カズとリサ   作:鳩ポッポ

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六話

 SHR(ショートホームルーム)が終わって、放課後に入った。これからバイトの面接なのに教師からの呼び出しを喰らってしまった竜生や、吹奏楽部の練習に行く侑良、実家のラーメン屋の手伝いをしているらしい充と別れる。今日、一優は徒歩でCiRCLEへと向かう。歩きながら、朝のことがある手前、今日リサと会うのは気まずいのではないかと思っていた。しかしバイト中は、あちらがお客さんで、こちらはただの従業員であるから気にしないようにすると心の中で決意した。しかし、十字路を曲がろうとしたところだった。バイトに入る前にリサ達と鉢合わせしてしまった。今日は徒歩であるから、リサ達の来るタイミングと被ってしまったらしい。

 

「あっ、やっほー♪」

 

 そう声をかけてきたリサの隣には、友希那とあこがいる。

 

「どうも」

 

 会釈をしようとすると、首だけでお辞儀をする格好になってしまった。

 

「あはは、相変わらず固いなぁ☆」

 

 リサにそう言われつつ、CiRCLEまで一緒に歩くことになる。

 

「あ……そうだ。朝、何か嫌なこと聞いちゃった?」

 

 どうやらリサに気づかれてしまっていたらしい。リサは、心配そうにこちらを見ている。

 

「いや……そんな……気にしないでください」

 

 一優は困る。これはあくまで自分の問題だから。むしろ気にさせてしまったことに申し訳なく感じた。

 

「と、ところで、今日も練習なんですね。どれくらいの頻度でやったいるんですか?」

 

「ほぼ毎日ね」

 

 友希那が言った。

 

「凄いですね……」

 

 一優が思わずそう言うと、

 

「立ち止まっている暇はないわ。ライブも近いし、最高の状態にしたいもの」

 

「……そう……ですか」

 

 一優は、そう言った友希那とバイトメンバーの人達がとても大きく立派な存在に見えた。その逆に、全てを諦めてしまった成れの果てにいる自分が、酷く情けなかった。

 

「Roseliaのライブは、なんて言うか……ドーン、バーンって感じで、すごくかっこいいんだよ!」

 

 ここであこも話に入ってくる。

 

「は、はぁ」

 

 ドーンバーンと言われてもいまいちイメージの湧かない一優は、首を傾げて曖昧に相槌を打つだけだった。

 

「そうだ! 一優もライブ来ない?」

 

 リサはそう言って一枚の紙を取り出した。そこには、Roselia初ライブの文字と、場所、日時が示されていた。

 

「は、はぁ」

 

 これにも一優は歯切れ悪く相槌を打つだけだった。何せ、今までライブなんてものに行ったことが無いのだ。気持ちが身構えている。

 

「行きたくなったらでいいよ〜。チケットは用意できるし」

 

 リサにそう言われて悩んでいるうちにCiRCLEに辿り着いた。

 

「……では、僕バイト入りますので」

 

「頑張ってね☆」

 

「ありがとうございます。そちらも頑張ってください」

 

 一優はリサと軽く言葉を交わし、カウンターのまりなの元に向かう。リサ達は、まだ来ていないメンバーをカウンター前のテーブルで待つようだ。

 

「まりなさん。よろしくお願いします」

 

 一優は、そう従姉のまりなに声をかける。まりなは少し困惑したような顔をするが、そのことには納得している。どういうことかというと、流石にバイト中にいつものように『まりな姉』と呼ぶのはまずいように思われるのだ。一優はあくまで雇われの身であるから。だからバイト中は敬語と決めている。

 

「今日は、カウンター番よろしく。あ! 新しく入る子の面接をするから来たら教えてね」

 

「え? 新しく誰か入るの……ですか?」

 

 驚いた拍子に危うくタメ口で言いそうになって言い直す。

 

別に気にしなくてもいいのに。そうそう。あれ? 言ってなかった?」

 

 一優は「人員不足が……」とボヤいていたまりなを思い出して納得した。

 

「いつ頃来るんです?」

 

「そろそろだと思うんだけど……」

 

 カランカランと入り口の開く音がした。紗夜が来たのだ。

 

「揃ったわね。今日も練習始めるわよ」

 

 友希那がメンバーにそう声をかけてカウンターにやってくる。

 

「予約を入れていた湊です」

 

「はい。Aスタジオにどうぞ……」

 

 そう言って、友希那達を通そうとした矢先だった。

 

 カランカランガタンとやや騒がしく入ってきた人物があった。

 

 それに驚いてRoseliaの面々も動きを止める。慌てて入ってきた様子のその人物は、下を向いてぜーぜーと肩で息をしている。一優と同じく豊崎高校の制服を着ており、もしかすると知り合いだろうかと思った矢先に、その人物が顔を上げた。

 

「え! 竜生……」

 

 そう、先生から呼び出しを食らって「バイトの面接が!」と発狂していた竜生その人だった。

 

「もしかして……」

 

「あっ、キミが田村竜生君?」

 

「は、はい……そうです」

 

 息も絶え絶えに竜生が答える。

 

「とりあえず、少し落ち着いたら面接しようか。カズ君。竜生君が落ち着いたら、スタッフルームまで案内してあげて」

 

 そう言ってまりなはカウンターの奥に入っていった。

 

「次のバイト先ってここだったのか……」

 

「まさかカズがここでバイトしてたとはな……あ」

 

 竜生と何事かとこちらを見ていたRoseliaの面々の目線と、竜生の目線が交差した。

 

「あのライブの……ギタリスト」

 

 そう言って、竜生はRoseliaの面々に近づいていく。そして、

 

「俺を、弟子にしてください!!!」

 

 急に紗夜に向かって頭をブンと下げたのだ。その場の全員が呆気に取られていた。

 

 

 

 




最後までお読みいただきありがとうございます。

※2022/9/22(木)修正かけました
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