No Step Back   作:紅茶係騎C

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Ep.0-1 いつもの戦場 前編

巨大な廃墟となった市街地に、風切り音を伴って、一発の砲弾が落下する。砲弾は落下と同時に炸裂し、周囲に破片と衝撃を撒き散らす。

轟爆によって破壊され、無数に生じた破片が、自機の外殻を叩く。

砲撃は一発で止むことはない。通り雨が降るときのように、最初の一滴(初弾)が地面に落ちると次の瞬間には大量の雨粒(砲弾)が落ちてくる。

(砲撃)は瞬く間に勢いを増し、廃墟を瓦礫に変えてゆく。

雨音(爆発音)の響き渡る中、誰かの祈る声が聞こえた。

 

『────どうか当たりませんように』

 

祈る声は、まるで自分が口にしたかのように聞こえたが、砲弾の雨の中で、意識して何者かに祈ったことは一度もない。

パラレイドを介して繋がっている友軍の誰かが口にした言葉だったのだろう。

昔、誰かが言った。「塹壕の中に無神論者はいない」と。

無差別な死が降り注ぐ中、無力な自分たちは祈ることしかできないのだ。

 

長いこと沈黙していた時代遅れの無線通信が雑音と共に上官の声を吐き出す。

 

『──エクスターミネーター。ハンドラー・ワンよりエクスターミネーター』

 

無線機の送話ボタンを短く押し、呼び出しに応える。

 

『戦区正面に進出中の敵は斥候型(アーマイゼ)及び近接猟兵型(グラウヴォルフ)を前衛とした連隊規模集団。第一戦隊は地点648にて迎撃を実行。これを撃滅せよ』

 

「ハンドラー、既に地点716に展開を完了。第二小隊を斥候に出している。他戦隊の展開状況はどうか」

 

『第二戦隊及び第三戦隊が地点699にて、大隊規模の敵と交戦中。第四戦隊は長距離砲兵型(スコルピオン)の砲撃を受け、前進が遅れている』

 

「了解。以降の指揮はこちらで執る」

 

『───現時刻を以て指揮権を現場指揮官に委譲。戦隊各位の奮戦に期待する』

 

無線機は上官の『通信終了』という言葉と共に沈黙。

小さくため息をつくと、パラレイドを介して戦隊員達の笑い声が耳に届く。

 

『みんな聞いた?「戦隊各位の奮戦に期待する」ですって』

 

『笑える、勝手に期待してろっての』

 

『あ~あ、私も安全なところから「奮戦を期待する」なんて言ってみたいわ』

 

戦隊員達は思い思いにハンドラーを馬鹿にして笑う。

戦線後方の遠く離れた安全地帯からの指揮など邪魔なだけ。

それが戦場を見たことがないものが行うというのであればなおさら。

生きるか死ぬかの瀬戸際にあるからこそ、今だけでも楽しく行こう。

そんな思いから来る愉しげな会話は、斥候からの報告で一度途切れる。

 

『ブラボー・リードより戦隊全機へ、談笑中のところ申し訳ないが、敵と接触した』

 

斥候に出していた第二小隊からの報告が入り、戦隊内の空気が変わる。

 

『敵の編成を伝達する。前進隊形の先頭は斥候型(アーマイゼ)近接猟兵型(グラウヴォルフ)による戦闘偵察斥候。後方1700に戦車型(レーヴェ)を多数加えた尖兵中隊。総数は200前後。捕捉できてるのはこれだけだ』

 

第二小隊から上がった報告を手元の戦域図に書き入れ、敵の動向を予測する。

長距離砲兵型(スコルピオン)による攻撃前支援射撃を行い、戦闘偵察斥候を出し、尖兵中隊に戦車型(レーヴェ)を複数加えているところから、敵の目的は強行偵察か波状攻撃。

波状攻撃なら本隊の増強機械化歩兵連隊(M R)規模を相手にしなくてはならない。

 

「第二小隊は接触を維持。第三小隊、K P(キルポイント)04を使え」

 

『ブラボー・リード了解!』

 

『チャーリー・リードも同じく了解』

 

「エクスターミネーターより戦隊全機へ、戦区へ進出中の敵戦力は増強機械化歩兵連隊(M R)規模と推測される。波状攻撃に備え小隊ごとに陣地へ」

 

各小隊の現在位置や地形を確認し、作戦を立て、最適な役割を振り、小隊長たちに役割の伝達を済ませ、自身も配置につく。

 

『ブラボー・リードよりエクスターミネーター。仕掛けるなら今だ、交戦の許可を』

 

戦闘偵察斥候がK P(キルポイント)まで600に迫ったと同時に、第二小隊長から交戦許可を求められる。

第二小隊と敵尖兵中隊の距離も申し分ない。頃合いだろう。

 

「第二小隊の交戦を許可」

 

『了解!第二小隊交戦(エンゲージ)!』

 

月明り一つない戦場に、57mm滑腔砲の砲声が響き渡る。

初弾の砲声を聞き届けた後、静かに命令を下した。

 

「───戦隊、交戦開始」

 

 




編集で書き直しをしようと思ったら、間違えて削除してしまった愚か者です。
来週から二週間ペースで更新していこうと思います。
いや、ホント、どうかよろしくお願いします。
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