偽マフティーとなってしまった。   作:連邦士官

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第13話

 あれから一週間は経った。地球連邦政府はテロリストと交渉をしないとしながらもようやく折れ、キンバレー隊に捕虜を引き渡すのは5日後と決まった。エコーズも派遣しないと確約を貰ったため、山場は過ぎたが地球連邦政府と取引をしたので、ハサウェイが天パ化するかも知れない。自走型核地雷なので怖い。

 

 その一週間の間、ハサウェイはバンバン地球連邦軍と戦っている。そして、昨日、セレベス海付近で謎の飛翔体があった事からハサウェイはクスィーガンダムを手に入れたんだろう。

ケネスがこっちにいるおかげでペーネロペーが発進せずにジェガン9機を一夜で失った事による失点から加点をするためにキンバレーが折れたのかもしれない。

 

 環境大臣も死んだ。他の閣僚も捕虜になっていて、宇宙派が辞職した今、地球連邦政府は親宇宙派をポストにつける宥和政策も採れなければ、かと言ってマフティーに狙われる閣僚のポストに穴が開くがなりたい議員も居ない。自分の身の可愛さに閣僚達が辞任をしている。可哀そうな事に臨時として地球連邦政府首相が大臣や長官職を12個も兼任している。副首相も辞任した為に民間人の弟に頼み、弟も9個も兼任をして、後はほとんど軍関係者が就任したようだ。

 

 兼任した結果、一人に権力を集めすぎだ!独裁者にでもなったつもりか!ヒトラーの尻尾などなど強い批判の嵐を受けてダンディな首相は一気に老けて、軍関係者の多さに軍事政権呼ばわりされて、また、マフティーダンスが流行る結果となり、俺の神経が苛立っている。

 

「‥‥。テレビでも見るか。」

 テレビをつけると首相の兼任に対して、略奪・暴動と首相と暴徒に対して反省を促すダンスなどいつもの光景だ。もはや、感覚がおかしくなっている。

 

「うん?」

 また、ブゥンと映像が乱れている。いつもの電波ジャックか。最近知ったが電子戦用偵察機MSや連邦軍のディッシュやドン・エスカルゴの機器を改造して流してるようだと言う話で、防ぐ方法はほぼ無いらしい。無駄なことに無駄に高度な技術を使うあたりジオン関係者かエゥーゴ関係者、またはティターンズ関係者それともルナリアンか木星か‥‥全員じゃねーか!

 

『地球連邦市民各位、報道関係者各位、反地球連邦政府運動マフティーが諸君らに訴えかける。』

 マジのマフティーじゃないか!

 

『一人でも多くの人間に我々の思想、理念が分かるように声明を今から発表する。数多の困難からティターンズを産み出し、エゥーゴを吸収し、しかし、腐敗してきた地球連邦政府に対し、深い反省と自責の念を求め更生を促す。』

 微妙に柔らかくなってるな。

 

『我々はマフティーであって、マフティーではなく。マフティーがもたらす、地球連邦政府への圧力により人は前に進めると深く信じ、特権階級の即時地球からの離脱と段階的な地球市民の地球からの離脱を訴える。市民への離脱は即時ではない。繰り返す、市民への離脱は即時ではない。』

 明確に柔らかくなってるぞ!?どういうことなんだ。

 

『地球連邦政府は至急、コロニーを増設し、毎日の生活に精一杯の人々に食と住居を与え、地球から出ることができる準備を整える様に要求する。出来次第順次、地球からの離脱を開始する。そして、マンハンターなどの廃止と法改正を要求する。諸君らの英断を求め、以上を持って終わりとする。』

 えっ?激ヤバ環境テロリストじゃなくなってるぞ。理性すら感じる言い回しに市民への待遇改善要求とか真っ当さが上がってるぞ!?どうしたんだ、テムの回路でもつけたのか?

 

「ガンダムで余裕が出たのか?」

 グラサンならいい方向に行っていると言うかもしれないが、反動でブチギレる可能性が高まっている。

 

 うん?緊急特番か?

