雷帝、奈落にて目覚める
ここは暗い奈落の底。
凶悪な魔物が徘徊するこの奈落で、1人の男が硬く冷たい地面に倒れ伏している。
どうやら意識はなく、目覚める気配もない。
そんな動かない獲物を魔物がほっとくわけもなく、熊型の魔物がそれに気付き、近づいてくる。
一歩、二歩と距離は縮まり、ついには男を見下ろす形になる距離まで接近し、念には念を…そのようなことを思考する頭があるのかわからないが、熊型の魔物はその凶悪な爪を男目掛けて振り下ろす。
この男の物語はここで終わりか…そう思われた瞬間、この階層全体に雷が走る…
発生源は地に倒れている男からだった、至近距離で強力な電撃を浴びた熊型の魔物は黒焦げとなり、男が倒れてる方向とは真逆の後ろに倒れこむ。
男の方はというと、頭に手を当てながらゆっくりとその場で立ち上がる。
「ッ…ここは?何が、あった?頭がボーッとしやがる」
覚醒したばかりだからか、視界は霞、足元もおぼつかない様子。
そんな状態ではあるが、ここがどこなのかを把握するため男は周りをぐるっと見渡す。
男はこの場所がどこかの洞窟内だと把握すると、どうしてこんな場所にいるのかと記憶を遡る。
(確か…京香の実験だかなんかに付き合ってて…そんで、突然足元が光ったんだっけか…んで気がついたらここに…)
どうやら、何かの実験中になんらかの要因で転移してしまったらしい。
そんなこんなで思い起こしているうちに視界は良好に、ふらふらとしていた状態もよくなっていた。
それと同時に、自身の目の前に倒れている黒焦げの魔物に気がつくが、覚醒した時に術かなんかが勝手に発動したんだろうと結論付け、その場から離れるように歩き出した。
「さっきの熊以外にも焦げてはないがぶっ倒れてるのが何体もいるな…このフロア全体に術が…って感じか」
男が覚醒したと同時に放たれた電撃は超が付くほど強力で、このフロアにいる全ての魔物の意識、もしくは命を刈り取るほどだった。
そして、倒れていた場所からある程度進んだところで男は歩みを止めると、その場に膝をつき、地面に手を置いた。
(あいつ程早くはできないが…この場所の全体像を把握しないとな)
男はそのまま目を閉じ、集中し始める。
何をしているかというと、頭の中にマップを作っている感じである。
何がどこにあり、誰がどこにいるかなどをリアルタイムで把握していってる感じだ。
やろうと思えば生きている人間全てがどこにいるか〜とかも簡単に把握できる。
(どうやらここは何百もの階層がある迷宮らしいな…このフロアの生き物は全て止まっているが、下の階層は普通に動いてるな…ずっと上の方には人の団体様が何かやってるみたいだな…あとは同じく下に人が…閉じ込められてんのかこれ?とりあえず1人だけいるな。そんで、上には行けないとなると)
方針が決まったのか、男は目を開け立ち上がる。
「下のデカイ空間を目指すしかないか…多分そこがこの迷宮のゴールだろう」
そういうと、男はこの階層から下に降りるための場所に向かっていくのだった。
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