3体の銃士隊のような意匠ををした怪人が駆けだす
暴走したアクトもまた、未知の自身柄の敵意を敏感に感じとっていた
アクトがもまた、駆け出し3体の内の1体へとその腕を振るう
銃士の怪人:マスケティアテラーの細身の剣と
アクトの爪が打ち合い、火花を散らす
獣の如き、しなやかながら身軽な動きが
突き出された剣ごとテラーの頭上を飛び越えその背後を取る
完璧に隙を突いたアクトの攻撃がテラーの背後に迫る
しかし、それはテラーに届く直前に止まった
横から伸びた2体目のテラーの剣が、アクトの攻撃をテラーから守る
そして、防いだ次の瞬間、3本目の剣がアクトの頭部目掛けて振るわれた
バク転の要領でアクトが飛びのき回避する
飛びのいた先に見えたものは、
隙を見せたテラーの背面を守るように構えたもう2体のテラーであった
テラー達が一斉にアクトへと駆けだす
「■■■──!!」
アクトが咆哮を上げ迎え撃つ
テラー達の流れるような連携攻撃が、アクトを少しずつ切り裂いていく
しかし、アクトもまた、それを意に介していないかのように
アクトが強引にその力を振るい、テラーに叩きつけていく
泥沼のような攻防、しかし、それも長くは続かなかった
3体のテラーが3方向からアクトを取り囲むよう陣取る
そして
3者一斉に、その手の剣をアクト目掛け突き出した
3方向から剣先がアクトに迫る
反射的に両手で左右からの剣先を掴み止める
しかし、残る一本がそれでは止まらない
空いた足で蹴り飛ばす暇は残っていなかった
一体のテラーの刺突が、アクトへと突き刺さる
赤い血が地面に滴り落ちる
取った
テラーの1体が手ごたえを確信し、剣を収めようとする
『・・・!?』
しかし、引き抜こうとした剣先が動かない
突き刺さった、体そのもので掴み止めているかのように
アクトのその複眼が、一層紅く光ったように見える
両手で握った剣ごと、2体のテラーを振り飛ばし
そして、正面に構えたテラーに対し
渾身の拳を撃ちだした
拳が逃げ遅れたテラーを捉え、吹き飛ぶ
受けた傷からひび割れ、やがて砕け散るように爆散した
刺さった剣を自ら引き抜く
血が滴り落ちる傷口が、痛々しく・・・
瞬間、傷口から煙が上がる
ぽっかりと空いたその穴が
みるみる内に塞がっていく
『何!?』
残ったテラーが驚愕する
凄まじい生命力だと
彼に埋め込まれた怪人の、そのポテンシャルが見て取れた
「ハッー・・・ハッ・・・」
しかし、かなりの体力を消耗したのだろう
アクトが荒く、肩で息をする
残り2体
逃さんとアクトが再度構える
「いい加減、落ち着け!!」
「!?」
しかし、その眼前に突然乱入者が現れる
仮面ライダーサウンドが、咄嗟のことに動きを止めたアクトの
その腰に備え付けられたドライバーを掴み
「っぐ・・・おぉおお!!!」
「■■■──!??」
無理やり、引き剥がした
瞬間、野獣の如き様相をしたアクトの変身が解除され
雄飛がその姿を現す
「う・・・あ・・・っ」
「雄飛!?」
雄飛が腹を押さえ、膝を落とす
傷は塞がっているようだが
腹を突き破ったその痛みが、変身を解いた今顕著に表れ
雄飛の意識を刈り取った
「くっ!」
『RAP!!ROCK!!』
『
突き立てた槍から蒸気が沸き上がり、2人を包みこむ
テラーが、蒸気ごと2人の立っていた場所を切り払う
しかし、そこに既に仮面ライダー達はいない
蒸気にまぎれ、雄飛とサウンドが戦線から離脱していた
『・・・まぁ、いいわ』
それを言い放ったのはクイーンであった
『十分・・・さぁ、今日は帰りましょう?』
『『ハッ!!』』
2体のテラーがクイーンの指示に従い構えを解き威勢よく応える
クイーンとテラーもまた、煙のようにその場から立ち去るのであった
※
暗い屋内を、足を引きずりながら歩く影があった
その体には、切れ切れな息でようやくその場所にたどり着いていた
「ハッ・・・ハァ・・・」
体中に傷をこさえながら、ラストはようやく戻ってきていた
闇雲に駆けまわり、ついぞは仮面ライダー達に敗れ
それを経て、この場に戻ってきていた
この結果を見て、母はなんと言葉を漏らすだろうか
怒りだろうか、失望だろうか
