※
喫茶「テアトロ」の店長、三浦浩司は友人、
太田誠司との会合を終え帰路についていた
既に空は暗くなりはじめ、人通りも少ない
少し速足気味になる足を、
それでも止めることなく進めていたのだが
ザッ・・・ザッ・・・
「・・・?」
気のせいか、自分の速度に合わせて
何か足音がするような・・・
・・・仮面ライダーという存在と
関わってしまっているが故に
このような状況はつい、
敏感になってしまっているのだろうか
足を止める
ザッ・・ザッ・・ザッ・・
いや、確かに何かがいる。
杞憂ならばいいのだが、浩司は速足で駆けだす
・・・背後の足音も駆け出し気味になっている
明確に、自分を追っている。
ポケットに手を突っ込み電話に手を付ける
振り返って確認後、
すぐに逃走と雄飛君にヘルプを掛ける
逸る心音を抑えながら、気を引き締め・・
振り返る
そして目に映ったのは──
『申し訳ない、私はこういうものなのだが
少しお話よろしいでしょうか』
確かにそこにいたのは
自分が危惧した通り、テラーだった
しかしその体制がおかしい、
ピシリと姿勢よくし、両手持った何かを
こちらに突き出している
その手には、自分の所属情報が明記された
小さな紙のカード、すなわち
テラーが、自分に襲いかかるわけでもなく、
名刺を持って挨拶をしてきたのだ
「・・・えぇ?」
※
町の郊外──
雄飛,杏奈そして翔の3名は
浩司からのテラーと遭遇したという
連絡を受け現場に急行した
浩司の無事を祈りながら──
そしてたどり着いた
その先で浩司を発見する
浩司は、テラーと遭遇するという
アクシデントを受けながらも無地に生還を果たしていた
『いやー、コーヒーがおいしい!
いい腕ですねマスター』
その遭遇したテラーに
コーヒーをふるまいながら──
※
「・・・というわけなんだが・・・」
「「「人間だったころの
意識を持ったままのテラー!?」」」
浩司から話された情報に3名は驚愕する
それは、これまでではありえない現象であった
ちらりと背後でコーヒーを嗜んでいるものを見る
その姿は普通の人間とは大きく異なっている
ゴツゴツとしているようで
その表面はツルリとして光沢を放つ外殻が
体を覆った怪人
まるでガラスで出来た歪な彫刻
言うならグラステラーといったところか
「いや、僕もほんとはすぐに雄飛君達に
来てもらうべきだと思ったんだけれどね」
「話を聞いてみたら、どうも本当みたいでね」
浩司さんがそう言って、テラーに目配せする
すると
『あぁ、私も何が何だかわからなくてね!
目が覚めたら、こんな姿になっていてね!』
『明日も仕事があるのに一体どうしようかと
途方に暮れていたら、彼が通ってくれたのさ!』
『まさか、怪人と対をなすように
仮面ライダーが実在していたとは!』
『いやー!捨てる神あれば拾う神ありというやつだね!』
なんて自分の身の上をペラペラと話し始めた
随分とおしゃべりなテラーだ
『あぁ、すまない
僕はこういうもの何だが』
といって渡されるは薄い紙きれ
杏奈さんが受け取り、書かれた情報を読み上げる
「脚本家
それは、彼の名前と役職
つまりは名刺だろう
テラーが人間の名刺を渡してきて挨拶する
普通ならそのことに驚くのだろう
だが、俺は別のことに驚愕していた
「大木康夫!!!?」
「うわビックリしたっ」
その名は、その名は──
「ね、熱血戦隊 ガンバルンジャーや
絆戦隊 ツナグンジャーの脚本を執筆した・・・あの・・・?」
俺も毎週視聴していたあのヒーロー番組の脚本家じゃないか!
『おお、知っているのかい?うれしいなぁ』
「知ってますとも!どちらも名作中の名作!」
「あの主人公チームを取り巻く数々の試練!
それを乗り越えて成長していくドラマ!
