夏休み初日に始まる人生(性)転換点   作:292941

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眠い


第2話

「3本目いくか」

 

スポーツドリンクを片手に、隼人はつぶやく。

現在時刻は8時12分、祐希が目を覚ます1分前である。

祐希にゲームを催促され、スポーツドリンクを手にしたまではよかったが、その後すぐに祐希は眠ってしまい、しかしスポーツドリンクの効果によって眠ることが叶わなかった隼人は結局祐希が眠った後もゲームを継続し、それどころか2本目のスポーツドリンクを使いそして今、3本目にまで突入しようとしていた。

つまりはそう、自暴自棄である。

隼人はスポーツドリンクを飲み干し、言う。

 

「よしっ、やるか」

 

引き続きゲームをやろうとコントローラーを手に取る隼人。しかしその瞬間、隼人のスマホから通知が鳴る。

 

「誰だ?って祐希か」

 

スマホを見ると、メールの通知であり、メールの差出人は隼人の親友、祐希。

あの野郎、起きやがったのか…、などと考えながらもスマホを開くと。

 

《ちょっと家来てみ、洗面所の鏡が呪われた》

「なに言ってんだあいつ」

 

寝ぼけているとしか思えない内容。

 

《寝ぼけてんのか?なんならスポドリ持ってってやろうか?》

《とりま来てくれ、マジで、至急》

「本当になんなんだ…」

 

メールには急いで来て欲しいと書かれている。

なんだ、またあいつのイタズラか?と思いつつも同時に隼人は、1発殴ってやろうかとも思っていたため。

 

《分かった、今行く》

 

隼人は服を着替えて、さすがのスポドリでも抵抗しきれなくなってきた眠気を堪えながら祐希の家に向かう。

向かうとはいえ、そこまで祐希の家と隼人の家は近い距離ではないので、徒歩ではなく自転車で向かうことになるが。

そうして自転車で早20分。

住宅街の隅にある一軒家、表札には『一条』と書かれている家がある。

ここが祐希の住む家。

隼人は適当な所に自転車を停めて、チャイムを鳴らす。

 

「おーい、祐希。来てやったぞ」

 

隼人はいつでも殴れるように握り拳を用意して、また眠い瞼を擦る。

そうして「今行く」という声と共に中から足音が聞こえてくる。

だが不思議なことに、「今行く」のイントネーション等は隼人のよく知る祐希のものなのだが、声だけはいつもよりも少し高い。いや、まるで女のような声をしていた。

隼人が疑問に思いながらも少し待つと、中から玄関が開かれる。

 

「おせーぞ…って、誰?」

「は?」

 

中から玄関を開けたのは隼人の知る友人、祐希ではなく隼人よりもほんのすこし背の低い女性だった。

隼人は一度後ろに下がり、表札を確認する。

 

「一条だよなやっぱ」

 

隼人のよく知る友人の家で間違いないはずだ。

そしたその友人は一人っ子で親は現在海外赴任中と昨日の夜聞いた。

であるならば…。

隼人はスマホを取り出し、祐希にメールを送る。

 

《なにお前、適当なこと言って俺を呼んで、彼女できた自慢でもするつもりか?》

 

文面を用意し、送信ボタンを押す。

その瞬間、目の前の女性のズボンのポケットからピロンッ、という音が流れる。

女性はスマホを取り出し、中身を確認すると隼人の方を見て。

 

「なに言ってんだお前。彼女なんかできる予定今のところねーよ。つか目の前にいるんだから普通に話せ」

 

たった今隼人が祐希に送った内容に、ふさわしいとも言える返事を目の前の女性が隼人にする。

 

「いや、えっ?その話し方、お前、祐希?」

「そうだよ、よく見ろ」

「よく見ろっつったって」

 

どこをどう見ても祐希ではない。

 

「それよりもさ、なんか洗面所の鏡がなんかおかしくてさ。何回見ても俺じゃなくて変な女が映るんだよな」

「いや、そうじゃなくて…」

 

女性の言うことを信じるとしたら、彼女は祐希ということになるが…。

すでにとてつもない睡魔に襲われていた隼人にそれだけの情報を一度に送り込むのは、文字通り許容量を越えるというもので。

 

「あ、待って、眠い…ごめん、無理…」

「えっ、ちょ。なにこれ夜の復讐?いやおい、起きろって!」

 

最後の力を振り絞って祐希の家の中までは歩いていくことに成功したものの、その場に倒れこむように隼人は眠りにつく。

 

─◇─◇─◇─◇─◇─

 

「うーわ、やっぱ赤くなってる」

 

玄関に倒れこむように眠った隼人を、リビングのカーペットの上に寝かせた祐希は呟く。

隼人のおでこの辺りが、先程の文字通りの倒れこむように、勢いよく床に頭をぶつけたせいで赤く腫れていた。

 

「つかなに、こいつまさか今まで起きてたの?」

 

そうでないとこんな、限界、といった風に眠ることはないはずだ。

そうして祐希は考える。

 

「こいつの目から見ても女だったのか…?」

 

だが祐希は男だ。

しかし現実は現在の祐希が女であると、祐希に対して主張する。

声、髪、鏡、そして親友までもが。

ここで祐希が女だったと仮定して、昔から祐希が女で、祐希の精神がおかしくなった、という可能性もある。

だがそれはあり得ないとも言える。

隼人の反応からして、女と祐希が同一人物であることに信じられないという顔をしていたからだ。

つまり祐希は、一夜にして男から女になってしまった、ということになるが…。

 

「わけわかんねー」

 

せっかくの現実逃避が他でもない、親友によって打ち破られてしまった祐希は長くなった髪の毛をいじりながら、隼人が起きることを待つことにした。




圧倒的ネタ、モチベ、国語力不足
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