ありふれない雷帝は異世界では最強です   作:外の神様

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殺意ラージャンにボコされたの初投稿です。


雷帝、奈落の底へ

 男の迷宮攻略は続く。

 

 タールの中を泳ぎ回るサメの階層から更に五十階層は進んだ。迷宮の中では時間感覚がないので、何日?何週間?何ヶ月?どれくらいの時が過ぎたのかはわからない。だが、とてつもない速度で迷宮を進んだのは間違いない。

 

 この階層に辿り着くまでに、数え切れない程の魔物と戦い、その悉くを葬った。階層全体が薄い毒の霧で覆われた場所では虹色に輝く毒カエルに馬鹿でかい蛾と戦った。男に毒の類は一切効かないため、ただただ不快なだけであった。

 ある階層では、地下迷宮であるにも関わらずじめじめとした密林地帯で、環境という話であればここが1番不快であった。この階層では体の節毎に分裂をする巨大百足に襲われたりと苦労したが、良いこともあった。トレントの様な樹に擬態した魔物に襲われた際、追い詰めると何とこいつ、頭部をわさわさと振り赤い果実を投げつけてくるのだ。殺傷能力は皆無で、なんとなくそれを食べてみたのだが、まさかこんな場所で、こんな美味い果物に出会えるとは思ってもみなかった。味はリンゴというよりもスイカに近かった。

 全部狩り尽くす…というわけには行かず、少し懲らしめて幾つか果実を回収したのちすぐにその階層から次の階層に進んだ。

 

 

 そんなこんなで階層を進み、現在の五十階層。この迷宮の中間地点であり(男視点では中間)何かが封印されている階層でもある。

 次の階層への階段はすでにわかっているが、この目の前にある巨大な扉を開けるかどうかで悩んでいるのだ。

 どう見ても洞窟主体の場所で、あり得ない人工物。男が探索している中での初めての変化。無視して進むか、開けるかと男は扉の前で小一時間悩む。

 

 

 

 

 

 

 

 

「うし…」

 

 やっと決まったのか男は立ち上がる。

 

「明らかに封印されているもんを解放する意味なんてねぇからな、さっさと進むに限るな」

 

 そう言いながら男は目の前の扉から離れ、次の階層への階段へと足を進めるのだった。

 

 

 

 

 

「はぁはぁはぁ…」

 

 現在、男は開けた場所で戦闘を行なっていた。周りは魔物の血が飛び散り死体が転がっている状態だ。どうしてこんなことになっているかというと──

 

「流石に多すぎんだろ…どうなってんだ…」

「「「「「「「「「「「「シャァアア!!」」」」」」」」」」」」

 

 二百体近い数の魔物に襲われているからである。

 

 扉のある階層から降りた後、十階層程は何事もなく順調に降りることができた。問題がないのは良いことだが、ビックリするほど何もなかったため、この先で何か起こる…と思いながら現在の階層に降り立った。

 まず見えたのは樹海だった。十メートルを超える木々が鬱蒼うっそうと茂っており、空気はどこか湿っぽい。だが、以前通った熱帯林の階層と違い暑くないのが救いだ。

 男が次の階層への階段に向かっていると、何かがうろついてる気配を察知、急いで草むらに隠れると、ズズンッと地響きが響き渡る。草むらの前に現れたのは巨大な爬虫類の様な魔物。まんま恐竜…しかもティラノサウルスだ。

 

「べたっちゃべただが…まんますぎないか?と言うか何だあの花」

 

 ティラノサウルスモドキの魔物は、なぜか頭に一輪の可憐な花を生やしていた。

 

 鋭い牙と迸ほとばしる殺気が議論の余地なくこの魔物の強力さを示していたが、ついっと視線を上に向けると向日葵に似た花がふりふりと動く。とてもシュールである。

 そんなティラノサウルスは、男を探すかの様に草むらを掻き分ける。見つかって騒がれるのも面倒なため、男は不意打ちでティラノサウルスに術で一撃をお見舞いする。

 男は手を手刀の形に変え、手には紫色の雷が迸る。草むらから出たと同時に、ティラノサウルスの首目掛けてそれを振りかぶる。ティラノサウルスの頭はそのまま切断され、ドチャッと音を立てながら地面に落ち、体の方も地響きを立てながら横倒しになった。

 

 そして、頭についてた花もぽとりと地面に落ちた。

 

「マジでなんなんだ…」

 