王道の良さをそのままに
新しいことへのチャレンジも忘れない姿勢があった!」
『ああ、作品に込めた情熱がそこまで
伝わってくれているのなら製作者としても
鼻が高いよ』
「その話を生んだ人に会えるなんて・・・感激だ!
サインください!」
『いいとも』
なんていうことだ、こんなところで
こんな人と出会えるなんて
──仮面ライダーやっててよかった!
「いや、ちょっと待って」
杏奈さんからストップが入る
いかん、少しはしゃぎすぎたか
「えっと、あなた本当にその大木さん・・・なの?」
「言っちゃあなんだけど、
テラーがそのふりしてるだけなんじゃないの?」
『ううん・・・
それに関しては僕は証拠を出せないんだ』
『ただ、
僕が人を襲う気がないというのは信じてほしい』
『何故なら──
僕は君たちに倒してほしくてここにいるんだ』
『頼む、
──?急いでとはどういう
その時だ
『!?』
大木さん?の様子が急変した
まるで何かをこらえるように蹲る
『いけない!・・・もうその時間なのか!』
『仮面ライダー君!速く変身しろ!
怪人が来る!』
「!?怪人って・・・どこに」
辺りを見回す、それらしき気配はない
しかし──
『目の前だ!!
そういった直後、大木さんは力が抜けたように
ダラリと首を落とす
次の瞬間──
「危ない!」
咄嗟に大木さんの隣にいた浩司さんを突き飛ばす
ズンと鈍い音が響く
大木さん?が浩司さんの座っていた場所にその
強靭な腕が振り下ろされていた
容易く凹んだ地面
まともに食らっていたら浩司さんは
ひとたまりもなかったろう
「雄飛!」「・・・っああ!」
2人がベルトを装着し、構えた
「「変身!!」」
『MASKED RIDER!!』
『POP UP SOUND IS SINGER SONG RIDER!!! 』
2人の仮面ライダーが怪人と対峙する
グラステラーは2人を視認した瞬間
その腕を振り上げて打ちかかってきた
振り下ろされる腕を避ける
地面は容易く凹む
地面にめり込んだ腕を乱暴に引き抜く
それに巻き込まれた木が幹から容易くへし折れた
「やっぱ本人のふりだったのか!?」
「・・・いや」
それは違う、明らかに大木さんは
つまり──
「
「あの体に
一緒に存在しているんだ!」
「何だって!?」
言うなら2重人格だろう
特定の時にのみテラーが表に出ているのだ
「とにかく、やるぞぉッ!!」
「おお!」
2人のライダーがグラステラーに突撃する
「らぁ!」
アクトの拳、サウンドの槍
それぞれがテラーの体に突き刺さる
しかし──
「・・・。」
「!?」「なに!?」
テラーはそれを食らって
吹き飛ぶでも、たじろぐでもなく
ただ佇む、透明な外装は想像よりも固いらしい
テラーの片腕がアクトの腕を掴む
「おぉ!?」
軽々しく放り投げられた
受け身も取れずに地面と激突する
成人男性一人を容易くとは
なんという怪力だ
今度はテラーが拳を振るう
それはサウンドの腹に叩き込まれ
サウンドは容易く吹き飛ばされた
追撃のために前進するテラー
『WILD WESTERN!!』
「こっちだ!」
振り向くテラーに弾丸をお見舞いする
突然の6度の衝撃にテラーが少したじろぐ
しかし、致命打にはならない
テラーが腕を
掬いあげるように振り上げた
石、土それらが混ざり合った塊が
こちらに突っ込んでくる
弾丸を放ち塊を粉々に砕く
砂埃を払いのける──
その先にはグラステラーが眼前に迫っていた
「なに!?ぐっ!!」
咄嗟に腕で前面をガード
両腕に重い衝撃が走る
テラーの拳を抑えきれずに
アクトもまた吹き飛ばされた
「雄飛!!」
駆け寄るサウンド
迫りくるテラー相手に万事休すかと
思われたその時
テラーの異変に目が付いた
体の前方、自分の拳と弾丸が突き刺さった箇所
その箇所にほんの少しの
「ショウ・・・」
アクトがそれを指差す
サウンドもまたそれに気づき頷いた
「一点突破だ・・・!」
「──OK!!!」
サウンドが槍にディスクを装填する
『POP!!』
『ROCK!!』
槍が一枚の時よりもさらに猛々しく唸る
炎と音を掛け合わせたように纏わせた槍を手に
サウンドがテラーに突撃する
『POP!!ROCK!!』
『
槍が協力なエネルギーを持ってテラーに直撃する
だが、それもまた受けきられて弾き飛ばされた
しかし、ピシリと音を立て
欠けた個所にヒビが生まれる
『WESTERN!』
アクトが銃を構える
狙いは一点──
『
放たれた弾丸は一寸の狂いなく
目標に突き進む
そして見事にヒビに直撃した
ヒビが全身に広がっていく
そして粉々に砕け散った
「よっしゃ!」
サウンドが喜びの声を上げている
しかし──
何かがおかしい
・・・大木さんは一体どこにいった!?
