時は少し遡る──
「・・・逃がした、それより翔がやばそうだ
僕も行くね!」
「あ、ちょっと!」
「行っちゃった・・・
追いかけるこっちの気も知らないで!」
追いかけて、ようやく追いついたと思ったら
雄飛はまたこちらを放って走り去ってしまったのだ
切れ切れになった息もまだ整っていないのに
また走らせるのかと恨み節が漏れる
『なら、私と話でもどうかな?』
「!?」
その時だ──
背後から、突然声が聞こえたのは
「あんたは──!?」
「こんにちは──風間杏奈さん」
プロトアクトを、父を連れて現れた
ストーリーテラー、その一人であった
「ブルー!」
「おっと、知っていたか
そう、私はブルーと名乗っている」
後ずさる、雄飛はすでに行ってしまった
自分に戦う力はない
この場で自分にできることは逃走だけ
すぐにでも走り出そうと足に力を込める
しかし──
「だが──」
『かつては、
「!?」
その言葉は、杏奈の足を止めるには十分な言葉であった
「青・・・山・・・博士・・・?」
『そう呼ばれるのも、懐かしいね』
その名前は、叔父から何度も聞いた名だ
かつて、父と叔父が敬っていた科学者
テラーを生み出した、研究者
この戦いを生み出した、最初の怪人の名前
「あなたが──!」
『そう、僕が青山秀幸だ』
全ての元凶ともいえる男が
杏奈の目の前に立っていた
『今日は、君と話をしたくてね』
「何を──」
彼が、仮面ライダーではなく自分を訪ねてきた
一体何のつもりなのか、見当はつかない
──いや、一つだけ思い当たる物があった
『・・・
「──。」
父の、風間大吾の容体
それは自分にも彼にも密接に関係している
「っ誰のせいで──!」
『おっと、そう怒らないでくれ』
そして、父の容体は悲しくも彼の言った通りだ
病院の治療、叔父の研究も虚しく
その意識はまだ戻っていない
当たり前だ、その精神は一度仮面ライダーで塗りつぶされている
現代医術でも、眠った人間の心まではそう易々と修復できない
『そのことで話しに来たんだ
──取引をしないか?』
「!?」
そういって、青山は懐から何かを取り出す
それは、少し煤けてはいるが
何かの機械部品のようであった
『プロトアクトのベルトに搭載されていた
「な──!?」
それは、思ってもいない言葉であった
『現代技術で、外からの施術だけで
その精神を直すのは困難を極めるだろう』
『・・・だが、人間が内側から自己で修復する分には未知数だ』
「何を──」
つらつらと青山は言葉を連ねていく
突然の話に杏奈の脳は処理しきれずに聞きっぱなしになる
しかし──
『今の大吾は、本来の精神が壊れ
付け加えていた仮面ライダーの精神が消え、空のような状態だ』
『そこに、このデータを信号として脳に送る
本来の精神、そのパーツが大吾の中に入る』
『それをつなぎ合わせて、修復も可能かもしれない』
『──目を、覚ますかもしれないな』
目を覚ます
その言葉だけは、深く耳に焼き付いた
「何が・・・目的なの・・・?」
混乱している頭で声を絞り出す
彼の目的が分からない
何の得があって
『言っただろう?取引したいって』
「──何をさせる気・・・?」
『・・・気にすることは無い、まずはこれを受け取ればいい』
そういって、部品を持った手をこちらに差し向ける
罠かもしれない、それでも彼の言葉には甘美さがあった
