仮面ライダーACT [アクト]   作:ヨッツ

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第7章~シンガー・ソング・ライダー~

そこは、町からも少し離れた森の中

貸出されているレジャースポットで

キャンプをする家族の姿があった

 

子供の兄弟が川で遊び

両親がそれを眺めている

何とも平和な光景だ

 

耳を澄ませば

川のせせらぎ、森林の揺れる音

自然の音が心地よく聞こえてくる

 

"~~~~♪"

 

しかし、そこに聞こえてくる異質な音

何か笛の音だろうか

自然音ではないが、とても心地の良い音であった

 

キャンプ中の家族が一様に手を止め

音のする方向を見る

・・・何か様子がおかしい

 

やがて、子供たちが音のする方向

深い森の中に向けてユラユラと足を進める

森の奥に行くのは危険な行為である

両親が見張っていれば、

それは引き留められたはずであった

だが──

 

立ち上がった両親も子供たちの後を追うように

ふらふらとした足取りで森の方に向かう

 

引き寄せられるように進むその目は

どこを見ているわけではなく、

暗く虚ろな目であった

 

やがて家族は暗い森の中に姿を消す

 

『キッヒッヒッヒ・・・』

 

やがて誰もいなくなってしまったその場所で

何者かが不気味に笑う声だけが木霊していた──

 

 

「──集団失踪事件?」

「そ、ここいらの人間が老若男女問わず

 行方不明になっている・・・ですって」

 

町を進む二人の男女がいた

仮面ライダーこと彩羽雄飛と

その協力者風間杏奈である

手にはビニール袋、買い出しの帰り道だ

二人して歩いているそんな中

杏奈がネットから引っ張り上げてきた

あるニュースのことが話題になった

 

「この前も、

 森でキャンプしてた家族連れが用具も何もかも、

 全部残して消えちゃったんですって」

 

杏奈さんがそう伝えながら画面を見せる

見れば、他にも類似事件が複数

どれも、まるで今までしていたことをほっぽりだして

どこかに消えてしまったらしい

 

「・・・怪しい」

「でしょ?」

 

顔を見合わせて頷きあう

1件ならまだしも、

こうまで続くのはさすがに異常としか思えない

 

「帰ったら太田さんに事件のことを聞いてみよう」

「そうね」

 

そういって二人で帰路につく

その時──

 

「――♪」

 

ふと近くから心地いい音が聞こえてくる。

音からしてギターだろうか

音のする方を見やると

謎の人だかりができていた

 

興味本位で近づいてみる

すると

 

「――――♪」

 

路上ライブだ

 

派手な形をしたギターを抱えた青年が

路上ライブを開いていた

なるほど、この心地よい音楽は

この青年の物だったのか

 

「上手いなぁ・・・」

 

ついつい立ち止まり聞き惚れてしまう

やがて1曲弾き終えてギターの音が鳴りやむ

 

青年が顔を観客の方に向け

 

「センキュー!!」

 

楽しそうな大きな声で一言

観客は一様に拍手を彼に送っていた

 

こういった雰囲気ってやっぱ大事だよね

ぜひとも大成してほしい人だなぁ

 

「次の曲は、歌も合わせていくぜー!!」

 

気分が乗ったのかノリ良く青年は

次の曲に取り掛かりだした

歌か、これだけ曲が達者なら歌声もさぞかし──

 

♬~~♬

 

──まるで脳が揺さぶられるかの如く

醜悪な音が俺の耳を襲った

 

それは、例えば黒板を爪で引っ搔いたように

心地悪さが近いだろうか

聞いているだけで体調に

異常をきたすかのようであった

 

隣を見れば、青ざめた顔をした杏奈さんが見える

まさか、テラーの敵襲であろうか

周りを見るもそれらしきものは見えない

 

信じたくないという気持ちで前を見る

そこには──

 

♪~~♬

 

すさまじく上手なギターの演奏を

全てかき消すが如き歌声を

披露する青年の姿があった

 

周りを囲っていた観客たちも一様に

その異常な歌声を認識し

顔色を悪くしてそそくさとその場から離れていく

 

自分もそうしようと思ったが──

 

「杏奈さん、行こう・・・杏奈さん?」

「・・・・。」

 

杏奈さんがその場から一歩も動てくれない

まさか──

 

「・・・。()」

 

──完全に気絶していらっしゃる!?

