暗い室内、満たされた謎の液体の中で男は目覚めた
身を覆う液体をかき分けながら手を伸ばす
すると、すぐに男を取り囲んでいた水槽の
そのガラスに手が触れる
次の瞬間には、ガラスにヒビが入り、砕ける
男は流されるように外に放り出された
男が立つ、まるで先程まで水に浮かんでいたことなど
微塵も思わせない程、力強く男は立っていた
『おはよう。』
──声
顔を上げる、その正面には大層嬉しそうな顔をした
綺麗な身なりの女がいた
『おめでとう、
──私のかわいい息子。』
『さぁ、顔を見せて?
私の理想を叶えてくれる、
素敵な顔を、その力を私に見せて頂戴?』
女がほほ笑みながら自分に語り掛けてくる
男はその瞬間悟った
この人物こそが自分の全て
自分に理由をあらゆるものを
与えてくれる存在なのだと理解した
「あぁ・・・任せてくれ。
男が伸ばされた手を取り
恍惚としてその顔を母に見せていた
『・・・。』
そんな様子をブルーと呼ばれた男は
離れた場所から見つめニヤリと笑う
──さぁ、登場人物を追加しよう
※
喫茶「テアトロ」──
相も変わらず、客もいない店内
そんな中で、テーブルを囲っての会話が弾む
「クイーン・・・これでストーリーテラーも3体か」
会話の内容は、現れた3人目のストーリーテラーについてだ
これまで何度も相対してきたペロー
プロトアクトを差し向けてきたブルー
そして、今回のクイーン
どうやら敵は、それなりに人員が豊富なようだ
「テラーの強化・・・、
これまで以上に厳しくなってくるわね」
「戦闘もそうだけど、あの森林化みたいなのもやばいだろ
森なら迷うだけだけど、もっと危険な場所に変えられたら
怪我人が余計に増えちまう」
杏奈さんと翔がそんな話を交わしているのを横目に、
俺は一つの疑問について考えていた
そもそも、
ペロー一体の頃は、怪人を生み
人を襲わせる、そこまででもおかしくはなかった
だが、複数人で共謀していることや、
また、青山博士の話などを聞いているうちに
それだけが目的ではないことは軽く想像できる
気になる点は、翔が聞いたという
プロトアクトの撃破時にペローが吐いた捨て台詞
"神"
そう、神という単語だ
彼らのいう神というのが何なのか
そして、それを呼び出すのが目的なのか
そういった部分を思案して・・・
・・・何の結論も出せなかった
こういったのは、詳しい事情を知る
浩司さんや音石さんの方だろうが
浩司さんは、風間大吾さんの容体の確認
音石さんも、作るものがあると研究に戻り
不在の状態だ
そんな中で、自分が無い知恵をふり絞った所で
たかが知れているのだろう
とにかく、自分のやることは変わらない
テラーから、人の平和を守るのだ
そんな決意を新たにした瞬間
ケータイが着信を告げる
相手は、太田さんであった
「──はぁ!?今度は海に!?」
※
平和な街中の少々大き目な公園
天気がいいこともあるのだろう
複数人の子供、休憩中のカップル
多種多様な人間たちが思い思いに過ごしている
ドスリ
そんな音を立て、何かがその敷地に突き立てられる
それは、楔であった
次の瞬間、風景が一変する
ゴツゴツとした岩場
目の前には一面の水面
打ち寄せる水が、岩にぶつかり跳ね返る
詰まるところ、それは磯であり
先程までに存在していた公園
その周囲一帯が海と化していた
現実離れした光景に皆思考が追いつかない
しかし、次に現れたものはその思考を一気に現実に引き戻した
海面に影が浮かび上がったと思えば
何かが這い出てきた
黒い表皮に丸まった頭部
2本足とは別に尾ひれを垂らしたそれは──
おぞましさを備えたクジラの怪人であった
誰かがそれを目にし悲鳴を上げる
それは、呆けていた人々を伝播する
人々は現れた怪人から難を逃れようと
各々必死に足を走らせる
まだ、町の様相を保っている場所
公園の外へと逃げ惑う
そんな中で、逃げ遅れる者もいる
遊んでいた少年の一人
少年は、突然の現象、謎の怪人
それらを目にし頭の中は完全にパニックとなっていた
ごつごつとした足場も相まって
完全に足が竦んでしまった少年は
クジラの怪人:ホエールテラーから逃げられない
テラーはそんな少年を発見し、行動を開始する
頭部がを少年の方に向ける
次の瞬間、口を開ける
いや、もはや口どころか腹付近に至るまでが
避けるかのように大きく開いた
見るだけで忌避感を抱くような形相
突然空気が大きく流れ始める
風が吹いている?