杏奈はそれに引き寄せられるように手を伸ばす
そして、その手が部品に触れそうな距離
杏奈はその手を
「・・・!ふざけるな!あんたと取引することなんてない!!」
そうだ、彼は既に怪人であり酷いことを多くやってきた
どれだけ、甘美な言葉を並べても
絶対にその誘い乗ることは杏奈の心が許さなかった
振り返り駆けだす
交渉は蹴った、このまま彼と相対しているのは危険だ
とにかく、離れる必要があった
『・・・やれやれ、
走り、目の前の建物の影に隠れるように角を曲がる
雄飛達の元に急がないと
そう急ぐ杏奈はさらに角を曲がった
しかし、その思いも虚しく潰える
「っう!?」
曲がった瞬間、自分の体に衝撃が走る
その目の前には
『残念♪』
ストーリーテラー、クイーンが自分に腕を突き立てていた
そして腕は引き抜かれる、次の瞬間
杏奈の体に収められたチケットが
その体を変異させていった
人間的な肉体が、青く透き通る氷のように
どこか、女王を思わせるフォルムの怪人に姿を変えていた
『よくやってくれた、クイーン』
『あら、いいのよ・・・でも、この子でよかったの?』
杏奈が氷のテラー:アイステラーに姿を変えた後
ブルーがその場に現れる
彼からしたら、ここまで予想通りだったのだろう
しかし、クイーンは解せない
どうせテラーにするなら、
こちらではなく仮面ライダー達でもよかっただろう
『いや、こちらの方が都合がいいんだ』
そういって、テラーにブルーが手を伸ばす
しかし、その手がテラーを触れることは無かった
『・・・っ!!』
『──あら』
『おっと』
体がうまく動かないのだろう、すぐに振りほどかれたが
振り放されたテラーがブルーをにらみつける
その目には、敵意が光っている
『・・・
『意外と自我が強いのねぇ』
そう、大木の際と同じである
杏奈もまた、テラーに変異しようとも
その精神を奪い取られることは無かったのだ
『ッハ・・・ッハ・・・
テラーが振りほどかれた手を見る
その手には、先ほど見せつけられた部品が握られていた
『何!?』
転んでも唯ではというやつだろう
テラー化してしまったことを逆手に取り
杏奈はそれを奪い取っていた
再度振り返り、よろけながら駆けだす
また、逃げるつもりなのだろう
しかし、慣れない体では速度が出ない
『クイーン』
『はーい』
そこに、クイーンは取り出したトランプを投げつけた
『っが・・・ぐぁ・・・!?』
トランプが突き刺さり、再度杏奈の体に変化だ起こる
銀の鎧のような装飾がつけられていく
そして、何より
彼女の足元が、周りの建物が
凍り付き始めたのだ
『あら、大分暴走してるわね』
『ふむ・・・まぁいい、受け取ったからには
取引ということで・・・働いてもらうぞ』
※
『ゆ・・・・うひ・・・逃げ・・・!』
「!?」
「まさか、──杏奈さん!!?」
あの少しの時間で、一体何が
そう考えたのも束の間
急激な冷気と氷結が再度
「うわ!?」
「っく!」
アクトとラスト
さらには
「──!?」
『氷だと!?』
離れていたサウンドとサンにまで襲い掛かった
「杏奈さん!杏奈さんなんだろ!!やめてくれ!」
氷を回避し、何とか止まるように呼び掛ける
しかし、返ってくるのは苦しむような呻き声だけ
大木さんの時のように
怪人化していても、意識は保っているにも関わらず
体が勝手に動いている、つまりは暴走状態であった
『この出力、暴走か?
