謎の怪人の襲撃に巻き込まれた主人公、彩羽雄飛は
何の因果か仮面ライダーへと変身してしまう。
この世界が怪人、テラーの魔の手が
迫っていることを知った雄飛は
困っている人のため、
そしてそれを見過ごせない自身のために
仮面ライダーとして舞台に上がるのだった。
「ハッ・・・・ハッ・・・!」
早朝の歩道、
日も上り切らないような時間に少年は走っていた。
既に長時間走っていたのだろう、
次第に少しずつ減速し・・・やがて足が止まる。
「・・・・もっと速くならなきゃ、
・・・・駄目だ」
肩で息をしながら呟く。
「もっと速く走らないと・・・」
少年は焦る、
自分より足が速い人間がいくらでもいる環境に。
陸上名門校のレギュラー、
その狭き門に自分が力不足だということを
少年は認められなかった
そして、その不安を振り払うように
また駆けだそうとしたその時。
「なら僕が手助けしてあげようじゃないか」
背後から突然声が聞こえた。
「え?」
少年が背後に振り返ったその瞬間、
ドスリと何かが自分に突き立てられた。
目の前には、高校生くらいの男性。
随分と奇抜な格好だった。
古い西洋のような服。
縦に長い帽子。
黒く、長いブーツ。
そんな男の腕が、
あろうことか自分の胸に突き刺さっていた
「うっ!?」
そして少年に変化が起こる。
少年の姿に重なるように異形の姿が現れる。
少年の存在が書き換えられていく。
最初からヒトではないものとして。
生きてきたこれまでの人生が、
別の存在として過ごしてきた時間に。
全てが終わったその時に、少年の姿はなかった。
そこにいたのは、人ではない何か、
すなわち怪人であった。
『ウォオオオオオオ!!!!』
怪人は走り出す。
「さて、どうなるか見ものだね~♬」
その姿を見送りながら、男は楽しそうにそう言い、
やがて揺らめくように消えた。
※
第3章「鋼の愛馬」
「・・・平和だぁ」
快晴の空の下、竹箒を抱えながら雄飛はそう呟く。
時刻は昼下がり、
今日も何事もない穏やかな一日を謳歌する。
その脳天に
「何やってんの?」
ガンッと金属トレイが叩きつけられるまでは
「痛ぁ!?」
突然の痛みに涙目になりながら振り返る。
目の前には腕を組んでこちらを睨む少女
「サボってないでさっさと掃除しなさい!」
エプロンを付けた少女、
杏奈はそう怒鳴ると
ズンズンと店内に戻っていった。
「はーい。・・・って言ってもなぁ」
そういうと雄飛は目の前の建物を見る。
純喫茶「テアトロ」
そんな名前の看板を掲げた店が建っていた。
店の中を覗き見る。
先程戻った杏奈さんが床をモップで拭いていて、
ずっと店の中にいた浩司さんは
使ってもいないカップを磨いている。
・・・それ以外は誰もいない。
平日どころか休日に至っても、
閑古鳥が鳴き続けているこの喫茶店こそが
現在の自分が過ごしている場所、
すなわち仮面ライダーの活動拠点であった。
「日曜の真昼間にさえ客が一人も入らない
店の掃除をしてもなぁ・・・」
愚痴が漏れる。
せめて大盛況とまではいかずとも知る人ぞ知る
隠れスポット的な店ならなぁ・・・。
とはいえやることもない
ため息をひとつついた後、
掃除の続きをやり始めた。
※
掃除も終わり、いよいよもってすることもなくなる
誰も座っていないテーブル席の椅子に腰を掛けて
休憩でも取ろうかと思ったその時
カラン とドアを開く音が聞こえた
「やってるか?」
振り返ると、
スーツに茶色っぽい
ロングコートを着た男性が立っている。
見るからに・・・刑事?
「いらっしゃい太田・・・出たのか?」
「おそらくな、座るぞ」
太田と呼ばれた男はそういうと
カウンター席に腰を掛ける。
雄飛は杏奈に小声で問いかけていた。
「・・・誰?」
「
警察で不審な情報とか回して
私たちに協力してくれてるの」
なるほど。
警察なら不審死や事故などの情報を
いち早く手に入れられる。
テラーの早期発見にはこれ以上ない協力者だ。
・・・・?
「テラーって
こっちで感知できてるんじゃないの?」
狼怪人の時は
なんか警報とか探知機とか鳴ってたよね?
