「素晴らしき哉、緑の香り」
山はいいですね。自然は心を潤してくれる、地球の生み出した最高の癒しです。
トレセン学園に入学するまでは、実家と山を行き来する生活をしていましたから、山は転生後の第二の故郷といえるでしょう。
響鬼の戦闘シーンも自然の中で戦うのが印象的ですし、私には最高の環境です。
もっと欲を言うのなら、遊歩道やハイキングコースが整備されていない鬱蒼としたくらいの自然なら尚良しでした。
しかし、そんな求道者御用達の苦行コースに初心者二人を放り込んだら、怪我からの予後不良間違いなしなので我慢します。
今回は姉妹のトレーニングに私がついてきただけなので、その辺りはしっかりと弁えます。
山の空気を満喫していると、登山靴に履き替え終えたビワハヤヒデが近づいてきました。
「トレセン学園にいる時よりも生き生きとしているな」
「田舎育ちなもので、街中よりこちらが過ごしやすく感じます」
「そうか。ところで、本当に靴は履き替えなくて大丈夫なのか?
私達のウマ娘の脚は、生み出される力に比べて強度が心許ない。一度の骨折が引退原因になることもある」
姉らしい心配性ですが、地元でも普通の運動靴で山道を駆けていたので、寧ろ慣れていない登山靴の方が危ないです。
「はい。慣れていますし、鍛えてますから」
「そうか。念の為に簡易治療キットは持ってきているから、必要な時には言ってくれ。
ブライアン、お前もだぞ」
「ああ」
ビワハヤヒデと色違いの登山靴の具合を確認しているナリタブライアンは、今にも駆け出しそうな雰囲気を出していました。
恐らく、強くなるためにという渇望が強いのでしょうが、山においてそれは命取りです。
人間よりもパワーがあるウマ娘とはいえ、所詮は生物。自然という人智を容易に超える存在を前にすれば、なんとちっぽけなことでしょう。
「とりあえず、二人共は未経験者なので私が先導させてもらいます。よろしいでしょうか?」
「ああ、宜しく頼む」
「構わない」
今回、誘いに乗って正解だったかもしれません。
この二人だけで山に入っていたら、ナリタブライアンが早々にハイキングコースを外れて、ビワハヤヒデが止めきれず後を追い怪我に繋がった可能性があります。
それだけ、ナリタブライアンからは山を
「では、まず山に慣れるためハイキングコースを歩きましょう。いきなりコースを外れても百害あって一利なしですから」
「段階を踏む訳だな」
「はい。こちらで大丈夫と判断したら、少しコースを外れてみましょう。
しかし、山を
そう言いながらナリタブライアンに威圧感をぶつけると、一瞬驚いた表情をして直ぐに睨み返してきます。
レース中であれば素晴らしい反応速度と言えるでしょうが、未舗装の山道を歩こうとする者としては全く足りません。
折角ライバルルートに入ったのに、怪我をされて夢を託される継ぐ者ルートに路線変更になっては興醒めですから。
「反応が遅い。即座に反応できなかったのは覚悟が甘いからです。
自然はそこにあるだけのものですが、ウマ娘より確実に上位の存在ですよ。
日本では、年間約三百人前後が山で命を落としているのです。
少ないと思う人もいるかもしれませんが、油断すれば自身がその中の一になるでしょう。
「ああ、わかった」
「ビワハヤヒデさんも油断しないでくださいね」
「肝に銘じよう」
「では、行きましょう」
久しぶりの山なので、景色を楽しみながらゆっくり歩いても良いのですが、目的は鍛錬の先導なので競歩くらいのペースにしておきます。
誰も入らない山道ではなく、普通のハイキングコースなので一般人の姿もありますが、これくらいなら互いに余裕を持って避けることができるでしょう。
コースを爆走して人と接触して大怪我をさせ、警察沙汰なんて考えたくもありません。
後ろを振り返るとナリタブライアンは油断こそしていませんが、ゆっくりペースが嫌そうにしています。
果たして、今日の最後までそんな態度をとり続けられるでしょうか。
ビワハヤヒデの方は事前に調べていたのか、登山時の典型パターンな歩き方を実践してみようとしていました。
知識ばかりの頭でっかちで終わらなければいいですが、大丈夫でしょう。
「うん?今、誰か私の頭がでかいと言わなかったか?」
設定で気にしているというのは知っていましたが、心の声にまで反応するとはさとり妖怪の類に足を踏み入れているのでしょうか。
とりあえず、今後は気をつけましょう。
