──少し昔話をしよう
俺、彩羽雄飛は8年前
大きな事故に巻き込まれたことがある
あれはそう、野鳥を見に山奥に一人で入ったんだ
──その後、自分は行方不明となってしまった
ただ、そう大事にはならず翌日には発見されたんだ
崩れた岩、砂利に塗れて気絶している状態でね
その時自分は、ある凄いものを見たんだ
まぁ、そんなのものは
ただの気絶中に見た夢だと判断されたんだ
自分の記憶も漠然としていたからさ
結局土砂崩れに巻き込まれたということで
その事件は終わった
ただ、その記憶が随分と印象に残っているのか
たまにその夢を見るんだ
──で、ここからが問題なんだ
仮面ライダーって存在を知ったからか
昔から見たその夢に変化が現れた
──登場人物の姿が随分鮮明になったんだ
怪人の方は自分も戦ったことがないような
青い鳥の意匠をした怪人に
そしてヒーローの方は
※
喫茶「テアトロ」
「へぇー、そんな夢がなー」
今日も今日とて暇な喫茶店内
彩羽雄飛と新田翔は店内を雑談を交わしていた
「うん、変な話だろ?見たこともない怪人なんてさ」
「自分の想像力・・・
にしてはできすぎてるんだよなぁ」
確かに自分は特撮のファンではあるが
だからと言って想像だけで
怪人のデザインまで作れるわけではない
かといって、その怪人が今までで創作で見た
別の怪人と混同しているのではないかといえば
これまた、そんな気もしない
不思議な感覚である
「──じゃあ、本当に見たんじゃないの?」
「・・・え?」
首をかしげる自分に翔はそう言い放つ
・・・いやそれは
「・・・うーん?」
・・・ないとは言い切れないのだろうか
しかし、8年である
そうなれば、
テラーは8年前から存在していることになる
8年間・・・何してたんだ?
「どうしたんだい?」
そういって会話に加わってきたのは
店の奥から出てきた浩司さんと杏奈さん
・・・浩司さんなら何か知っているのだろうか
「浩司さん」
「ん?」
「
・・・・・。
「・・・・・。」
?
こういった時は割とすっぱり答えてくれる人だったはずだが
随分と考え込んでいるようだ
「あの・・・?」
「・・・あ、ああ、それは」
歯切れ悪そうに答えてくれようとしたその時
「邪魔するぞ、事件だ」
カランと店の扉が開き
太田さんが入ってくる
どうやら、何か事件らしい
まだ会話の途中だったが、切り上げて話を聞こう
※
「昏倒事件?」
話を聞くと
最近、複数人の人間が
昏倒した状態で発見される事件が多発しているらしい
そして──
「昨日発見された現場でこんなものが発見されたんだ」
「・・・糸?」
そういって渡されたのは煌びやかな一本の糸
だが普通の物ではない、
目に見えるほどの輝きを放ち
見るだけで目を奪われる程に美しさを感じる
明らかに異常だ
「ただの糸だと物証としてはスルーされたのだが
どうも普通だとは思えなくてな
持ってきたんだが・・・どうだ?」
「うん、調べてみよう」
そう言うと浩司さんは糸を持って引っ込んでしまった
「それと、もう一つ情報何だが」
「被害者たちの共通点なんだ」
共通点、それがあるなら心強い
次の狙いがすぐにわかればそれだけ先手が打てる
「共通点って?」
「ああ、どうやら被害者は
"星野聖"のファンのようなんだ」
・・・?
誰?