「あれはドライバーの機能よ、
一度接触したテラーをベルト周辺の
ある程度の範囲なら探知できるの」
「初見のテラーには効かないから
まずはこっちから探さないとだめなのよ」
と杏奈さんが補足する
なるほど
そんな話をしているうちに椅子に座った
太田さんと浩司さんが
何か資料を取り出して話し始めていた
「こっちが、最近乗用車のクラッシュが
多発している道路の情報。
そしてこっちが、
一昨日から行方不明届が出されている
高校生男子の情報だ」
そういうと2つのファイルを提示する。
「・・・共通点は?」
「行方不明の少年だが、
陸上部で主にこの道路を
ランニングコースとして走っていたらしい」
「なるほど、可能性は高いな。・・・雄飛君!」
2人の会話から察するに、
行方不明の少年がテラーになって
襲っている可能性が高いようだ。
つまり、
※
雄飛と杏奈の2人は
情報にあった道路に赴いていた。
車通りは少ないながら、
直線的には数10km以上の距離がある
なるほど、ただ走るだけの
トレーニングにはなかなかいい場所だろう
「でもそれらしい姿はない・・・・か」
「そうね、とにかく探すわよ」
2人であたりを見回していると、
遠くから車が走ってくる。
普通の車のようだが随分と飛ばしているようだ。
・・・というかすごいスピードだ、
100km/h 以上出てないか!?
「あぶね!」「キャァ!」
猛スピードで走る車は2人の横を通り過ぎる。
なんて危険な、と怒りそうになったが
・・・どこか様子がおかしい。
まるで、何かから逃げるみたいな・・・
そんなこと思っていると、2人の横を
何か円盤のようなものが通り過ぎて行った。
先程の車以上の速さのそれは、
どんどん車に追いつき、やがて・・・追突する。
車がコントロールを失い派手にスピンし、
そして轟音を立てて近くの壁に激突した。
ぶつかった何かがゆっくりと地面に降りていく
形状が変わっていく・・・
円盤のように見えていた何かから手足と頭が生える。
『ふぇっへっへ・・・・』
それは亀の怪物だった。
亀が甲羅の状態で飛び、
車にぶつかって事故を起こす。
これが今回の事件の真相だったらしい。
「杏奈さん!車の人を!」
「わかった!」
雄飛はドライバーをセットし叫ぶ。
「変身!!」
『MASKED RIDER!』
仮面ライダーに変身し、
亀の怪人=タートルテラーと対峙する。
『んー?
あぁ。お前が仮面ライダーってやつかぁ?』
テラーは間延びした口調で話す。
こちらのことは知られているようだ、
なら話は早い。
「そうだ!亀怪人!私が相手だ!」
啖呵を切って構える。
『いいぜぇ』
愉快そうな声色でそういうと
タートルテラーは空中に浮かびだす。
そして、手足と頭を詰め込んだ状態になる。
あのスピードでの体当たりか!?
仮面ライダーが身構えると
タートルテラーは手足をひっこめた穴から
ジェット噴射のように火を噴かせ、
横向きに高速で回転しながら・・・
こちらとは
『競争勝負だぁ!追いついてみな!』
・・・。
それは突然のレースの申し出だった。
当然そんなこと予想も全くしておらず、面喰ってしまう。
「なっ・・・ま、待てい!」
数秒後再起動した仮面ライダーが走り出す。
仮面ライダーに変身している雄飛は、
常人では不可能なスピードで走ることができる。
その速さは、
時速にすると240km/hは超える速さである。
「・・・・!?」
しかし、仮面ライダーの走力をもってしても
タートルテラーには追いつけない。
それどころかどんどん引き離されていく。
そして──、
ついにはその姿も見えなくなってしまった。
足を止め、飛んで行った方向を見ながら身構える。
どうやら見失わせて不意を突いてくる。
というわけでもないようだ。
つまりは・・・逃がしてしまったということだ。
「えぇー・・・・」
戦いもせずに行ってしまった亀怪人に
ついつい演技も忘れてしまって
気の抜けた声が漏れ出てしまっても
さすがにしょうがないだろう。
※
「何逃がしてんのよ」
呆れたように杏奈さんがこちらを非難してくる。
しかし待ってほしい、
怪人が、仮面ライダーを見て
突然レースを仕掛けてくるとか
想定できるはずがない。
さらに言えばカメである。
そこは防御力とかそういった方面で
特徴があってしかるべきだろう。
なんで飛んでしかも速いんだよ。
「競争か、
しかも普通に走ってるだけじゃ追いつけない
・・・厄介だね。」
とりあえず作戦会議をしよう、
そんな浩司さんの提案を受けて
4人でテーブルを囲んで意見を出し合う。
なんとかして
奴とまともに戦う作戦を見つけなくては。
「追いつけないなら、
待ち伏せして飛んできたところを
叩くしかないんじゃないか」
太田さんが提案、なるほどそれなら・・・
「でもそれ避けられたらそのまま逃げられますよ。
しかも失敗したら
その回数だけ犠牲者が増えますし」
杏奈さんが待ったを掛ける。
確かにこの場合、どうしても一発勝負になり、
