廃れた工場の壁が吹き飛ぶ
崩れた瓦礫の中から、ヌッと頭に金の輪をはめたサルの怪人が姿を見せる
辺りを見回し、目的が発見できないことを確認し踵を返す
そうして、次の場所への散策へと移る
『...?』
しかし、その目の前に一つの影が現れる
進もうとするテラーのその道を遮るように
仮面ライダーラストはそこに立っていた
『何者だ・・・?』
「・・・。」
手にしたグリップを強く握り込み、軋む音が静かに響く
それだけが、返ってきた返答であった
ラストが駆け出し、グリップから火を吹き炎を纏った拳を振りかぶる
それに対しテラーが手にした棍でそれをいなし、避ける
拳を避けられ、よろけたラストの足をテラーが払う
転倒したラストの脳天を割らんと棍棒が振り下ろされた
両腕で頭へと迫るそれをガードし、そのまま競り合いへと移る
テラーの怪腕が腕ごと頭を圧し潰さんと棍棒を押し込む
剛力に腕がどんどん下がっていく
それに対しラストは
「ぐ・・・!」
拳を握り込む
こちらに夢中のテラーのその顔の隣に
炎が浮かび上がり、拳を形作り始めた
「っ・・・らぁ!!」
『ごぉ!?』
炎の拳が、油断していたテラーの顔面へと突き刺さった
棍棒の力が抜け、拘束が解ける
そして、今度はラスト本体からの鋭い拳が
ふらついたテラーのその腹部へと鈍い音を立てながら振るわれた
後ずさり、足元がふらつくテラー
起き上がったラストはさらに追撃を重ねるべく駆け
「!?」
何かが高速で目の前を横切り、ラストが撥ね飛ばされる
「っく!?」
『おいおい・・・どういうこったよ』
ラストを撥ね飛ばした物体が停止しその姿を現す
その戦場に乱入したペローは
獅子の体を翻し、この状況に困惑していた
ラストが、ペローに対して殴り掛かる
しかし、その攻撃は通ることなく
迫る拳をペローはしっかりと掴み取った
『お前、なんのつもりだよ...!』
掴み取った拳が押し込まれるのを押さえながら
ペローが訝し気に問う
それに対しラストの答えは
「──知るか!!」
そうだ、理由なんて自分でも分からない
けれど、それをなぜかしてしまう自分がただそこにいるだけで
それを言葉にすることがラストにはできなかった
掴まれた拳を引き剥がす
次の瞬間、ペローの背後に
2つの炎でできた剣があらわれた
背後から剣がペローへと襲い掛かる
『フン!!』
「!?」
しかし、その剣はペローに触れることなく叩き落される
腹部のダメージから立ち直ったテラーのその棍棒が
迫りゆく炎をかき消していたのだ
『・・・まぁいいや。
・・・君いらないみたいだしねぇ』
「──っ」
それが、ラストの逆鱗に触れる
ラストが駆けだし、殴り掛かる
突き出した拳は空を切り
避けた後の隙目掛け、ペローがラストの背を蹴りつける
バランスを崩した体は、そのまま前のめりに倒れ込んだ
「っっ!!」
イラつきのままにバンと地面を一度叩き、起き上がる
そんな様を、ペローとテラーは愉快そうに見ていた
『ハハッ・・・憂さ晴らしに丁度良いかも』
『フン・・・』
2体のテラーがラストへと襲い掛かる
強靭な腕と棍棒の連打
息もつかせぬほどのその乱舞をラストは何とか避け続ける
反撃もできぬほどの過密な攻撃
避けるのも限界になり、棍棒の一撃がラストを突き飛ばす
崩れた体制のラストにさらにペローが飛び掛かる
絶対絶命のピンチに
ズガンと
銃声が鳴り響いた
『ぐぁ!?』
『何!?・・・ぐお!?』
銃撃を喰らったペローとテラーが吹き飛ぶ
驚いたラストが攻撃の方を見る
そこには
「どうなってんだ・・・これ」
「おい、大丈夫!?」
仮面ライダーアクトとサウンドが立っていた
直ぐにアクトとサウンドがラストへと駆け寄る
そうして、肩に置かれようとした手
「・・・っ寄るな!!」
そんな手をラストは咄嗟に振り払った
そして立ち上がり、テラーに向けて再度駆けだす
「あっ・・・おい!」
「仲間割れ・・・なのかな?」
そんな姿を見て状況は把握できない2人であったが
それでも、テラーは捨て置けず
ラストに追従する形で駆けだした
『ッチ・・・横槍か』
『いや、好都合だ・・・そっちは任せたよ!!』
駆けてくるラストを構わず
ペローがアクトに向けて駆けだす
ラストがテラーと
そしてアクトとサウンドがペローと組みあい
戦いはさらにヒートアップしていくのであった
※
アクトの風を帯びた蹴りとサウンドの槍の振り回しを
ペローは跳ねるように動き回っては避け
