偽マフティーとなってしまった。   作:連邦士官

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第21話

 「ブライトとミライ、助けてくれ」と祈っているとこの圧倒的なパワーを持つトンデモ機体は、そのパワー故に直進の操作は楽だと気が付いた。暴力的な推進力により癖がなく、踏み込むだけで直進する。直進した先に敵がいるのなら大型ビームサーベルユニットとブレードを展開して切り裂く。正にザクレロやビグロからヴァル・ヴァロのようなイメージだ。

 

 だがIフィールドを考えるともっと実用的な実弾兵装が欲しい。デカブツなのでPS装甲やナノラミネート装甲が手に入れば最高だが、それとなく類似品が無いか聞いてみたが知らないらしい。代わりに職人技の13層のビームコートが施されているらしい。

 

「しかし、なかなかの機体だな。コイツは。」

 規格が違うパーツを合わせるためにスパゲッティコードの上にアナハイムの共通パーツとアナハイムOSを乗せたスパゲッティコードバーガーみたいなバカ機体のはずだが、機動の挙動は意外とまともだ。放熱板がMSを切り裂ける様に展開、ヒート化して体当たりが出来るらしいがどうなってるかは知らない。

 

 

 今回の武装は聞いた限りだと大型ビームガンと大型ビームサーベルとブレードに放熱板展開、大型対MS用クラスターミサイルには徹甲弾と黄燐弾と電撃弾に破壊をしない衝撃だけを与える弾にチャフ&スモークとフレアがセットされてるらしい。正に巨大なMAだ。

 

 そして電撃ワイヤーユニットにトリモチユニットがある。加速させた上でトリモチをガルダに叩きつければ撃墜することなく不時着させれるはずだ。修理費用は分からないがエンジンの換装だけで済むから、ガルダの喪失にはならないだろう。

 

「厄介だな。マフティーと言うやつは。」

 あのガルダを喪失したら、悪意ある官僚たちの思う壷だ。おそらくはクワック・サルヴァーは個人ではなく、軍部の権利の肥大化を壊したい官僚たちの為の組織なのだろう。そうなるのならば、アデナウアー・パラヤもきっと利用されていたのだ。なぜ馬鹿ではない頭でっかちのエリートがシャアに騙されたのかや、なぜエゥーゴを地球連邦政府が受け入れたのかも分かる。

 

 紐解けばティターンズとエゥーゴは連邦軍であり、ブレックスは議席を持っていた。ジャミトフとブレックスによる連邦軍の内戦の疲弊、そしてジャミトフとブレックスの確執の暴露により、二人は私怨で戦った愚か者の烙印が地球ではブレックス、宇宙ではジャミトフに押された。これもブレックスとジャミトフが持っていた「一年戦争を経験していないものが宇宙移民(ジャミトフは地球環境へ)の気持ちがわかるものか」と言う信念が奴等のプライドを抉ったのだろう。

 

 ティターンズによって宇宙から地球を分離させ、エゥーゴを受け入れることにより地球から宇宙を分離させる。

 

 そうすることによって議員たちの権威を破壊し、各サイドや月面に至るまでその議会の権威を引きずり下ろした。各地の官僚機構のみが正式な統治機関になる。正式な統治機関になれば予算を好きに使える。そうなれば各地の官僚機構同士でスクラムを組んだ管理された戦争、消費行為を誘発できる。

 

「黒い連中だな。」

 今、そうやって思えばこの後の戦争も何者かに管理させてそうな雰囲気はある。15年間も平和ではあったが、この先30年も遂にペーネロペーやクスィーガンダムのようなガンダムが出ないのはかなりおかしい。

 

 Vガンダムを振り返ってみればミノフスキークラフトが乗った大気圏を行き来できビーム・シールドをも展開ができるサラミスを鑑みても、ラー・カイラム級やクラップ級もできないと考えるのは無理がある。この時点でザンスカール帝国と事を構えないのもおかしく、ザンスカール帝国の艦隊と互角にやり会えるラー・カイラム級やクラップ級、サラミス級を考えれば、基本設計は優れていてもう完成されていたにも関わらず戦わないというのは、地球連邦政府の官僚機構とザンスカール帝国やコスモ・バビロニアの官僚機構同士でなにか密約があったのも感じる。カガチやドゥガチがやらかさねば、地球とかの現地にあった統治する技術を持つのは官僚のみである。

 