「姉貴。誰も言ってないから、安心しろ」
「そうですよ。自然の音と他ハイキング客の話し声だけです」
「いやだが、確かに言われた気がしたんだ!」
そこからビワハヤヒデが落ち着くまで少しかかりました。苦労人な姉に見えて、実際は似た者姉妹ですね。
掛かりを延長するようなスキルは取っていないと思うのですが、いつの間にか習得していたのでしょうか。
しかし、最初からこれでは今後が少々思いやられますね。
それで私が何か困ることになるのかといえば、特に困らないのですが。前世より他人の失敗とか間違い等を見てしまうと身体がゾワゾワとして落ち着かなくなるのです。
「こんな事で道草をくっていては、いつまで経っても先へ進めませんよ」
「姉貴、山に集中しろ。こいつにも、そう言われただろ」
「……ああ、すまない。少々取り乱した」
冷静になったことを確認し、私達は再び歩き出しました。
それからは二人共集中を乱すことなく歩けており、ようやく鍛錬が開始できました。
この山のハイキングコースは、現在でも疎らに人の姿がある場所なので整備がしっかりと行われています。
これでは私にとって平地を歩くのと変わらないレベルの鍛錬にしかなりませんが、後ろを歩く姉妹には丁度良いのかもしれません。
トレーニングで階段の昇り降りをするチームもありますが、一歩踏み外せば大怪我に繋がりますし、そんな前時代的なことをしなくもトレセン学園には最新のトレーニング機材が揃っています。
わざわざ、こんなトレーニング好んでさせるトレーナーはいないでしょう。
そんな理論のりの字もないこんな前時代の遺物的な事をした経験はないためか、ナリタブライアンは右股関節、ビワハヤヒデは左脚に負担が偏っています。
ペースを調整しなければ、早々に脚を痛めてしまうでしょうね。
かと言って、本人達すら把握していない不調の原因を指摘しても、ビワハヤヒデはともかくナリタブライアンは聞き入れないでしょう。
とりあえず、今日はこのまま山を歩いて最後に指摘しておくという形が最善かもしれません。
そんな考え事をしながら振り返ると、私と姉妹の距離が歩き始めよりも開いていました。
まだ歩き出して一㎞程度でしかないのですが、身体の出来上がっていない中学生ならば仕方ないのかもしれません。
置いていくという選択肢はありませんので、距離が詰まるまで待ちます。
「すみません、早すぎましたね。慣れていないことも考慮して、もう少しゆっくりにするべきでした」
「今のままでいい。直ぐに慣れてみせる」
「ああ、君の動きを観察して徐々に修正できている。今のペースで大丈夫だ」
今の言葉選びは不適切でした。
ただでさえ負けん気が強いウマ娘、その中でも特に勝負事に貪欲な方である姉妹に対して、こちらが早すぎたなんて言ったらこうなることは容易に想像できたはずです。
瞳に闘志を燃え上がらせている現状で、少しでも速度を緩めようものなら侮辱ととられ大変なことになるでしょう。
「わかりました。なら、ちゃんとついてきてくださいね」
「ああ」
「勿論だ」
仕方ありませんので、意識してどういった動きで進んでいるか見えやすいようにします。
私も八万㎞を歩いている中で身に着いた動きですが、二人なら見ただけで何かコツを掴むに違いありません。
再び歩き出すと姉妹が何やら話しているようなので、耳を気づかれないように傾けます。
「姉貴、私達とあいつの差は何だ?」
「恐らく、彼女は山道において最も進みやすい適切なラインを完璧に見極めている。ブライアンもレースでなら経験はあるだろう?」
「ああ」
「悩んでいる様子も見られないから、無意識的か、目に入ったら反射的に行われているかのどちらかだろう。
だいたいだが、歩き方や身体の使い方についてもわかってきた」
「流石だな、姉貴」
ほら、これだからネームドウマ娘は恐ろしいのです。
まだ本格的に山歩きを始めたわけではないのに、既にコツの一歩手前まできているのですから嫌になりますね。
私なんて山歩きのコツを掴むまで、ほぼ毎日山に入っていたのに一年以上はかかりました。
チートはありますが、この辺は前世での活躍や積み上げられたものの差なのでしょう。
「反射レベルの判断力、超越精神世界、鍛え上げられた身体能力。どれ一つとっても驚異となり得るな」
「それを作り上げたのが、山での鍛錬か」
「彼女にとってはこの程度はウォーミングアップに過ぎないのだろう。
気が付いているか?先程から少し歩き方が変わっている」