──このまま長引けば、命も危ういぞ』
「!?」
その様子を見て、サンが言葉を漏らす
その言葉は、アクトにとっても聞き捨てならないことであった
「くそぅ!!」
何とか止めようとそちらに駆けだそうとする
「どこを見ている!」
「うわっ!?」
しかし、そうして背を向けた次の瞬間
ラストはその拳をアクトに振るう
不意打ちを回避するも、またもラストとの組合になってしまう
ラストが邪魔で、アイステラーに接触できない
チラリと離れたサウンドを見る
しかし、サウンドの方もやはりもう一人の怪人の方にしか目が向いていない
このままでは、不味い
あの状況の杏奈さんがどれだけ危険なのかはわからないが
それでも、あの状態が続くのはいけないだろう
早急に手を打たなければ
しかし、手が足りない
『ぐ・・うぁああああ!!!』
「!?」
そうしているうちに、再度アイステラーが広範囲の氷結を発動する
組み合っていたラストを引き剥がし回避する
「ッチ・・・邪魔をするな!!」
すると、2度も邪魔をされたラストの矛先が
アイステラーへと向く
二本の炎の剣が生み出され、その氷の体に向けて射出される
その時、アクトの脳裏に浮かんだのは
かつて、大木さんの時に出てきた情報
"そのまま倒して、
「不味い!」
急いで体を飛ばし、テラーと炎の間に躍り出る
大木さんと同じ状況なら、そのまま倒しでもしたら
杏奈さんの精神が危険だった
二本の内一本を叩き落とす
しかし、咄嗟のことだったのもありもう一本は間に合わない
結果、炎がアクトの体に直撃した
仕方がないとはいえ、痛い物には変わりない
衝撃に吹き飛ばされる
「余計な邪魔を──」
ラストが再度構えようとしたその時
『!?──うぁ・・・あああ!!』
目の前の光景のショックで押さえが効かなくなったのか
またもテラーが広範囲の氷結が起こす
しかも、先ほどまでとは比べ物にならないスピードで、だ
「──!?」
氷が敵味方関係なく、付近で戦う4人を纏めて氷の中に閉じ込める
そして、固まり切った瞬間に
氷がはじけ飛ぶように、内から炸裂した
巻き込まれていた4人が、氷が砕けると共に
その衝撃に吹き飛ばされ、一様にダメージを受ける
凄まじい範囲と、威力の攻撃である
一体どんな、チケットを差し込まれたのだろうか
そんな中、一足早くラストが立ち上がる
「また、邪魔を・・・」
完全に、テラーに対し標的を定める
そして、腕を振るおうとしたその時
「!?・・・ぐっ!?」
ラストの体から、火花が走る
まるで、機械がショートしたかのように
その体にスパークが走り始めた
「何が・・・ぐっ!?」
『無茶をしすぎたな』
サンが、ラストの体を担ぎ上げる
「放せ・・・まだ」
『一度引くぞ・・・その体で何ができる』
『そのテラーも回収しておく』
「待て、てめぇ・・・!」
サウンドが恨みがましく吠える
しかし、そんなことには意を返さず
ラストとサン、そしてアイステラーはその姿を消してしまった
「待てって言ってんだろ・・・!」
変身を解いた翔が、体を引きずりながら歩きだす
「待て翔!・・・お前も待てって」
同じく、変身の解けた雄飛は
もはやそれを追いかける気力もなく
その場で意識を手放した
※
目を覚ますと見覚えのある天井が広がっていた
「テアトロ・・・?」
「おお!雄飛君目が覚めたかい!」
そういって部屋の外から顔を覗かせたのは
大木さんであった
彼がここまで運んでくれたのだろうか
「いやぁ、いろいろと物音が響いてたから覗いたら
君一人でぶっ倒れてるんだもの、驚いたよ」
どうやらそうらしい
「大木君、彩羽君は起きたか?」
「──音石さん?」
話し声に反応して、音石博士が顔を出す
いるのは、珍しいがなんの用だろうか
「翔の奴に渡すものがあってな
・・・それで、あいつはどこに」
「・・・あー、それが」
頭を抱える、一体どこから説明したものか
しかし、離さない訳にもいかない
これまでの経緯を含め話していく
翔が突然怒りだし、周りが見えなくなったこと
杏奈さんが、テラーにされてしまったこと
翔が、消えたテラーを追いかけてどこかに行ってしまったこと
「まさか、風間さんが・・・」
「怒り出す?・・・周りも見えなくなるほど?」
2者の反応はそれぞれであった
しかし、その中で音石はある仮定に行きついていた
「まさかあいつ、当たりを引いたのか!」
──当たり・・・?
音石さんが反応を示した言葉について
聞き出さないとならない
どう見ても、あの時の翔の様子はおかしかった
「そうだな・・・しかし・・・」
「いや、話そう。あいつに一緒に戦うのなら知っておくべきだ」
そうして、音石博士は話し始める
「翔が、仮面ライダーになった理由についてだ」
※
「8年前に、ある地方で連続の放火魔事件があったことを知っているか?」
「あぁ・・・一時期話題になっていたね
確か、常人では不可能な範囲での連続だったせいで
複数犯が疑われてたとかなんとか」
放火魔事件・・・
そういえば、あの時の翔は火にやけに怒っていた
・・・まさか
「あいつは、というよりはあいつの友人達はその被害者だ」
「「!?」」
「その時の私は、その犯行の特異性もあって
テラーの犯行を疑って、独自調査をしていたんだがな」
「あいつは、そんな私をどこからか知って訪ねてきたんだ」
「"火の怪人"を知っているかってね」
火の怪人・・・?