それがたまらなく恐怖であった
しかし、戻らないという選択肢は有りはしなかった
その心は、どうしようもなく
その人にすがりたくて、たまらなかったのだ
母に割り当てられた部屋の前にたどり着く
ボロボロで歪んだ扉の隙間から
中が少しだけ、見えた
2体のテラーと、自身が母と崇める女性
喜びがこぼれる
久しく会えていなかった気がする母が目の前にいる
『うぉ・・・あぁああああ!!』
2体のテラーの内が突然悶えだす
そして、頭の頂点から、裂けるように千切れていく
完全に2つに分かれた体
その断面から、体が生えてくる
全てが終わった後には
3体に増えた、テラーがそこにいた
『凄い!元通りね!』
母が手を叩きながら、喜ぶ
暗い感情が湧き出す
つい、扉に手が触れ
軋むような音が、静かな室内に響いた
『・・・?』
母が、こちらを向いた
認識してくれたことに歓喜があふれる
「母さん・・・!」
怒りを向けられるか、なんて不安も忘れ
母を呼びかけ、足を踏み出す
それを見た、母は・・・
※
「雄飛くんは?」
「寝てますよ、もうぐっすり」
いつも通り、客もいない店内で
浩司と杏奈、そして雄飛を運んで寝かせた翔が話している
そこに、店の外から誰かがやって来る
「やってるか?」
「太田」
刑事の太田である
一体、何の用だろうか
「まさか、またテラーが!?」
杏奈が狼狽えながらあまり好ましくない予想を叫ぶ
雄飛が寝てる今、的中してほしくないのだが・・・
「いや、そうじゃない
これ、風間大吾さんの容体の記録だ」
「あぁ、すまない!」
浩司が、慌てた様子で受け取り中身を改める
内容に満足したような顔をして、それを戻す
「あぁ、最近忙しかったから」
「太田さんが代わりに貰いに行ってたのね」
「全く、刑事にパシリをさせるな」
「すまない・・・」
太田さんの小言に浩司が頭を掻きながら謝る
少し、空気が和んだ気がした
その時、書類を引っ張り出したカバンから
さらに何枚か薄い何かがこぼれだす
「あ、落ちましたよ・・・って、これって」
杏奈がそれを拾い上げる
それは、数枚の写真
女性の顔が写った写真であった
「この前の・・・」
「クイーンの写真じゃん」
それは、以前太田が突き止めた
ストーリーテラーの人間時代の素性の写真であった
「ああ、すまない」
「そういや、この前は途中までしか聞けなかったっけ」
杏奈が、そんなことをいう
以前は、日暮・・・サンについてで頭に血が昇っていた翔も頷く
途中で、テラーが発生してしまい
結局、最初に話したサンの罪状しか聞けていなかった
「ん?・・・ああ、そういえばそうか」
太田が、思い出したかのようにそう言い席に座る
そして、写真を広げて話始めた
「残りは、姫川と、金子だったか」
そういって、姫川と金子・・・クイーンとペローの写真を指す
翔と杏奈もまた席に着き、完全に聞きいる体制に入る
「一体、こいつらなにやらかしたんです?」
「・・・。」
浩司が、少し口を噤み
姫川の写真をつまみ上げる
「4件の結婚詐欺」
「・・・えっ?」
「結婚・・・詐欺?」
太田がそう呟く
しかし、その内容は思ったよりも・・・
比較対象が、連続放火のサンに比べると随分と軽い
しかし──
「・・・
杏奈が息を呑む音が店内に響く
罪状はそれだけでは、決してなかった
4名の殺人がさらに付与される
「そりゃあ・・・」
大変な罪状だ、と翔が言おうと口を開いたが
その口は直ぐに噤むことになった
太田が、翔の言葉を遮るようにさらに告げる
「・・・そして、その4人との間に生まれた4名の子供」
「その内、生後2か月の第4子を除く、3名の
※
『あら?・・・あなた、
返ってきた反応は、自身の予想とは大きく違っていて
何とも思っていないような
いや・・・興味もないような声色が酷く
ラストの耳に、響き渡った
「・・・え?」
震える声で、何とか反応を返す
「いや・・・母さん、私は・・・失敗して・・・」
『そうなの?』
不思議そうな顔をした母に、ラストは狼狽えながら
しどろもどろになりながら
言葉を紡ごうとする
しかし、母はそんなことも意に介そうともせずに
テラーの方へと向き直る
『まぁ、いいんじゃないかしら?
