偽マフティーとなってしまった。   作:連邦士官

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第27話

「マフティー・ナビーユ・エリン!我々にはブライト・ノアを解放する用意がある!今すぐアデレードで会談を要請する。明日の正午まで返事を待つ。」 

 オエンベリの幹部と捕虜の代表を集めてどうするかを決める会議をしたいと思った。ハスラーにはお帰りいただいた。しかし、若干の違和感を覚えるような宣言だ。

 

 二時間も経つとメンバーは集まった。勿論、ハサウェイにはフォーマルスーツに着替えさせて、さも今到着したような演出を取らせた。

 

「諸君ら、連邦政府閣僚各位は無関係のブライト・ノアを人質にとる卑劣な行いをした。看過できるものではない。見ろ、我々、マフティーにハサウェイ・ノアが参加することとなった。連邦政府には躾が足りなく、反省をしないのならば反省をさせるしか我々に手立てはない。諸君らの解放は未定になった。地球連邦政府の破廉恥な要求にティターンズを思い出す。ティターンズはカミーユ・ビダンと言う民間人の少年の母親をポッドに詰めて宇宙空間で漂わせ殺した。それと何が違う?」

 こうしないとハサウェイなんでいるの?とかなるからな。ケネスがこちらを見ている。怖いんだよ、アイツ。

 

「しかしだねぇ。本当にあのような事を首相が言うとは‥‥。」

 知らんがな。だが言ってしまったものは元には戻らない。覆水盆に返らずだ。

 

「だがしかし、放送は流れてしまった。もう流れた事は元には戻らない。なにか言いたそうだな。ケネス大佐。」

 こういう時は違う人間に話を振るのが良い。

 

「ブライト大佐は、ヨクサン長官の調査対象になった事がある。私がヨクサン長官から聞いた。そこの情報だと小さなマフティー活動は約3年ほど前から起き始めた。そして、ブライト・ノアは3年前から連邦軍に辞表を渡し、更にはそれ以上遡るとZガンダムやら百式、νガンダムをアムロ・レイ大尉の為に探していて、リ・ガズィを2機ほどアムロ・レイのために確保、保管していると聞いたぞ。」

 何言ってるんだ、ケネス?全くブライトとマフティーは関係ないぞ。虹に乗りたかったおじさんに何を言ってるんだ?

 

「そこに加えるならばだ。ブライト大佐はアナハイムと繋がりがある。そして、ヤシマ重工の令嬢と結婚していて、ニュータイプの疑いがあった。ロンド・ベルの本拠地はサイド1、シャアの本拠地があったサイドだ。ならば、これは偶然か?アムロの再来と言われるマフティーが現れて、所属不明機に乗り、ブライト大佐と話したことで難を逃れた。ラー・カイラムを盾にする形でだ。そして、ブライト大佐は追撃をしなかった。それどころか、再度辞表を提出して政治家になろうとしていたと来ている。公約は人類をすべてニュータイプにする事らしいな。明らかにマフティーの指揮官はブライト・ノア大佐だろう。首相宣言の全文を見ればわかることだ。」

 それに、と続けて話し出す。

 

「サナリィはブライトの元部下のジョブ・ジョンという男が開発責任者をしているらしいな。アナハイム、サナリィ、マフティーの使う所属不明機に謎の材質の装甲。ヤシマ重工とサナリィ、アナハイムが組めば簡単だろう。そうだろう?アムロ・レイ大尉。ハサウェイがあの機内に乗っていたのも監視役だったのだろう?アナハイムの力を使えば簡単にあの機内に潜り込めるからな。」

 いや、的外れなんだけど‥‥いや、待てよ。だからブライトが拘束されたのか?元々、ニュータイプが反乱を起こしたら人質になる立場だったらしいが。

 

「悪いが俺はアムロ・レイではない。シャア・アズナブルでもない。マフティー・エリン大尉だ。」

 いや確かにできなくも無い立場にいるし、権限が縮小されてもゴリ押しでいろんなことができる独立性を持っているけどな。いや、たしかに俺がアムロ・レイなら成り立つ論理か?

