夜も更けた頃、
一人の男が人気もない路地裏を歩いていた
「ちっくしょー・・・・ヒック」
顔を赤くし、足元もおぼつかない
随分と酒に酔った様子のようだ
「どいつもこいつも・・・
けっこんとか、こいびととかよぉ・・ヒック」
「おれだって・・・
おれだってほんきだせばなぁ!!・・・」
「・・・・あー・・・もててぇ・・・・グスッ」
男はそんな妬みを愚痴りながら歩いていく
普段であれば、
そのまま恨み言を吐きながらも帰路につき
1日を終えてまた明日を過ごすのだろう
だが、その日は違っていた。
『願い事があるのかい?』
「あぁ?」
そういって声の方を見てみれば、
奇抜な格好をした青年が一人
人懐っこそうな顔を抜けて
こちらに話かけてきていた。
「なんだぁ・・・・あんた・・・?ヒック」
『僕はペロー、人の手助けが大好きなのさ!』
『君が何かを求めているのか見てね』
『ぜひ力になりたいんだ!!』
「・・・・?」
何を言っているのだろうか、この男は
訝し気に見つめる男に青年は近づいていく
なぜだろうか、どこから見ても怪しい男なのに
『さぁ』
なぜだろうか、その目から目を離せないのは
『君も力が欲しくない?』
※
喫茶「テアトロ」──
「女性の襲撃事件・・・?」
「ああ・・・
夜間に一人で出歩いていた女性が
意識を失った状態で発見される事件
が多発していてな」
昼も過ぎた頃に、
そんな話をもって太田さんはやってきた
女性ばかりを狙うとは何たる下劣な
「ただ・・・おかしな点が二点あってな」
「被害者は全員、外傷らしい傷が見られず、
また持ち物も持ち去られた跡がない
また、意識を失ってから数日たってもまだ、
目を覚まさないらしい」
つまり、窃盗や暴行が目的でなく、
また、意識を失わせる方法も不明とのことだ
なるほど、普通の人間の犯行にしては
不自然な事件だろう
「テラーの仕業の可能性が高いと」
コクリと太田さんは頷いた
「現在、警察は夜間警備の強化や
張り紙での周知などをしている」
「女性を襲っているのがテラーだとした場合、
標的の女性ではない 警官の男達と
鉢合わせた時に
どんな行動を起こすかわからない」
「できれば、
速いうちに見つけて何とかしたいんだ」
「・・・まかせてください!」
さて、そうなるとその謎の怪人を
どうやって探すかの話になる
「一番手っ取り早いのは・・・囮?」
女性を用意して、それを見張るのが一番だろう
となると、身近な女性に頼むのが必要になるわけで
「杏奈さん、頼めないかな?」
と、店を見渡しながら話すが・・・
杏奈さんが見当たらない
店のフロアにも、
奥のスペースにいる気配もない
「・・・あれ?」
・・・そういえば、朝から見てないような?