「・・・え?」
『8年掛けたあなたでも、駄目そうだけど
私は彼を見つけたわ!』
『きっとこの子と彼は上手くやれるもの
・・・心配なんてしていないわ?』
どういう・・・ことだろうか
なぜ、何も言わないのだろうか
怒りは、失望は、自身に向けられるべきものはどこだろうか?
「か、母さん・・・次は、次は上手くやるよ!」
取り乱しながら、ラストは母に詰め寄る
『・・・?』
しかし、クイーンは心底不思議そうな顔をして
次の言葉を紡いだ
『
「・・・何・・・って?」
ラストには理解ができなかった
彼女が何を言っているのかを
自分は、彼女にとって重要な、大切なもので・・・
『頼むようなこと、もう何もないわよ?』
『彼らが全て上手くやるもの、
あなたは、もういいわよ?』
「」
瞬間、頭が真っ白になった
ここまで、言われて
初めて彼女が言いたいことが伝わった
自分の役目は、おしまいだ
奥から、テラーが顔を覗かせ
それに気づいた、母が
自分から目線を外し、上機嫌で彼らに寄っていく
もう、自分に向けた意識は
どこにも残っていなかった
「ふ」
頭の中がまとまらなかった
不要になった自分は一体、何なのか
彼女の希望ではない自分は何のための存在なのか
なぜ、いらなく、なったのか・・・
そんなことが延々と頭を回り続け
もうなにも分からなくなって
眼前の、3体の怪人に
自分から、何かを奪い取っていこうとしている奴らに
ただただ、ぶちまけた
「ふざけるなあああああ!!!」
『
『Love Disappears as Bubbles』
『
グリップから生やした剣を持って切り掛かる
それを見た3体の内、1体が細身の剣でそれを受け止める
2体目が飛び上がり、自分の背後に着地する
そして、背後から自分を突きさそうと、剣を突き出す
剣先が、ラストの体を貫こうとしたその時
剣先が肉ではなく、ただの水を貫いた
全身を液状化し、浮かび上がる
そして、1体目の剣を弾き、2体目の背後へ
そのまま背面に切り掛かる
しかし、控えていた3体目がその攻撃を受け止めた
再度液状化し、今度は地面へと潜る
そして、地面から飛び上がるかのように
1体目の眼前から飛び出した
すれ違いざまの不意打ちが、その体を切り裂く
『ぐぅ!?』
有効だ
ラストはさらに地面に潜り
2体目3体目の方も撹乱しながら不意を突き
その攻撃を与えていく
そうだ、自分は強いのだ
このまま、こいつを倒せば
きっと、母も自分を・・・
『何してるの?』
母の声が聞こえた
見られている、そうだもっと見てくれ
私が勝つところを──
『ジャック、
──なんで
「──うわああああああ!!!」
叫びながら、再び地面に沈んでゆくラスト
それに対し、3体のマスケティアテラー達は
先程までとは、全く異なる行動を起こした
3体で集い、細身の剣を重ね合わせ、掲げる
まるで、何かの誓い合うかのような行動をした
その瞬間、3体の様相が変化していく
重ねた剣から、まるで溶け合うかのように
3体が中心へと集まっていく
完全に混ざり合い、その姿が形作られていく
「消えろおおおお!!」
ラストが、再度地面から飛び出し、その剣を振るう
鈍い金属音が響いた
そして、下から剣を振り上げるように飛び出したラストは
その音がした瞬間に、上昇することなく停止する
「!?」
受け止められたことに驚愕し、テラーを視認する
そして、さらに驚愕する
そこにいたのは、自分が狙っていたテラーの1体ではなかった
いや、1体ではあった、しかし残りの2体がいなくなっていた
銃士の意匠はそこまで変わってはいない
しかし、その体型は全く持って別物である
ひと際巨大化した、肉体の側面
通常ならば、2本のみ生えているはずの腕が、
顔の側面、そこには、
それは、
常人離れしたその様相に度肝を抜かれるラスト
そのためもあってか、液状化が遅れた
2本目の腕が、受け止めた剣を掴み取り固定する