辺りを見回す、周囲には
一体どこに──?
突如異変が起こる
バラバラになったガラス片
それが──
宙に浮き始めた
「!?」
咄嗟に構えるも遅い
大量のガラス片がアクトに向かい襲い掛かる
アクトはガラス片に飲み込まれた
「ぐ・・ぁああ!!」
ガラス片がアクトの体を切り裂きながら通り過ぎる
──油断した!
この怪人は、砕け散っても生きている!!
「雄飛!・・うぉ!」
サウンドもまたガラス片の流れに飲み込まれる
全身を切り裂かれる痛みに
2人のライダーは地に伏せてしまった
空中を漂うガラス片がユラユラとこちらに目標を合わせる
もう一度あれに巻き込まれればただでは済まない
──立たなければ
しかし、痛みで体がなかなか動かない
ガラス片がまたこちらに突っ込んでくる
「(やられる──!)」
もうだめだと思いかけたその時
「・・・?」
暴れるのを抑えるように、ぐらぐら揺れながら
やがてガラス片たちに変化が訪れる
飛んでいたガラス片達が集まっていく
そして、集まったその場所には
最初にみた、怪人の状態に戻っていた
そして──
「・・・やぁ・・・無事かい・・・?」
とにかく、疲れたような声色で
こちらを心配してくれる言葉を放つ
大木さんに戻っていた
※
「人の意識と怪人の意識が
どちらも存在しているなんてね」
戦いを中断し、再度話し合う5人
翔と俺は切り傷だらけになった
体を擦りながら会話に交わる
──危ないところだった
あそこで大木さんの状態に戻らなければ
確実に2人ともやられていただろう
『あぁ・・・僕も最初の夜に
意識が飛んだと思えば、地面は抉れているわ
木はへし折れてるわで大変だった』
『人目を避けて、
森奥に避難してたのが功を奏したよ』
『どうも、
一定周期で意識を奪おうと攻勢に出るらしい』
ハッハッハと笑いながらそう話す大木さん
しかし、先ほどよりも勢いがない
やはり、こちらを傷つけてしまったことに
引け目でもあるのだろう
「なるほど、それで倒してもらおうと」
合点がいく、これではいつ人を襲ってしまうかも
想像がつかない
そういった意味では、最初に会えたのが浩司さん
だったのは最良だっただろう
「なら、今のうちにさっさと倒して
元に戻しちゃおうぜ」
翔がそう提案する
その通りだろう、
抵抗の心配がない今の内に速いところ──
『──それはお勧めできないなぁ』
「!?」
突如の6人目の声
声の主を確認する
そこに立っていたのは──
「ペロー!!」
現れたのは、以前自分の前に現れた
テラーの元締めを名乗る青年
ペローである
立ち上がる
自分の様子から何かを察したのだろう
彼の存在を知らない翔もまた
2人してドライバーを構えた
・・・が
『ああ、今日は君遊びに来たんじゃないんだ』
ペローはそういって、大木さんを眺める
『いやぁ、ただ普通のテラーを
作ったつもりだったのに
飛んだ掘り出し物を引いたよ』
そう言うと嬉しそうに手を広げ
芝居がかったようにこういった
『僕たちの同志が生まれるかもしれないなんて!』
『怪人という力を得てなお、
自意識を失わない自我の強さ!』
『おめでとう!君は
ストーリーテラーになる権利を得た!』
・・・一体何を言っているんだ?
