カズとリサ   作:鳩ポッポ

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五話

 

 

 

 一優(かずと)は電車から降りると、駅から歩き始める。そして、さっきの出来事に自己嫌悪を感じ、後味悪い気分で学校へ向かっていた。久しぶりに歩いてみると、豊崎学園はかなり駅から近いことがよくわかる。

 

 学校に着いて校門を通っていると、後ろから呼び声がした。

 

「よっ!」

 

 振り向くと竜生(りゅうせい)が走って来ていた。

 

「おう」

 

 一優は手を挙げて応える。竜生が追いつくと、二人は並んで昇降口へと歩いていく。

 

「今日チャリじゃねぇの?」

 

「昨日パンクしてさぁ……」

 

 竜生の問いに答えて、一優は昨日の経緯を話した。

 

「そりゃ災難だったな……しばらくは歩きか?」

 

「今日の夜には直せると思うから。明日からはいつも通り」

 

「おう、良かったな!」

 

 そんな感じで色々話しながら二年一組の教室に入る。

 

「おっはよ〜!」

 

 教室には侑良がいた。今日もまた竜生と侑良の掛け合いが見られることだろう。これに制止役の充も、もうすぐ来るはずだ。

 

 いつも通り今日も楽しくなりそうだ。

 

 

 

 ──────────────────────

 

 

 

 昼休み。

 

 四限目の授業が終わると、我先にと食堂・購買部へ飛び出して行く者達と、弁当持参派に別れる。一優達四人は? というと、全員弁当持参派である。そして、近くの空いている机をくっつけておしゃべりしながら食べるのだ。

 

「さっきのプレーすごく良かったな!」

 

 今日の話は、先程の体育でのサッカーのことだ。竜生が切り出す。

 

「たまたまだよ」

 

 そう一優は言いながらも、少し照れくさそうにしている。

 

「カズって結構動けるよな」

 

 充のその言葉に侑良も頷き、こう続ける。

 

「横から一気に上がってきて……あれ誰も気づいてなかったでしょ」

 

「竜生にしか注目集まってなかったから……いけるかなぁって思って」

 

 竜生はサッカーを怪我でやめてしまってからも、本気が出せないだけで上手いことは周知の事実だ。だから、体育のサッカーでも、竜生がマークされるのは当然だった。いくら上手くても、多人数を一人で相手取るのは容易ではない。だから必然的に、抜け出してきた一優にボールが回ったのだ。

 

「運動部入ればいいのに」

 

 充はそう一優に言ってみる。

 

「練習についてけなさそうだしなぁ……」

 

 一優は少し俯いて言った。

 

「大丈夫じゃない? カズ真面目だし、喰らいつけるでしょ」

 

 侑良がそう言った。

 

「……俺、真面目なんかじゃないよ」

 

 一優は、少し俯き気味にそう言う。

 

「……それに、もう俺が入れるようなところないだろうし」

 

 一優としては、竜生達の輪の中に入れたのを運が良かったと感じている。高校二年生にもなれば、交友関係は大体固定されているだろうから。

 

「おまけにバイトあるし」

 

「そんなに詰め込んでんの?」

 

 一優のこの発言に、充は聞いた。

 

「そこまで詰め込んでる……ってわけじゃないけど」

 

「じゃあなんでさ?」

 

「俺、不器用だから両立できるような能力無いし……無理だよ」

 

 そう言って一優は首を横に振る。

 

「大丈夫よ! あたしだって吹部行きながらバイトしてるし」

 

「俺だってバンド練習しながら、バイトしてるぞ!」

 

 侑良と竜生がそれぞれそう言う。

 

「あれ? 竜生ってバンドしてるのか?」

 

 一優はそのことをはじめて知って、目をぱちくりさせている。

 

「おう! 最近始めたんだ! ……と言っても、まだメンバー揃ってないんだよな」

 

「そうなのか?」

 

「バンドメンバーは、ギターの竜生、ドラムのアタシ、そしてキーボードの充だけ」

 

 侑良が、竜生に続けて説明する。

 

「充もやってるんだ」

 

 さらに一優は驚いた。まさか、充までメンバーとは。

 

「でも、ボーカルとかベースがいないのよねー……こいつに歌わせるの嫌だし」

 

 そう言って、侑良が竜生を指さした。

 

「なんで?」

 

 一優は首を傾げる。

 

「こいつ……壊滅的な音痴なのよ」

 

「音痴で悪かったな」

 

「アンタのはただの音痴じゃなくて、()()()()の付く音痴よ」

 

「なんだとぉ!」

 

 また二人のいがみ合いが始まる。その間に一優は昼食を食べ終わっていた。

 

「あっ、いっその事カズがボーカルやる?」

 

 三人はいい案が出たというように、目を輝かせて一優の方を見る。

 

「……パスで。俺、音楽系苦手だし」

 

 一優としては、学校の音楽で悪い思い出しか味わって来なかったので避けておきたかったのだ。だから、まりなにCiRCLEでのバイトも荷物の運搬や掃除など、音楽とは関係の無い業務だけにしてもらっている。

 

「そういえば二人とも、もうすぐ予鈴だぞ」

 

 そう言って、一優より先に食べ終わっていた充が止めに入る。

 

「「ちぇ(ふん)」」

 

 そう言うと、二人は食事に戻っていそいそと食べ始める。侑良は残っている量がさほどではないので、すぐ食べ終わっていた。しかし、竜生の方は……

 

「あ、今日新しいバイトの面接だ」

 

 竜生がボソッと言った。

 

「もしかして……今、思い出したのか?」

 

 充が呆れながら聞いた。

 

「いやー危ねー」

 

 そそっかしい奴だと一優が思っていると、

 

「あれ、アンタ、バイト先増やすの?」

 

 侑良が不思議そうに聞いた。

 

「違う違う。俺のバイト先の喫茶店が店畳んじまうんだよ」

 

「あー、確かにあのじいちゃん、大分お年だもんな」

 

 充が訳知り顔でそう言う。行ったことがあるようだ。

 

「だから、新しいバイト先探してるんだ」

 

「どこなんだよ」

 

 一優は竜生に尋ねる。

 

「まだ、決まったわけじゃないからな。決まったら教える」

 

 竜生は少し持ったぶっている。表情を見る限り、楽しみにしているのだろう。生き生きしている。

 

 ポーン

 

 授業五分前の予鈴が鳴った。

 

「やべ」

 

 竜生は急いで残りをかき込んだ。すると、ごほっとむせていた。本当に、そそっかしい奴だ。一優は大丈夫かと声をかけながらそう思っていた。

 

 

 




最後までお読みいただきありがとうございます!
……ん?オリキャラばかりでバンドリキャラが出てない?
次回は必ず出しますm(__)m
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