「!?」
次の瞬間、すさまじい勢いで、残りの4本の腕がラストに襲い掛かった
2本の腕がもった剣と、固く握りしめられた2つの拳が一斉に迫る
斬撃と殴打の乱舞がラストを完膚なきまで叩きのめしていく
苦悶の声を上げる暇も無いほどの連続攻撃をラストは為す術もなく食らい続ける
そして、トドメといわんばかりに、
拘束を解き自由となった腕も加えた6本すべての腕での強力な攻撃が
ラストを廃墟の壁へと叩き込んだ
「ぐぁあああああ!!」
脆くなった壁ごと突き抜けて屋外へと吹き飛んでいくラスト
崩れた壁からは、もう誰も出てはこなかった
※
『凄い!楽勝ね!!』
クイーンが跳ね上がるほどに喜びを露わにする
この前まで、子と呼んでいた存在がああなったというのに
そんなこと微塵も感じさせなかった
『容赦ないなぁ・・・』
『!?・・・あら、ペローじゃない』
その様子を遠くから見ていたのはペローである
全てが終わってから出てきた彼は、そのままクイーンに突っかかる
『大切な駒だったんじゃないのか?
あんな雑に処理しちゃうなんてさ』
『だって不要になったのだもの』
悪びれもなくそう言い放つクイーン
『いらないなら、僕にくれてもよかったのに』
『あら、欲しかったの?
悪いことしちゃったわね』
そういうと、クイーンは何か思いついたかのように
何かを探し、引っ張り出す
そして、それをペローに対し乱雑に投げ渡した
『じゃあ・・・代わりにこれを差し上げる』
『っと・・・おいおいこれは』
押し付けるように渡されたのは
チケットと9のトランプ
『情けのつもりか?』
『だってもういらないもの』
そうとだけ言うと、クイーンはテラーを引き連れ奥に引っ込んでいく
もう、ラストのことなど覚えてもいなさそうであった
『チッ・・・余裕ぶりやがって
・・・でも、いいのが手に入った』
ペローはその余裕な姿に苛立ちながらも
手に入ったチケットを眺めながら作戦を立て始める
『どうにかしてアクトをおびき出したいな・・・』
『呼び出し・・・全員来るか
人質・・・うん、これで行こう』
『だれが良いかな~♬』
※
壁を突き抜け、地面を数度跳ね
長く滑ったのち、ラストは停止した
変身が解ける
痛む体を押さえながら、何とか立ち上がる
「うっ・・・あぁ・・・っ・・・」
逃げなければ、殺される前に
最早、あの場所に居場所などなかった
命欲しさにただその場から離れることだけ考えて
ボロボロになった体を引きずって進んでいく
擦り傷切り傷から血を滲ませながら
ゆっくりと歩いていく
どれくらい歩いたかもう分からなかった
どこを歩いているのかも分からなくなって
歩くのにも疲れてしまった
そして、たどり着いたのは
きっと偶然だったのだろう
いつぞやの公園にたどり着いていた
這うように進んで、いつか座ったベンチの目の前で倒れる
痛みに耐えるのも限界で、体力はそこを尽きていた
だが、それよりも、心がもう限界であった
・・・もう、おしまいなのだろうか
自分の名の場所が、こんなつまらない場所だったとはと
泣きたくなりながら、瞼を落とそうとした
その時
「君は、会うたびにボロボロだねぇ」
そんな、間の抜けた声が聞こえた
顔を上げる
「意識はありそうだけど、・・・全く持って大丈夫じゃなさそうだね」
いつかあった、変な男がそこには立っていた
※
「いやーあれから簡単な薬箱を持つようにしたけど
全く持って足らなかったね!」
またもや、走って薬局へ行って
大量の包帯を抱え込んで舞い戻ってきた大木に
ラストは顔までぐるぐる巻きにされながら介抱されていた
「うん、とりあえずはこれでいいかな
イヤー最近の軟膏とかはすごいねぇ」
擦り傷切り傷に薬を塗って
包帯をこれでもかというほどまで巻いて
何とか座れるくらいにまでになったラストに並んで座る大木
相も変わらず、どこか気楽そうな男だというのがラストの感じたことであった
「・・・それで?
