カズとリサ   作:鳩ポッポ

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二話

 

ピピピ、ピピピ

 

 スマホのアラームが鳴る。一優(かずと)は上体を起こして止める。しかし、止めるとまた布団に沈む。これをかれこれ二回は繰り返している。

 

「カズく〜ん。そろそろ起きて〜」

 

「……うん……今、行く」

 

 と言いながらも顔はまだ枕に埋まっている。しかしそこから、意を決したようにガバッと起き上がった。そして、眼鏡をかけて下へ降りる。

 

「おはよう……()()()()()()()()

 

 今、彼は伯父夫婦の家でお世話になっている。

 

「おう、おはよう」

 

 と、伯父。

 

「ご飯出来てるよ」

 

 と、伯母。

 

 三人は食卓についた。

 

「今日バイト?」

 

 と、伯母。

 

「うん」

 

 と、彼は頷く。

 

「こき使われてない? しんどくない?」

 

「大丈夫だよ。まぁしんどい時はしんどいけど……

 

 彼としては大助かりだった。バイトを探していた時に、

 

「うちでバイトしない? するよね!!」

 

 とありがたくも(半ば強引に)CiRCLEで雇って貰えたのだから。

 

「そういえば、学校はどうだ?」

 

 と、今度は伯父が話を振ってきた。

 

「まぁ、ぼちぼちやってるよ」

 

 彼はそう答える。そして、会話は続いていく。

 

 彼は、この時間が好きだった。家族での団欒なんて数ヶ月前には考えられなかったことだから。

 

 

 

 ──────────────────────

 

 

 

「行ってきまーす」

 

 一優は、誕生日プレゼントにと伯父に買ってもらった スポーツタイプの自転車に跨り、強くペダルを踏む。二十分程走れば学校が見えてくる。私立豊崎(とよさき)高校。ここが四月から通っている転入先だ。

 

 正門を通って、玄関を通り過ぎ、二階へ。二年一組の扉をガラッと開く。

 

「おう」

 

 席の近くまで歩いていくと、いつも通り声がする。

 

「おはよう」

 

 そう返して、声の主を見る。一つ前の席の田村竜生(たむらりゅうせい)だ。自分の席に座ってリュックから筆記用具と今日の提出物を机に出す。

 

「あれ? それ今日提出だっけ?」

 

「そう。一限」

 

「やべ! やってねぇ」

 

 またか、と思う。竜生は手を合わせて懇願してきた。

 

「見して」

 

「へいへい」

 

 竜生が宿題をやり忘れた時や、授業で寝てノートを書いていない時に見せるのは、この二週間で一優の役目になっていた。

 

「そんな甘やかさないでいいよーそいつはー」

 

 横から声が入ってくる。里崎侑良(さとざきゆら)だ。竜生とは小学生からの腐れ縁らしい。

 

「侑良は黙ってろよ」

 

「あんたこの間も忘れてたじゃん」

 

「俺も色々と忙しいのー」

 

「どこが忙しいのよ! 遊んでるだけでしょ!」

 

 いつも通り喧嘩を始める。一優はリュックに手を突っ込んで文庫本を取り出し、読み始める。

 

「おはよう」

 

 ここでさらにもう一人。

 

「あっ、ミッチー!」

 

「……竜生さぁ、その女っぽいあだ名で呼ぶのやめろよな」

 

 外村充(とむらみちる)。一優の席の一つ後ろで、竜生の友人だ。

 

「それより侑良をどうにかしてくれよー」

 

 竜生が充に助けを求める。

 

いつも通りスルー……自分でどうにかしろー」

 

「ぇぇぇぇ」

 

 適当にあしらわれる。

 

「よくカズはこの状況で本が読めるな……」

 

 呆れ半分感心半分と言った感じで充は一優に言った。

 

「慣れた」

 

 と、一優は一言。

 

「……さいですか」

 

 充も席に着く。

 

 キーンコーンカーンコーン

 

 予鈴が鳴り響くと同時に、竜生の顔に焦りが浮かぶ。

 

「どうしてくれんだァァァ!!! あいつうるせぇのにィィィ!!!」

 

「竜生ざまぁwwww」

 

「泣かせてやろうかこの野郎」

 

 まだ竜生と侑良は言い争っている。その時、教室の扉がガラッと開いた。

 

「おいそこ座れー。朝礼するぞー」

 

 やる気無さげな声とともに担任が登場。ここで竜生と侑良は一時休戦となる。

 

「後で覚えとけよ」

 

「そっちこそ」

 

 互いに一言づつ残して着席する。

 

 ここまでが毎朝のお決まり(テンプレ)で、一日の始まりだ。

 

 

 

 ──────────────────────

 

 

 

「おーい。授業終わったぞー」

 

 今日もなんやかんや放課後になった。一優は前の席で寝ている竜生を起こす。

 

「……あれ? 今何限?」

 

「もう放課後」

 

 寝ぼけ眼で聞いてくる竜生に一優は答えた。

 

「あんた昼休み終わりからずっと寝てたじゃん」

 

 侑良は竜生にそう言う。

 

「マジ?」

 

 一優は大きく頷く。

 

「まぁ、充とゲーセンにでも行くかぁ」

 

 竜生はとても切り替えが早い。一優はまたノートを見せることになりそうだと思っていると、

 

「お前も行くか?」

 

「バイトあるから」

 

「そっか」

 

「私は部活!」

 

「お前には聞いてねぇけどな」

 

 一優が竜生の誘いを断っていたら、侑良も乱入してくる。そして、朝と同じようにいがみ合いが始まったようだ。

 

「そういえばさぁ」

 

 竜生達のいがみ合いはさておき、一優には気になることがあった。

 

「なんで部活してないのさ?」

 

 竜生は運動がかなりできる方なのに、なぜ帰宅部なのか前々から気になっていたのだ。この質問に竜生の顔が曇った。

 

「……中学の時、サッカーしてたんだけど……膝やっちまって……もう本気(マジ)で出来なくてな」

 

 竜生は悔しそうに言った。どうやら辛いことを聞いてしまったようだった。

 

「その……すまん」

 

「別に気にしてない」

 

 居た堪れない雰囲気になってしまった。一優がどうすべきか考えていると、

 

「あんた、充が待ってるよ」

 

 沈黙を破ったのは侑良だった。

 

「……あぁ、んじゃな」

 

 竜生は、充と一緒に教室から出ていった。

 

「……その、ありがとう」

 

「別にいいわよ」

 

 一優は侑良にお礼を言う。

 

「気にしてないって言っておいて、未だにサッカーに未練タラタラよ。あいつ」

 

「未だにサッカーの練習羨ましそうに見てるし。サッカー辞めてからのあいつ、なんて言うか、抜け殻なのよね」

 

 侑良は怒っており、失望しているようだった。一優はそれを黙って聞いていた。

 

「前は、もっと、かっこよかったのに」

 

 侑良は最後にそう呟いた。

 

「ごめん。愚痴聞かせちゃって」

 

「いや、大丈夫」

 

「バイト頑張ってね」

 

「うん。じゃあ、また明日」

 

 一優は教室を出る。下に降りて玄関を通り過ぎ、駐輪場で自転車に跨る。そして、CiRCLEへの道を漕ぎ始めた。

 

 

 




オリキャラしかいねえ(次こそ出てくるはず)
サブタイトルが話数になりました(毎回考えるのを諦めた)
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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