そのペローの強靭な爪の引き裂きを
アクトとサウンドはしっかりと防御していく
まさに一進一退の攻防が両者の実力の拮抗を示していた
しかし、それも長くは続かなかった
「!?・・・また・・・か!」
突然アクトの動きが止まり、悶えだすかのように痙攣を始める
「っやべぇ!?」
『・・・来たか』
それをみてサウンドは危惧を
そしてペローは待ちわびていたかのような歓喜を示す
それは何度も見た、彼の暴走への最初のステップであった
サウンドが、暴走する前にベルトを剥ぎ取ろうとアクトへと駆け寄ろうとする
しかし、それはペローの横からの攻撃が邪魔をした
「どけ!」『悪いけど、こっちに用があるんだ・・・!』
「あっ・・・ぐぅううう!■■■──!!」
『
瞬間、アクトの姿が荒れ狂う獣の様相の
ビーストフォームに変異する
そして、紅く濁った瞳が最初に見たものは
組み合う、ペローとサウンドの姿であった
アクトが2人目掛け駆けだす
『ハッ』
「うわっ!?」
ペローが迫りくるアクト目掛けサウンドを蹴り飛ばす
蹴り飛ばされたサウンド
次の瞬間には、彼にアクトが飛び掛かっていた
迫りくる腕を槍で受け止める
びりびりと痺れるほどの衝撃が自身の腕を襲った
「ぐっ」
「■■──!!」
着地したアクトが槍ごとサウンドを抑え込んだまま
もう一方の手を振りかぶる
そして防御ごと全力で殴りつけ、サウンドを吹き飛ばした
吹き飛ばされたサウンドが落ちた場所は
そのまま、戦闘を続けていたテラーとラストの真っただ中であった
「なに!?」
『ぐぉ!?』
サウンドとテラーが衝突し、テラーが吹き飛んでいく
突然の事態にラストが驚愕し
・・・そして荒れ狂い雄たけびを上げこちらに迫りくるアクトを見た
振り下ろされたアクトの腕をサウンドを抱えたまま転がるように避ける
「邪魔だ!・・・なんだあれは?」
「見てわかんだろ!見境なく暴れてんだよ」
ラストは、のしかかるサウンドを蹴り飛ばし
驚愕しながら、そんな感想を漏らす
それに律儀に答えながらサウンドが駆けだす
「何・・・?」
見ればそこにいたのはこれまで自身と戦った際の姿とは
遠くかけ離れた戦い方でペローに襲い掛かるアクト
その姿はまさに暴れているとの形容がぴったりであった
「こっちで手いっぱいだ・・・そっちは頼むぞ!」
アクトの下へと駆けていく
振るう槍がたやすく受け止められ
引っ張られるように振り回されていた
──頼むだと?
勘違いするなと、そう伝える前にやつは駆けてしまった
追いかけて訂正をする──には
棍棒が振り下ろされる
それを避けて、再びサルのテラーと相対する
どうもこの怪人が邪魔であった
※
サウンドとアクトが争い合うのを安全圏から眺めるペロー
その手には一枚のカード
トランプの9のカードであった
『さて・・・あれだけ暴れられたら手が付けられないけど
これを入れれば・・・多少の隷属は付くだろう』
クイーンから得た、トランプの最後の一枚
これによってテラーの強化と隷属性の向上
それこそが、アクトをおびき出してペローが取ろうとしたプランであった
多少の想定外があったが、問題はない
ペローは、トランプを手にアクトの不意を突くように近づいていくのだった
ボウガンを構えたサウンドが弾丸を放つ
高速で飛ぶそれを、アクトは跳ねまわるように次々と回避し
どんどん距離を詰めていく
そして、肉薄しアクトがサウンドの武器を叩き落とした
武器を失ったサウンドにアクトが拳を放つ
胸部を穿たんとするそれをサウンドは
甘んじて受け入れた
「■■!?」
「ゴフッ・・・掴んだぞ・・!」
アクトの拳が動かない
胸の手ががっちりと掴みこまれている
そしてその眼前にズイとサウンドの、その肩が寄せられ
次の瞬間、肩のスピーカー型のアーマーが轟音を鳴り響かせる
超至近距離でそれを喰らったアクトは、耳が張り裂けそうな痛みに動きが鈍る
「(──今だ!)」『よくやった!』
「!?」
動きが止まったアクトのベルトを外そうと、サウンドが手を離したその瞬間
ペローがアクトの背後に現れた
次の瞬間、アクトにトランプが突き刺さる
それが体に埋まっていき
次第にアクトの体に変化が訪れる
まるで、金属製の鎧のようなものが空中に現れ
アクトの体に張り付いていく
「■■──!?」
アクトが驚愕のような声を漏らしたと思えば悶えだす
その隙に、体にどんどん体に鎧が張り付いていく
「何を!?」
『ハハハッ!!作戦通り!