「火事に襲われた日に、あいつが崩れる現場でその姿を見たってね」
「私も、それを聞いて確信したんだ」
「犯人はまだ捕まっていない
当たり前だ、何せ怪人なのだから」
「あいつの戦う理由は、偏に・・・復讐だ
その怪人へのな」
火の怪人──
先程の戦いを思いだす
ラストと共にいたあの怪人
その姿を
──まるで、炎を纏ったような風貌をしていなかったか
「!?それはほんとか!」
おそらく、翔は見つけたのだ
その放火事件の犯人を
復讐対象を
「・・・あいつは、戦う力を求めた
私にとって、彼は自分の作るベルトに丁度良い素養を持っていた」
「そうして、あいつは仮面ライダーサウンドになったんだ」
※
「なんてことだ・・・新田君にそんな過去が」
大木さんが信じられないと驚いている
自分もそうだ、彼のあの明るい性格から
そんな暗い理由が出てくるとは思ってなどいなかった
「あいつも、この話はしたがらないだろうしな」
「復讐目的なんて、まぁあまりいい物ではないと思っているんだろう」
音石さんがこちらに向き直る
「それで、これを聞いて君はどうする?」
──そんなの決まっている
「とにかく、話してきます
杏奈さんを助けるためにも、あいつの協力が必要だ」
そういって、店を飛び出す
とにかく、会って話だ
それで、そうだな──
一発、殴ろう
※
「・・・どこに行った、あの怪人・・・!」
翔は、町を駆けずり回りながら
サンを探していた
しかし、成果は出ない
せっかく、
これでは、苛立ちが募るばかりだ
「見つけた」
「何!?──どこだ、どこにいる!」
辺りを見回す、しかしそこに姿はない
・・・今のは誰の声だ?
「見つけたのは、こっちだよ」
「──雄飛」
さすがに少し頭も冷えた
しかし、だからこそ
今、あまり会いたくなかった人物が目の前に立っていた
※
走り回ってようやく見つけた翔は
どこか嫌な顔をしながらこちらを見ていた
「杏奈さんが怪人になってしまった
・・・手を貸してくれ」
「!?」
・・・やはり気づいてなかったか
どれだけ前が見えてなかったのだ
「・・・!!」
押し黙って、頭を抱えている
どうすればいいのかを悩んでいるのだろう
杏奈さんを助けるのが先か、
それとも・・・自分の復讐を優先するのか
そうして、少し言い淀んだ後に
「・・・今、忙しいんだ
そっちでやってくれ」
そういって、立ち去ろうとする翔
しかし、そうはいかない
こちらの話は、何一つ終わっていない
「分かってるのか!助けないと
また、友人を無くすんだぞ!!」
「!?・・・聞いたのか?」
翔が足を止めて、こちらを睨む
「あぁ、聞いたよ・・・なんで言わなかった?
