ウマ娘 ワールドダービー RTA 称号「沈黙も栄光も超えた先」取得 DLC使用チャート 作:星ノ瀬 竜牙
女帝は重くはない。はずなのになんか重くなってる気がする。
夏イベの配布ダスカ中々に強そうで
手に入れるためにイベントに集中するので多分執筆遅くなります。お兄さん許して
「随分と懐かしい事を思い出したな」
……彼が作ったチーム申請の書類に目を通しながら
ふと、エアグルーヴはぼそりと呟いた。
彼女は、彼はきっとシリウスのトレーナーとして大成するのだとばかり思っていた。
スズカの事も、スペシャルウィークの事も。
きっとシリウスで面倒を見るのだと。
……それが自分の願望だったのだ。と自覚はしている。
そうであれば、彼と歩めただろう。とエアグルーヴはそう思っている。
(現実はそれほど甘くはない。理解していたつもりだが。
いざこうして自分の身に降りかかると……こうなるとはな)
自分でも想像以上に堪えたのだ。
そして今……こうして、彼とスズカがトレーニングをしている所を見て。
羨ましい。ずるい。なんて柄にもない感情を抱いている自分が居ることが
エアグルーヴは嫌だった。
最初は自分が始めた事なのだ。
その結果として彼は、チームを作るという選択を決めたのだ。
もとより彼は、父を超えたい。そう言っていたのだから
こうなる事を予想できないわけではなかったのに。
だが、それでもスズカを見捨てることは出来なかった。
己の理想は、皇帝であるシンボリルドルフと同じ所にある。エアグルーヴはそう信じている。
アプローチの仕方こそ違えどたどり着く場所は同じだと。
だからこそ、理想に反する行いをしたくはなかった。
何より、エアグルーヴ自身が友人を見捨てることをしたくなかった。
そう、そうだからこそ。
こうして友人であるスズカに、後輩であるスペシャルウィークに
嫉妬をしている自分が嫌いだった。
「エアグルーヴ、少し休憩にしようか」
あからさまに私、不機嫌です。とアピールしまくる女帝の尻尾を見て
皇帝シンボリルドルフは気を利かせるように声を掛ける。
「……?いえ、私は平気です。会長こそ、気を張り詰めていらっしゃいますし
休憩なされた方がよろしいかと」
その尻尾の動きは無自覚か、さて、どうしよう。皇帝は思考をそちらに向けた。
彼女がシリウスのサブトレーナーの1人だった彼を信頼しているのは
生徒会ではほぼ周知の事実である。気付いてないのが本人だけというのが厄介だ。そう思われているほど。いや、訂正しておくべきか。
彼女もそれなりに自覚はある様子を見せている。
そうでなければサイレンススズカ、彼女の事を彼に頼ったりはしないな。
と皇帝は思い返した。
「……アンタ、無自覚か。エアグルーヴ」
ああでもない、こうでもない。と
彼女の名誉の為にも返すべき言葉に皇帝が悩んでいる隙に
ズバッと、「シャドーロールの怪物」と呼ばれる三冠ウマ娘、ナリタブライアンが言い切った。
「あっ……」と小さく皇帝が声を漏らしたが、もう遅かった。
「何の事を言っている、ブライアン」
「尻尾と耳だ。あからさまに不機嫌ですってアプローチされて鬱陶しい」
「は?何を言って……ッ!?」
サイレンススズカ達のトレーニングを見て尻尾が不機嫌そうに揺れ動いていた事に、エアグルーヴはナリタブライアンの指摘で自覚した。
「どうせ、あのトレーナーの姿を見て不機嫌になってたんだろう。
……いい加減言えばいいだろうに」
「な、なにを言っている!?確かにあの男の姿が視界に入ったが
それで不機嫌になる理由は私にはないだろう!?」
「ほんとに無自覚か……」
チッ、めんどくさい。とナリタブライアンは舌を打った。
「ブライアン?」皇帝は止めようとしたが既に遅いのである。
既にナリタブライアンに差し切られたあとだ。
「だ、だいたいどうしてそう思うんだ!確かにあの男は
中央のトレーナーとして手本になるような良いトレーナーではあるが……!」
この女帝、無自覚に褒めていることに気付いていない。
あ、やばい。これエアグルーヴ掛かってる。皇帝は冷や汗を1つ流した。
怪物はその掛かった隙を逃すウマ娘では無い事を皇帝は知っている。