──いや違う、
少年の体が浮き始める
少年が、そのことに気づいたときはもう遅い
必死に岩にしがみ付こうと手を伸ばす
しかし、届かない
嫌だ嫌だと声を上げながら体が引かれていく
もうだめだと諦めかけた
その時──
「ッセーフ!!」
手が掴まれる
少年が恐怖に閉じた目を開ける
そこには、
「ふ、踏ん張れ!!翔!!」
「ふっぐおおお!!」
岩を掴んで必死に踏ん張る青年と
その青年に支えられて自分の手を掴む青年
2人の青年によって少年は助けられていた
※
少年を抱き込むように引き寄せる
必死に踏ん張り、耐える──やがて、吸引が止んだ
「逃げて!」
少年を促し、直ちに下がらせる
『オォオオオ・・・?』
テラーが首を傾げながらこちらを見る
どうやら、今こちらに気づいたようだ
「いくぞ」「おぉ!」
2人はドライバーを装着する
「「変身!!」」
『MASKED RIDER!!』
『POP UP SOUND!!』
アクトとサウンドがテラーに掛かっていく
アクトの拳が、テラーの体に叩き込まれる
ブヨンとした感触、どうやら体表はかなり分厚いようだ
テラーがアクトに向け手をかざす
次の瞬間
「うわっぷ!?」
テラーの手から大量の水が放流される
アクトはそれを真正面からかぶり
余りの勢いに押し流されていった
「おらぁ!」
サウンドがギターランスを振りかざす
振り下ろされる刃
その鋭さならば、この体表も容易く通るだろう
しかし──
槍が空を切る
テラーは、その攻撃をひらりひらりと躱している
見た目よりも素早いらしい
そして、その身を振り回す
太く、重そうな尾ひれがサウンドの体を叩いた
よほど重量のある尾なのだろう
その衝撃は重く、強い
「・・・なろぉ!」
ならばと、アクトは別のチケットを取り出す
──打撃が駄目なら斬撃だ!
『侍丸!!!』
アクトブレイガンを構え突撃する
「セイ!!」
テラーに剣を振り下ろす
しかし、それはサウンドと同様に避けられる
再度テラーが体を翻す
──同じ轍は踏まない
尾の攻撃をかわし、腕を取る
次の瞬間には、剣を使い上手く使い
テラーを締め上げ拘束した
「もらったぁ!」
『オォオ!?』
そこにサウンドが追撃を放つ
槍での連撃が避けられぬテラーに叩き込まれる
連撃の最後が叩き込まれ
テラーが大きく転がっていく
明確にダメージが入った、このまま一気に決める!
『サムライ!』
チケットを装填したブレイガンを手に
テラーに飛び掛かる
──このまま必殺技を叩き込んでトドメだ!
アクトがテラーに激突する
その直前、テラーが動いた
『グォオオ・・・!!』
「──な!?」
また大口を開く
そして、吸引を開始した
「うおわぁ!?」
空中のアクトは踏ん張りもできずに
その口に吸い込まれていく
そして、口の中に飲み込まれたと同時に
テラーはその口を閉じるのだった
「・・・ゆ、雄飛が呑まれちまった」
唖然とするサウンド
そんなサウンドを見てテラーはにやりと笑い
再度、その口を開くのであった
※
「うわぁあああ!?」
呑まれたアクトは謎の暗闇を飛んでいく
やがて勢いを失ったその体は
高度を下げゆっくりと着地した
周りを見る、薄暗い謎の空間
床からは、ほのかに振動を感じる
「・・・食われた・・・?」
ゆっくりと、現状を理解する
これまでの経緯を顧みて、そうとしか考えれない
「ど、どうしよう!?」
演技も忘れ、頭を抱える
何だこれ!?どんな状況だ!?