 そんなことを呟きながら、男は落ちた花を拾い上げまじまじと見る。この花に何かあるのか?と観察していると、また気配を察知する。今度は十数体の魔物が統率の取れた動きで男を囲み始めた。

 それに対し男は、そのうちの一体目掛けて自ら突進していった。

 そうして、生い茂った木の枝を払い除け飛び出した先には、体長二メートル強の爬虫類、例えるならラプトル系の恐竜のような魔物がいた。

 頭にチューリップの様な花をひらひらと咲かせていた。

 

「こいつもかよ…流行りか?」

 

 男はシリアスブレイカーな魔物にジト目を向け、有り得ない推測を呟く。

 ラプトルは、「花なんて知らんわ!」というかのように殺気を撒き散らしながら低く唸っている。臨戦態勢だ。花はゆらゆら、ふりふりしているが……

 

「シャァァアア!!」

 

 ラプトルが吼え、こちらに飛びかかってくる。それと同時に男は、ラプトルの頭にある花目掛けてとても威力の弱い雷を放つ。

 チューリップの花は雷に撃たれ四散する。ラプトルは一瞬ビクンと痙攣けいれんしたかと思うと、着地を失敗してもんどり打ちながら地面を転がり、樹にぶつかって動きを止めた。シーンと静寂が辺りを包む。男はラプトルと四散して地面に散らばる花びらを交互に見つめる。

 

「死ん…でないな、生きてるな」

 

 男の見立て通り、ピクピクと痙攣した後、ラプトルはムクッと起き上がり辺りを見渡し始めた。そして、地面に落ちているチューリップを見つけるとノッシノッシと歩み寄り親の敵と言わんばかりに踏みつけ始めた。

 

「…なんだこいつ」

 

 ラプトルは一通り踏みつけて満足したのか、如何にも「ふぅ~、いい仕事したぜ!」と言わんばかりに天を仰ぎ「キュルルル~!」と鳴き声を上げた。そして、ふと気がついたように男の方へ顔を向けビクッとする。

 

「いま気づくのかよ…夢中になりすぎだろ」

 

 男はそんなラプトルにツッコミを入れる。ラプトルは暫く硬直したものの、直ぐに姿勢を低くし牙をむき出しにして唸り一気に飛びかかってきた。

 男は、拳に力を込めてラプトルの下顎目掛けてぶん殴る。拳はラプトルの頭部を粉砕し、殴られた勢いで上に吹っ飛び、ドチャッと地面に落ち絶命した。

 

「頭に花…で、取るとあの反応するとなると…」

 

 そんな頭に生えている花について考えていると、包囲網が狭まってきていることに気づき、思考を放棄し、男は自身が有利になれそうな場所を探し移動を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 そんなこんなで時間は進み、現在の魔物数百体に囲まれてる状態に至る。

 

「クッソ、埒があかねぇ…あんま使いたくなかった手だが…」

 

 男はそう言いながら、襲いかかってくる魔物を捌きながら術を発動する。対象は元凶を除いたこの階層にいる全ての魔物、迷宮内にも関わらず暗雲が立ち込める。

 

「"天雷"」

 

 暗雲から無数の雷撃が放たれ、この階層にいる全ての魔物へ雷が落ちる。雷に撃たれた魔物は、その悉くが黒焦げになり絶命した。

 

「あー、つっかれた…そんじゃま、元凶を殺しに行くとするか」

 

 魔物を文字通り殲滅した男は、全ての元凶の元へ向かった。

 しばらく歩くと、元凶がいるであろう場所に続く縦割れの洞窟を発見した。どうやらこの奥には元凶とともに次の階層への階段もある様だ。そして男は洞窟の中に入る。

 しばらく道なりに進んでいると、やがて大きな広間に出た。広間の奥には更に縦割れの道が続いている。あそこが次の階層への階段みたいだ。

 男は辺りを探る。すると、奥の縦割れの暗がり何やら気配を感じる。

 

「そこか…」

 

 男は外の魔物たちを操っていた元凶がいるであろう場所に、それなりに威力のある雷を飛ばす。すると、縦割れの奥から耳をつんざく様な魔物の悲鳴が洞窟内に響き渡る。気配が消えたため、奥に確認しに行くとそこには、元凶である魔物、アルラウネもしくはドリアードが燃え尽きていた。

 

「案外呆気なかったな…」

 

 そんなことを呟きながら男は、この広間で少し休んでいくことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、時は進み…男はついに百層に到達したのだった。




フロアの魔物またしても全滅、エセアルラウネは多分二度と復活しないでしょう。
ハジメさん達、この階層楽々突破。
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