「気付いていないのか……アンタ、後輩の事を話す時以外はアイツの事しか話してないぞ。チームのトレーナーや他のサブトレーナーを差し置いてだ」
「ブライアン??」皇帝、またしても一手遅れる。
スーパーカー辺りがこの場を目撃していれば
「チョベリバね……みんな掛かってるじゃない」なんて言ってくれただろうが、
そんな事を指摘してくれる神は居なかった。悔しいが。
「なッ……はっ?……──ッ!?!?」
あかん。これはあかんで。内なるタマモクロスが皇帝の中で囁いた。
金魚のように口をパクパクさせて慌て始めるエアグルーヴを見て
どうしよう。有り余る知識をフル動員させて皇帝は必死に頭を回転させた。
「ブライアン、エアグルーヴ、お茶にしよう。少し休憩した方がいい」
皇帝、ここで会心の一手。
我ながらこれは決まった。間違いなく。皇帝は確信した。
「チッ……」
「ん"んっ"!そ、そうですね……では紅茶でも淹れてきます」
「ああ、そうした方が良い。疲れているとよからぬ事まで考え始めてしまうからね」
ほっと皇帝は一息ついた。
お茶でも飲めば少しは二人とも落ち着くだろう。そう信じた。
「……皇帝様の一手はミスだったみたいだぞ」
「え」
ブライアンの呆れた声にどういう事だと
女帝を見た皇帝はまたしても「あっ」と声を漏らしてしまった。
「す、すみません。会長。す、直ぐにお淹れ致しますので……!!」
普段のエアグルーヴならテキパキとこなす筈の紅茶淹れ。
その手順がめちゃくちゃであった。
そう、今の彼女に一息つかせて思考する時間を与えてはいけなかったのである。
余計に掛かってしまう羽目になったのだ。
皇帝、会心の一手かと思っていたら悪手であったの巻である。
もうルナわかんない。皇帝は思考を幼稚化させて匙を投げかけたが
鋼の意思でなんとか理性を取り戻す。
彼女もまた 恋を知らぬウマ娘 である。何処かの時空では恋を知ったかもしれないが、この時空では皇帝であれど恋を知らぬ初心な小娘である。
今の女帝に思考する隙を与えてはいけないなど、判断できるはずもなかった。
「エアグルーヴ、エアグルーヴ。落ち着こう。
うん、紅茶はまた後で良い。少し深呼吸するんだ」
皇帝も掛かりかけているが、なんとか理性を総動員して
エアグルーヴを落ち着かせようとする。
「すぅぅ……はぁぁ……」
「落ち着いたかい?」
「は、はい。みっともない所をお見せして申し訳ございません」
良かった。皇帝は心底そう思った。彼女ほど優秀なウマ娘でも
こういう事は起きるのか。と珍しいモノを見た。そうも思った。
「……そんな事になるなら、さっさと言えば良いだろうに」
「ブライアン」
「チッ……事実を言っただけだ。そんな状態が続かれるようじゃ
私の仕事が増えるだろ」
「……む」
ブライアンの言葉には一理あった。
このトレセン学園では生徒会は会長1人副会長2人という手法を取っている。
副会長が2人居るとはいえ、片方が本調子でなければもう片方の副会長に負担がかかるのも事実だった。
特に、ナリタブライアンは勝負に、レースに貪欲なウマ娘だ。
生徒会の仕事が増えて走れる時間が減る事は相当なストレスになる。
それを理解できないシンボリルドルフではなかった。
「……分かった。百歩譲って私があの男を……し、慕っているとしてだ」
いや百歩じゃないだろ。なんてブライアンは思った。
「それでヤツに迷惑をかける訳には、いかないだろう」
そこは義理堅いのか、めんどくさい。ブライアンは余計にそう思った。
だからこそ怪物は強硬手段に出ることにした
「……なら、私がアイツの所に行っても文句はないんだな」
「はぁ!?」
「ぶ、ブライアン!?」
怪物のその言葉に驚愕するのは皇帝と女帝だった。
急に何言ってんだこいつ。みたいな顔になっていた。
「なんだ、不思議なことでもないだろ
……そもそも私もシリウスだ。それに……アンタだって覚えてるだろうに。
あの時のレースのこと」
「そ、れは……」
皇帝は1人、あの時のレースっていつだ?となった。
彼女はシリウス所属ではない。だからこそ、調子はどうか。などといつもブライアンやエアグルーヴに聞いているのだ。
その時にエアグルーヴがよくあのトレーナーの話題を口に出していたが
本人の名誉の為黙っていたのだ。結局今こうしてブライアンに暴露されてしまったわけだが。