「いや、待て待て・・・
飛んできた方向は分かってるんだ、戻ればいい」
──落ち着け
そうだ、来た方向が分かっているのだ
ならばそれを逆走すれば
入り口、すなわち、奴の口にたどり着くはずだ
そうして、そちらに進もうとした瞬間
──風が吹いた
「・・・?」
空気の流れ?
呼吸の流れだろうか
そんなことを思った次の瞬間
何かがこちらに向かってくる
つまり、大量の岩の塊がこちらに向けて飛び込んできた
「な、何だと!?」
咄嗟に気合を入れなおし、切り払う
しかし、数が数
とても全ては捌ききれず
大量の破片がアクトを襲う
「いた、いって!?」
大したダメージではない
しかし、何分数が多い
全ての岩が通り過ぎるころには
大量の岩で打撲したアクトがそこにいた
「・・・何なんだよここは!?」
驚愕と怒りをはらんだ声が
ただ広さだけがある空間に鳴り響いていた
※
テラーがサウンドに向けて口を開く
「!?──やられるか!」
槍を地面に突き立て、足に力を入れる
雄飛は無事だと信じたいが
自分まで呑まれる訳にはいかない
吸引が開始される
引き込まれそうなところを必死に留まる
・・・このままなら何とか耐えられる
しかし、どうしようか
あちらも吸引の際は手を出せないが
こちらもこうして動けないのでは手が出せない
何か手を──
コツン
──?
何かがサウンドの頭にぶつかる
それは、岩の破片だった
──!?
背後を見る
次の瞬間、自分の眼前に拳大ほどの岩が迫った
「うわ!?」
咄嗟に避ける
しかし──
一つまた一つと岩のかけらが飛んでくる
見れば、磯の岩場がどんどん削られ
吸い込まれている
その間に立っているサウンドは
大量の岩を真正面から受けることになってしまう
ただでさえ、踏ん張っていて避けようもないのだ
サウンドは大量の岩をその身で受けた
──不味い
このままでは、踏ん張れない
いずれ手が離れ、自分も奴の腹の中だろう
ど、どうにかしなければ
しかし、吸引は収まらず
自分も身動きが取れない
万事休すかと思ったその時
『──!?』
テラーが突然口を塞いだ
──なぜ止まった?
するとテラーは両手で
次の瞬間──
ズンと音を立てそうなほど
その腹が膨れ上がる
はちきれそうになったそれを
強引に押し込めていくテラー
やがて、テラーが押し込み切り膨れが収まった
一体何が、と考えたその時
ふとある考えが脳裏をよぎる
「──なるほど」
・・・
なら、自分もそれに合わせるだけだ
テラーが再度吸引を始めた
同じように踏ん張りながら
サウンドは声を張り上げた
「──雄飛!」
※
アクトは飛んでくる岩を切り払いながら
飛んできた道をひたすら戻る
進むにつれて、強いどんどん向かい風が流れ
そのたびに岩が飛んでくる
大体分かってきた
この風は、テラーが吸引をしているのだろう
そして、ライダーと関係のない
岩もお構いなく飲み込んでいるのだ
このことで一つ安心なのは
翔の存在だろう、
彼が飛んできていないということは
まだ吞み込まれていないということだ
向かい風に押し戻されないよう
地面にブレイガンを突き立てながら
せっせと進んでいく
──やがて突き当りに到達した
空間はここまでのようだ
しかし、出口が見つからない
「どっからでればいいんだ・・・?」
そう思い悩んでいると
風が吹き始めるどうやら吸引を始めたようだ
・・・?
ふと風の出どころを見ると
先程までに見られなかったものがある
──光だ
そして、ちらりと外の風景も見える
「あそこか!」
そうか、口を開けた時のみ外が開くのか
──そうと決まれば
『MASKED RIDER
「変身!」
アクトがネクストフォームへと姿を変える
外から吹き込んでくる風、その真正面へと立つ
──風には風だ、無理やりにでも突破する!
『 NEXT 』
『
自身の背後から吹き込んでくる風に負けない勢いの風が吹き荒れる
暴風に後押しされながら
アクトは光に向け飛び上がる
「はぁああああ!!」
キックを放つ、背後の風のおかげで
威力は出ないものの前に進む
──これなら!