「ああ、杏奈なら今日から明後日まで不在だよ」
「えぇ!?」
困った、まさか事情を知らない人に
協力させる訳にもいくまい
「他の方法かぁ・・・」
「いや・・・・」
浩司さんが何か思いついたように呟く
・・・何か、目がキラリと光った気がした
「僕にいい考えがある。」
その顔は少し、楽しそうな様子さえ見て取れて
俺は・・・・
──とても嫌な予感がした。
※
日が落ち、夜も更けていった時間帯に
蠢く影が一つ
体表はボコボコと隆起しており
湿った皮膚が歩くたびに
ピチャリピチャリと音を立てていた
彼こそが連日の事件の犯人
カエル怪人-フロッグテラーである
彼は道行く女性から生気を奪い
満たされることに快楽を得ていた
今日の獲物を探していた彼は
暗闇を一人歩く女性らしき人影を見つける
今日の獲物は、あの女だ
そう決めたフロッグテラーは
ヒタヒタと音を立てながら近づいていく
しかし、近づいてくるのに気付いたのか
女性は突然駆けだした
逃がすまいと追いかける
走って市街地を抜け
人通りも少なく、広い港周りにたどり着く
そこまで来ると、走り疲れたのか
女性の足が止まった
チャンスとばかりに
フロッグテラーが近づき声をかける
『お嬢さん、僕と遊ばないかぁい?』
下卑た声で背後から声を掛ける
そうすれば振り向いた女性が、悲鳴を上げる
それもまた、
これまでの経験からの怪人の楽しみだった
「嬉しいなぁ・・・・」
しかし、聞こえてきたのは落ち着いた声色
そして女性にしては、
人影が振り返る
「この
『な、なんだとぉ!!??』
その顔は恐怖に怯えた女性でも
麗しい女性の物でもなく
怒りに満ちた
『お、女じゃなかったのか・・・』
がっくりとうなだれる
彩羽雄飛は元役者志願の青年である
女性の歩き方や姿勢の取り方など
教えられればそつなくこなせる程度には
才能と技術があった
そんな男の全力の女装に、
この怪人はまんまと引っかかったのだった
「こんな作戦に一発で引っ掛かりやがって
・・・じゃなかった」
「女性のみを狙う狼藉者、許さん!!!」
ドライバーを装着し、チケットを起動する
手に持っていたのは、侍のチケットであった
『Start』
『
『侍丸!!!』
「覚悟ぉ!!」
サムライフォームに変身した
仮面ライダーが剣を手に切りかかる
フロッグテラーは突然の出来事に
即座には対応できない
振るわれる斬撃をその身に受け
吹き飛ばされてしまった
『おのれぇ・・・これでもくらえぇ!!』
反撃とばかりにフロッグテラーが両手を振るう
その湿った両腕から、謎の粘液が射出された
仮面ライダーは咄嗟にそれを回避する
地面に落ちたそれは、
小規模な爆発を起こし火を立てて燃え出した
「・・!?爆発する液体?」
『その通りだ、おまけに引っ付いたら
中々とれねぇんだ・・・ぜっ!!!』
そしてフロッグテラーは次々に液体を飛ばしだした
飛び散った液体が地面に落下し爆発を起こす
ひとたび体に当たれば
炎に巻かれやけどでは済まないだろう
しかし──
『あれっ?・・・あれっ!!!?』
最初の不意の一発以外は当たることはない
決して早くもないそれを
仮面ライダーは悠々と避けて近づいていく
「面妖な、物を、飛ばすな!!!」
そして肉薄したところで斬撃を叩き込んだ
フロッグテラーは避けることもできず転がっていく
言っては何だが、
このカエル戦闘能力は思ったほどではない
なんならこの前の騎士の方がよっぽど強いだろう
「覚悟!!」
決着をつけるべく
アクトブレイガンにチケットを装填──
『ちょっと待ちなよ』
「!?」
しかしそれは妨害される
横から謎の衝撃が仮面ライダーを襲ったのだ
「何者!?」
衝撃を受けた方に顔を向ける
するとそこには、謎の青年が立っていた
どこか奇抜な格好をしていて
『初めまして、仮面ライダー』
『僕の名前はペロー。以後、お見知りおきを』
そういって、
謎の青年は朗らかにペコリと挨拶してくる
一見すると、人懐っこい顔だが
仮面ライダーは、
その青年からどこか異質な雰囲気を感じ取っていた
『いやーさすが強いねぇ仮面ライダーってやつは』
『こいつくらいじゃ歯が立たない』
