ウマ娘 ワールドダービー RTA 称号「沈黙も栄光も超えた先」取得 DLC使用チャート 作:星ノ瀬 竜牙
もうちっとだけ続くんじゃよ
エアグルーヴさんのお話書いてたはずなのに
なんかトレーナーの過去回想になってたからそこで区切ることにしたんじゃ。
エアグルーヴさんの真のお話は明日を待ってくれ。
女帝、エアグルーヴにとってトレーナーとはなにか。
そう言われた時彼女は「杖だ」そう答えたことがある。
自分を支える者。それが私にとってトレーナーなのだと。
それを聞いた時、シリウスのトレーナーは
呆れたように、バカにするように笑っていたのを思い出す。
「アホか!そんなトレーナー居るわけねえだろ!」
などと腹を抱えて笑っていた。
あの時はムッとしたが今思えばその通りだった。
トレーナーはウマ娘を支える者でもあり、ウマ娘に支えられる者なのだと。
正しく、人バ一体。二人三脚。それこそがトレーナーとウマ娘のあるべき姿なのだと。今ならば理解出来る。
だが、あの頃のエアグルーヴはあまりにも幼かった。
精神的に、という意味でだ。
あの時、シリウスのトレーナーに腹を立てたし激昂した。
それを咎めて抑えたのが、あの男だった。
これが最初の出会いだった。今思えば最悪の一言だろう。
何せ、トレーナーと揉めている所を見かけて慌てて割って入ってきたのだ。
しかもその揉めてたトレーナーがあの男の父親なのだから当然といえば当然だ。
度胸はあるが無謀といえるその対応は思い返せばゾッとする。
下手をすればあの時手を上げていたかもしれない。
そうなれば今ここにある女帝としての何もかもがなかったのだろう。
……正直な話止めて入ってくれたのは助かったとしか言えないのだが。
シリウスのトレーナーに謝罪をしたあと
あの男にも「すまなかった」と後日謝罪をした。
彼は、「気にしないで良い」なんて笑っていた。
「父は誤解させやすいのだ」「だから一方的に君だけが悪いわけじゃないよ」なんて慰めるようにあの男は笑っていた。
それは同意だった。事実とはいえ歯に衣着せぬ言い方をする奴をトレーナーとして認めたくない。なんて子供のような事をあの男の前で口走ったのを覚えている
そんな私を見てあの男は「そうだね」なんて苦笑を浮かべていた。
そんな最悪の出会いから始まって
しばらくしたある日、シリウスに1人のウマ娘が入ってきた。
『芦毛の怪物』いつの日かそう呼ばれるようになったオグリキャップだった。
彼女は、己が尊敬してやまない生徒会長、皇帝シンボリルドルフが
地方で見つけてスカウトしたウマ娘だった。
それは生徒会副会長となっていた私の耳にも入っていたし、知っていたことだ。
だからこそ、シリウスに入る事になったと知った時は驚いたのだ。
それほどの天才がここで何をするのか。と
結果はご覧の通り。レースはめちゃくちゃ踏み荒らされた。
地方ウマ娘故に出れないレースこそあったがもうめちゃくちゃに踏み荒らされた。
もう1人の芦毛、タマモクロス。
そして三強と後に呼ばれるイナリワン、スーパークリークと共に。
しかもそのうちシリウス所属が
オグリキャップ、スーパークリークなのだ。
当然、当時はシリウス一強時代。なんて呼ばれるほどだった。
そしてその三強の1人だったスーパークリークは、彼の担当ウマ娘になっていた。
当時、あの男は 父に比べだらしない。成果を残せていない七光り。
などと心にもない言葉を投げつけられていたトレーナーだった。
無論、シリウスに所属していたウマ娘やサブトレーナーはそうは認識していなかった。
あの男が誰よりもウマ娘の事を考え、トレーニングメニューを作り
体調管理をしている事を知っていたからだ。
エアグルーヴも、またその1人だった。
だからこそだったのだろう。スーパークリークは
あの男をトレーナーにした。「彼が良いのだ」と。
シリウスのトレーナーにそう言っていた。
シリウスのトレーナーはそれを聞いてひとしきり笑ったあと
