「なぁなぁコレ見たか?」
「ん?」
今日も今日とて、一優と竜生は一緒にシフトに入っていた。一優がカウンター前の掃除をしていると、竜生が声を掛けてきた。一優はモップ掛けをしている手を止めて、竜生の方に向いた。
「新生バンド、Roselia!」
カウンターの椅子に腰掛けている竜生が見せてきたのは、ある雑誌の記事だった。
「なになに……孤高の
見開き一面にその文字がデカデカと踊っていた。友希那が有名であることは、前に新田さんや竜生から聞いていたが……雑誌の一面を飾ってしまうとは。一優は、友希那の凄さを改めて知った。
「すげぇな……Roseliaってめちゃくちゃ注目されてるんだな……」
「うん……それはそうなんだけどさ……。この写真見て、なんか気づかないか?」
竜生はそう言って、記事中の一枚の写真を指さした。その一枚を一優は注視する。
「……あ」
それは、演奏しているところを撮ったものだった。その中で……リサだけが、妙に浮いて見えた。
「気づいたか?」
「……浮いてるな」
「一人だけすげーギャルっぽいんだよなぁ……」
竜生が苦笑いで言った。そう、とてもギャルっぽいのだ。元々のリサの髪型や、胸元近くまで見える肩出しの服に、ウサギのピアス。ギャルっぽく見える要素がフルコンボである。一優が竜生に尋ね返す。
「どうする……? 後で言ってみるか……?」
「言い出しづれぇ……」
「だよなぁ……」
ちなみに、今日もRoseliaの皆は練習に入っている。だから、後でこのことについて言及するのも可能ではある。……が、どちらともやはり言い出しづらいと思っていた。
二人がカウンターで話していると、カウンター横のドアが開いた。紗夜だった。
「あれ? 紗夜さん? まだ練習は終わってないんじゃ……」
「今日はお先に失礼します」
竜生が不思議になって紗夜に話しかけるが、紗夜はそれだけ答えて、足早にCiRCLEを後にした。
「どうしたんだろ……?」
竜生が心配そうに言う。一優も気になったので、心の中で後でリサ達に聞こうと決めた。
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「『憧れられるほうがどれだけ負担に思っているかわかってるの!』か……」
「氷川さん、それで出ていったのか……」
CiRCLEからの帰り道。一優と竜生はリサ達から、紗夜が出ていった顛末を聞いていた。
「氷川さんって、妹さんがいるんですね」
「うん。日菜っていうの。アタシと同じクラスなんだ」
「妹さんと、何かあるんですかね……?」
「そうかも……。日菜が、紗夜はバンドのこととか話してくれないって……」
一優の言葉に、リサが答える。
「あこ……お姉ちゃんの負担なのかな……」
「そんなことないって! 巴はそんなこと思わないよ!」
「うん……」
「あこちゃん……」
リサがあこを慰め、燐子は心配そうにあこに寄り添う。
「日菜……日菜……。どっかで聞いたことがあるような……」
竜生が首を傾げ、腕を組んでブツブツ言い始めた。
「何か知ってる?」
その様子を見てリサが尋ねた。
「なんだっただろ……何かで見たんだよな……うーん」
「何かで見たって……何で見たんだよ」
「ポスターだったかな……? でも何のポスターだったかなぁ……」
一優はポスターで見たと聞いて、試しに『ひかわひな』とスマホで検索をかけた。
「……あ。もしかしてこれか?」
竜生に、検索結果に出てきた画像ポスターを見せる。
「ああ! これこれ!」
竜生の横からリサ達が覗いてきた。リサ達にもそれを見せる。
「新生アイドルPastel*Palette。ギター『氷川日菜』……日菜。ギター弾けるんだ……」
リサは驚いて目を丸くする。どうやら知らなかったようだ。
「日菜さんが紗夜さんに憧れてギターを始めたってことだろうな……」
「もしかしたら、氷川さんもそれをどこかで知って焦ったのかも……」
竜生と一優がそれぞれ言った。皆、どこか沈んだ空気のまま、いつものT字路に差し掛かった。
「あの……それじゃ、また」
「うん。気をつけてね」
「また明日な」
自転車に跨って、一優は走り始めた。