 

「それに、カムラン・ブルームがロンド・ベルに引き渡した核が全て使われた確証もない。マフティー、お前たちは何がしたいんだ?ブライト・ノアが捕まっても計画通りというのか?マフティー・ナビーユ・エリン。」

 だから違うって。いや、マフティーとブライトは関係がない訳でもないな。息子がマフティー活動に精を出していた環境テロリストだし。じっくり調べられたらマフティー指揮官=ブライト・ノア説は成立するか?

 

「いや、親父とマフティーは関係ない。親父は不器用で年を取らない顔をしているが地球連邦軍の大佐だ。あの親父にマフティーができるほどの器用さはない!」

 擁護の為に言っているのだろうが、それは可愛そうじゃないか?ハサウェイ、ちょっとブライトに2発殴られてこい。

 

「不審なアナハイムや地球への渡航歴もあるとヨクサン長官が言っていたぞ!アムロ・レイを探す為にインドや香港にまで降下している。インド、香港といえば反連邦勢力がいる都市だ。状況が揃い過ぎている。」

 偶然だから。ブライトは白目なしフケ顔なだけでそんな寝技ができるならとっくに政治家になっているわ。

 

「偶然だ。」

 本当に偶然だから。何でもマフティーに結びつけるようなセンチメンタルな乙女座か?ケネス?

 

「だが、偶然が必然を生み出すこともある。だろう?アムロ・レイ大尉。いや、二階級特進しているからアムロ・レイ中佐か?」

 違うし、天パを中佐にしたらすっごい迷惑な存在になりそうだけど。設計とか整備にハロみたいなものだって作れて機銃手も出来る何でもできる男だから‥‥ここだけを見ると天パとアスランのスペック似てるんだな。多分、天パと本気アスランが戦ったらアスランが気持ち悪い動きをして、天パも背中に目を付けて気持ち悪い決戦みたくなりそう。多分、天パが勝つ。

 

 生身ならアスランが圧勝だと思うが。

 

「アムロではないさ。アムロなら‥‥交渉の余地がなく地球連邦政府を倒す筈さ。人類に絶望しても居なければインテリの世直しを信じている訳でもない。しかし、ケネス大佐。今、尻のポケットに隠した尖らせたプラスチックを用意しようとするのは感心しないな。俺はニュータイプでもなければアムロでもない。どこにでもいる一般人だ。」

 ケネスは何処までも抗ってくる。なんだよコイツ。神経が苛立ってきた。

 

「アムロでは無いのならシャア・アズナブルか?」

 だから、一般人だって言ってるだろ!いい加減にしろ!

 

「シャア・アズナブルでもない。君は12年前にアクシズに虹を見たから抗うフリをして、本当に地球軌道上に虹を見せた相手が生きているかを確かめたがっている。何故、そこまで虹に固執する?ケネス大佐、やはり貴方も虹に乗りたい口かね?虹の先は地獄だぞ?ケネス・スレッグ‥‥。」

 虹の先には死ぬことしか無いぞ。第一にサイコフレームの輝きとGN粒子の輝き、何が違うと言うんだ!似たようなものだろう、大型新人も同じだろうに。

 

「いや、俺は‥‥。」

 言葉に詰まった時点でそうだろう。俺はアムロではないし、シャアでもない。アムロならまだ良いが、ハマーンやシャアみたいな拗らせ二人と同じ扱いをされると困るわ。本当に嫌だわ。なんであんな拗らせと比べられなきゃいけないのか。

 

「言葉を失う時点でわかっている、ケネス・スレッグ。お前はブライトとは違う。マフティーに参加したいんだ。しがらみで自制しているだけだ。やがて、そのマフティー性が発露して、マフティーとなるぞ。身構えてる時には何もやってこないものだ。」

 ハサウェイがビクッとする。なんでお前が反応するんだよ、ハサウェイ。マフティー自然活動家だろ、お前。粛清なくして再生なしとか意味不明な教えを受けてたからか?粛清したソ連はどうなった?粛清無くして粛清なしの勢いで粛清して失敗しただろう、お前。粛清は何も産まないからな。学がありすぎるんだよ。アムロに置き論破されてるわ。

 

「なぜ、俺がニュータイプに憧れなければならない?ニュータイプは幻想だろう?」

 恋は粘膜物質が生み出した妄想に過ぎないと言っていた妄想お兄様も居たな。

 