そして、光に到達しかかったその時
「何!?」
キックが壁に激突する
壁に大きくめり込んでいくが
それを突破するまでにはいかず
最後には、弾き飛ばされてしまった
「おわっ!?」
まるで狙いすまされたかのように閉じられてしまった
どうやら、テラーにはこちらの動きが把握されているようだ
まいった、このままでは脱出ができない
どうすれば──
吸引が再開される
風を吹かせて踏ん張りながら
どうするか思案する
すると──
"──雄飛!"
外から翔の声が聞こえる
・・・自分を読んでいる?
"
──はい?
突然の申し出に呆気にとられる
10秒後・・・?
一体どういうことだ?
しかし、考える暇もない既に10秒が迫っている
「──えぇい、ままよ!」
『 NEXT 』
『
再度、風が自分の周りに吹き荒れる
アクトは、仲間の声を信じ
再度必殺キックを放つために飛び上がった
※
「10秒後だ!もう一回頼む!!」
『──?』
10,9・・・
テラーが何を言っていると言わんばかりの顔をする
しかし、そんなのに構っている暇もない
自分も準備に取り掛かった
突き立てたギターランスにディスクを装填する
『POP!ROCK!RAP!』
『
8,7,6,5・・・
そして、タイミングを合わせて
槍を引っこ抜いた
当然支えもない体は引き込まれる
しかし、サウンドは足で踏ん張るでもなく
逆にテラー目掛けて槍を構えて駆けだした
4,3・・・
『オオォ?』
テラーが理解できぬように呻く
しかし、焦るまでもなく
このまま吸い込んでやると言わんばかりに
さらに力を込めて吸い込んでいく
2,1・・・
両者が激突するその時
・・・0
テラーの口から、
『オォオオオォ!?』
それを読んでいたと言わんばかりに
サウンドが体を滑り込ませるように
下に倒させ、アクトとすれ違う
テラーが驚愕と同時に不覚を悟る
そして、ショックのあまりつい、吸引が緩んだ
「今だ!!」
『
その一瞬をついて、サウンドがテラーの隣を
通り抜けざまに必殺の一撃をその腹に叩き込んだ
吹き飛んでいくテラー
強力な攻撃をまともに食らった彼は
一歩も動けずに倒れ伏した
「よっしゃ!」
「おぉお・・・?で、出れた?」
アクトは状況が呑み込めない
また弾かれるのかと思っていたら
今度は普通に出れてしまった
そして後ろを見るとテラーが倒れている
・・・一体何が起こった?
「ナイス雄飛!タイミングばっちりだな!」
「あ、ああ・・・」
しかし、とりあえず何とかなったようなので
ひとまずは良いのだろう
「よしこれで、あとはこの場所を元に戻すだけ」
"その必要はない"
「「!?」」
ひとまずこれで解決だと
安心していたその時
──乱入者の声が現れた
※
それは、青年であった
およそ一般人には見えない身なりをした
男は、いきなり現れたのだ
「何者だ・・・!」
気を引き締めなおし、構える
どう見ても、唯の通りすがりではない
自分達とも、
また、テラー達ともどこか違う異質さを感じていた
「私は・・・お前達の"おしまい"だ。」
そう言うと、男は何かを取り出す
それは──
「!?・・・ドライバー!?」
そう、自分の物とも翔の物とも異なる
しかし、自分達の物によく似たベルトであった
四角い形状にベルト左側には
ナックルダスター*1のような大き目のグリップを備えている
そして、それを装着した男は
さらにもう一つの物を取り出す
それは、禍々しさを備えた一枚のチケットであった
『
「・・・
そして、ベルトにチケットを装填し
グリップを握り、
「・・・変身」
『
『Love Disappears as Bubbles』
『
瞬間、男に変化が起こる
その身を泡が包むように取り囲む
そしてそれがはじけ飛んだ後には
白のアンダーウェアに深い青のアーマー
右肩には、魚の鱗のような文様の
青いマントがひらりとはためいている
「名はラスト。仮面ライダー・・・ラスト」
仮面ライダーが
そこには立っていた
次回 仮面ライダーアクト
突如現れた謎の仮面ライダー
ラストの目的とは
「お前・・・何が目的だ!?」
「決まっている、貴様たちの終わりだ」
始まる海中戦、勝つのは誰だ
「水の中でも、やりようはあるんだよ!」
第16章[海と泡と人魚の男]