 

~~♪

 

そうこうしている間も歌は鳴り響く

杏奈さんを放っておくわけにもいかず

俺は耳を塞ぎ何とか耐える

 

そうしているうちに音が鳴りやむ

た、耐えきった・・・!

 

安堵しているのも束の間

 

「さぁ!次の曲もいくぜー!!」

 

歌でテンションが上がったのだろうか

青年は目をキラキラさせながら

ギターを構えなおす

 

・・・やばい!!

 

「杏奈さん、杏奈さん!!

 起きて!!起きてって!!」

 

全力で揺さぶる、ここから離れなければ!!

 

「・・・・・ハッ!ここは・・?」

「よっしゃ起きた!

 ・・・早く行きますよ!!」

 

意識を取り戻した杏奈さんを押して

足早に離脱するその後方には

また歌いだされた、

音響兵器の音が微かに響いていた

 

 

「まさか、演奏は達者の音痴とは・・・」

「あれは歌じゃない・・・

 あれを歌と自信を持って言い張るのは

 音楽への侮辱だわ・・・」

 

二人してまだ痛む頭を抱えながら歩く

まさかあんな落とし穴を用意しているとは

 

「ギターは良かった・・・

 いや本当に良かったのに・・・」

「うう・・・まだ耳に焼き付いてる・・・」

 

いそいそと杏奈さんはイヤホンを備え

何か聞き出した

よっぽど先程の歌を忘れてしまいたのだろう

 

そんな様子を見ながら歩いていると

 

"~~~~♪"

 

またもや遠くから音が聞こえてきた

 

「!?」

 

とっさに身構える

先程の青年がこちらに移動してきた・・・

というわけではないようだ

 

"~♬~~♬"

 

どうやら今度聞こえてくるのは笛の音

そして、なんとも心地の良い音であった

──ああ、なんていい音だろうか

 

ふらりと、

無意識のうちに足が音の方向に向いてしまう

ああ・・・何かおかしい・・・

でも抗えない・・・足が勝手に・・

 

「雄飛!?何やってんの!?」

「いったぁ!?」

 

バシリと頭に衝撃が走った

痛みで我に返る

 

「!?・・・・!?」

 

今、何があった!?

 

「な、何が・・・」

 

"~~~~♪"

 

また、音が聞こえてくる

 

とっさに手で耳を塞ぐ

周りを見ていると

 

「・・・。」

 

フラリフラリとおぼつかない足取りで、

周りの歩行者が音の方向に歩いている

まるで、おびき寄せられているようだ

 

「これって・・・例の失踪事件!?」

「音の方に行くわよ!」

 

音のする方に駆ける

しばらく行くと──

 

『~~~~♪』

 

いた

そこには、笛を携え音を奏でる

怪人=パイパーテラーが佇んでいた

周りにはおびき寄せられた人々

 

「テラー!!」

 

『ん?おお!仮面ライダーまでおびき寄せるとは!

 さすが私の笛だ!』

 

「連れ去った人々を解放しろ!!」

『や~~なこった♪』

 

「だったら・・・」

 

 

アクトドライバーを構える

 

『MASKED RIDER!』

「変身!!」

 

『Start』

風は、戦士を呼んだ(Wind called the Warrior)

『MASKED RIDER!!』

 

「いくぞぉ!!」

 

仮面ライダーが先手必勝とばかりに殴り掛かる

拳がパイパーテラーの胴に叩き込まれる

パイパーテラーは吹き飛ぶも──

 

『ぐおっ!?・・・おお、怖い怖い』

 

まるで堪えてないといわんばかりに立ち上がる

そして、懐から何かを取り出した

 

『では、ブルー(・・・)様の言うとおりに試してみるとしよう』

 

それは、何かの紙の切れ端のようだった

それを手からこぼれるほど握って

 

『ハ!』

 

それを仮面ライダーではなく

集められた人々に対して放り投げる

 

「何!?」

 

とっさに手を伸ばすも間に合わない

切れ端が集められた人々の中に

スルリと入り込んでいった

次の瞬間──

 

『『『アァアアアア・・・・』』』

 

先程までいた人々の姿が変わっていく

簡素な肉体にのっぺらぼうな顔面

まるで、簡略化された端役のような──

 

『いけぃ!エキストラ(・・・・・)達よ!』

 

「!?」

 

号令がかかった瞬間、

エキストラと呼ばれた怪人もどきが

遅いかかってくる

 