『どうも、今回も司会のシュウジ・シュタイナーです。今、一番のマフティーの理解者である緊急ゲストはジオニズム・ニュータイプ研究家でフォン・ブラウン大学旧イギリス発展史学教授ジョージ・ジョンソン氏です。どうも。』

 やはり、また出てるよ。トンチキが人気とは、みんな暇なんだな。 

 

『はい。紅茶の美味しい季節となりました。皆様、この季節いかがお過ごしでしょうか?お茶の用意を。私のおすすめはダージリンが良いと思います。』

 この紅茶野郎、テレビ慣れして話の触りに枕を入れてきたぞ。何だこいつ!?なんでそんなに慣れてやがる。

 

『本題ですが最近は武装マフティーが活発化していますがどう思われますか?教授。』

 そいつじゃなくて、まともな人材をだな。

 

『予測できたことです。まず、プチモビが動かせる人間なら昨今の更に簡易化されたMSの操作にある程度は順応でき、宇宙では民間に払い下げられたボールが3500機以上も所在が不明でいなくなっています。ボールと聞いて侮る人が居ますがある程度の新型ジェネレータやバッテリー、プロペラントタンクなどの回収等は宇宙ではスクラップが転がっているので簡単であり、それら改造したボールは客船ですら運べるが故に、低強度の戦闘の危険性は高まっています。しかも、まだ宇宙にはジオンや連邦に帰順するのを良しとしなかったティターンズ、エゥーゴの残党が残っており、こちらはハイザック以上の戦力を持っているからロンド・ベルの様な艦隊は地球には降ろせないでしょう。』

 ロンド・ベルが来れないと言う予想は嬉しいが信用ならないんだよな紅茶。こいつ、変なことしか言わないし。

 

『例えば、ブッホ・コンツェルンやアナハイム・エレクトロニクスが私兵を持とうと思えば、ルウムや地球圏近くのサラミスやマゼラン、ムサイなどの残骸を簡単にレストアでき、自前の私兵組織、実力団体が作れます。企業程度が作れようものならばサイド政府も作れます。旧暦1970年代の新大陸人が予算確保のためにおっ立てたハイローミックス理論がありますが、偶然その力があれば何とかなる程度の入植者達の理論と、合致することからやはり、マフティーとやらは戦史に詳しく、旧暦から引用する古式ゆかしい人物で、旧暦から学ばなければ地球圏は再び世界統一戦争のようなものが起こると警鐘を鳴らしています。』

 知らんがな、何いってんだお前。ボールが所在不明とか初めて知ったわ。

 

『それにデラーズ・フリートを紐解けば、ジムとザクの残骸にガトルやパブリク等の宙域の戦闘機を合わせればドラッツェなる兵器が作れます。デラーズ・フリートのザクとガトルのドラッツェは、簡易MAのようなものですが、問題となるのは残骸を利用したジムとパブリクのドラッツェです。パブリク自体にはルナツーやコンペイトウから自力で旧ア・バオア・クー宙域まで行けたことから広域のテロをたった一人でもなし得るわけです。更に言えばこれらはボールと改装コロンブス級輸送艦さえあれば、理論上はジェガンよりも展開できる為、お手上げです。ですので、今こそ指揮管制能力が高く、ラー・カイラム級やクラップ級よりも安い、バーミンガムとサラミス改を改良して宇宙艦隊再建と低強度戦闘に耐えうるお安い戦力が必要だと思います。』

 ずっとお前は何を言ってて何と戦ってるんだ?そんなにマフティーがでかい組織ならハサウェイがアデレードで捕まりもしないわ。

 

『私の予想ですとまだ保管されているボールやジムがあることから、幻の計画Gファイターの様な武装強化コンテナが開発されるでしょう。私の知識と過去の文献を照らし合わせると武装強化コンテナの名前はオーキスでしょう。未だに花の名前の武装はありませんからね。』

 長々と妄想を語るなこの教授、月面の大学って暇なんだな。少しこいつの経歴を調べてみるか、ジョージ・ジョンソン、と。

 

 端末のモニターに出たのは、フォン・ブラウン大学の教員経歴。一年戦争時には技術士官としてルナツーに所属、その後に地球ジャブローに降下しモスク・ハンに師事を受ける。グリプス戦役時にはティターンズの技術士官をしており、ティターンズに疑問を覚えて、エゥーゴに参加。

 エゥーゴからサナリィ、サナリィからアナハイム・エレクトロニクスに所属を転々としながらラー・カイラム隊に志願しクラップ級の整備員としてシャアの反乱に従軍、最終的にフォン・ブラウン大学の旧暦の工業歴史の教授となる。

 

 アナハイム・エレクトロニクス、サナリィの名誉研究員並びに地球連邦軍名誉技術中佐。えっ、トンチキ紅茶爺さんエリートじゃん。何コイツ。

 