 従って例えば地球連邦政府が打ち倒されても、空白の地帯を統治するには官僚がいる。その官僚機構がクワック・サルヴァーを筆頭としたそういった腐敗した官僚機構だと思う。間違ったエリートが時間を掛けてゆっくりと官僚機構として、地球連邦政府や議会を腐敗させて神輿にする。たぶん構造としてはそれだ。これはクワック・サルヴァーを使ってしまった組織全てに適用される。コロニー国家が乱立しても彼等が使う書式は全て地球連邦政府式であり、地球連邦政府の官僚機構から逃れられないのだ。彼らが作った官僚機構も全て地球連邦官僚機構からの派生なのだ。

 

 故に地球連邦官僚機構の腐敗を見せつけなければ、ゆっくりとその官僚機構に同化されて無能になり神輿にされてしまう。今の連邦政府で言うならば、マスコミをクワック・サルヴァーが支配しているようなものなのだろう。保守派はティターンズと共に議会から排除され、融和派の革新派はアクシズとの講和により失墜し、中間派もシャアの反乱により落ちていき、ゴップなどの大物の引退で派閥が乱立、結果議会にはマスコミが出す世論に靡くものが占め、気骨がある政治家は軒並みいなくなった。

 

 ならば、その世論形成ができるマスコミを手中に収めているクワック・サルヴァーなる組織が隆盛を極めているのがわかる。彼等が今一番の力を持ちながら、都合のいいように世論形成したとしよう。その強大な力を今まで制御できていた筈なのに、急激に制御を離れていくことになったマフティー騒動にかなり焦っているはずだ。本来ならば簡単に操れるハサウェイがマフティーとして官僚機構の毒になる有力な政治家を殺し、さらなる議会においての派閥の乱立とマフティーがブライトの…。

 

「そうか。」

 メジナウム・グッゲンハイム宇宙軍幕僚長官も奴らクワック・サルヴァーの仲間で、自ら軍の威信を削いだのは大統領にでもならせてもらえると餌を手前に置かれたわけだ。全ての点と点がつながる。

 

 ZZガンダムのホワイト提督たちがあんなにエゥーゴを罵ったのも、確かにアナハイム・エレクトロニクスは対立煽りの死の商人ではあるが、あんなに頑ななまでに断定的になっていたのはマスコミと官僚達に吹き込まれていたのだろう。

 

 それを考えると既に一年戦争から仕組まれていたのかもしれない。時間を掛けて毒が地球連邦政府の民主主義へと回り、民衆が大衆となり、大衆が衆愚となり、衆愚が家畜になる。エリート官僚達による愚民共への反乱と完璧な理想国家の創造だ。

 

 天下のアナハイム・エレクトロニクス様と言えどもその単体だけではエゥーゴもシャアのネオ・ジオンの資金も工面はできないだろう。しかし、もし地球連邦政府がスポンサーならばこれは話が違う。ジオンの時からそうだったのかも知れない。

 

 脅威があるから増税をして、その税金の一部をジオンなどに流す。そうすれば予算が増えて、アナハイムに発注をして、アナハイムがキックバックを官僚機構の闇予算にプールする。これを繰り返すだけで、地球連邦政府内国家として成り立つ。それに地球環境税に関しても使途不明金が多いのだ。それらを反乱勢力や足のつかない魔法のカードの予算にすれば‥‥。まさか、シャトルの現金や貴金属の密輸もクワック・サルヴァーの仕業か?

 

「だとすれば豊富な資金源にも説明がつくな。」

 後は新しい寄生先として用意した反乱勢力の統治者を受け入れて、時間を掛けて腐らせ、また新しい寄生先に切り替えることを繰り返せば、官僚達の官僚的な国が完成する。反乱勢力たちは満足な官僚機構を作り出せないからだ。軍人や革命家は軍事や理想は上手くても実務には疎く、御大層な目標だけで地に足はついていない。

 

 そうすると軍事兵器だけで人工知能があんなにも発展しない理由もわかる。軍事だけならばあれほどの予算も無い。実権と金を握った支配者が最後に求めるのは‥‥完璧主義者のクワック・サルヴァーが求めるのは不死性だろう。確かに、今のままでも組織だとすればクワック・サルヴァーは継承され、人々に引き継がれるほどの組織としての不死性はある。しかし、個人の不死性ではない。だから自分達を人工知能に置き換えて永遠なる影の統治者として、民衆を家畜化し徹底された管理社会と無知による幸福な国にする。犯罪が起きない理想郷だ。

 