「星野聖!!?」
「うわびっくりした」
食いついたのは杏奈さん
えっと・・・一体どちらさんなのだろうか
「あんたら知らないの!?」
「星野聖、今話題沸騰のアイドルよ」
「あの歌聞いてないなんて勿体ないわよ!!」
どうやら身近な人にファンがいたらしい
「そして、これがこの前の
そのアイドルのライブ時の写真だ」
ぴらりと一枚の写真を取り出す太田さん
その写真には
「!?」
目を奪われるよう衣装を着たアイドルの姿
この衣装は・・・
「同じ糸だ・・・」
この衣装をみた時の異質さ
間違いない
※
「とりあえず調べて分かったよ」
「どうやら、人の生命力を糸にしたものみたいだ」
そういって浩司さんが戻ってくる
人の生命力なんて、なんと物騒な
というよりも、こんな現実離れした行為
テラー以外にはありえないだろう
なら・・・
「とりあえず、
そのアイドルのところに乗り込んで・・・」
「無理ね、ガードマンに捕まって
最悪こっちが浩司さんのお世話になるわよ」
・・・今回の事件も一筋縄ではいかないようだ
※
とはいえ、できることも限られている
まずは、
そのアイドルが所属している事務所の前に来た
・・・が
「君たち、何してるの?」
「あんまり怪しいことしていると警察呼ぶよ」
人気アイドルの事務所というのは
やはりガードも固い
張り込みなどしようものなら
一気にガードが走ってくる
とりあえず、逃げるように建物の角を曲がる
・・・参った
「どうするかなぁ」
「いっそ、無理やり乗り込むか?」
翔が危ない提案をするが却下
さすがにそれをやれば社会的に死亡する
・・・変装とかして入り込めば・・・いける?
いやいや、さすがに無理だろう
うーんうーんと頭をかしげながら歩いていると
『うぉ!』
「うわ!・・・すみません!」
前から歩行してくる人物に気づけなかった
正面から衝突してしまう
『ああ・・・こちらこそ済まない』
ころりと相手の被っていた目深な帽子が転げ落ちる
衝突した相手は尻もちをついてしまったが
怪我はしていないようだ
「いえいえ、こちらの不注意・・・」
帽子が落ちて、相手の顔が目に映る
「「テラー!!?」」
『え!?・・・あ!ああ!!?』
顔に手を当てて、鶴怪人=クレーンテラーが
そのことに気づく
「「へ、変身!!」」
『MASKED RIDER!!』
『POP UP SOUND IS SINGER SONG RIDER!!! 』
『な!か、仮面ライダー!!?』
こちらも相手も驚愕を抱えたまま
戦闘を開始した
アクトがクレーンテラーに殴り掛かる
テラーは身を包んでいた変装用の外装をはぎ取り
こちらに投げつけた
「わっ」
布地が顔面に掛かり、足が止まる
その隙をついて、クレーンテラーが翼を広げ
『ハァ!』
羽を一枚一枚弾丸のように射出してきた
サウンドが前に出てそれを叩き落としていく
『何!?』
「ふん!!・・・なんてことねぇな!!
今度はこっちの番だ!!」
槍を構えてそう言い放つサウンド
それを見たクレーンテラーは
『・・・撤退!』
翼をはためかせ、一目散に逃げだした
「待て!」
サウンドが追いかける
自分もまた布を地面に叩きつけ
その2人を追いかけた
※
「・・・アトリエ?」
逃げたクレーンテラーを追いかけて
たどり着いたのは一件のアトリエ
間違いなくクレーンテラーはここに逃げ込んだ
待ち伏せをしているのだろうか
アクトとサウンドは警戒をしながら扉を開く
「・・・罠は・・・ない?」
「そのようだ、警戒を解かずに行くぞ」
ゆっくりと奥に進んでいく
やがて、ひと際大きな部屋にたどり着く
そこには・・・
「!?・・・あの衣装だ!」
写真で見た衣装が飾られている
そして、それと同じ雰囲気を感じる衣装が十数着
飾られていた
「・・・・!」
背後に気配!