とにかく、この男は何をしでかすかわからない
チケットを構え
大木さんとペローの間に割って入る
『おお、随分邪険にされているね・・・
まぁ、いいや今日は挨拶のつもりさ』
『じゃあね、頑張ってそのまま
ペローの姿が透けていく
とりあえず、今はダメージもある
戦う気がないのなら、
ここはそのまま消えてもらおう
『ああ、そうそう』
消える寸前、思い出したようにペローが言い放つ
『彼の意識は今、
テラーの状態と深く結びついている』
『そのまま倒して、
「何だと!!?」
それは、自分たちが今
行おうとしていたことに対しての静止の言葉
ブラフか──?
そうかもしれない
奴がテラーを消されないための虚言かも
しかし、それが本当のことであれば──
本当がどちらにせよ
自分たちは、そうやすやすと
大木さんを倒せなくなってしまった
※
喫茶「テアトロ」店内
5人は本拠地である店に帰還していた
もちろん、大木さんは怪人体のままでだ
「・・・・」
重苦しい空気が流れる
皆、ペローが言っていた言葉が
気になっているのだろう
「──駄目だ」
店の奥から浩司さんと大木さんが出てきた
何とか、倒す以外の方法で
元に戻せないかを探ってもらったが
その結果は残念なものであった
「外的な要因で、テラーからチケットを
引き抜く方法が分からない」
「体内に残っているわけでもない
・・・完全に手詰まりだ」
さらに重苦しくなる空気
「大丈夫ですって!絶対に戻して見せます!」
空元気のようにそう大木さんを励ますが
その顔は優れない
やはり、ペローが言っていた言葉が
どうしても気がかりなのだろう
「しっかし、あいつが
言っていたことは何なんだろうな」
「ストーリーテラーになれる・・・って」
確かにそちらも気になる部分だ
奴の言うストーリーテラーとは、
一体どういうことなのだろうか
「浩司さんはどう思います」
こういうのは、
やはり浩司さんの予想を聞くべきだろうか
「・・・ん?・・・あぁすまない、
僕にもよくわかっていないんだ」
歯切れ悪くそう言った
やはり、情報が少なすぎるし
そうやすやすと予想は立たないのだろう
無言の状況が続く・・・
そして──
『やはり、僕は倒されるべきだ・・』
大木さんがとんでもないことを言い出す
「待ってください!早まらないで!
・・・あいつが言ったことが
嘘と決まったわけじゃないんです」
「そうだ!もしほんとならあんたが!」
『しかし、このままでは
僕は人殺しの怪物だろう!』
大木さんも追い詰められているのだろう
声を荒げている
無理もない、
自分が元に戻るかどうかが不明なのだ
「ですが!」
『なら、一抹の望みにかけてでも
倒されるべきだ!僕が僕であるうちに!』
『方法が見つからないのなら、僕はせめて
巻き込まれた一般人として終わりたい・・・』
『君たちが気に病まなくていい』
『人間の僕を助けるために・・・頼む・・・!』
「大木さん・・・」
彼は、恐れている
死に・・・だけではない
彼は自分が人殺しの怪人になってしまうのを
何より恐れている
こんな状況で、人を傷つけたくないと
心から願っている
そんな男を
放っておけるわけがなかった
「大木さん・・・必ず助かります」
「あなただって知っているはずだ
どんなに困難な道でも、
必ず方法があって見つけられるって」
「そんな夢のある話を、
あなたは何度も書いてきたはずだ」
精一杯の励ましを掛ける
そうだ、彼はどんな困難にも決して諦めない
そんな物語を書いてきたはずだ
『そんなの脚本の中だけの話さ・・実際なんて』
「いいや、そんなはずはない
だってこれは・・"仮面ライダー"の物語ですよ」
大木さんが、言葉を失う
そうだ──
「"仮面ライダー"がそんな
後味が悪いだけの物語にするわけないでしょ?」
「現実に、脚本なんかないけれど
だからこそ、登場人物たちが描いていかなきゃ」
そうだろ?と周りを見回す
3人とも、笑顔で頷いていた
大木さんは──
『・・・ああ、そうだ
死にたがることなんてない・・・』
『こんな面白い体験をしたんだ
生きて、仕事について書き下ろさなきゃ勿体ない』
顔を上げる
怪人の顔で表情なんてわからないけれど
目に生の光が灯ったように見えた
そして、何か決心したように頷いた
※
夜が明ける
雄飛はフロアの固いテーブルの上で目が覚めた
結局あの後は5人でどうにかして方法を
探していたが、結局解決策は見つからず
そのまま寝落ちしてしまったのだろう
他の
・・・?