「……確かに、しばらく本調子でなかったお前を阪神大賞典で復活させたのはあの男だ。だが、既にお前には担当トレーナーもいるだろう?」
ああ、あのレースか。と皇帝は思い至った。
マヤノトップガンとナリタブライアン。あの二人の一騎打ちともいえる
阪神大賞典。確かに名レースだった。まさかその裏で彼が関わっているとは……と皇帝はビックリした。
そういえばテイオーのライバルであるメジロマックイーンの春天連覇も彼のおかげだという話を聞いた覚えがある。え、彼。名レースに関わりすぎじゃない?なんて皇帝はそう思った。
「それは私の勝手だろう。このまま契約を続けるか、移籍するか
……私の意思で変わるだろ」
「それは……そう、だが……」
「……アンタがそうやってウジウジしてるなら……
さっさと私はアイツの所に行くつもりだが。良いのか?私がアイツを獲るぞ?」
「それはっ…!」
ナリタブライアンが彼の隣にいる。それ自体は良い事かもしれない。
天才が怪物を更に1つ上の領域にするのだ。客観的に見れば素晴らしい事だ。
だが、エアグルーヴはその情景を想像してモヤッとした。嫌だと思ってしまったのだ。
「……エアグルーヴ。少しは、わがままを伝えてみても私は良いと思う」
「会長……?」
「皇帝や女帝、怪物。三冠バなんて……私達は呼ばれているが。
それでも学生であることには変わりない。
大人びていると思われていても、まだまだ未熟な子供なんだ」
助け舟を出すように、皇帝はそう告げる。
そう、彼女たちは素晴らしい成績を残しているウマ娘だ。
だが、それでも学生で子供である事実は変わりない。
特にエアグルーヴは普段から自分を律し、厳しくしているウマ娘である。
あの母親からこんな厳しい子供が産まれるのか。なんて初めて彼女の母親と会った時は皇帝は驚愕したものだった。
これでもだいぶ丸くなってはいる。皇帝や友人の厚意に預かるようになってきてはいるのだ。
彼は、最大限彼女のやりたい事を優先してくれてはいるだろう。
だからこそ、その思いを裏切りたくないと我儘を告げたりはしていないのだと。皇帝はそう考えている。
「だからこそ、時には自分の感じたことに。素直に向き合ってみるのも
良い事だと……私は思う。一期一会。後悔するのだけは避けておくべきだ」
その出会いは一生に一度だけになる。だからこそ、それを大切にすべきだと。シンボリルドルフはそう思う。
「会長は、そうお考えなのですか?」
「……そうだね。私はそう思っている。君は、どうだい?エアグルーヴ」
「私は……」
……私はどうなのか。エアグルーヴは考えた。
彼と共に駆けた日々は充実していた。そう思えている。
形式上はサブトレーナーではあったが、
本来の担当であるシリウスのトレーナーは
彼を殆ど女帝の担当トレーナーの立場にさせて共に歩ませていた。
「ティアラ路線を一緒に走って学んでこいって言われた」なんて苦笑していたのを覚えている。
そうして、彼女は「やはり、私はあのトレーナーと共に駆けたいのだ」そう思い至った。
その思いに至った瞬間、カチリと歯車がハマったような。
ストンと腑に落ちたような。モヤッとしていた何かが晴れた気がした。
「……会長、少し席を外してもよろしいでしょうか」
「構わないよ。残った書類も僅かだ。ブライアンとすぐに終わらせておくさ」
「……おい、私もか」
「君が振った話題が原因だ。一蓮托生。最後まで付き合ってもらうよ」
面倒くさそうに顔を顰めたブライアンにスっと目を細める皇帝。
逃がさん、お前だけは。と顔が語っていた。
「チッ……仕方ないか。おい、早く話をつけてこい。女帝様
今の皇帝様と一緒に居るのはダルい」
「おや、心外だな。ブライアン。
エアグルーヴ、気にせずに行ってくると良い」
「そうですね。ゆっくりと。彼と話をしてきます」
「おい」
「では、失礼します」
ブライアンの言葉を知らぬ存ぜぬで無視をしたエアグルーヴであった。
彼女もまた皇帝同様に振られた話題にムッとしていたのである。
こいつらアイコンタクトで打ち合わせやがった。そうブライアンが気付いた時には既に遅かった。世紀末覇王もビックリの二人の三冠バによる包囲網がシャドーロールの怪物に対して出来上がっていた。
