カズとリサ   作:鳩ポッポ

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十話

 

 

 

「なぁなぁコレ見たか?」

 

「ん?」

 

 今日も今日とて、一優と竜生は一緒にシフトに入っていた。一優がカウンター前の掃除をしていると、竜生が声を掛けてきた。一優はモップ掛けをしている手を止めて、竜生の方に向いた。

 

「新生バンド、Roselia!」

 

 カウンターの椅子に腰掛けている竜生が見せてきたのは、ある雑誌の記事だった。

 

「なになに……孤高の歌姫(ディーヴァ)友希那がついにバンドを結成……?」

 

 見開き一面にその文字がデカデカと踊っていた。友希那が有名であることは、前に新田さんや竜生から聞いていたが……雑誌の一面を飾ってしまうとは。一優は、友希那の凄さを改めて知った。

 

「すげぇな……Roseliaってめちゃくちゃ注目されてるんだな……」

 

「うん……それはそうなんだけどさ……。この写真見て、なんか気づかないか?」

 

 竜生はそう言って、記事中の一枚の写真を指さした。その一枚を一優は注視する。

 

「……あ」

 

 それは、演奏しているところを撮ったものだった。その中で……リサだけが、妙に浮いて見えた。

 

「気づいたか?」

 

「……浮いてるな」

 

「一人だけすげーギャルっぽいんだよなぁ……」

 

 竜生が苦笑いで言った。そう、とてもギャルっぽいのだ。元々のリサの髪型や、胸元近くまで見える肩出しの服に、ウサギのピアス。ギャルっぽく見える要素がフルコンボである。一優が竜生に尋ね返す。

 

「どうする……? 後で言ってみるか……?」

 

「言い出しづれぇ……」

 

「だよなぁ……」

 

 ちなみに、今日もRoseliaの皆は練習に入っている。だから、後でこのことについて言及するのも可能ではある。……が、どちらともやはり言い出しづらいと思っていた。

 

 二人がカウンターで話していると、カウンター横のドアが開いた。紗夜だった。

 

「あれ? 紗夜さん? まだ練習は終わってないんじゃ……」

 

「今日はお先に失礼します」

 

 竜生が不思議になって紗夜に話しかけるが、紗夜はそれだけ答えて、足早にCiRCLEを後にした。

 

「どうしたんだろ……?」

 

 竜生が心配そうに言う。一優も気になったので、心の中で後でリサ達に聞こうと決めた。

 

 

 

 ────────────────

 

 

 

「『憧れられるほうがどれだけ負担に思っているかわかってるの!』か……」

 

「氷川さん、それで出ていったのか……」

 

 CiRCLEからの帰り道。一優と竜生はリサ達から、紗夜が出ていった顛末を聞いていた。

 

「氷川さんって、妹さんがいるんですね」

 

「うん。日菜っていうの。アタシと同じクラスなんだ」

 

「妹さんと、何かあるんですかね……?」

 

「そうかも……。日菜が、紗夜はバンドのこととか話してくれないって……」

 

 一優の言葉に、リサが答える。

 

「あこ……お姉ちゃんの負担なのかな……」

 

「そんなことないって! 巴はそんなこと思わないよ!」

 

「うん……」

 

「あこちゃん……」

 

 リサがあこを慰め、燐子は心配そうにあこに寄り添う。

 

「日菜……日菜……。どっかで聞いたことがあるような……」

 

 竜生が首を傾げ、腕を組んでブツブツ言い始めた。

 

「何か知ってる?」

 

 その様子を見てリサが尋ねた。

 

「なんだっただろ……何かで見たんだよな……うーん」

 

「何かで見たって……何で見たんだよ」

 

「ポスターだったかな……? でも何のポスターだったかなぁ……」

 

 一優はポスターで見たと聞いて、試しに『ひかわひな』とスマホで検索をかけた。

 

「……あ。もしかしてこれか?」

 

 竜生に、検索結果に出てきた画像ポスターを見せる。

 

「ああ! これこれ!」

 

 竜生の横からリサ達が覗いてきた。リサ達にもそれを見せる。

 

「新生アイドルPastel*Palette。ギター『氷川日菜』……日菜。ギター弾けるんだ……」

 

 リサは驚いて目を丸くする。どうやら知らなかったようだ。

 

「日菜さんが紗夜さんに憧れてギターを始めたってことだろうな……」

 

「もしかしたら、氷川さんもそれをどこかで知って焦ったのかも……」

 

 竜生と一優がそれぞれ言った。皆、どこか沈んだ空気のまま、いつものT字路に差し掛かった。

 

「あの……それじゃ、また」

 

「うん。気をつけてね」

 

「また明日な」

 

 自転車に跨って、一優は走り始めた。

 

 

 

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