あれ──
「大木さん・・・?」
周りを見渡す、大木さんの姿がない
一体どこにいった・・?
まさか──
※
大木もまた意識を戻す
しかし、その場所は雄飛達の喫茶ではなく
最初の森奥でだ
『・・・ふぅ危なかった』
周囲には抉れた地面
つまり、彼はまた暴れていたのだ
皆が寝静まった後、前兆を感じた彼は
大急ぎで森奥に退避
そして大暴れして現在に至るというわけだ
『さて、もうずいぶん明るい
どうやって喫茶に戻ろうか』
『その必要はないんじゃない?』
背後から声、昨夜聞いた声だ
振り返ると
『こんにちは』
そこには昨日自身を勧誘したペローという青年
大木は、後ずさりながらなんとか平静を保つ
──どうしよう
『その様子だとまだ駄目みたいだねー
駄目だよ、もっとうまく抑え込まなきゃ』
『乗っ取りに来たら
『しょうがない』
ペローが手を向ける
その瞬間──
『・・!?』
先程暴れまわったばかりだというのに
こうも早く怪人が乗っ取りに来た
『早くなれるには、回数をこなすことだよね』
この男のせいか──!
抑えるがそれでも湧き出てくるように
怪人の意識が体に押し寄せる
『さぁ!怪人の意識を抑え込んで!
そう!その力だけを奪い取るように!』
『怪人の力だけを我が物にして、
余計な意識だけを握りつぶす!』
『そうすれば!君は人を超える
物語を進行させる側に回れるんだ!』
ペローは愉快そうに言葉を弾ませる
そこに──
「やぁめろぉおお!!!」
「おっと」
仮面ライダーアクトがバイクでその現場に突っ込む
大木がいないと知った雄飛は
彼が暴れるために森に戻ったと推察し
猛スピードで急行したのだ
『いきなりだね仮面ライダー!
でも、少し遅かったかな』
「なに!?」
『グ、グォオオオオ!』
大木は必死に意識を抑える
苦しそうなうめき声が漏れ出ている
「大木さん!」
『邪魔はさせないよ』
ペローが手をかざすと
突如空間が揺らぎ、どこかとつながる
そして現れたのは──
エキストラと呼ばれた、いつぞや戦った
戦闘員たちだ
自分を大木さんによらせないようにと押し寄せる
相変わらず数が多い・・大木さんに近づけない!