「ああ、ペースは変わっていないが、私達に示すかのように歩いている」
歩き方の変化は少しだけはずなのに、それすらもいとも簡単にに気が付くとはちょっとした恐怖ですね。
2~3年くらい山を駆けていれば、私と同じような存在になってしまうのではないかと思ってしまいます。
いくらウマ娘の身体能力が人間よりも高いとはいえ、ヒーローである仮面ライダーに追いつくほどになるとは考えにくいです。
しかし、私という存在が介入したクロスオーバー成分の入っている時空ですから、あり得ないと言えないでしょう。
そうなったら、この世界線はどうなっていくのでしょうか。
まあ、どうなったとしても私の責任が問われることはないでしょう。今は、このウマ娘として日々を生きていけばいいのです。
「絶対にその背中を追い抜かす」
「ああ、私達ならできるさ」
私とて仮面ライダーの身体能力を貰った身ですから、負けるつもりはありません。
挑むというのなら、苦い敗北を贈りましょう。
○
「皆さん、退いてください。ハローが通りますよ」
コース上で息も絶え絶えで、死屍累々となっているクラスメイトのウマ娘達に声をかけ、這いながらでも退いてもらいます。
私に負けたくない気持ちは分からなくもないですが、たかが授業の模擬レースでそんなに疲れ果てるほど全力を尽くしていると、いつか潰れてしまうのではないかと心配になりますね。
差し脚質な子も、少しでも距離を稼いでおこうと大逃げ気味に走っていましたし、そんな意図はないのに同級生潰しをしているみたいで嫌な感じです。
トレセン学園に入っている時点で、彼女達も全国から集められた選りすぐりのウマ娘です。ナリタブライアンに負けず劣らずに、勝ちに対しての意欲は強いのでしょう。
今後は、彼女達が頑張り過ぎて気持ちに潰されてしまわないように気をつけていきましょう。
全員がコース上から撤退したことを確認し、走って荒れたダートを均すために
響鬼の全力で踏み込むとコースにクレーターができてしまうので、力をセーブして走ると全員から怒られるし、全力で走っているとターフでは整備が追いつかないからとダートコース固定にされるし、全く疲れていないからハローがけも頼まれるし、理不尽なと嘆きたくなりますね。
自分で空けておいて何ですが、このクレーターの整備は面倒くさいことこの上ないです。
他の部分なら一度ハローがけすればよいのですが、40tのキック力を生み出す脚力で踏み込んだ穴は数度かけなければならず、その度に数tのハローを持ち上げて向きを変えたり、戻したりする必要があります。
前世では帰宅部でしたが、グラウンドでトンボがけをしていた野球部員達もこんな気分だったのでしょうか。
「よし」
コースがきちんと均せたことを指さし確認し、私は腰に差していた旗を振ってスターターを務めるウマ娘に合図を送りました。
向こうも合図を確認し旗を掲げたので、ハローを担いで素早く退散します。
「やあ、君がアーチャーリヤ君だね」
ハローを担いでコースを区切る柵を超えると、そこには次期生徒会長確定のシンボリルドルフ副会長がいました。
今は授業時間であり、生徒会役員だからと免除されるわけではないのですが、これはいったいどういう事でしょう。
とりあえず、担いだまま話すのは失礼なのでハローを足元に置いておきます。
田舎育ちで山ばかりを駆けていた私にエリートウマ娘である皇帝殿との接点はありませんし、入学して半月が経とうしていますが、その間にもイベントの起点となるようなことはありませんでした。
強いてあげるとするなら入学模擬レースを見られていたことくらいですが、それがトリガーとなるならもっと早く接触があってもいいはずです。
因みにこの副会長は去年無敗の三冠ウマ娘となり今年からシニア級で、まだ皇帝という呼び名は定着していません。
「はい。今は授業時間の筈ですが、副会長はどうしてここに?」
「ああ、取材帰りで午前の授業は免除されているんだ。君とは一度話をしてみたいと思っていたんだ」
クラシック三冠と有馬記念を制して、中央史上初の四冠ウマ娘で年度代表ウマ娘なわけですから、取材も殺到するのは当然でしょう。
アプリ等の知識がある私からすれば、最低でももう三冠程は獲得することを知っているので特段驚きはありません。
そんな殿上ウマ娘から、話してみたいと思われていることには少々驚きました。顔には出しませんが。