拳を握りこみ二人して振り返る
そこには──
『頼む!!見逃してくれぇ!!』
「「・・・は?」」
※
『私は、このアトリエの服職人の存在を奪い現れた』
『そして、この力で人の生命力から糸を作り
服を仕立て、他者に渡していたのだ』
テラーが自身の身の上を話すのを
警戒は解かずに二人の仮面ライダーは聞く
『それが、このアトリエに
依頼をしていた一人のアイドルだ』
『私の服は、他者の目を引く
見る見るうちにアイドルは人気になっていった』
『私は、そんなアイドルに最高のタイミングで
この真相を話し、決して自分の実力ではないという
絶望した顔を見るのを楽しみにしていた』
「こいつ・・・・」
「待って」
悪趣味な趣向を語るテラーに対して
待つことはないかと拳を握るサウンド
しかし自分はそれを止める
土下座までした命乞いの
その理由がどうしても気になった
『だが──
ある日、こんなものが届いた』
そういって見せたのは一通の手紙であった
送り主は星野聖
アイドル本人からの手紙であった
『書いてあったのは
──ただひたすらに感謝の気持であった
この服のおかげで力が湧く
最高のパフォーマンスを送れる
あなたに頼んでよかったと』
『それを読んだ時
私の中に何かが浮かんだ
──喜びだ』
「・・・続けろ」
『おかしな話だ、人に害成すように努めるべき
私が、人によって喜ばされるなど』
『だが、その気持ちを
私はどうしようもなく好いてしまった
喜ばれる服を作ることに喜びを持ってしまった!』
『私は、この気持ちをくれた彼女に
どうしてもしたいことがある』
そういって、怪人が見せたのは一着の服
アイドル衣装だ
ただこれは、写真で見たものとは違う
"なんの異常性も感じない、
普通の美しい衣装であった"
『私は、彼女に恩を返したい!』
『なんの力も持たない、私の全力の作品で
彼女に最高のショーをしてもらう』
『服の力など無しに、
彼女を本物のスターにする!』
もう一度、テラーが頭を下げる
『頼む!』
『私に恩返しをさせてくれぇ!!』
・・・・。
言葉をなくしてしまう
まさか、テラーに
こんな個体が存在するとは思ってもいなかった
「・・・いい話じゃねぇか・・・」
サウンドが顔をごしごしと拭っている
涙はたぶん拭えていない
だが自分は──
「信じることはできない」
『!?』
確かに、この話は感動的だ
怪人が優しさを持ち、
一人の人に何かをしたいと願う
とても素晴らしいことだろう
だがそれを、演技ではないと断じれない限り
それは受け入れられなかった
『なら・・・』
「!?」
クレーンテラーが翼を広げる
交渉が失敗したから襲い掛かってくる!?
そう思い身構えたが
テラーはこちらではなく、
打ち抜かれていく、例のアイドル衣装
それはほどけるように複数の糸に還り
やがてどこかに飛んでいく
『奪った生命力を解放した
・・・時期に被害者も目を覚ますだろう』
「!?」
犠牲者を0の状態に戻した
それは、
ある意味怪人の役割を放棄したと言える
「・・・分かった。それが仕上がるまで待つよ」
「・・・ただし、終わったら抵抗せずに倒されてもらう」
『ああ、これが終われば未練はない
必ず、持ち主に返そう』
※
太田さんから、被害者の意識が
全て戻ったことを確認し
杏奈さんと浩司さんに事情を説明する
もちろん反対もあったが、
自分たち2人で一時も目を離さずに監視する
という条件を付けてようやく
許可を取った
そして、クレーンテラーが
衣装作成の作業をするのを見守る
衣装が完成したのは
二日後の朝であった
『完成だ・・・』
「おお・・・」
出来上がった衣装は見事なものであった
送付用に詰めて荷物を持つテラー
『早く、届けなければ!』
「あ、おい!」
感極まったのか
変装もせず、翼を広げ飛び立ってしまった
「いやーよかったよかった」
「ああ・・無事に完成して本当に・・・」
・・・。
「「やべぇ、追いかけなきゃ!」」
2人のライダーは、
急いでそれを追いかけた
※
クレーンテラーは一直線に事務所に飛んでいく
これで自分は終わりだという
一抹の寂しさがあった
だがそれを超えた歓喜があった
満足があったのだ
しかし──
謎の衝撃が突然自分を襲う
『うわぁぁ!?』
衣装は傷つけまいと庇いながら墜落する
痛みをこらえながら顔を上げると
そこには
『あのさぁ・・・君、何やってんの?』