「なら好きに使ってやれ。あのバカ息子をな」などと言っていた。
それからの彼は、誰しもが知っている通りだった。
父と親子2代でトレーナーとして菊花賞を勝ち取り、
天皇賞を春と秋をどちらも制覇したのだ。
有馬記念でのスーパークリーク、
彼女の進路妨害など語らねばならない恥もありこそすれど
その功績は間違いなく 「天才を真の天才にした」と呼ばれてもおかしな話ではなかったのだ。
そんな記録を刻んでいる中、
エアグルーヴにとって最も深く刻まれた言葉は「勝つよ」だった。
何気なく、共に観戦することになったスーパークリークの天皇賞・春で
「勝てるのか?」と聞いてしまった時にさらりと出たその言葉だった。
その時初めて、エアグルーヴは羨ましい。と思ってしまった。
まさに人バ一体と言うべきか、スーパークリークに全幅の信頼を置いている。
そしておそらく彼女も同様だったのだろう。
そんな二人を見て、ああ、良いな。なんて羨望してしまったのだ。
この時、きっとエアグルーヴは。すでに。
「トレーナーにしたいのは誰なのか」
それは心の奥底では決まってしまっていたのだろう。自覚もないままだったが。
エアグルーヴがサブトレーナーとして、あの男を指名する。
その原点はスーパークリークだったのだろう。
だが切っ掛けは別にあった。なんだったか。
それはオグリキャップの最後の有マ記念だった。
オグリは終わった。そう言われていた頃。最後に魅せた奇跡の一瞬。
あの時の事をエアグルーヴは鮮明に覚えている。
チームの一員として声を掛けるタイミングを
シンボリルドルフが気を利かせて作ってくれた時だった。
オグリキャップの控え室に向かった先で、シリウスのトレーナーが腕を組み壁にもたれかかっていたのを見た。
なにやってんだこいつ。みたいな顔でトレーナーの顔を見た。
シリウスのトレーナーは「いいから黙って聞いとけ」なんて笑った。
どういう事か。訝しんでいたらオグリキャップの、彼女の声が聞こえた。
「ユタカ……私は、大丈夫なのだろうか……
このまま走っても……」
芦毛の怪物らしくない。不安げな声だった。
驚いたのを覚えている。彼女もあんな声を出すのか。なんて。目を丸くした。
「怖いんだ。走るのが……私は終わった。なんて言われている。
……期待されていないかもしれない。それが……怖い。
私は……走れるんだろうか……」
そんなことは無い。そうエアグルーヴは言いに行こうとした直後だった。
「はあぁぁぁ……」と大きくため息をつく声が聞こえて、足が止まった。
「オグリ、しっかりせぇ!」
「イタッ!?ゆ、ユタカ……!?なにをするんだ!?」
「お前、自分を誰やと思っとんねん、オグリキャップやろ!」
「ユタカ……?」
初めてだった。あの男の大声を聞くのは。
初めてだった、怒ったヤツの声を聞くのは。
それはきっと私だけでなく、控え室にいる彼女もそうだったのだろう。
驚いた声が、聞こえてくる。
「あの芦毛の怪物やろ!そんな弱気になんなアホんだら。
お前は僕のクリークと、イナリワンと、タマモクロスと競い合った
あのオグリキャップやろ?ええか、お前はな、夢なんや」
「夢……?」
「そうや、シリウスにとっても、地方のウマ娘にとっても
お前は夢や。地方のウマ娘も中央に通用する。それを見せつけたんはお前や。
それは他の誰でもない、オグリ、お前が見せたんや。
それを忘れんな。お前はシリウスの星で。地方の夢や。
……お前は1人で走ってるんやない。多くの人と一緒に走ってるんや
違うか?お前は、お前と一緒に走ってくれたヤツらを信頼できないんか?」
「そんなわけないだろう!ジョーも……タマも……ほかの皆だって
私の誇りで、私の大切な人達だ……!」
「……ほな答えは決まってるようなもんやないか。
お前は1人やない。その人たちと一緒に有マを走ったらええねん。
そしたらお前は無敵の芦毛の怪物様や。だってそうやろ?