空振り=失敗で
また奴が飛んでくるのを待つ必要がある。
しかも、奴が飛んでいるということは、
それは攻撃対象を追っかけてる最中ということだ。
失敗したらまた
車をクラッシュさせるまで追っかけていくだろう。
幸い、まだ死者は出ていないがクラッシュの時に
怪我を負う人もいて、被害は多いらしい。
そんな状態で当たるまで
何度もリトライはさすがにできない。
「なら・・・罠を仕掛けるとか」
網とかなら、広範囲に広げれるし、
向こうが勝手に引っかかってくれるのでは
そんな俺の提案だったが。
「あの速さよ、どんな頑丈なのが必要になるのよ」
「前走ってる車ごと引っ掛ける気か?」
2名の指摘より却下。
他にも考え着いたのはいくつかあったが、
どれもこれもいまいちで・・・
「・・・仕方ないか。」
3人が声の方を一斉に向く
今まで口を噤んでいた浩司さんが呟いていた。
「雄飛君、ついてきてくれ」
浩司は席から立ちあがると
そういってどこかに誘導しようとしている。
「・・・おじさん?何か思いついたの?」
杏奈さんがそう尋ねる
すると浩司は振り返り
「仮面ライダーなら、
まだ足りないものがあるだろう?」
そんなことを言っていた。
※
連れてこられたのは店の裏手、居住部の片隅
壁には工具、散らばっている機械部品
そして前方にはシャッター
すなわちガレージである
そして、その中央に“それ”は鎮座していた
「”アクティベンダー”
仮面ライダーアクト用に設定されたマシンさ」
そこにあったのはオフロードバイク。
ただ市販の物とはデザインが大きく異なる。
なんていうか
・・・とても奇抜だ、仮面ライダーっぽい。
「お、おおおお!バイク!
専用バイクあったんですね!
それでこそ仮面ライダー!」
テンションが上がる。
そりゃあライダーだしな!
乗り物の1つや2つ乗らないと!
しかし──
現代科学で仮面ライダーみたいな
化け物マシン作れるのだろうか?
「あぁ、中身は普通のバイクさ。奇抜なのはガワだけ」
ずっこける。
まさかの見掛け倒しである。
「・・・じゃあなんの解決策にもならないですよ!?」
普通のバイクの速度じゃあ、カメには追いつけない
まだ仮面ライダーで走った方が速い
「まぁまぁ最後まで聞いて、
・・・これにはアクトドライバーと
同じ機能が備え付けられている」
同じ機能?
つまり演じたら
それと同じ力が得られるってことだろうか
「そう、このバイクには
仮面ライダーのバイクとしての
設定が付与されている。
つまり仮面ライダーが乗って、
走らせると普通じゃあ出せないような
速度だって出すことができるようになるんだ。」
つまり、仮面ライダーが操縦することで
このマシンは設定上の力を出せるようになるということか。
「設定上の最高時速はMAX500km/h
敵がどれだけ速くてもきっと追いつける」
なるほど、確かにこれならいけそうだ。
こんな奥の手を隠し持っていたなんて、
浩司さんも人が悪い
そんなことを思っていたのだが、
浩司さんの顔を曇らせる。
「ただ──これはもう少し調整と、
乗る練習が必要だと思っていたんだ。
下手をすれば怪人どころか」
「このバイクに君が殺されかねないからね」
そしてなんとも不吉そうなことを言い出した。
※
雄飛は再度あの道路に訪れていた。
その傍らには件のバイク、
今こそリベンジの時だ。
「太田さんが来たわよ!」
遠くからサイレンを鳴らしながら
車がこちらに走ってくる。
サイレンを鳴らしながら走ってもらうことで
怪人の呼び寄せをしてもらっていたのだが、
どうやらうまくいったようだ。
太田さんは凄いスピードで車を走らせ、
自分たちの立つ場所の前で見事に停車する。
「急げ、すぐ来るぞ!」
降車した太田さんがそう叫ぶと、
遠くから轟音を立てて何かが近づいて来る。
チケットを構え、叫ぶ。
「変身!!」
『Start』
『
『MASKED RIDER!!』
変身した仮面ライダーはバイクに跨り、
挑発するように大きくエンジンを吹かす。
そんな音を聞いて飛行してきた
タートルテラーは一度停止する。
そして値踏みするようにこちらを一瞥し、一言。
「へー、速そうなの持ってきたじゃん。
──そんじゃあ、追いついてみな!」
タートルテラーが再度飛行を開始する。
それを追うようにして
仮面ライダーもバイクを発進させたのだった。
※
バイクが轟音を立てて走る。
前方には飛行するタートルテラー、
距離は縮まらないが
何とか引き放されずに追跡ができていた。
チラリとバイクに備え付けられた
スピードメーターを見る、
表示された速度は300㎞/h
この時点で相当なスピードだが、
追いつくにはここからさらに
加速しなければならない。
そう──仮面ライダーのような
超人でなければ走れないようなスピードに。
※
「バイクに殺されるって
・・・どういう意味です?」
まさか、
走らせすぎるとバイクがもたずに爆発!──とか
「そういう意味じゃない。いいかい?
