外枠、エムアイブランが最後にゲート入り完了しました!

天皇賞・秋……今スタートが切られました!!』

 

 

───────秋の盾を掴む戦いが始まる。




蒼霊兄貴
まりも7007兄貴、フラッパ兄貴、うづうづ兄貴
路徳兄貴

評価ありがとナス!

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