これでこいつは僕のしもべだ!!』
サウンドが目の前の光景に驚愕し
ペローが愉快そうに笑う
勝った、とこれで自分も有効打を手に入れたと
奴らを見返す駒を手に入れたと
ペローは楽しそうに笑う
──だが、それは一瞬のことだった
「■■■──■■!!」
既に鎧どころか全身に金属が纏わりつきまともに動けなくなったアクト
阻害され動かない腕を軋ませながら無理やり動かしていく
そして、腕が肩に届いた
「■■■──!!!」
空気を揺らすほどの大きな咆哮が響く
ブチリと痛い音を立てて
アクトが、まとわりついた鎧を引きちぎった
『・・・ハ?』
肩、腕、胸・・・次々に鎧を引っぺがす
無理やり剥ぎ取られた鎧がどんどんひび割れていく
そして、再度アクトが絶叫したその時
全身の鎧が砕けちった
アクトの体から、突き立てられたトランプがスルリと抜け落ちる
そして、それは地面に落ちる前に、燃え尽きた
『なんだよ・・・それ・・・!』
先程までの高笑いが嘘のように狼狽えるペロー
そして、その声を怒り狂ったかのようなアクトは聞き逃さなかった
『
瞬間、アクトが消えるように高速で移動を開始する
そして、一瞬の内にペローの目の前に現れた
『!?』
「■”ぁ”■”■”■”あ”──!!!」
アクトの足に、エネルギーが集う
輪郭すら分からなくなるほどの薄暗い力に覆われたその脚が
ペローに回避すら許さず、放たれた
『ぐぁああああ!!』
強烈なキックに吹き飛ばされるペローは
ぶつかった廃材をまき散らし、砂煙を上げながら
吹き飛ばされていた
『──ゴホ・・・く”そぉ・・・』
息絶え絶えといった様子で何とか体を起こす
憎たらし気に、アクトを見つめ
けれど何もすることはできずに
ペローは消えるように去っていった
「──ハーッ・・・ハーッ」
大きく肩で息をするアクト
その背後から──
『
『!?』
疲労で反応が遅れたその体に
サウンドの必殺技が叩き込まれる
不意打ちは、一撃でアクトの意識を刈り取り
アクトは雄飛へとその姿を変えるのであった
「手間かけさせやがって・・・
あっちは・・・?」
サウンドがテラーとラストが争っていた方角を見ると
次の瞬間、建物が巨大な爆発音とともに大きく揺れる
・・・どうやら向こうも済んだようだ
※
ラストがグリップを握り込み突貫する
テラーが棍棒を大きく振るう
振り回されたそれをくぐるように避け懐に入る
腹部を殴る、殴る、殴
さらに大きく振りかぶり、勢いよく殴りつける
連続した腹部への衝撃にテラーが苦悶の声を上げる
その頭上に炎の棘が複数現る
「フッ!!」
ラストが振りかぶった瞬間、数多の棘が一挙に降り注ぐ
『甘い!!』
「!?」
棍棒をまるでプロペラのように高速回転させ、棘を弾き飛ばしていく
攻撃が防がれ、驚愕するラストにテラーが棍棒を突きつける
次の瞬間、突如棍棒が伸びた
伸びた棍棒のがラストの体を突き刺さり、突き飛ばす
「がっ!・・・ぐぅら!!」
吹き飛び、地面に叩きつけられながらも
ラストはさらに攻撃を仕掛ける
炎弾が、ラストの拳から放たれテラーに襲い掛かった
テラーはそれを跳躍し、回避する
空中でさらに追撃の炎弾が飛んでくる
しかし、それが当たることは無かった
テラーの下に煙のような何かが集っていく
それは、雲であった、小さな雲に乗ったテラーが飛行しながら
炎弾を避け、ラストに急速に近づいていく
「ぐぁっ!」
通り際に棍棒を振り抜かれ、ラストに叩きつけられる
