『アーマード・コア3』における高難易度ミッション『機動兵器侵攻阻止』を前に、傭兵たるレイヴンがいかなる心境で戦いに赴いたのかを語る。

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Artificial Sky

 大型の機動兵器が、地下都市レイヤードの心臓とでも比喩すべきエネルギー炉に向かっていることが判明したのが今から二時間前。報告によれば、それは管理者の手によって放たれた最終兵器である。

 その戦闘能力は不明。だが、既に先発したMT(エムティー)(Muscle Tracer)部隊は一分以内に殲滅されている。その情報から、相当の戦力を秘めていることは容易に推測できた。

 当然、より強力な戦力を持つ傭兵であるレイヴンへの依頼を仲介する組織――グローバルコーテックスに依頼が出される。依頼主はユニオン。地下世界を管理するコンピュータ『管理者』を狂っていると評価する頭でっかちの集まりだ。だが依頼は依頼。破格の報酬は危険への対価だ。

 

 ――レイヤード第一層自然区、アヴァロンヒルにて、機動兵器を迎撃・侵攻阻止せよ。

 

 私は依頼を承諾。

 万全を期すため、僚機としてはもっとも信頼できるレイヴンへコンタクトした。

 

 

 

   Artificial Sky, from ARMORED CORE 3

 

 

 

 アヴァロンヒルへの輸送機は人工風で揺れる。慣れたものだ。私は僚機を駆るレイヴン――正確に言えばAC(エーシー)(Armored Core)『インシュアランス』を駆るレイヴン『ノーリスク』と共にいた。

 『インシュアランス』は中量級の機体。大型ロケットとマシンガンを積んだ構成。ミサイル対策用のデコイも完備。MT殲滅の情報から、機動力は必須。しかし巨大兵器という大質量を破壊するからには、それなりの武装が必要だ。そうなると、脚部重量過多を防ぐ必要があり、機動力に最も優れた軽量機体が候補から外れる。また、巨大兵器周辺に小型の自律兵器が出現しないとも限らない。よって小回りの利く携行火器が必要ということになる。理詰めに徹した場合、このような武装選択は当然のことだ。

 かくいう私は、大型ロケットと多連装ミサイルを積んだいわゆる『破壊力重視型』の中量機体を選択した。デコイも搭載している。私のミッションは大型兵器の破壊だ。それだけを実行し、なにか問題が発生すれば、ミッションを放棄することすら厭わない。逃げきれれば、だが。

 現在、出撃前の最終機体チェック中。全項目がクリアとならなければ出撃はできない。戦闘中に誤動作すれば、どの要素であっても死に直結する。結果、異常なし。あとは操縦を行う人間の問題だ。

 私は無線を通じて、彼が交信してくるのを聞いた。いくら万全の体勢を整えようと、相手は管理者の最終兵器だ。これが最後になるかもしれない。お互いにその事は了解している。耳を傾けた。

「お前さんの娘、来年にはいくつになるんだ」

「4歳だ。きっと美しく成長するさ。なかなか利口でね。将来はレイヴンになるかもしれん。私の反対など、理詰めで丸め込んで」

 私に妻子が居ることを知っているのは、レイヴンの中では彼だけだ。

「そうか。俺が死んでも、お前だけは生きて帰れよ。もっとも、死ぬ気など毛頭ないが」

「ああ。安心しろ。私も、お前も、生きて帰る。そいつはレイヴンの最低条件だ。そうでなければ、こんな依頼を受けることもない」

 長年付き合ってきた戦友――いや、親友との交信。全てが予定調和でしかない。ただの確認だ。お互いが正常に動作するかの。

 だが、それは私の認識に過ぎなかった。

「なあ。お前は本物の空を見たいと思ったことはないか」

 突然の質問に、私は困惑する。

「なんだ、急に」

 彼は笑い声を無線越しに響かせ、さらに続けた。

「なあ。何世紀も前、俺達の先祖って奴は地上に住んでいた。だが、人間は愚かだ。全てを崩壊させちまった。文明を含めてな」

 それはお伽噺のような真実。全てをレイヤードという地下都市に埋没させた大破壊。

「生き残った人間達が暮らすのはよ、こんな地下世界だけだった。そりゃあ、管理者がまともだった頃はそれなりに平和だった。俺だって、レイヴンという人殺しをしている。それも慣れちまうと平和みたいに錯覚するもんだろう」