お前は他のウマ娘より多くの人と走っとるんや。
負けるわけないやろ?」
「ユタカ……ああ……ああ、そうだな……!」
「それやそれ。僕が見たんはその顔や。
その自信満々の顔。それをどうにかして悔しい顔にしてやりとうて
クリークと頑張っとったんやで?まあ1回できたから満足しとったけどな」
「む、そうだったのか!?」
「そりゃそうやろ。涼しい顔して勝ちよるウマ娘や。
相手する側からしたらたまったもんやないんやで?」
「そ、そうだったのか……」
確かに、なんて扉越しにエアグルーヴは思ってしまった。
併走トレーニングの時の涼しい顔に悔しい思いを何度しただろうか。
「……まあ勝っても負けても最後なのは事実や。
ならせめて、悔いのないよう、怪物らしく。
勝利飾って終わった方が面白いやろ。終わったはずのウマ娘が復活して終える。これほど焦らされて悔しい思いをする出来事はないで?」
「意地が悪いな……ユタカ……」
「関西人は当たりキツいからな。意地も悪くなるもんやで?知らんけど」
「一瞬信じてしまったぞ……」
「なんや、タマモクロスから学ばんかったんか?関西の奴は
それっぽい理屈を混ぜてホラ吹くんやで?あ、これはほんまの話な?」
「そういえば……ああ……タマもそうだったな……」
「……さて、時間やで。オグリ。行ってこい。
最高に面白い有マ。期待しとるで」
「……ああ、行ってくる。ユタカ」
彼女が出てくる。そう気付いた瞬間
エアグルーヴはすっと、扉から離れていた。
「トレーナー……それに、エアグルーヴ……」
「勝ってこい」
「ああ、勝ってくる」
シリウスのトレーナーは、たった一言だけを口にした。
そして彼女もまた、エアグルーヴとトレーナーに一言だけ口にした。
この先は、レースで語るのだ。と言うように。
「お、親父……それに、エアグルーヴ、聞いとったんか……?」
「……さぁてと、あとは特等席で見せてもらうかね」
なんて、シリウスのトレーナーはさっさと退散してしまった。
困惑している彼と、どう答えたものかと慌てた私を置いて。
「恥ずかしいもんを見せてもうたなぁ……意外やったやろ?
こっちが僕の素やで?」
「ああ……本当に意外だった。貴様、関西の口だったか」
「まあなぁ……でも、ほら。関西弁って当たりがキツいやろ?
せやからトレーナーになる前に親父にめちゃくちゃ矯正されてなぁ。
標準語で喋れんと面倒なことになるから覚えとけー!ってな?」
「それは、そうだな……」
「なんや否定してくれへんのかい。そこ否定してもらわな困るんやで?」
「す、すまない」
ケラケラと普段とは違う笑い方をする彼に、なんというか
不思議な居心地の良さを覚えていた。
「……貴様がシリウスのサブトレーナーで良かったと私は思っている」
「なんや急に恥ずかしい事言いよんな」
「事実を言ったまでだ」
「お、おう?なんか調子狂うわ」
普段見せないエアグルーヴの素直な気持ちに彼は驚いていた。
きっと、この場というか……彼の素を見た事で当てられたのだろうな。
なんて、エアグルーヴは思い返して少し苦笑いをうかべる。
「おい、サブトレーナー」
「ん?どうした?」
「貴様に頼みたいことがある」
この時、エアグルーヴの思いは決まったのだろう。
彼にトレーナーになって欲しいのだと。
この時ふと、エアグルーヴは気付いたのだ。
ずっと近くで見てきたからこそだろう。
自分にとってトレーナーになって欲しいのはきっと──
東芝を倒したい兄貴、エッショ兄貴
紅薔薇の夜兄貴、馬刺兄貴、sigure4539兄貴
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