そのまま何度も往復するかのごとく連続でラストの横を通り過ぎていく
棍棒の乱打をその身で受けていくラスト
どんどんダメージは積み重なっていく
「──。」
最早立つこともままならず、膝をつく
『止めだ!!』
好機と見たテラーが、真正面からラストに突撃する
振りかぶった棍棒を真っすぐ突き出し
ラストのその体を串刺しにして殺そうと向かい来る
絶体絶命のピンチ
──けれど、彼は負けるわけにはいかなかった
こんなところで、おしまいにしたくないと
そう、思ったばかりなのだ
伸ばされた棍棒の先端がラストに突き刺さる
──だが、貫きはしていなかった
ラストのその左手は、体にぶつかったその棍棒を確かに掴み取っていた
『なに──!?』
「!──うぉおおお!!」
『
次の瞬間、ラストの隣に炎でできた巨大な腕が現れる
固く握られた炎の拳は、まっすぐ、そしてすさまじい勢いで
棍棒を掴み取られ、逃げるのが遅れたテラーの
その全身を飲み込んで、焼き尽くしながら工場跡の脆くも分厚い壁に叩きつけられた
爆風が、廃工場の砂埃を巻き上げていく
手に握った棍棒が砕け散るかのように消え失せる
それを見届けて、ラストはただ意識を失った
「────い!?」
気絶する前に、何か聞いたばかりの騒がしい声が聞こえた気がしたが
きっと何かの勘違いだろう
※
「おい!・・・大丈夫かい!?」
戦闘が終わった後、力尽きたかのように倒れたラストを
大木は駆け寄って、その安否を確認する
あれだけの怪我をしたまま、これだけの戦闘をしたのだ
その疲労はすさまじかったのだろう
──幸い、呼吸はしている
だが、どう見ても元から怪我だらけであった体が
さらにボロボロであった
「大木さん!・・・と、そいつは・・・!」
変身を解いた翔が、気絶した雄飛を背負って現れる
自身たちを呼び寄せた、大木と
その大木に介抱されている敵の男
「新田君!いいところに!──彼も運ぶが良いよな!?」
「えぇ!?」
突然の申し出に戸惑う翔
──しかし、大木の必死な顔
そして、まるでボロ雑巾のように傷だらけの男を見て
頭を掻きながら、それを了承するしかなかった
※
喫茶テアトロ──
「結論から言うと、彼は人間だ」
店の奥から、運び込んだラストを調べ終えた浩司と音石はそう言う
いわく──
「ただ、肉体的な部分におかしな部分がいくつか見られた」
「おそらく、テラーの怪人化技術の流用だな
・・・急速的な成長の痕跡も見られる」
とはいっても、あくまで肉体的に頑丈な程度で
変身への負荷軽減のための物だろうと
そう二人は結論付けた
そして、急速的な成長という点に関しては
本人の言動や、姫川の罪状から考えられるに一つの結論が予想された
太田さんに目配せしてみる
頷きを返された、どうやら同じ考えのようだ
「おそらく、彼が8年前に姫川と連れられ姿を消した赤子だろうな」
「・・・まて、じゃああいつ8歳なのか!?」
「肉体的には、既に成人付近だけどね」
翔が驚愕の声を上げる
自分もそうだ、あの男はどう見ても小学生なんて見た目ではない
既に大学生や社会人で十分に通用する程度の見た目であった
「精神の育ち切っていない、自分の子供に洗脳じみたことをして
戦いに駆り立てていたわけか・・・!」
翔が怒りに震えている
許せないのは、他の誰もがそうであった
「じゃあ、一体何であいつはテラーと戦うなんてことを?」
まさか、仲間割れ?