 首にバーコードか何かをつけられて、完璧で機械化された官僚機構による不幸も不公平も戦争もない社会。カガチがやらかしたと思っていたが、エンジェル・ハイロゥはそれを叶える道具だったのかもしれない。肉体を捨てて永遠の命を手に入れた彼らにはエンジェル・ハイロゥは効かない。競争心や闘争心が無くなれば争いがなく、管理された原始社会主義を到達させやすい。人々を家畜にして緩やかに死滅させ、種の保存に必要な数だけは残し、機械化したクワック・サルヴァーがこれを管理する。

 

 これは共産主義の実現だ。間違わない独裁者の誕生だ。何故なら人々から間違いという概念すら引き剥がして、間違いを間違いと指摘できなくする行為なのだから、間違わない独裁者なのだ。

 

 そして、なぜドゥガチをそんなに地球連邦政府官僚が重要視していたのか。厳しく管理された管理社会の木星が彼等は好きな訳だ。木星のデータによる管理された人口や管理された社会をデータを取るための場所、つまり社会実験の場として利用していたのだろう。そして、コスモ・バビロニアが攻めてくる頃には肉体からの解放を済ましていたんだろう。

 

『何がそうかなんですか?』

 ハサウェイに聞かれたがまだ確信を持てないし、マフティー怪文書を送ってくる人物には話せない。どんな化学反応があるかわからないからな。間違わない独裁者のクワック・サルヴァーか、勘違いだといいが。

 

「いや、何でもないさ。そろそろガルダに接敵をするが絶対にガルダを落とすなよ。」

 ハサウェイならば弾みでやりかねないからな。弾みでやりました、だから許せは通用しないのだ。

 

「敵はガルダを落とさせてマフティーが地球環境を、人の生活を考えていない愚か者に仕立て上げようとしている。あえて乗ってやる義理もない。ならガルダを落とさなければいい。わざわざカラバが使っていたガルダに乗ってくるのは挑発だ。挑発には乗るなよ、マフティー。」

 マジでやめろよお前、圧倒的な速度が出るMAであっても相手を倒すのと倒さずに制圧するのとでは難易度が違う筈だ。

 

『わかってますよ。大尉。』

 もう疲れたから大尉で良いや。ハサウェイも不殺をしてくれるなら有り難いが、ハイマットフルバーストしてくれる訳でもないから注意が必要だ。

 

「SFSを叩けば脱落する。それはジェガンだろうがグスタフ・カールだろうが同じだ。ハサウェイ、SFSを叩け。高高度の落下にMSは耐えられてもパイロットは耐えられない。大気圏突入なんかは初見では出来ないからな。」

 アニメを見ていればわかるが衝撃はMSにも通る。ならガルダで高高度を通過中にでも地面に叩きつければ、グスタフ・カールの硬さならMSは無事でもパイロットはシェイクされて気絶するだろう。

 

『親父が「アムロは大気圏突入をガンダムでやってのけた。カミーユやジュドーっていう人も大気圏突入できた」って言ってましたけど。』

 ブライトさぁ、そういう短く端的に話してるから自分がニュータイプなのにニュータイプじゃないと思っているファンネル使えるハサウェイが出来上がるんじゃないか?Ζでティターンズにサンドバッグにされてた時期もあるのだからもうちょっとハサウェイに気を使っても‥‥。

 

 プルやガンダムチームに神経をすり減らされ過ぎた気もする。スパロボならあんなに気軽に核連射したり使徒ですら倒す艦長なのに。

 

「それはマグレだ。マグレに頼るな。実力で相手と戦わなければ実力で相手に倒されるだけだ。訓練を積んでいないからと言ってレイピアで正規の軍人を倒せないわけでもないが、狙ってできるものでもない。」

 だから、ガルダを襲うなよマジで。

 

『それって、大尉の実体験ですか?いや、見えて‥‥。ああっ!アイツ!』

 見えてきたガルダに反応するハサウェイに、こっちも確認するとガルダが‥。

 

「やってくれたな!キンバレー部隊!」

 ガルダの塗装がラー・カイラムカラーに、護衛のアンクシャはリ・ガズィカラーに。グスタフ・カールがνガンダムカラーでジェガンがそのままなのはジオン残党を煽るためか。ガルダの後ろにはα・アジール、ビグザム、ノイエ・ジール、ネオ・ジオングがそれぞれ連邦軍のカラーに塗られているバルーンを牽引している。そして、ハサウェイがめちゃくちゃ怒っている。

 

 ハサウェイを何とかする術を誰か教えてくれよ。


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