「何だと!?」

 

突然の敵に追加に動揺を隠せない

しかし──

 

「ハァ!」

 

パンチを一発放つ

群がってくる怪人の一体に命中する

 

『』

 

エキストラと呼ばれた怪人は

その一撃でダウンしてしまった

なるほど、

戦闘力はそこまで無いが数でかかってくる

所詮、戦闘員というやつか

 

ならば問題は──

 

"~~~~♪"

 

その瞬間、頭が割れるような痛みに襲われる

 

『さぁ!私の歌を聞きなさい!!』

 

パイパーテラーが、その笛を奏で

破壊的な音色を差し向けてきたのだ

握っていた拳がほどけ、

つい頭に手を置いてしまう

 

『アァアアア!!!』

 

その隙に、エキストラ達が群がってくる

 

「く、そぉ!!」

 

何とか、拳を振るい、蹴りを放つ

エキストラたちはそれだけで倒れていくが──

 

『『『アァ・・・』』』

 

何分数が多い、頭も割れそうだ

このままでは、ジリ貧だろう

 

"~~~~♪"

 

さらに、笛の音が大きくなる

ついに、仮面ライダーは

膝をつき動けなくなってしまう

飛び掛かるエキストラ達

絶体絶命と思われたその瞬間

 

"♬―――♪"

 

笛の音とは異なる大きな音が鳴り響いた

笛の音がかき消され、自由になった

仮面ライダーは飛び掛かってくるエキストラたちを

間一髪で回避する

 

『・・・誰だ?!』

 

パイパーテラーが音のした方を見やる

そこには──

 

「俺だ!!」

 

青年が立っていた

雄飛や杏奈には見覚えのあった青年だ

何せそれは

 

「「さっきの・・・!?」」

 

そう、先ほど路上ライブをし

二人に多大なダメージを与えていた青年であった

 

「あなた!危ないから逃げて!」

 

杏奈さんが怒鳴り込む

そうだ、結果的に助かったが

こんな場所にいるもんじゃない!

 

「危ない・・・?それはこっちのセリフだぜ!」

「下がってな!!」

 

そういいだすと青年は何かを取り出した

前面に四角い機械部分があり

その左側から長い帯が伸びている

それは、彩羽雄飛としても慣れ親しんだ

 

「ドライバー・・・?」

 

『サウンドライバー!!!』

 

さらに何かを取り出す、

自分のチケットとはいささか意匠が異なる、

それは、四角というよりは円形で

さらに中央に空洞があって

まるで、CDのディスクのようであった

 

POP UP SOUND(ポップ アップ サウンド)!!!』

 

ドライバーにディスクが装填され

青年が構えた

 

「変・・身!!!」

 

『PLAY!!』

『ON STAGE!!!』

POP UP SOUND IS(ポップ アップ サウンド イズ)

SINGER SONG RIDER(シンガー・ソング・ライダー)!!! 』

 

青年の姿が変わる、黄色やオレンジを主体とした体に

音符などの音楽的な意匠が散りばめられた

その姿は、まぎれもなく──

 

『何者だ!!!貴様は!!!』

 

パイパーテラーが突然の出来事に

狼狽えながら問いかける

そんな問いに青年は、

自信たっぷりに踏ん反り返りながらこう答えた

 

「俺は、仮面ライダー・・・サウンドだ!!」

 

サウンド、それはこのテラーとの闘いに突如として現れた

新しい、仮面ライダーの名前だった

 

「仮面ライダー・・サウンド・・・」

 

雄飛もまた、自分ではない仮面ライダーの登場に戸惑いを隠せない

 

「・・!雄飛!!前!!」

「・・・?・・・うおっアブね!?」

 

だが、エキストラ達は待ってくれない

あっけにとられた自分の

背後を取った攻撃をギリギリ避ける

テラーの音攻撃がやんだ、体も楽になった

今なら、戦える!!