杏奈さんが、そんな疑問を提示する
「・・・彼は、母に見捨てられたと言っていたよ」
それに答えを示したのは、彼をここに運び込んだ大木さんであった
「捨てられた・・・?」
「いらなくなってことか?なんでまた」
「知らないわよ」
翔と杏奈さん達があーだこーだと話しているのをしり目に
浩司さん達は、渋い顔をしていた
「・・・彼は何か知ってるかもしれないな」
「まだ、目を覚ましてないんです?」
「ああ、よく寝ていた」
「・・・尋問まがいのことをしたくはないが
彼は貴重な情報源になることは間違いない」
そういって、音石さんが店の奥に入り彼の様子を見に行く
──確かに、彼の身の上を知った上で無理やり情報を聞き出すのは心が痛む
しかし、やらなければならない
実際のところ、こちらは完全に後手に回り続けているのだ
せめて、テラー側の目的だけでも突き止めておきたかった
店の奥から、大きな物音が立つ
廊下の方から、大慌てで、見に行った音石さんが戻ってきた
「大変だ!──彼が消えた!!」
「「「「「「何ぃ!?」」」」」」
※
見知らぬ部屋、覚えたことのない感触に包まれラストは目を覚ました
フカフカとした布団から飛び出し辺りを確認する
ここは一体どこなのかと思い出す
あのサルの怪人を倒した後、一体どうなったのかと
そんな思考をしていたら
やけに騒がしい声が遠くから響いてくる
何度か聞いた声もある声であった
ゆっくりと、声の方へと進む
少し開いた扉から、覗き込むと
騒がしくも、どこか楽しそうに話し合いを行う
見知った集団が、そこには居た
自身を手当てした、お節介な男も混ぜて
それを見て、ラストは
どうしてか、そこにいられなくて
逃げるように
静かに、裏口から去っていった
──それが自身が目覚めてからの行動である
ラストは、当てもなくさ迷い歩いていた
どうすれば満足できるのか
大木から、示された続ける理由
それが分からないまま
思い浮かぶものと言えば
──あのテラー
そうだ、自身をコケにした、あのテラーだけは捨て置けない
それを打破する
──その後は?
──その後は・・・
そこでまた、考えが浮かばなくなる
「・・・いた!」
「!?」
そんなときである、大きなエンジン音を鳴らしながら
2台のバイクが自身の目の前に現れた
「っ探したぞ」
「貴様・・・!・・・っっ!?」
ドライバーを構えようとするも、それが手元にないことに気が付く
咄嗟に、逃げるように去ったため
それを置いてきていたことに気が付かなかった
咄嗟に逃げるように踵を返す
「ああ!待って!・・・これ!!」
そういって、アクトと呼んでいた男が何かを突き出す
それは、自分のドライバーであった
「・・・。」
手渡せられたそれを、普通に受け取ってしまう
「・・・何のつもりだ」
「いや、つもりっていうか・・・忘れ物だし?」
困ったように男が、頬を掻きながらそういう
──分からない
「なぜ、助ける?」
そうだ、あそこにいたのは奴らが連れてきたのだろう
それはなぜ?
──普通なら、捕虜だろう
だが、なんの拘束もせずにそれをするのはおかしい
さらに、逃げてから気が付く
包帯はしっかりと巻かれ直し、それ以外も補填されている
つまり、彼らは自身に手当を行った
それだけを、行っていた──
「なんでって・・・なぁ?」
「怪我人はほっとけないしな?」
そういって、2人の男は顔を合わせて不思議そうにする
その様子が、なぜか無性に苛立った
しかし、何を言うべきなのかが、咄嗟には分からなかった
「・・・テラーのところに戻るのか?」
「!?」
そこに、アクトが切り込んでくる
「──関係ないことだ」
「行く場所、ないんじゃないのか?」
「・・・。」
否定の言葉を出そうとして、
母と呼んだ者の顔を、思い出して
それが口から出なかった
その様子を見て、アクトは何かを確信したような様子を見せる
「俺たちのところに、来ないか?」
「──なに?」
そんなことを口走った
「テラーと戦うのなら、俺と一緒に──」
「ふざけるな!!
・・・そんなつもりはない!!」
声を荒げ、それを拒否する
「まぁ、そう言うなよ?