『そこで見てなよ!彼はこちら側になる!』
『う、うぅぅう!!』
大木は堪える
怪人の意識が奪おうとしているのを必死に抑える
しかし、もう無理だ
また、怪人になって暴れ出す
そう思ったとき
「大木さん!しっかりしてくれ!」
"仮面ライダー"の声が聞こえる
そうだ、これは仮面ライダーの話だ
このまま、なんの進展も起きないままに
させるわけにはいかない
『ぐ、・・・』
様子が変わる、大木がその意識を抑え込み始める
『いいぞ!そのまま怪人の力だけを頂くんだ!』
ペローが上機嫌に語り掛ける
彼は、これで人の意識を持ったまま
完全に怪人の力を手に入れる
彼はそうなると確信していた
しかし──
『私の・・・』
『ん?』
『私の・・・中から・・・消えてくれたまえ!!』
大木が、抑え込んだ力を
『なんだって!?』
やがて大木に変化が起こる
体が徐々に縮んでいく、
体も普通に──人間の肉体に戻っていく
そして放り投げられた力は
やがてその姿をチケットに変えた
「や、やった!!」
大木は、自力で怪人化するトリガーである
チケットを自分の体からはじき出したのである
「やったぞ!雄飛君!!」
大木さんの喜ぶ声が良く聞こえる
しかしその背後に
『なんだよ・・・それ・・・
そういうのは、いらないんだけど』
さっきまでの喜びようが嘘みたいに
冷めた声で告げるペロー
『じゃあ死ねよ』
戻ったチケットを拾い上げ、
そばにいたエキストラに突き立てた
『ウォオオオオ!!』
『じゃあね』
ペローが興味を失ったと言わんばかりに消える
そしてエキストラがグラステラーに姿を変え
大木さんに襲い掛かった
「マズい!!」
駆け付けようにもエキストラがまとわりつく
「逃げて!!!」
「おおおおお!!?」
あわやと思ったその時
『POP!!ROCK!!』
『
「おおらぁあああああ!!!!」
間に割り込んだサウンドが
カウンターで必殺技を叩き込む
翔もまた、大木がいないと知り
ダッシュで駆け付けた次第である
「あっぶねー・・・間に合った!」
「いいぞ!翔!」
アクトもまとわりつく
エキストラを全滅させ合流する
強烈なカウンターが決まったことで
グラステラーはまた、ひび割れて砕け散り
ガラス片へと姿を変える
「雄飛君!!」
「ん?」
「粉々でも死なないのなら、どこかに本体があるのさ
大木さんがそう言い残し、退避する
「・・・なるほど」
アクトがチケットを取り出し
サムライフォームへ姿を変える
『
『侍丸!!!』
アクトブレイガンにチケットを装填し
腰を落として構える
空中を漂う無数のガラス片をじっと見る
無数のそれに惑わされず
こちらに向かい来るものの中から本体を見つけ出す
──あれだ
ひと際大きいガラス片
あれから、怪人の気配を感じる
ガラス片の大群が襲い掛かる
『サムライ!』
『
交錯するその瞬間、剣を振り抜く
剣は、先ほど見つけたガラス片を一刀のもと
両断していた
『──。』
グラステラーが声にならない叫びを放ち地に落ちる
浮いていたガラス片もまた
司令塔を失って粉々に砕け散っていく
こうして、戦いは終わりを告げた
※
「いやー!一時はどうなるかと思ったよ」
「でもさすがは仮面ライダー!
全員救ってエンディングとは素晴らしいね」
テアトロで上機嫌でコーヒーを啜る大木さん
・・・だが
「あの・・・大木さん?
まだ開店前なんですけど・・・」
そう、開店前から勝手に席に座り
コーヒーを頼んでいた
「まぁ細かいことは気にしないでくれたまえ」
「いや、細かいっていうか営業準備中ですから」
「・・・っていうかなんで毎日来てるんですか」
そう、あの怪人騒ぎから3日が経過した
その後から、この男はほぼ毎日ここに来ては
コーヒーを啜っているのである
「そりゃあ、ここにいれば創作意欲がモリモリとね
湧いてくるから、やっぱり実体験があると違うね」
「ああ、もちろん事件解決には全力で協力するよ!!」
「何でも言ってくれたまえ!!」
「・・・はぁ」
こうして、また賑やかな協力者が増える
ただ、喫茶店としては迷惑極まりない男であった
次回 仮面ライダーアクト
怪人が残した謎の糸
「どうやら、人の生命力を糸にしたものみたいだ」
容疑者はアイドル
「星野聖、今話題沸騰のアイドルよ」
現れたのは鶴の怪人
『私に恩返しをさせてくれぇ!!』
第10章[恩返しをもう一度]