(ああ言っちゃったけど……弾けるかなぁ)
今井リサは、さっき氷川紗夜に言ったことを思い返しながら歩いていた。カウンターにベースを借りに行くのだ。ラウンジを抜けてカウンターの方を見る。すると、一人の少年がいた。
「すみませーん♪」
明るい感じでリサは話しかけた。少年がビクッとして顔をあげた。
「え……っと、……どう……されましたか……?」
新しくバイトに入った人なのだろうか、答え方がオドオドしている。
「ベースを貸して欲しいんですけど……」
「……はい、ベース、ですね」
ベース、ベースと小さい声で反芻しながら、少年は一旦スタッフルームに入って行った。
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「ベース、ベース……」
少年がブツブツ呟きながらスタッフルームに入ると、電話対応中の月島まりながいた。その側を通り過ぎて楽器の置いてある区画へ歩いていく。
(えーっと、これがドラム。んでキーボードにマイク……)
「多分こっちがベースだったよな」
そう呟きながら楽器を抱え上げた。彼はまた、電話対応中のまりなの横を通り抜けて行く。
「あっ、それベースじゃない」
まりなの呟きは彼に届かなかった。
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「すみません。お待たせしました」
しばらくして少年が戻って来た。リサは楽器を手渡された。
「あれ? これ違う……」
少年の手に握られていたのは、大きさも弦の本数も違うギターだった。
「えっ? ……す、すみません!」
少年は頭をブンっと下げた。
「すぐ変えて来ますので……」
「カズくんベース!」
とその時、スタッフルームからまりなが飛び出して来た。その手にはベースが握られている。
「ごめんねー。この子まだバイト始めて日が浅いから……」
リサにベースを手渡してまりなはそう言った。
「すみません……」
少年はまた頭を下げる。
「大丈夫ですよ〜! アタシ行きますね!」
(あこのためにも、頑張らないとね)
そう切り替えながら、リサはスタジオに戻って行った。
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「はぁ……」
少年、
「カズくんドンマイ!」
後ろから、彼の従姉に当たるまりなが励ます。
「やっちまったなぁ……」
「誰でも、失敗はあるって。次しないように気をつけよ!」
まりなはそう励まし続ける。
(この性格が問題よね……)
まりなは彼を案じている。元々、ここライブハウスCiRCLEに彼をバイトとして迎え入れたのは―人出が欲しかったこともあるが―そのためでもある。ここであれば、まりながカバーしてやることができる。彼が、
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オーディションと練習が終わって、リサは他のバンドメンバーと一緒にCiRCLEのロビーに出てきていた。
(凄かった……)
四人でセッションして感じた胸の高鳴りはまだ収まらないででいた。
「今井さん。ベースを返すのでは?」
バンドメンバーの氷川紗夜にそう言われて、リサはまだベースを返していないことに気がついた。
「あっ、そうだった。ちょっと行って来るね〜♪」
カウンターには、さっきの少年がいた。歳はリサとそう変わらないくらいに思われる。身長は男性にしては低めで、リサより少し高いくらい。眼鏡をかけていて、猫背になっている。
「ベースを返しに来ました〜♪」
「さっきは、すみませんでした」
少年はまたさっきのことを謝ってきた。
「いえいえ全然気にしてませんから〜♪」
「……そうですか」
少年はまだ、申し訳ないと思っているのか、暗い表情をしていた。
「本当に大丈夫ですよ……」
お節介なリサが心配になるくらいに。
「リサ」
ここでバンドメンバーで幼なじみの湊友希那から呼ばれる。
「は〜い♪ 今行く〜♪ えっと、ありがとうございました〜♪」
リサは、バンドメンバー達の方に向かった。
「ご利用、ありがとうございました……」
彼の申し訳なさそうな声が後から聞こえてきた。
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これが、リサと
〜設定置き場〜
月島まりな
我らが主人公