仲良くできないか・・・?」
サウンドと呼んだ男が、そんなことを言いながら近寄って来る
馴れ馴れしいその顔を見て
自分は、その体に拳を入れる
「ぐぉっ」
「しょ、翔!?」
腹を押さえ蹲る男にアクトが駆け寄る
「──私はもう・・・誰にも
そうだ、もう自分は誰の指図も受けない
誰の指示も頼りにはしない
踵を返し
足早に立ち去ろうとする
「・・・人間は一人じゃ、何もできない。」
背中越しに、アクトがそう言い放つのを聞きながらも
足は止めない、止められない
「縋るだけが・・・関わり方じゃないよ」
「・・・。」
歩くのではなく、駆けるようにその場を後にする
その姿を、雄飛はじっと見ていた
※
息が切れるまで走り抜ける
そうまでして、彼らを見たくなかった
息を整えた時に、握ったままのドライバーが目に映る
「──。」
次の瞬間
自身の立っている場所に変化が訪れる
日本的な街並みが
一気に西洋風の街並みへと変わっていく
これは、自分もよく知る現象であった
ラストが駆けだす
変化の中心地には
それを守るように鎮座する
6本腕のあの怪人と
『あら』
母と呼んでいた存在が、そこには居た
『ペローから聞いていたけど
ほんとに生きてたのねぇ』
「──っ、私はあなたを許さない・・!」
『STATUE OF HAPPINESS』
弓と化したグリップをクイーンに向け引き金を引く
鳥型の弾丸が一直線に飛んでいき
間に割って入った、マスケティアテラーに叩き落とされた
「──貴様から!!」
連続で弾丸を放っていく
飛んでいく弾丸は、曲がりくねりその弾道を変えながら突き進み
前から後ろから襲い掛かる
『無駄だ・・・!!』
しかしそれを、6本の腕が完全に叩き落しながら
どんどん近づいてくる
そして目の前に到達したテラーは両腕を振り下ろす
弓でそれを受け止める細身の剣と金属でできた弓が火花を散らす
次の瞬間、ラストの脇腹に衝撃が走る
──防いだのは2本の腕の振り下ろしである
残った腕、握られた拳が、両手で弓を支えるラストの
その腹部へと突き刺さっていた
「がっ──」
そのまま腕は降り抜かれ、ラストも吹き飛ばされる
倒れながらも、弓をテラーに向け引き金を引く
飛んでくる弾をはじかれながら
グリップをドライバーに戻し、引き抜く
『BEST END』
弓にエネルギーが集まり
三日月状の刃を携え、ラストが駆けだす
そして、テラーに対して、それを振り下ろした
「!?」
『・・・!ヌゥン!!』
しかし、それが通ることは無く
2本の剣と3本の腕がそれをシッカリと防ぎきっていた
そして余った1本の剣は、攻撃に全てを振ったラストに向けられ
力のこもった斬撃が、逆にラストへと叩きつけられた
「ぐぁあああっ!」
変身が剥がされ、ラストが地面に転がる
ボロボロになった体を起こそうとしたところに
剣が付きつけられた
『無様だな
──今度は、しっかりとその無駄な命を終わらせてやろう』
「──っ私は」
まだ終われない
しかし、体が起こせない
逃げる間もなく振り下ろされる剣が、ラスト呑ん命を奪おうとしたその時
「「っっだああああ!!」」
2人の男が、突如乱入し
テラーに飛び蹴りを食らわせた
突然の出来事に、テラーは驚愕と共に
その場から吹き飛ばされた
「──大丈夫か!?」
「お前──は」
顔を上げたラストのその目の前に
雄飛と翔は、息を切らせながら立っていた
「ほら、立って」
雄飛が、手をラストに差し出す
手を取って立ち上がれと示す
「失せろ・・・!」
それを、拒絶し、地面に手を突いて起き上がろうとする
しかし、痛みで手がしびれて上手くいかない
それでも、その手を取れなかった
「私はもう・・・!誰にも縋らないといった・・・!」
「・・・。」
雄飛はそれを見て、今度は膝を折ってラストを見る
「・・・縋るだけが、関わりじゃないって言ったろ?」
先程も行った言葉を、口にする
「俺が言ってるのは、一緒に戦うんだ。
誰かに縋って、命じられて戦うんじゃない
「──?」
何かが違う
けれど何が違う?
「助け合って、手を取り合って、関わるんだ
俺たちがすることを、君に助けてほしいから言ったんだ」
「助け合う──?」
──少年は、それを知らなかった
「その代わりに、そっちのことも手伝うんだ
──君は何がしたいんだ?」
「私は・・・」
したいこと、やりたいこと
さっきまで、自問しても出なかった答えが
何故かすんなりと言葉にできた
「私は・・・まだ、見つけていない」
「生きる意味を・・・終わりまでにやりたいことを・・・!」
「見つけたい・・・まだ終わらせたくない!!」
「──じゃあ、まずは勝たなきゃな」
そこまで聞いて、雄飛は笑って立ち
再度、こちらに手を差し伸べる
その手を、ラストは
しっかりと、掴み取った
「・・・話し、終わった?」
そこまでして、蚊帳の外であった翔が声を上げる
俺もなんかいえばよかったかな?