『改めてお伺いしたいのですが、ではマフティーとは本当に組織なのでしょうか?ダンスマフティーといい、マフティー性が武装マフティーと違うとは思いますけども。』

 だから、マフティー性とはなんだよ。司会が質問をすると紅茶爺さんが答える。さっきとは違って見える。経歴をみたら、リベラやジャックが一目置いているのもわかる。

 

『マフティー性は不変ではなく、常に社会に合わせて合致させて変化する。ギリシア哲学的な万物流転論と旧来の仏教の色即是空の観念から作られているとマフティー演説を考察している時に思い至りました。全ては移り変わり、変化し不変なものなどなく、流れる歴史の大河の様なそういう解釈です。詳しくは私の一週間後に販売される書籍、【なぜマフティーは流行ったのか〜現代のニュータイプ論とアースノイド至上主義の葛藤〜】をご覧ください。一週間後に店頭に来てください。本当のマフティー論をお見せしますよ。』

 アホくさ、全部自分の著書の番宣のためかよ。嫌だ嫌だ、これだからインテリは嫌なんだ。経歴を真面目に調べなかったら良かったわ。

 

『マフティーとアデレードの戦いはまさに自分至上最も激戦に〜』

 ブツリとテレビの電源を落とすと久しぶりにギャプランに乗ろうと思った。5日間は確かに安全だがそれ以降は未定だ。なら、訓練しておいたほうが良い。一週間はダラダラしていたからな。

 

 格納庫に向かう。まだサインを求められるから適当にAと書く。お前ら、どんだけサイン好きなんだよ。一回書いちゃったから書き続けないと不自然だから書いてるけどさ。

 

 白いギャプランが見えてき…?うん?なんか違和感があるぞ。

 

「うーん。」

 指を指しながら確認する、足ヨシ!胸にマフティーマークが貼られている。お前か?いやまだ違和感がある。腕はヨシ。普通だな。次は、おい待て!

 

「頭がガンダムヘッドになっている?」

 しかも、モノアイのガンダムMk-Vじゃないか!?シスクードかよ!近くの整備員を捕まえた。

 

「あの頭はどういうことだ?」

 何となくはわかる。いくらオーガスタ元研究員でもガンダムMk-Vのヘッドなんか手に入るわけがないからドーベン・ウルフの頭を使ったレプリカだと‥‥やっぱり、意味分かんないわ。自分で思ってもその理論つれぇわ。

 

「マフティー・リベラ司令がマフティーに似合うガンダムにしろと。バイザーがあの形状のが手に入らなかったので中身のモノアイのままです。」

 なるほど、額に余計なのがついているが。

 

「それは理解しよう。だが、あの額のかぼちゃとAは何なんだ?右上にかぼちゃで左下にAのパーソナルマークがついている。なんの意味がある?」

 マジでダサいからやめてくれよ。なんで、モビルスーツに乗ってまでかぼちゃ頭で居なきゃいけないんだよ、嫌がらせか?

 

「パーソナルマークは、我々整備員がマフティーのマフティー性とは何か、マフティーに至るに相応しいマフティーによるマフティーの為のマフティーだけのマフティーの機体と見た瞬間にマフティー性が理解できるデザインにしたのです。マフティーの輪廻転生の思想からメビウスの輪を巡る彗星を追いかけるユニコーンの斜め下にAのデザインも出たのですが、そちらの方がマフティーでしたか?」

 お前、何言ってるかわからないし、そのなんかヤバそうなデザインやめろ。ハサウェイに殺されるわ。

 

「しかしだ。いくらなんでもあのデザインは。」

 天パのパーソナルマークに似すぎてるわ。辞めて、せめて踊る死神のマークのほうがいいわ。

 

「駄目ですか?」

 お前、ストロングマンかよ!?駄目だと言ってるだろ!

 

「あぁ、気に食わんな。」

 もう一回はっきりと拒否をする。

 

「もう1個の案のパーソナルマークにしますね。」

 いやそれも駄目だから、と言うか本人がいないところでパーソナルマークを決めるなよ。

 

「それも気に食わんな。」

 まじで許してくれよ。

 

「緑に輝いて割れるアクシズとか逆さのベルにAは?」

 ノア親子にぶち殺されるわ!お前、まじでわかってて言ってないか?ふざけんなよ。

 

「それならまだ単なるAのほうがいい。シンプルな方が良いさ。」

 マジで、これ以上余計なことをするなよ。本当に本当だからな、振りじゃないからな!ギャプラン?に乗り込むと訓練をするために大空へと飛翔した。

 

 


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