「あっ、やっほー♪」
そう声をかけてきたリサの隣には、友希那とあこがいる。
「どうも」
会釈をしようとすると、首だけでお辞儀をする格好になってしまった。
「あはは、相変わらず固いなぁ☆」
リサにそう言われつつ、CiRCLEまで一緒に歩くことになる。
「あ……そうだ。朝、何か嫌なこと聞いちゃった?」
どうやらリサに気づかれてしまっていたらしい。リサは、心配そうにこちらを見ている。
「いや……そんな……気にしないでください」
一優は困る。これはあくまで自分の問題だから。むしろ気にさせてしまったことに申し訳なく感じた。
「と、ところで、今日も練習なんですね。どれくらいの頻度でやったいるんですか?」
「ほぼ毎日ね」
友希那が言った。
「凄いですね……」
一優が思わずそう言うと、
「立ち止まっている暇はないわ。ライブも近いし、最高の状態にしたいもの」
「……そう……ですか」
一優は、そう言った友希那とバイトメンバーの人達がとても大きく立派な存在に見えた。その逆に、全てを諦めてしまった成れの果てにいる自分が、酷く情けなかった。
「Roseliaのライブは、なんて言うか……ドーン、バーンって感じで、すごくかっこいいんだよ!」
ここであこも話に入ってくる。
「は、はぁ」
ドーンバーンと言われてもいまいちイメージの湧かない一優は、首を傾げて曖昧に相槌を打つだけだった。
「そうだ! 一優もライブ来ない?」
リサはそう言って一枚の紙を取り出した。そこには、Roselia初ライブの文字と、場所、日時が示されていた。
「は、はぁ」
これにも一優は歯切れ悪く相槌を打つだけだった。何せ、今までライブなんてものに行ったことが無いのだ。気持ちが身構えている。
「行きたくなったらでいいよ〜。チケットは用意できるし」
リサにそう言われて悩んでいるうちにCiRCLEに辿り着いた。
「……では、僕バイト入りますので」
「頑張ってね☆」
「ありがとうございます。そちらも頑張ってください」
一優はリサと軽く言葉を交わし、カウンターのまりなの元に向かう。リサ達は、まだ来ていないメンバーをカウンター前のテーブルで待つようだ。
「まりなさん。よろしくお願いします」
一優は、そう従姉のまりなに声をかける。まりなは少し困惑したような顔をするが、そのことには納得している。どういうことかというと、流石にバイト中にいつものように『まりな姉』と呼ぶのはまずいように思われるのだ。一優はあくまで雇われの身であるから。だからバイト中は敬語と決めている。
「今日は、カウンター番よろしく。あ! 新しく入る子の面接をするから来たら教えてね」
「え? 新しく誰か入るの……ですか?」
驚いた拍子に危うくタメ口で言いそうになって言い直す。
「別に気にしなくてもいいのに。そうそう。あれ? 言ってなかった?」
一優は「人員不足が……」とボヤいていたまりなを思い出して納得した。
「いつ頃来るんです?」
「そろそろだと思うんだけど……」
カランカランと入り口の開く音がした。紗夜が来たのだ。
「揃ったわね。今日も練習始めるわよ」
友希那がメンバーにそう声をかけてカウンターにやってくる。
「予約を入れていた湊です」
「はい。Aスタジオにどうぞ……」
そう言って、友希那達を通そうとした矢先だった。
カランカランガタンとやや騒がしく入ってきた人物があった。
それに驚いてRoseliaの面々も動きを止める。慌てて入ってきた様子のその人物は、下を向いてぜーぜーと肩で息をしている。一優と同じく豊崎高校の制服を着ており、もしかすると知り合いだろうかと思った矢先に、その人物が顔を上げた。
「え! 竜生……」
そう、先生から呼び出しを食らって「バイトの面接が!」と発狂していた竜生その人だった。
「もしかして……」
「あっ、キミが田村竜生君?」
「は、はい……そうです」
息も絶え絶えに竜生が答える。
「とりあえず、少し落ち着いたら面接しようか。カズ君。竜生君が落ち着いたら、スタッフルームまで案内してあげて」
そう言ってまりなはカウンターの奥に入っていった。
「次のバイト先ってここだったのか……」
「まさかカズがここでバイトしてたとはな……あ」
竜生と何事かとこちらを見ていたRoseliaの面々の目線と、竜生の目線が交差した。
「あのライブの……ギタリスト」
そう言って、竜生はRoseliaの面々に近づいていく。そして、
「俺を、弟子にしてください!!!」
急に紗夜に向かって頭をブンと下げたのだ。その場の全員が呆気に取られていた。
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※2022/9/22(木)修正かけました