言ってくれればいくらでも」
「手伝ったって・・・?・・・ふざけんな!!」
怒り込み上げたかのように声を荒げ
こちらを見る
「俺はこれが目的なんだよ!!最初っから!!」
「あいつを倒すのが目的で戦ってきたんだ!」
「あの犯人がのうのうと生きてるのが辛抱ならねぇ!」
「ぶちのめして、償わせねぇと満足できねぇ!」
「そう思って!仮面ライダーになったんだよ!!」
詰め寄って、こちらに掴みかかる
その言葉には、悲しみも怒りも
いろんなものが混ざり合って聞こえた
「世のため人のためで戦ってるお前とは違うんだよ!!」
「俺にとっちゃあ、人助けよりも先に
あいつを倒す方が先なんだ!!」
「・・・。」
荒れた息で肩を上下させながら
翔がそこまで言い切る
そうか、よくわかった
お前がどれだけ相手を許せないのかも
どれだけこの機会を待ち望んだのかも
自分に掴みかかった翔の腕を掴み返す
そして──
「フン!!」「ぐぉ!?」
思いっきりぶん殴った
「何すんだ!」
「・・・お前は、なんも分かっちゃいない!」
言い分は分かった
その上で、こちらとしても言いたいことを言わせてもらう
まずは──
「お前は、俺を聖人君主かなんかだと思っているのか!?」
「あんな話を聞いて・・・俺が怒ってないと思ってるのか!!」
「・・・?」
そうだ、罪のない人々をいたずらに殺して
今も何か企んで悪さしている
そんな奴を自分が許すと思っているのか
「俺もどうにかしたいに決まっているだろうが!!」
「・・・なら、なんで!」
自分を止めるのかって・・?
そんなの決まっている
「お前が杏奈さんの方を諦めてるからだ!」
「なんで、復讐を優先して
後から後悔しそうな方を選ぶんだ!!!」
「だから、俺は復讐の方が先で・・・」
「
「──!」
そうだ
自分一人で好き勝手戦って
片方しかやろうとしてない所が問題なのだ
「個人的な復讐なんかに巻き込めないとでも思ってるのか!」
「
どっちもやれるかもしれないだろ!!」
「──。」
何のために2人の仮面ライダーがいると思うのだ
協力し合うためだろう
1人で戦って逃がす可能性があるなら
もう一人が逃がさないようにすればいい
1人で助けて取りこぼす可能性があるなら
もう1人がそれを助ければいい
復讐が暗い理由だから
人助けが明るい理由だからとかで
それをやろうとしないのが問題なのだ
「俺は、助けるのに手が足らない!」
「そっちはどうだ!倒すのに手が足らないんじゃないのか!」
「なら協力すれば足りるかもしれんだろう!」
「・・・。」
そこまで言った、その時
遠くの風景が突然変わる
遠くに見える高層ビル
その一角が、突然高い雪山に早変わりしたのだ
「「!?」」
その光景に雄飛は確信する
──テラーが、また現れたのだ
「──俺は行くよ」
こっちも言いたいことは言った
後は、翔次第だ
駆けだす、こちらとしてはまずはテラーだ
おそらく、大木さんの時のようなことはできないだろう
それでも、何とかしなければなかった
※
雄飛が走り去る
「・・・杏奈君を助けに行かないのか?」
「!?──博士」
いつの間にかやってきていた音石は
翔に話しかけていた
「俺は・・・」
「──復讐を捨てろとは言わない
・・・見つけ出したのはお前だが
こちらに引き込んだのは私だ」
音石は翔にそう語りかけていく
「だが・・・だからこそ使える物は使うべきじゃないか?」
「・・・え?」
「人間誰もが誰かを利用するものだ
私も・・・彼もな」
「目的があるなら、手段を選ぶな。
だが・・・なにしも非情だけが最短じゃあない」
そういって、音石は懐は何かを取り出す
それは、まるで小型のスピーカーのような
分厚く、角ばった何かのツールだった
「助けて、勝て。私も、そのために作ったつもりだ」
まぎれもない、サウンドのためのアイテムであった
※
程よい暖かさを含んだ穏やかな気候
何もない平和な一日であった街中に
突如として強烈な冷気が流れ出した
道が建物がどんどん温度を奪われ
凍り付いていく
『これは・・・予想以上だな』
サンはこの場に連れてきた
アイステラーを見てその力に驚いていた
下手に理性的に使ってもここまで強力にはなかなかならない
暴走という例外的な条件だからこそ
ここまでの力をこれほどまでの出力で行えているのだろう
人々が悲鳴を上げながら逃げ惑う
しかし、その背後から氷が伸びてくる
そして、逃げ遅れた人の足にまでそれが伸びようとしたその時
「でぁあああああ!!」
強烈な風を巻き上げながら放たれるキックが
波のように押し寄せる氷に叩きつけられた
めくれ上がるように吹き飛ぶ氷片
市民にまで及びかけたその氷を