「……これで彼女も少しは落ち着いてくれるといいんだが」
エアグルーヴが去った生徒会室で、ふぅ……と一息つくシンボリルドルフ。
「フン……どうだか。寧ろ……アンタはさっきまでの女帝様の方が良かったんじゃないか?」
「さて、なんの事かな」
「とぼけるつもりなら、もうちょっと覇気を抑えろ。
こっちもアンタのせいで燻らされた」
そう、先程までの
無意識とはいえ、貪欲に求めている女帝エアグルーヴの姿。
あの姿の方が、皇帝。否、勝負に貪欲なまでに勝ちを求めるシンボリルドルフにとっては好ましかったのは事実だ。彼女らしくない。そう思いつつも。
そっちの方が良い。なんて思ってしまっていた。
巧妙に隠してはいたが、同様に勝負に貪欲なブライアンにはバレていた。
だからこそ、シンボリルドルフの覇気に当てられてブライアンは
本来より不機嫌だった。走りたくても走れないし、目の前の女帝様は
鬱陶しいぐらい不機嫌アピールしてるし。皇帝様はめちゃくちゃウズウズしててこっちまでウズウズしてくるし。めちゃくちゃ腹立つ。
それがブライアンの心境であった。
「それはすまない。……これが終わったら併走トレーニングでもどうだい?」
「……チッ、上手いこと言いくるめようと……さっさと終わらせるぞ。
アンタと久しぶりに走りたくなった」
「フッ……私もだよ。竜闘虎争。君とは勿論だが……
彼のもとで一皮剥けたエアグルーヴとも叶うのであれば競いたいものだ」
「……その時はアンタも女帝様も私が食いちぎる」
「
まだ叶わぬ、世代の違う三冠バ同士による競走。
それに夢を馳せて普段は見せないような獰猛な笑みを浮かべる皇帝シンボリルドルフとシャドーロールの怪物ナリタブライアン。
彼女達の夢が叶うのはもう少し先の話である。
───
エアグルーヴは、あっさりと
チーム移籍の為の手続きの申請書類が出来上がった事にビックリしていた。
シリウスのトレーナーに打診した所。
彼は豪快に笑い、「遅いぞ女帝サマ!ほれ、判子は押してあるからさっさと押し付けてこい!あのバカ息子にはクリークやお前さんみたいなヤツが居た方がしっかりできらぁ!」と申請書類をエアグルーヴに放り投げたのである。
「あのトレーナーにもバレていたとは……一生の不覚だ……」
別に今となっては嫌いでは無いのだが、どうしても苦手意識が残る彼の父親にもバレていた事に頭を抱えてしまう女帝であった。
その苦手意識の理由が自分の母と似てグイグイくるタイプだからだということに気付くのはもう少し先の話であった。
しかし、どうしたものか。とエアグルーヴは悩む。
スペシャルウィークのデビューが終わり、忙しくなり始めたこのタイミングで行く事は負担にならないだろうか。そんな考えが頭を過ぎる。
購買部で何かを買おうと悩んでいた所を見掛けたが、
話し掛けられなかったのはそれが理由だった。
(しかし、ヤツは何を買おうとしていたんだ……?)
何を買おうとしていたのか、それを知らなかったのは彼女にとって幸いだろう。
知っていれば、何故だ。意図がわからん。と何処ぞの皇帝様の時と同様に頭を痛める事になっていただろう。
どう言えば良いだろうか。と書類を持ち、悩みながら
その足は、既にトレーナー室の前に来てしまっていた。
「…すぅ……はぁ……よし……」
とはいえ、いつまでもここでウロウロして燻るわけにもいかない。
深呼吸をし……エアグルーヴはトレーナー室をノックする。
「開いてますよ」
彼の声が聞こえたことで身体に緊張が走る。
待て。何故私は緊張している?ただ彼のチームに移籍したいといえば良いだけだろう。そんな風に少し慌てつつも
「私だ、エアグルーヴだ。
こんな時間にすまないな、今、良いか?」
そう扉越しに告げた。
トレーナー室の扉を開けた彼が、
意外そうに、驚いた様子でこちらを見つめていたのを
きっと、エアグルーヴは忘れないだろう。
はい。兄貴、バラッド兄貴
黒揚羽兄貴、門倉銀山兄貴、黒井Android兄貴、グルッペン閣下兄貴
ありません兄貴、何かの缶詰まーくつー兄貴、三弦兄貴
ユキの宮兄貴
エセダンディズム兄貴
Laupe兄貴、あおいまる兄貴、Dr.奇想天外兄貴
評価ありがとナス!