 私は黙っていた。いまいち彼の真意が掴めない。

「おっと。そいつは関係ねえんだ。今俺が言いたいのはよ、本物の空が見てみたいってことさ」

「本物の、空……?」

「ああ。自然区にある空なんかじゃねえ。話にしか聞かないような、蒼く澄み渡った空って奴が見てえんだ」

 そんなことは考えたこともない。空は空に過ぎない。手の届かない場所にある、高高度領域のことでしかない。そう思っていた。彼が話すまでは。

「なかなか――ロマンチックな話だな」

「よせ。恥ずかしくなっちまうよ!」

 私は笑っていた。この男がこんなロマンチストだったとは、今日初めて知ったからだ。

 普段の彼は無骨だが優しい男であり、仕事に関して、決して無茶をしない。それがレイヴンとして彼と共同する意味だ。

 私は彼の家に訪れた事があった。棚には様々な酒が並び、クラシックな銃のコレクションなどを見せてもらったことがある。

 彼が私の家に来る時も、良い友人でいてくれた。妻も同様に評価している。因果な商売をしていることを、妻も充分に理解していた。

 だが、彼が地上の、本物の空に興味を惹かれていることは今日初めて知ったことだった。

「俺は本気だ。この閉塞的な空気が俺には合わねえ」

「しかし、地上はすでに」

 大破壊の影響は深刻だという。何が起こったのかを詳細には知らない。しかし、人間の住める環境ではないはずなのだ。

「そうだ。地上はもう完全にダメかもしれねえ。だが、この地下世界だっていつまでもこのままであるはずがない。でも、そんなことじゃねえんだ。俺が言いたいのは。この人工的な空の中でしか飛び回れねえ自分。その存在そのものが、我慢ならねえんだよ」

 彼の声が少し寂しそうに聞こえたのは、直感というやつだろうか。それとも、彼の言葉のリズムが、その振動が、私にそう感じさせているだけなのだろうか。

「俺達レイヴンが飛び回れるのは、地下世界の、有限の空だけなんだぜ? これじゃよ、カゴの中の鳥と変わらねえじゃねえか。違うのは広さだけだ。いつかは檻の中にいることを思い知らされる」

 私はしばし沈黙した。適当な言葉が見つからない。

「――すまねえな。なんかよ、どうしようもなく不安なんだ。今度の相手は管理者の最終兵器。生きて帰れる可能性はゼロコンマ以下だ。お前も分かっているだろう。だからよ、今まで黙ってた事とかさ。夢とか、そういうのを知ってくれている人間ってのが欲しくなっちまったんだ」

 私は、ただ聞くだけだった。だが、私にも不安くらいなら分かってやれる。

「ああ。お前の夢、確かに聞いてやった。そして、私も本物の空が見たくなった」

 だからこの依頼、絶対に成功させる。そして、生還する。

 それがレイヴンという生き方だ。

 

 

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「管理者の最終兵器はレイヴンによって破壊された。そして、管理者を破壊できるのもレイヴンだけだと信じている。すでにレイヤードは、管理者による支配では成り立たなくなったのだ。レイヴンよ、今こそ君たちの力と意志とが必要なのだ。すなわち――」

 

 

 管理者を破壊せよ

 ――ユニオン代表者




この作品は、私が小説を書き始めた頃に作られたものです。
それを、現在ではどのように書くかということを考えながら、ブラッシュアップした作品です。
ネット上にはまだ原文が残っています。
もし興味がおありの方がいらっしゃいましたら、どうかご閲覧いただければ幸いです。
もしかしたら、昔の方がよかったと言う方もいらっしゃるかもしれませんね。

また、本ミッションの内容については、下記ページをご参照ください。
https://w.atwiki.jp/armoredcoreforever/pages/148.html#id_22fb8591

お読みいただき、誠にありがとうございました。

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