アクトは吹き飛ばして守っていた
『来たか、仮面ライダー』
「いくぞぉ!!」
市民が逃げ切るのを見届け
アクトがサンに突撃する
暴風と火炎がぶつかりあい
膨大な熱波を発生させ
凍り付いた周囲がその地点だけ一気に溶け上がった
『あっ・・あうううぅう・・・!!』
それに反応してしまったのか
スノーテラーがそれを超える冷気を放つ
溶けて地表を露わにしていた大地が
一瞬の内に凍り付いていく
猛烈な吹雪が、戦う2人の元に吹きすさぶ
そして、サンは行動に移る
アクトを自分とスノーテラーの間に立つように立ち回る
『ハァアアア・・・ハァ!』
そして、組み合っていたアクトを引き剥がしたと思えば
その手から、すさまじく猛る火炎を放つ
火炎を風で防ぐ
しかし、背後に凄まじい冷気がぶつかる
背後からの吹雪と前方からの火炎の挟み撃ち
暴走とはいえ、あくまでテラーとライダーの2対1である
サンは暴走するスノーテラーを上手く使って
戦況を優位に立ち回る
体が凍える衝撃に手が緩む
防ぎ漏らした火炎もまた
アクトへと襲い掛かった
「うあぁあああ!!」
冷気と熱気の両方をその身に食らい
アクトがその膝をついた
サンがその手を掲げる
その手に火が集まり
バスケットボール大の巨大な火球を作り出す
あんなものを喰らえば一たまりもない
しかし、膝をついた体は動かない
凄まじいダメージが彼の体を動かすことを阻害する
火球がアクトに振り下ろされようとしたその時──
ゴウと音を立て、サンの立場所に何かが飛来した
『!?』
火球を消し、その場を離れる
次の瞬間には、その場に轟音を立て
ギターのような形をした、槍が突き立っていた
「・・・はぁ・・・はぁ・・・!」
サンとアクトが槍が飛来した方を見る
そこには、駆け付けて肩で息をする
新田翔の姿があった
「・・・!」
サンを見据え、ギリィと歯噛みする
自分の友人たちのその命を奪った相手がそこにいる
怒りに震える体が、今すぐにでも相手に飛び掛かろうとする
しかし、翔はそんな体を押さえつけて
「──雄飛ぃ!!」
「!?」
アクトの、彩羽雄飛の名前を呼んだ
そう、サン以外の名前を呼んだのだ
「
逃がしたら承知しねぇからな!!」
『・・・何?』
サンがいきなりの言動に驚いていると
突然横から衝撃が走る
立ち上がったアクトが、目の前に突き立つ
ギターランスを抜き去り、サンの体に切り付けたのだ
『ぐお!?』
「──ああ!!」
アクトがギターランスを翔に投げ返す
翔はそれを掴むと地面に突き立て
──スノーテラーの方に向き直った
「風間ちゃん・・・勘弁な」
そして、何かを取り出す
それは、音石が翔に託した
新たな力の起動キーであった
「今の俺は・・・とんでもなく!腹が立ってる!」
「・・・だから、八つ当たりだ!!」
『
分厚い、角ばった箱のようなアイテムを起動する
その側面から、半身のディスクのようなコネクタが現れた
サウンドライバーに、コネクタを突きさす
刺さり切らない、四角の装飾は
まるで、音を増幅し鳴らしだすスピーカーの様だった
『
『
『
『
瞬間、翔の体が仮面ライダーサウンドへと切り替わる
しかし、その姿は今までの物とはまるで違っていた
右肩には、正方形の角ばったまるでスピーカのようなアーマーが付与され
全身のアーマーにはまるで、楽譜に刻まれるような4本ラインが走る
そして、まるで彼の熱気を現すかのように
全身のアーマーが赤混じりの橙に色を変えていた
「い・・・くぞ!おらぁ!!」
ギターランスを引き抜き、スノーテラーに突貫する
足を踏み出す傍から、足元の氷が水に溶けていく
そして、スノーテラーのその肩にギターランスの刃をぶつけた
次の瞬間、槍の刃が凍り付く
そして、それを伝い、一瞬の内にサウンドの全身を氷で包んだ
体表から漏れ出る冷気だけで、周りを凍らせるのだ
体表はさらにすさまじい冷気が漂っているのだろう
しかし──
「それが・・・!」
『!?』
ドウンと、まるで脈打つような音が立ったかと思った後
サウンドを包む氷全体に、ヒビが走る
それだけではない、そのヒビから湯気を吐きながら
水が、漏れ出していた
「どおしたああああ!!」
ドンとさらに強い音を立てた次の瞬間
氷が跡形もなく、砕け跳んだ
いや、
止まっていた、ギターランスも動き出す
サウンドは、スノーテラーの肩に置いた
ギターランスでそのまま力任せに押し切った
『ぐぅうう!!・・・あ、熱い!!・・・え?』
攻撃を喰らったスノーテラーが吹きとぶ
その攻撃のあまりの熱気の痛みに
うめき声ではなく、熱いと反応していた
その反応に、テラー自体が困惑する
・・・今の反応、自分で自由に動けなかったか?