しかし、私が知っているシンボリルドルフとは雰囲気がかなり違いますね。
アプリやアニメでは沈着冷静で年長らしい導き手のような感じだったのですが、今目の前にいるシンボリルドルフはナリタブライアンに近しい闘争への渇望が見えます。
生徒会長の重圧もなく、競争ウマ娘として最盛期を迎えて、ウマ娘の本能が一番強い時期なのかもしれません。
どうやら、響鬼の末脚はナリタブライアンだけでなく他のネームドウマ娘達にも灯をつけてしまったみたいです。
「はあ、こんな田舎ウマ娘にですか?」
「仙才鬼才、君の脚は既に
まあ、身体能力だけなら仮面ライダーですからね。
逆に通用しなかったら、幼き頃のヒーロー像が粉々に砕かれることになるので精神に多大なダメージを与えられるでしょう。
「私には荷が重いですね」
「なに、経験を積めば直ぐになれるさ。ところで……」
何かを言いかけながら副会長は、私の頭からつま先までをゆっくりと観察していきます。
いったい何事なのか理解が追い付きませんが、不快ではないので何も言わないでおきましょう。
バグ枠の私と当代最強ウマ娘が会話しているので、クラスメイト達も野次馬ならぬ野次ウマ娘となり、少し離れた位置からほぼ全員が聞き耳を立てていました。
「やはりか……アーチャーリヤ君、君は既に
「何を……!?」
言葉の意味が解らずに聞き返そうした瞬間、視界に雷光が迸ります。
これは固有スキル『汝、皇帝の神威を見よ』で発生するアレでしょう。
アプリで発動した時には頼もしいスキルで、ナイスネイチャの育成時にはよくお世話になっていましたが、実際に目の当たりにすると並の精神力では呑まれますね。
プレイしていた時はあまり気にしていませんでしたが、これは所謂固有結界みたいな心象風景の具現化であり、時間等からも切り離された空間みたいです。
そして、これを感じ取れるのは同じく固有スキルを持ち
ならば、私も遠慮なく響鬼を解放させてもらいます。使えと言わんばかりに、いつの間にか音角が手の中に納まっていますし。
「さあ、君の
言葉で返すのは無粋なので、私は音角を展開し指を叩いて鳴らして額の前に掲げました。
本物の響鬼が変身する時には紫の炎が全身を包むのですが、私は普段が響鬼のようなものなのでいきなり紅になります。
足元から蒸気が立ち上がり、それが鮮やかな朱色の炎となり全身を包み込みました。
音撃棒がないので両腕を胸の前で交差させ、気合の一声と共に薙ぎ払うと変身完了です。
首から下は完全に響鬼紅となり、頭部は紅い隈取のような部分が顔付き、耳の前から銀色の角が生えるだけと変化が少ないようです。
ウマ娘は顔がいいので、それを隠すなんてとんでもないという事なのでしょう。
「響鬼 紅」
とりあえず、変身したのならこの台詞は言っておかなければならない気がします。
そして、初めて紅を使って何となく理解しました。
これは現実世界で本当に変身している訳ではなく、固有スキル発動時の領域のみで変わるもののようです。
以前発動させようとして漏れていた炎も、アニメでライスシャワー等一部のウマ娘が出していたオーラと同じものだったのでしょう。
「素晴らしい……鬼気森然、やはりあの時感じたものは本物だった」
「いきなりは、やめて欲しいですね」
「すまない、こちら側に辿り着けるウマ娘は僅かでね。つい、嬉しくなってしまったんだ」
身体能力も紅のままのようで、身体にいつも以上の力が漲っています。
「これって、いつ消えます?」
熱を発していないので不快感はありませんが、いつまでも視界に映っているのは鬱陶しですね。
「恐らく、本気で走れば消えると思うが……炎が消
アプリでシンボリルドルフが駄洒落言っているのは何度もみましたが、こんな何とも言えない気持ちになるなんて知りませんでした。
エアグルーヴの調子も落ちるはずです。
逆にこれで大笑いできるナイスネイチャの感性が心配になってきました。
「ははは」
とりあえず、愛想笑いをしておきましょう。
ここで面白くないとストレートにぶつけられる程常識知らずではありませんし、気安い仲でもないですから。
「そうか、笑ってくれるのか!実は、三冠ウマ娘になった辺りから周囲と壁ができたように感じてね。
そこで小粋なジョークを挟めば良いのではないかと結論付けたのだが、やはり間違っていなかったようだ。
ありがとう、アーチャーリヤ君。これで私も確信が得られた!」
「そ、それは、良かったです」