このバイクが500㎞/hの速度を出せるとして・・・」
「──君、乗れるかい?」
500km/h確かにすさまじいスピードだ、
でも、仮面ライダーなら
その程度の速度は平気で乗りこなすだろう。
「仮面ライダーじゃない、
彩羽雄飛君は乗れるのかい?」
「何言ってるんですか、
乗ってる時は俺じゃなくて・・・・あっ」
それはつまり・・・・
「そう、仮面ライダーなら500km/h出せても
その状態で演技が止まってしまえば、
その瞬間状況は
”普通の人間が500km/hの速度のバイクに乗っている。”
というものになってしまうんだ」
※
ハンドルを持つ手に力が入る、
・・・加速すれば何とか追いつける。
そして、スピードを上げようとしたその時。
『中々やるなぁ!なら・・・・これはどうだぁ!』
タートルテラーがそう言うと
火を噴いている穴からこちらに向かって
野球ボール位の炎弾をばらまいてきた。
「何!?」
とっさにハンドルを切る、
ぎりぎり避けるが少し距離を離されてしまう。
妨害は完全に想定外だった。
炎弾を避けながら距離を離されないように速度を上げる。
避けながらなんとか距離を離されない速度に到達する。
しかし、引き離されないだけでは意味がない。
奴の飛行を止め、
攻撃を与えねば勝利にはならないのだ。
自分に飛び道具はない、
奴を止めるには追い越して前から叩くか
並走して横から叩くしかない。
しかし──スピードメーターを見る、
表示されている速度は350km/h
既に少しでも気を抜けば風圧で
ハンドルから手が引きはがされそうになる。
これ以上速度を上げるのは危険だと
そうだ、今でも炎弾を避けるたびに
ハンドルを取られスピンしかけそうになる。
──無理なのか?
そんな考えを振り払う。
違う、このベルトは、
このバイクはそれができる力を持っている。
できないのは自分が恐怖に負けているからだ。
思い出せ、仮面ライダーは恐怖に負けていたか?
いいや違う。
恐怖することはあった、
それでも最後には打ち勝っていたはずだ。
彼らなら死の恐怖にだって
打ち勝って立ち向かっていけるはずだ
「──走り切る!仮面ライダーならやれる!」
恐れるな、怖いなら
もっと深く仮面ライダーに演じろ。
自分は、仮面ライダーだ。
人間の平和を、
自由を奪う悪に立ち向かう仮面ライダーだ!