※
”
”──すなわち、通常の方法で倒すのが危険な場合だ”
”大木君の際は、彼自身がその状況を打破したが他はそうはいかない”
”──問題は、テラーとの意識の主導権の取り合いに負けることがあることだ
”つまりは、常に本人側が、主導権を握り続けることが大事なんだ”
”本人の意識を、テラーの体に引っ張り出す”
”意識に直接干渉する必要があるんだ”
”
”音、振動、熱気で・・・意識を・・・心を揺さぶれ”
”熱狂で、意識を引っ張り出せ!”
※
サウンドが、スノーテラーに再度突撃する
まだ、テラーの意識が体を反射的に動かしているのだろう
吹雪がサウンドに繰り出される
しかし──そんなものでは止まらない
サウンドの体から熱気が放たれる
冷気が、雪が一瞬で溶けて水に落ちていく
ならばと氷が地面を伝い、サウンドのその体を差し穿たんと迫る
それに対しサウンドは
ギターランスをギターのように構え、掻き鳴らした
肩のスピーカから、轟音が鳴り響く
その振動の前に、もろい氷は跡形もなく砕け散った
そして、もはや棒立ちで冷気を放つだけの
隙だらけなテラーの体に槍を突き出す
先端がその体を捉え、大きく吹き飛ばした
大きく吹き飛ぶテラー
そして、大きな変化が現れる
先程までに、轟轟と彼女の周りに吹雪いていた冷気が
突如として、止まったのだ
──いや、テラーが吹雪かせるのを続けなかったのだ
なにせ彼女は、最初からずっとこんな吹雪を吹かせるつもりはないのだから
『何!?』
吹雪が止んだことに、驚いたのは
アクトと殴り合っていたサンだ
──バカな、なぜ暴走が止まった
テラーを見る、そこに怪人らしき気配などなかった
『──ッチィ!』
目論見が外れ、作戦の失敗を悟るサン
それならばここにもう用はない
さっさと──
「に、がすかあああ!!」
『ぐぅ!?・・・邪魔を!』
逃げるつもりだったサンに
アクトが猛攻を仕掛ける
──このまま逃がしてなる物か、翔の頼みを無下にしてなる物か!