「何を・・・?」
言っているんだこの男は
まるで今起こっている光景を
全て理解しているように話している
『でも、困るんだよねぇ』
『これだけ無作為で意欲的に
人を襲ってくれるやつって貴重でさぁ』
『そんなすぐに失うには惜しいんだよねぇ』
『・・・・だからさぁ』
自分の協力者・・・ではない
この人物は知らないし、
店の皆の知り合いでもないと何故か確信する
『僕と少し遊んでよ』
そういうと、青年は懐から何かを取り出す
それは──
「──チケット?」
それは──
意匠こそ禍々しく、異なるものであったが
自分がいま使用している
チケットとよく似たものであった
『
『──
チケットを起動し、青年が自分の体に差し込む
その瞬間、青年の姿が変わる
人間らしい体は、毛におおわれた獣のそれに
帽子のような意匠の頭部に
脚部には黒いブーツが施されている
それは、猫の怪人であった
『さぁ!いくよ仮面ライダー!!』
ペローと名乗った怪人が右手を虚空にかざす
すると右手に細身の刺突剣が現れた
繰り出される刺突をすんでのところで受け止める
「貴様・・・何者だ!?」
演じながらも突然の乱入者に
つい疑問を投げかけてしまう
すると、ペローは少し楽しそうにしながら
なんでもなさそうに自身を
このように形容するのであった
『うーん・・一言でいえばそこの怪人とかの元締めかな?』
「なんだと!?」
一度刺突剣を強引に押し返し距離を取る
今、この男は何と言った
元締め・・・?ボスという意味だろうか
どちらにせよ、その言動から
「これまでの怪人騒ぎ、全部貴様の仕業か!」
怒りを滲ませながら言いつける
しかし、言われた方はヘラヘラとしながら
『ああ、
君にどんどん倒されちゃうんだもん』
『さすが仮面ライダー!僕も危機感持っちゃうよねぇ』
なんでもなさそうにそう答える
──確定だ。
この男は、怪人を作り、
人々を襲うよう差し向けている
止めねばならぬ巨悪だった
「一体何が目的だ!!」
仮面ライダーが切りかかる
しかし、ペローは
アクトブレイガンに比べ明らかに細い剣で
容易く仮面ライダーの一太刀を受け止めていた
『理想の世界を作るのさ!』
『僕たちが望む、僕たちの世界を!』
『そのためには、人が邪魔でさぁ!減らさないと』
なんと自分勝手な言い草だろうか
それは、仮面ライダーとしても一人の人間としても
決して許容できない言い分であった
「──お前の好きには、絶対にさせない!!」
両者の剣がぶつかり合う
ペローの素早い剣閃を
仮面ライダーはギリギリのところで回避し続け
仮面ライダーの重い剣戟をペローは受け流していた
互角のように見えた戦いだったがここで勝負が動く
仮面ライダーの剣が徐々に重くなり、
ペローを押していく
そして、そしてつばぜり合いになった所を
「だぁあああ!!」
無理やり圧し切るように振り下ろす
ようやく、一撃がペローに届いた
攻撃を食らいペローが後ずさる
『ぐっ・・・やるねぇ、さすが仮面ライダー』
チャンスとばかりに仮面ライダーが
切り掛かろうと踏み込む
しかし──
『でもねぇ』
『君、なにか忘れてない?』
突然仮面ライダーの背に衝撃が走る
まるで背中で爆発が起きたようだ
『ゲッゲッようやく当たったぜぇ・・・』
それまで静観を決め込んでいた
フロッグテラーがここぞとばかりに
仮面ライダーの不意打ちを食らわせてきたのだ
「うぁ・・・」
突然の激痛と熱さにふらつく仮面ライダー
そしてその隙に目掛けて
『ハァ!』
ペローが刺突剣を深く構え、突き出す
込められた力が衝撃はとなり
仮面ライダーに叩き込まれた
「ぐぁああああああ!!」
装甲に叩き込まれた衝撃に耐えきれず
吹き飛ばされる仮面ライダー
堤防を越え、空中に投げ出された仮面ライダーは
水面にぶつかる感触と共に
その意識を手放すのであった
続く
次回 仮面ライダーアクト
初めての敗戦に雄飛は
「・・・あいつを止めないと!!」
次の演目は西部劇!?
「剣で戦う劇があるなら銃で戦う劇も必要だからね」
リベンジなるか
「邪魔する奴は、一人残らずぶっ潰す!!」
『WILD WESTERN!』
第6章[リベンジャー・アウトロー]