どうしましょうか、私が何も考えず愛想笑いしてしまったせいで、副会長の方向性がより悪化しかねない事になっています。
これは何とか修正しなければ、現在や未来の生徒会メンバーが大変なことに……なっても、私には何ら害はありませんね。
現生徒会メンバーはアプリ等に出てこなかったので全く分かりませんし、未来で生徒会入りするのは私ではなくナリタブライアンですし。
よし、気がつかなかった事にしましょう。
「アーチャーリヤさん。レースが終わったみたいだから、ハロー持ってくね」
今回の件を知られたら一部のウマ娘から恨まれるであろう責任を放り投げる決意を決めていると、クラスメイトがハローを取りに来ました。
副会長と話している間にレースが終わっていたようです。
「すみません、リボンヴィルレーさん。力があり余っているので私がやっておきますよ」
「いいよ、いいよ。シンボリルドルフ副会長とお話し中みたいだし、私だってパワーはそこそこあるんだよ」
新入ウマ娘の中では鍛えられている方ではありますが、私ほどではありません。
それに身体を動かしてこの炎を消費しておかないと、面倒くさいことになる予感がひしひしとするのです。
実際、校舎の方から様々なプレッシャーを感じます。
きっと、領域に入っているウマ娘は離れていても領域を感じ取れるのでしょう。
まるで、スタンド使いは惹かれ合うみたいですが、私にとっては目をつけられ過ぎるのは好ましいとは言えません。
「すまない、授業中なのに話し込んでしまった。
円満具足。アーチャーリヤ君、次はレースで相まみえよう」
「……私が勝ちますよ」
「アーチャーリヤさん!?」
皇帝への突然の宣戦布告に、近くにいたリボンヴィルレーを含めたクラスメイトが騒然とします。
穏やかに流しておけば、何事もなく接触イベントとして終わるのでしょうが、ライバルルートを進んでいる者として正しくありません。
チート転生者にとって、
自由気ままに二次創作世界を過ごしたいならチートを望まなければ良く、チートを思うが儘に振り回して承認欲求を満たすのは自己満足過ぎて楽しみがありません。
チートを持つなら世界に望まれる役割を果たし、彩る花となるべきというのが持論なのです。
勿論、この持論と違うから悪いと言っているのではなく、ただ私はそういう方向性が大好きというだけであって不毛な論戦は望みません。
人の趣味趣向は千差万別であり否定してはいけません。そこを否定してしまえば、後はもう生命のやり取りしか残らないでしょう。
この問題は人類史が続く限りは、絶対に解決しない問題の一つでしょうね。
そんな持論を展開する私だからこそ、一度与えられたライバルルートの役割にそぐわぬ行動をとることは魂が許しません。
「そうか、ならば昇ってくると良い。その時には、私の全てを持って応えよう」
「この感覚は掴みましたから、私は更に速くなれるでしょう。そう簡単に抜かれないでくださいね」
「気炎万丈、紅の鬼退治を見事果たしてみせよう」
「楽しみです」
これ以上の言葉は不要と私はハローを持ってコースへ、副会長は校舎の方へと振り返ることなく進みます。
皇帝挑戦ルートにも入ってしまったようですが、こればかりは仕方ありません。世界が私にそう望むのですから。
恐らく、ナリタブライアンのライバルルートに入った時から、この流れは必然だったのです。
この分だと直にエアグルーヴとの対決しなければならない運命になりそうですが、何とかなるでしょう。
どんなネームドウマ娘が相手でも仮面ライダーは負けません。それをこの世界で証明するためにも
「副会長に挑むなら、もっとウイニングライブの練習を頑張らないとね」
「……折角のいい感じの雰囲気だったのに、それを言ってしまったらお終いですよ」
やめてください、リボンヴィルレー。その言葉は私に弱点特攻の効果は抜群です。
特に純粋無垢そうな顔で放たれるとウォーズマン理論で威力は1200万パワーを優に超えるでしょう。
いっそマスコミを焚きつけて、ウイニングライブ不要論を吹聴させた方が早い気がしてきました。
一曲すらまともに踊り切れない私に、G1レースごとに違うダンスを覚えきれる訳がありません。
でも、
週末の山へ行くことだけを考えて、何とかこの難題を乗り切っていきましょう。
メイショウドトウを課金の末、天井しました。
それまでに赤テイオー、スズカ、黒マック、スペ、タイシンが来てくれましたが、ピックアップとは何なのでしょう。