『邪魔だぁ!!』
燃え盛る拳で、アクトを腹部を叩く
このまま吹き飛ばして、さっさとずらかる
そのつもりであったが──
『何!?』
「ぐぅ・・・!!行くぞぉ!!翔!!」
アクトは、吹き飛ばなかった
いや、攻撃は当たった
しかしサンの、その腕をシッカリと掴み込み
距離を取らせまいと凌いだのだ
『 NEXT 』
『
「だぁあああ!!」
『ぐぉおお!!?』
風を纏った拳が、サンの体に叩き込まれる
掴んだ腕は既に離され、サンの体を支える物はない
その体は、大きく吹き飛んでいく
倒れたスノーテラーの目の前にサウンドが立つ
止んだ吹雪に、もう問題はないと悟ったサウンドは
ギターランスを握りこみ、構えた
『痛ぁ・・・』
ベルトからディスクを引き抜き
ギターランスに刺し込む
巨大なディスクはそれ一つで3つ全てのスロットを覆いこんだ
『GIGA!!』
『
けたたましい音が唸りを上げる
槍に穂先に高温の熱を含んだエネルギーが集っていく
「風間ちゃん!腹ぁ括れよぉ!!!」
そして、アクトに吹き飛ばされたサンは
スノーテラーの目の前に、
サウンドの攻撃の射線上へと飛んでいく
──最早逃げ場などなかった
『はぁあああ!!!つぁああ!!』
そして、目の前の二人目掛け
ギターランスを思い切り、振り切った
強力な、エネルギーが前方を薙ぎ払っていく
2体の怪人は、その攻撃に為すすべなく巻き込まれ
火炎を立ち上げ、燃え尽きるのだった
※
「翔!」
「雄飛・・・やったぞ!」
アクトが戦いを終えたサウンドに駆け寄る
立っていたサウンドはまるで歓喜に震えるように
足元がおぼついていない
「やった・・・やったんだ・・・!!
これで・・・やっと・・・!」
ぐっと拳を握り込み喜びを噛みしめるように目を閉じる
長い時を経て、ようやく友たちの敵を討った
その喜びは計り知れない物だろう
『ま・・・だだ・・・!』
「「!?」」
信じたくないものが、聞こえた
まさか──
サウンドの必殺技の余波で
今だ炎の上がる地面
その、炎が地面を離れ、宙へと浮かぶ
そして、炎が一点に集まっていく
「てめぇ──!」
「嘘だろ・・・」
そして炎が、人の形を取る
やがて、炎が一体の怪人の姿へと変わる
それは紛れもなく、先ほど倒したサンそのものであった
しかし、足は引きずり、体のいたるところに傷が残る
いかにも満身創痍といった風貌だ
『はぁー・・・!はぁー・・・!
今日は、負けだな・・・だが次はないと思え』
「逃がすかよ!!」
それを視認した瞬間
アクトとサウンドが駆けだす
しかし、それも一手遅い
繰り出した攻撃は、サンへ当たることなくすり抜けていった
「待て!!
・・・っくっそ!」
またしても逃げられてしまった
何としぶとい奴であろうか
サウンドが変身を解き、肩を落とす
アクトもまた、その姿を見て、変身を解くのだった
「・・・ごめん、あれだけ啖呵切っておいて
結局・・・」
結局、逃がしてしまった
そう言いかけたが──
「まずは一発」
「え?」
「まずは一発ぶん殴れた、
だから次は必ず倒す──ちゃんと、手伝えよな」
そういって、翔がこっちを向いて笑い
手を差し伸べる
そうか、次か
次を目指してくれるのか
「──あぁ!!」
しっかりと、それに応える
差し出された手を握り返す
もしかしたら、ようやく彼と仲間になれたのかもしれない
──そう思った
・・・。
何か忘れているような──
「あ ん た ね ぇ」
翔の背後に人影が現れる
そして、人影は、後ろから手を伸ばし──
その首にヘッドロックで締め上げた
「か、風間ちゃん!?・・・た、タンマ、タンマ!」
「ちょっとは手加減しなさいよ!!」
その犯人は、杏奈さんだった
そういえば、そうだった──
「いや、助けるためには仕方なかったんだって!!」
「嘘つけ!!八つ当たりがなんだって!?」
「あっ!?聞こえてた!?
ごめん!ごめんなさいって!!
ちょ、締まってる、ほんとに締まってるって!!」
「アッー!!!」
「アッハッハッハ!!!」
そんな漫才染みた光景に
俺はついつい、笑ってしまうのであった
続く
次回 仮面ライダーアクト
ペローが再び現れる
「力!これが力か!!」
青山の狙いとは
「やはりそこにあったか、最後の一枚!」
その時、雄飛に異変が──
「う、う”あ”あ”あ”あ”あ”──!!!」
第19章[そして、獣が目覚める]