そうだ
──走る速さでまともに視認できていなかった
周りの風景が鮮明になっていく。
一瞬のうちに過ぎ去るはずの景色が、
緩やかに流れるように見える。
視力が、そしてそれを認識してからの
思考能力が引き上げられる、
ぎりぎり避けていた
炎弾が余裕を持って避けることができるほどに。
そして、タートルテラーが
炎弾を出し終えた一瞬の隙を見計らって、
一息に、一気にハンドルを回す。
400km/h・・・450km/h・・・500km/h
最高速度に達したアクティベーターは
一瞬でタートルテラーに並び、追い越した。
『!?』
突然の出来事に驚愕するタートルテラー、
回転が少し緩んだ。
「っらぁ!!」
そしてそれを見逃さずにバイクの後輪を持ち上げ、
タートルテラーを殴り飛ばした。
バランスを崩したタートルテラーは
盛大にバウンドしながら道に壁に打ち付けられる。
バイクを降りる、さぁ第2ラウンドだ
「もう逃がさん!行くぞ亀怪人!」
一気に距離を詰める
「はっ!」
そしてがら空きの腹を殴りつける。
『ヒッ』
攻撃されることなど考えていなかったのだろう
タートルテラーは怯みながらパンチを受ける。
あまり手ごたえがない。
どうやら背以外の部分も固いようだ。
しかし──
「フン!」
左、右、再度右・・・
関係ないとばかりに殴りつける、
壊れないのなら、壊れるまで殴ればいい。
どうやら飛行以外の挙動は鈍いらしく
碌に抵抗できぬまま殴られていく。
そしてとどめと言わんばかりに右足で蹴り飛ばす。
同じ個所を何度も叩かれた甲羅に
少しずつヒビができ始めていた。
『いでえっ!・・・ヤッやめろぉ!!』
吹き飛ばされたタートルテラーは
再度甲羅の中に手足と首を引っ込めた。
回転し、浮かび上がる。
しかし、今度は移動せずに──
『食らえェ!!』
炎弾をこちらに向けて放つ。
しかし、一度見られた技である。
仮面ライダーは右へ左へ
スライドするように小さく跳躍し炎弾を回避する。
そして最後の一発に対して足を止め──。
「ハァ!!」
思いっきり蹴り返した。
それに面を食らった
タートルテラーは避ける間もなく被弾。
またも地面に叩きつけらる。
その衝撃で
バキリと身に着けた甲羅全体に亀裂が走り始める。
ここまですればもはや防御力など有りはしない
止めを刺そうとベルトに手を伸ばしたその時
『ヒッヒイイイィ!?』
タートルテラーはまたも飛行し、
そして仮面ライダーとは逆方向に飛び立った。
完全に怯えてしまった怪人は逃走を選択したのだ。
「・・・逃がさん!」
だが、仮面ライダーに焦りはない。
再度バイクに跨り、
そして一気にアクセルを吹かす。
一気に最高速にまで達した
バイクは容易くタートルテラーを捉えた。
そして仮面ライダーは自分のベルトに手を付ける。
『 RIDER 』『 BEST ACTION!』
決着をつける時だ。
仮面ライダーがハンドルのブレーキに手をかけ、
そして一気に握り込む。
突然の前輪の停止に
後輪部分が大きくかち上がる。
仮面ライダーは座席部分に足をかけ
そして後輪の反動を利用して
前方に向け大きく跳躍した。
猛スピードで仮面ライダーが飛んでいく。
そして飛行するタートルテラーに
いとも容易く迫っていた。
『ヒッ!?』
「ライダー!キック!!!」
避ける暇などない一瞬の交錯。
風を纏った蹴りが固い甲羅ごと怪人を貫き、
怪人は叫ぶ間もなく爆発して消し飛んでいた──。
※
キックを決めたライダーが、
ガリガリガリと地面を削るように着地する。
背後を見る。
すると、爆発跡の場所には
中学生程度の少年が横たわっていた。
駆け寄って少年の安否を確認する。
「・・・・zzz。」
どうやら気絶しているだけのようだ。
「・・・良かったぁ。」
それを見てようやく仮面ライダーから
彩羽雄飛へと意識が戻ってくる。
今回も、自分は何とか勝てたようだ。
ホッと胸をなでおろしていると足音が聞こえてくる。
こちらに駆けてくる2人に、
雄飛は変身を解除して手を振るのだった。
※
仮面ライダーが勝利した。
つまり自分が作った怪人は負けてしまったわけだ。
「いいねぇ!そう来なくっちゃ!」
勝利した仮面ライダーを遠くから眺める男が一人。
中学生をタートルテラーに変えた青年がそこにいた。
「次はどんな奴を見繕うかな~♬」
次なる怪人に思いを馳せる青年の
その背後にさらなる人影が現れる。
「随分と楽しそうだな、
それは壮年の男性だった。
よく晴れて暑さも残る気候にも関わらず
薄暗い色をしたコートを羽織っている。
「やぁ
ペローと呼ばれた青年は陽気に笑う。
「強敵がいるほど、
強い怪人が生まれるってものだからね!」
「強いテラーが生まれるほどに、僕らの目的に近づく」
ただ、その目はどこまでも冷たかった。
「そう、神の誕生のね」
そういうと、二人の男は闇の中に消えていく。
──物語は、まだ始まったばかりだ。
続く
次回 仮面ライダーアクト
少年たちを襲う、謎の襲撃事件
「犠牲者は皆、
僕の友達をいじめてたやつらなんだ」
『私は、悪逆を絶対に許さない!』
雄飛は復讐を止められるのか
「悪いことをただ暴力だけで
叩き潰すなんてやり方、間違っている!」
『侍丸!』
「いざ参る!!」
第4章[正義の騎士、