そんなことを言って頭をかく
「お前は」
そんな声を聴いて今頃、ラストが翔を認識していた
「さっきの腹パンは痛かった」
「近寄ってきて、あれは、煩わしかった」
「じゃあ翔が悪い」
「ひでぇ!」
そんなのどかな談笑を少しして
『・・・もういいかしら?』
クイーンが暇そうにそう語りかける
テラーもまた、控えるように話し終わるのを待っていた
『そっちに行くの?
・・・まぁ、懸命かしら?』
待ったが、興味自体は特になさそうに
クイーンが、そう言うと
ラストは、口を開いた
「母さん・・・いや、クイーン
よく見ておけ、
啖呵を切ったその手に、ドライバーが握られる
雄飛と翔もまた、自身のドライバーを手にし一斉に装着する
『MASKED RIDER
『
『
各々のアイテムが起動され、ベルトに装填される
けたたましい音が響き渡る中
3人は構えを取り
そして、叫んだ
「「「変身!!」」」
『Start』『 a Continue!』
『
『
『PLAY!!』
『caldissimo!』
『grandissimo!!』
『Fortissimo!!!』
『
『Love Disappears as Bubbles』
『MASKED RIDER
『
『
光の中で、3人のシルエットが変化する
次の瞬間には
そこには、3人の仮面ライダーが立っていた
『消して?』
『ハッ!』
6本腕の怪人が、駆けだす
それに合わせて、3人のライダーもまた駆けだしていた
※
テラーが剣を振り回す
荒れ狂うように繰り出される剣戟を避けアクトが拳を放つ
嵐を纏う拳は、6本腕に阻まれ、いなされる
体制が崩れたアクトに、テラーが剣を振り下ろす
それを今度は割って入ったサウンドが受け止め
そして、その後ろから飛び出したラストがその体を切り付けた
『ぐっ』
「今だ!」
テラーを3方向から囲み
アクトが蹴りを放ち
サウンドが槍を、ラストが剣を振り下ろす
3方向からの同時攻撃
普通ならひとたまりもないそれを
『・・・オォオ!!』
テラーは6本ある腕を器用に2本ずつ使いガードする
そして、さらに回転するように剣を振るい
3人のライダーを一度に薙ぎ払った
「くっ」
振り払われたアクトが立ち上がる
まだまだ戦える体で攻撃を仕掛けようとしたその時
「──がっ!?・・・こんな・・・時に・・!」
全身が痺れるような感覚が沸き上がってきた
「!?雄飛!」
「何だ!?・・・暴走か!」
「そうだよ!・・・やべぇ雄飛!変身解け!!」
攻撃を仕掛け、テラーとのつばぜり合いの最中
サウンドは、暴れ出す前にアクトを止めようとする
しかし、ラストは──
「いや・・・なれ」
「!?お前何を──うわっ!?」
気を取られた隙にサウンドがテラーに切り飛ばされる
ラストは、逆にアクトに暴走することを勧めるのであった
「ぐっ・・・うっ・・・いいんだな!?」
「問題はない・・・変われ!」
アクトの複眼が紅く染まっていく
そして──
『Night Of Beast』
『Trembling Night Is Coming』
『Beast Will Bring It』
『Can You Hear That Shout』
『
『... Not Missed off .』
「■■■──!!!!」
アクトはその姿を獣が如き様相に変え、咆哮を放つ
そして、次の瞬間には
辺り一面を、暗闇が覆いつくした
アクトが闇の中を突き進み、一番近くにいたテラーに飛び掛かる
爪がテラーに突き立てる──
前に振り回された腕がアクトをはじき返した
『甘い・・・この程度の目くらまし・・・!』
「■■──!!」
アクトが再び闇の中に溶けて、再度飛び掛かる
それを見切り、テラーが防御していく
「やっべぇ・・・見えねえ中でどうすりゃ」
テラーどころかサウンドとラストごと覆いつくした闇の外で
サウンドが焦る、このままでは自分までアクトの足を引っ張るだけである
しかし、それに対してラストは
「下がっていろ」