一体何があったんだい?
その怪我は、ちょっと転んだくらいじゃないと思うけど」
「喧嘩とかなら、加勢は遠慮したいが
仲裁位なら、力になれるかもよ」
こちらが落ち着いたと見たとたんに、切り込んでくる男
手当をして貰ったうちに、ほんの少し冷静にもなれた
なぜ、この男に話さなければならない
そんな風に思っていたのだが
「・・・私は」
「うん?」
「私は・・・もうおしまいだ・・・。」
「・・・うん」
自分でも、驚くほどに
素直にその言葉を口に出していた
「望まれたものを成せず、失敗を続け
後から来た者に成り代わられ
・・・母からも見捨てられた」
「そうか・・・」
「私には、何もない
もう、終わるしかない・・・」
「何も為せず、何にもなれず
ただただ消えるだけの粗末な終わりにするしかない・・・!」
一度口にすれば、後から後から湧いてくる
情けなさから涙がこぼれる
そんな姿を、あろうことか何も知らぬ男に
自分はさらけ出していた
「そっか・・・大変なんだね」
男は、遠くを眺めながら
そう口にすると、ほんの少し考えて
一枚の紙を取り出し
何かをサラサラと書き綴っていく
「──これが、今の君なんだね」
そして、その紙をこちらに見せる
その中には
"少年は、全てを失い
親からも見捨てられて、
一人ぼっちになってしまいました。
おしまい"
そんなことが、書いてあった
「なんだこれは・・・!」
文章を見て、苛立つ
今の自分を端的に再確認させられてバカにされた気分であった
そういうと、男はさらに同じ紙に何かを書き綴っていく
そして、再度それを見せる
"少年は、全てを失い
親からも見捨てられて、
一人ぼっちになってしまいました。
おしまい
けれど、少年は新しい仲間を見つけました。
そして、彼は新しい仲間と笑い合って
末永く、幸せに暮らしました
おしまい"
見せられたのは、文章の書き加えられたもの
「なんだ・・・これは」
「
そして、メモをこちらに握らせる
「ふざけるな、こんなもので慰めたつもりか」
「そうじゃあない、けど
・・・
男は、微笑みながらそんなことを口にした
「何・・・?」
「うん、おしまいにはまだ早いんじゃないかな」
男が席を立つ
日差しが男の顔に照り返し、酷く眩しく見えた
「僕は、話を作る仕事をしているんだ」
これは自論だけどね、と前置きをして男は話始める
「君は、そういう人が──
いつ、おしまいを使うか知っているかい?」
「・・・?」
どういう意味だろうか、
おしまいは、おしまいだろう
話がこれ以上、先がない時に付ける物だろう
「うん、それはそうだ
・・・でも、それだけじゃないんだ」
「おしまいはね、
「──。」
「伝えたいことは書ききったところで、
一番ここで終わらせるのが美しいと思ったところでつけるんだ」
そうじゃないと、書く意味がないだろう?