細身の剣を携えた、猫の怪人が佇んでいた
※
テラーを追いかけるアクトとサウンド
その道中に
「!?・・エキストラ!?」
戦闘員たちが現れた
まさか・・・
「やっぱあいつ、はめて逃げる気だったのか!?」
「雄飛先いけ!!」
「頼む!」
戦闘員をサウンドに任せ
必死に追いかけるアクト
そして、道中の工場跡に立ち寄ったその時
『ぐあぁあああ!!』
「!?」
先行していたクレーンテラーが
吹き飛んできた
しかし、その様子が異常だ
吹き飛んできたテラーは
『!?・・・仮面ライダー!』
クレーンテラーがこちらを認識すると詰め寄ってくる
『これを・・・!』
そういって衣装をこちらに手渡す
「一体何が・・・」
『・・・頼んだ!!』
そういってこちらを掴んで押し飛ばす
次の瞬間
協力な衝撃がクレーンテラー目掛けて飛んできた
避けることもできずそれはテラーに直撃する
『──。』
まるで服に当たらなくって良かったと言わんばかりに
ホッとした様子を顔にして
叫ぶ間もなく、クレーンテラーは爆散し消滅した
「・・・。」
突然の出来事に脳の処理が追いつかない
『あれ?仮面ライダー?』
「!?・・・ペロー!!」
現れたのは、猫の怪人:ペロー
先程の攻撃は、奴の物であった
「テラーを、なんで・・・?」
『ああ・・・あの失敗作ね』
爆散したクレーンテラーを失敗作と言い放つペロー
心底見下した様子で
『人に絆されて、あげく襲った人間も元に戻して
・・・一体何がしたかったんだろうね
さすがに不快でしかないし、いても意味ないし
とっととこっちで消しといたよ』
『ほんと、人の感謝で喜びとか
何言ってるんだろうね
テラーなんて、人を苦しめてなんぼってつもりで
作ってるのにねー』
『まぁいいや、次を作るよ』
あっけらかんとペローはそんな風に話す
奴は人間に害もなさないのは
必要もないと、切り捨てたのだ
「・・・お前!」
『何その顔?・・・怒ってるの?
結局そっちも倒すんだからさぁ
手間が省けてよかったでしょー』
・・・別に同情するつもりはなかった
それでも、自分の味方側であるものを
容赦なく切り捨てるその感じに
どこかひどくむかついた
「ペロー!!」
『侍丸』
『Start』
『
『侍丸!!!』
ブレイガンを持って、ペローに肉薄をする
細身の剣で受け止められるが
力任せに強引に振り切った
『うわ!・・・やる気だねぇ!』
ペローも面白いと言わんばかりに応戦する
高速の連続突きがアクトに襲い掛かった
避ける受け流す
突きを何度も捌いていく
そして──
突き出されたその直剣を思いっきり掴みこんだ
『!?』
引き抜こうとするペロー
しかし剣はびくともしない
その隙に
連続で斬撃をその体に叩き込んだ
『ガァぁ!!?』
剣から手を放し、ペローが転がっていく
掴んでいた直剣を投げ捨て
腰を落としてしっかりと剣を構えた
いい加減、こいつの相手をするのも疲れた
ここで終わらせる・・・!
『・・・うぁ・・!?』
『サムライ!』
『
ブレイガンにチケットを装填し
必殺技を放つ
巨大な飛ぶ斬撃がペロー目掛けて襲い掛かった
しかし──
『
斬撃はペローに到達する直前に
彼方に弾き飛ばされた
「・・・誰だ!?」
ペロー本人の仕業ではない
誰かが間に入って弾き飛ばしたのだ
斬撃によって立ち上った砂煙が晴れる
そこには、初老の男性が立っていた
『随分な有様だな、ペロー』
『ブルー・・・何の用だよ・・』
息絶え絶えといった様子で
ペローが立ち上がると
不貞腐れたように問いかける
ブルーと呼ばれた男は
物腰柔らかにほほ笑むと
『何、君のピンチに駆け付けたのと』
『そろそろ、これも調整が完了してね』
『試してみようかと思ったんだ』
そういうとブルーと呼ばれた青年は手をかざす
その場所に何者かが転送された
「・・・!?」
現れたのは一人の戦士であった
色が抜け落ちたかのような
白と黒のカラーリングの装甲
バッタのような意匠をした顔
腰には、大き目なバックルをしたベルトをしたそれは
「・・・嘘だろ?」
そこに立っていた
次回 仮面ライダーアクト
現れた謎の仮面ライダー
「誰なんだあんた一体!!」
その答えは8年前に
「全ては8年前、
一人の科学者に起こった悲劇から始まったんだ」
「テラーは、僕たちが生み出してしまったものなんだ」
第11章[8年前のプロローグ]