待っていたと言わんばかりにラストが地面の中に潜り、ドーム状の暗闇に突っ込んでいった
潜水した中で、足音を頼りに突き進む
そして、テラーの真下からまた
飛び上がるかのように、手にした剣を切り上げた
ガキィッと金属音が響く
ラストの切り上げ攻撃は、前と同じように
テラーに受け止められていた
『無駄だといった!!』
テラーが前回と同じように6本の腕でラストを滅多打ちにせんと掛かる
「掛かったか」
『!?』
次の瞬間、信じられないことが起きる
ラストの体から、
──いや違う、この腕は
「■■■──。」
液状化したラストの腹を貫いた、アクトの腕だ
自身を囮に気を逸らして
自身ごと、アクトに攻撃をさせたのだ
気づいたときには遅かった
ラストが地面に潜り、アクトが闇に溶ける
次の瞬間、信じられないような猛攻がテラーを襲う
まさに捨て身と言えるような攻撃でラストが掛かり
そちらを意識した瞬間、アクトがそれごと自分を薙ぎ払っていく
一度の驚愕が冷静さを欠き
それを冷ます暇も与えない程に次から次へ攻撃が届く
気が付けば、ラストの攻撃すら捌けなくなったテラーが
ラストとアクトの連続攻撃に為す術もなく晒される
「はぁ!!」
「■■■──!!」
左右からラストが剣を、アクトがその腕を振るう
そして、テラーのその6本の剛腕
その内2本を、刈り取った
腕が地に落ち、溶けるように消えていく
『ガッ!?・・・おのれえぇ!!!』
自慢の腕を刈り取られ、その痛みに逆上する
怒りに満ちたテラーが
最早がむしゃらと言えるほどに腕を振り回し駆けだした
ラストとアクトが猛スピードで振り回される腕に近寄れないのをいいことに真っすぐ駆ける
そして、息も絶え絶えな所で、ようやく闇の中を抜け出した
──目さえ見えれば、直線的な攻撃など
そう、高を括ったテラー
しかし、その体に
「だぁぁ!!」
『!?ぐぉっ』
飛び掛かったサウンドの突きが叩き込まれ転がっていく
2体の猛攻に気を取られすぎたかが故の隙であった
地面に波紋が立つ
サウンドの傍に、ラストが飛び出し、降り立った
「うわっ・・・お前どっから」
「決めるぞ」
『MERMAID』
『
「あっおい!・・・まぁいいや!」
『GIGA!!』
『
ラストとサウンドが同時に飛び上がる
そして、左右から同時にキックを繰り出した
水と泡を纏った脚と
熱気と音が備えた脚がテラーへと突き進む
『!・・・オォオオ!!』
それに対して、テラーは残った腕を2本ずつ使い受け止める
剣と脚がぶつかり合い、火花を散らす
「「だぁああああ!!」」
『オオオォ!!!』
──耐える、これを耐えて反撃を
そう作戦を立て、攻撃を受け止めるテラー
4本の腕に掛かる衝撃を必死に耐える
もう少し、もう少しで勢いが落ちる
そこを──
そう、考えたテラーの眼前
希望的な作戦を何とか通そうとするテラーを
先程、自分が必死に抜け出した暗闇の中で
──紅い光がこちらを見ていた
『BEAST』
『
凄まじい勢いの足音が響く
闇を掻き分けて、飛び出したアクトのその脚に
禍々しいエネルギーが集う
そして、その凄まじい力の籠った脚を
必死にキックを受け止めて貼り付けになったテラーに向けて
一直線に解き放った
「■■■──!!!」
『ぐぁ・・・ああああああ!!!!』
全ての腕が塞がり無防備になった体に蹴りが叩き込まれる
それによって甘くなった防御を突き抜け
サウンドとラストのキックもまた
テラーのその身に突き刺さった
3人のライダーがテラーの体を貫き
地面を削るように滑りながら着地する
その背後に佇む3つ分の穴が開いたテラーは
見るも無残に、爆炎をまき散らすのであった
続く
次回 仮面ライダーアクト
ラストを襲う難題──
「買い出しとはなんだ?」
「えっ」
雄飛は野獣との対話を試みる
「君は・・・話せるんじゃないのか?」
『出ていけ・・・!』
クイーンの奥の手とは──
『ひれ伏せ、王の御前である』
「なんだこいつ!どっから攻撃してんだ!?」
第24章[■■と野獣]