そう言うと、男が向き直る
そしてこちらに語り掛けてくる
「例えば、僕は"めでたし"が好きだけど、
君は、そのおしまいで満足できるのかい?」
「・・・できるはずがない」
そうだ、何も為していない
何にもなれてもいない
そんな場所でおしまいは、満足からは程遠かった
「だが・・・もう、私には何の目的も目指すものも・・・」
「じゃあ、
「」
男が、考えもしなかったことを言いのけた
「それは、いいのか・・・?」
「いいも悪いもないさ、だから、満足だよ」
そう男が言った
「満足・・・」
その時だ、ズウンと鈍い音が鳴り響く
目の前にあった木が突如へし折れた
「「!?」」
突然のことに硬直する2人の目の前に
長い棒を携えた、サルのような怪人が現れた
『やぁ、久しぶりだねぇ』
「!?・・・お前は」
そして、そのさらに後ろから、ペローが現れる
『アクトを呼び寄せたくてさぁ
少し捕まってもらえるかい?』
「っ狙いは僕か」
そう言うと、大木がラストの手を掴み駆けだす
「逃げるよ!」
「っ!」
公園の木々を茂みを通り抜け
できる限り見失わせるように駆けていく
『逃がさないよ・・・追え!』
『オゥ!!』
サルの怪人もまた駆けだした
それを眺め、満足そうなペローもまたゆっくりと歩み行く
『・・・しかし、あのミイラはなんだ?』
※
駆けて、駆けて
既に廃棄されたような工場跡に逃げ込んだ
物陰に隠れながら
大木が電話を操作していく
「はやく、速く出てくれ~雄飛君・・・翔君でもいい」
中々電話に出ないことに焦っている様子をラストは黙ってみていた
「・・・ああ、巻き込んでしまってすまないね
大丈夫、何とかなるから」
こちらの視線に気づき、そう言う男
自分の危機なのに、相手を気遣う余裕などないだろうに
その時、すさまじい轟音が遠くから聞こえてきた
怪人がどうやら工場内に入ってきたらしい
見つかるのも、時間の問題だろう
「・・・追いつかれてきたか」
「おい、ここもまずいぞ」
もっと逃げろ、とそう伝える
男は、少し考えて・・・とんでもないことを言い出した
「・・・よし、僕が囮になる
君はその隙に逃げるんだ」
「何・・・?」
何を言っているのだろうか
この男は、唯の人のくせして
怪人の前に躍り出ようというのだ
隠れ場所から、立ち上がり音のする方へ進もうとする
「待て!」
咄嗟にその手を掴む
自分とは、なんの関係もない男の命だろうに
何故か、男を止めてしまう自分がいた
「・・・無関係の君を巻き込むわけにはいかないんだ。
大丈夫、捕まえるって言ってたから殺される訳じゃない」
「あれだけ、人生について大口叩いて
危険にさらすわけにはいかないからね」
そう言うと、男はやはり進もうとする
分からなかった
自身の命の危険で
なぜこうも人を優先できるのだろうか
「・・・分かった」
「ああ、しっかりと逃げて──」
それを見てラストは
「だが、逃げるのはお前だ」
「え?」
どうしても、放っておけなかった
『ラストドライバー!!』
ドライバーを巻き、隠れていた場所から躍り出る
「待て!君は・・・!」
『MIRAGE TORCH』
「──変身」
『
『What The Fire Showed Was All Illusions』
『
グリップを引き抜いた瞬間
包帯まみれの体が、仮面ライダーへと変わる
大木を一瞥し、仮面ライダーラストは
音が響く場所に駆けだした
呆然として、それを大木は見送る
電話が鳴る
雄飛と書かれた着信を大急ぎで取り
大木は
「雄飛君!!急いでくれ!
もう戦いが始まってる!!」
続く
次回 仮面ライダーアクト
ラストの真意とは
『お前、なんのつもりだよ!!』
「──知るか!!」
雄飛達は、彼をどう思う──?
「一緒に・・・」
「そんなつもりはない」
『そう、邪魔をするのね』
「よく見ておけ、
第23章[Stand by Me]