 

「ハァ!!」

 

数十体といるテラーを片っ端から薙ぎ払う

元々、そこまで強くない相手、万全ならなおさらだ

 

「おー、・・・あんた!雑魚は任せるぜー!!」

「えっ!?・・・わ、分かった」

 

突然話しかけられた、随分と馴れ馴れしい

しかし、邪魔にならないように

テラーを相手取ってくれるならそれは好都合だった

目の前のエキストラ達と対峙する

 

「いくぞぉ!!!」

 

「さぁて、俺も頑張るとするかぁ!!!」

『貴様ぁ、私の演奏の邪魔して

 ただで済むと思うなよぉ!!』

 

随分とマイペースなサウンドに対し

怒りを向けるパイパーテラー

笛を構え、先ほど

仮面ライダーに食らわせた音色を放った

 

「・・・!?うわ、ひっでぇ音!!?」

 

サウンドも同様に頭を抱え蹲る

その隙を狙って、

笛でその体を串刺しにしてやろうと飛び掛かる

 

『死ねぇ!!!』

 

しかし、

 

"♬―――♪"

 

『な、何ィ!!?』

 

巨大なギターの音がその音をかき消した

気が付けば、サウンドの手元には

先程から彼が背負っていたギターが握られている

一見ただの奇抜なギターであるだけのようなそれは

仮面ライダーサウンドが使う、

れっきとした武器であった

 

『ギターランス!!』

 

サウンドがギターを握り槍のように構える

 

「さぁ!盛り上がっていこうぜ!!!」

 

サウンドが駆け出し、

テラーに向けてランスを突き出した

穂先がテラーの体に突き刺さり、

勢いそのままに吹き飛ばす

 

『ぐ、おお・・・なんのぉ』

 

まだだと言わんばかりに

パイパーテラーが起き上がる

 

『ならばぁ!!』

 

再度笛を吹く、しかし今度は

先ほどまでの広範囲への音攻撃ではなく

可視化された音色がエネルギー弾となり

サウンドに襲い掛かった

しかし、サウンドは

それをひらりひらりと避けていく

 

「・・・っと。やるねぇ、だったら・・・!!!」

 

サウンドがさらに何かを取り出す

それは変身に使用したものとは

また異なるディスクであった

 

『BURNING ROCK!!』

 

ベルトに装填し、起動する

 

『燃えるように!!ロックンロール!!!』

BURNING ROCK(バーニング ロック)!!!』

 

サウンドの右肩の意匠が変わり、

炎のような意匠に変わる

そして、ギターから炎が迸り始めた

 

「オラァ!!!」

 

炎を纏ったランスを振るう、

テラーが放った弾を叩き落し

槍の刺突と火のダブルパンチが

容赦なくテラーを襲った

 

『熱っ!熱!!?』

 

火に巻かれたテラーが転がりまわる

何とか消化を終え、

立ち上がったテラーが見たのは──

 

『BURNING ROCK!!』

 

ディスクを装填し終えた自らの武器を構え、必殺技を放とうとするサウンドの姿であった

 

「止めだ!!」

 

『ROCK!』

BEST HIT(ベスト ヒット)!!!』

 

炎を纏った槍での猛スピードでの突撃(チャージ)

パイパーテラーはその攻撃を避ける間もなく

真正面から受けるのであった

 

『ぐ、ぐあああああ!!!!?』

 

爆発するテラーを背に

ギターを掻き鳴らすサウンド

勝利の音色が、戦場に響き渡っていた

 

 

『サムライ!!』

『BEST CUT!!!』

 

「はぁあああ!!」

 

数十にもわたるエキストラを

ようやく倒しきった仮面ライダー

その時、向こうから大きな爆発音が聞こえる

どうやら、向こうも終わったようだ

 

「おーい!!」

 

サウンドと名乗った

仮面ライダーがこちらに駆けよってくる

聞きたいことは多くあるがまずは

 

「手を貸してくれてありがとう」

「いいってことよ!!」

 

にこやかに礼を返してくれるサウンド

随分さわやかなタイプだ

ぜひとも今後ともよい関係を結んでいきたい

 

それならまずは──

 

「私は、仮面ライダー。よろしく」

 

友好の証に握手を・・・

 

仮面ライダー(・・・・・・・)?」

 

・・・?

サウンドが何か悩んでいるようだ

何か思うところがあるのだろうか

 

槍を構えて──

 

「悪い!あんた敵みたいだわ!!!」

 

──襲い掛かってきた

 

・・・え?

 

 

続く

 

 

 




次回 仮面ライダーアクト

突如襲い掛かってくるサウンド
「仮面ライダーは迷わず敵と思えってな!!」
40人の怪人が発生!?
『総員、散れぇ!!』
雄飛は怪人を倒しきれるか
「俺は、人を助けたい!本当だ!!」

第8章[仮面ライダーと40人の逃亡者達]
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