「現実に虹を見たならば、虹は‥‥あの虹は‥。」

 怖いんだけど。ケネスのハサウェイ化が止まらないぞ。ハサウェイ化した先に有るのはビームバリアに焼かれるだけだぞ。

 

「虹に意味などはない。意味があるのは人が人だからだよ。意味をもたらしているのは常に人でしかない。人が意味を求め、人が意味を欲して意味付けをする。それだけの意味しかない。ニュータイプはニュータイプを求める人類の考え方に過ぎない。しかし、サイコ・フレームが人類の思いを掬う物だとしたら、あれは願望機にも総意の器にも何でもなる。ニュータイプを求めるケネス・スレッグの意思すら酌むだろう。それでは駄目だ。サイコ・フレームに支配されるようになる。人類は人類として自分の立場と足元をもって立ち回れなければならない。道具を扱う人間が道具に扱われるなど笑い草だ。」

 マジでサイコ・フレームを量産してオカルト増やすの止めろ。人々の意思で増殖して怨念で稼働するとかいうおかしな領域に入ってんだぞ、最新のサイコ・フレーム。あんなものを量産したら死ぬわ。アナハイムはフルサイコフレームクスィーとか何をトチ狂ったらああなるんだ?n_i_t_r_oでも脳内に搭載してるのか?

 

「マフティーが道具だとしたらマフティーは良いように使われているのか?マフティーが独り歩きをして、ニュータイプがマフティーに変わっていると思うが。」

 俺は道具でもないわ!お前ら宇宙世紀人が人をおもちゃにして何でもかんでも反省を促しやがって、一番反省をしないといけないのはスペースノイドとアースノイドとか全部だろう。お前ら、連邦政府よりもなお悪いわ。連邦政府が連邦政府でいられるのも市民が無関心だからだろう。むしろ、マフティーダンスを見る暇があったら連邦政府を見たほうがよっぽど有益だと思うぞ。

 

 マフティーダンスが何をしてくれる?何もしてくれないだろう。何もしてもらえもしないマフティーダンスになんの価値があるんだよ。なんちゃってデモ活動みたいなものだ。

 

「マフティーはマフティーだよ。不変ではない。マフティーはマフティーとしての価値しか持ち得ない。マフティーに価値があるのではなく、人類に価値があるだけだ。人の世は人しか制御できない。人の世故にな。」

 どんだけ、それっぽいことを言わせるんだ。ケネス、お前はレスバトラーか?マフティー・ナビーユ・エリン!とかお前は怒っていりゃ良いだろう。ハサウェイ大好きおじさんなんだから。

 

「マフティーとは結局、何なんだ?マフティー・エリン、お前とマフティー・ナビーユ・エリンの関係性は?」

 横を見るとハサウェイ、ケネス側を見るとギギがカットインしようとしている。やめろ!あの二人が騒ぐ前に、またマフティー連呼しないといけないだろうが!

 

「マフティーとは組織だよ。そして、マフティー・ナビーユ・エリンとマフティー・エリンは別の存在だ。だからこそ、マフティーの中身を誰も知らない。マフティーがシャアやアムロの亡霊だと言うが私はそういうのではない。特定の誰かがマフティーなのではない。誰かを特定の名詞で呼んでいるに過ぎない。マフティーという集団がマフティーというペルソナを被り、マフティーを演じて踊っている、そんな戯曲にすぎない。戯れだ。全部が全部‥‥夏の夜の夢に過ぎない。シェイクスピアの劇と一緒だ。」

 そう言うとすかさず、ハサウェイが話し出そうとする。お前もレスバトラーかよ。怪文書レスバトラーとか救いようないだろう。クルーゼポイント集めるつもりか?

 

「同じシェイクスピアなら、地球連邦政府はリア王のほうが近いと思う。」

 リア王のほうが、まだ周りに恵まれているんだよな。13人の怒れるリア王しかいないような宇宙世紀だぞ。リア王で構成された世界とか、悲劇ではないシェイクスピア三大喜劇になるだろ。

 

「リア王ほど真面目な娘もいなければ助けてもくれやしない。誰もが今日、明日の生活に躍起になって問題を見ようともしないだけだ。観測しなければ問題は発生してないと思っている。しかし、往々にしてそうだが観測しない問題こそが物事の本質的な問題だったりするわけだ。だからこそ、俺はアデレードに行く。たとえ罠でも罠ごと破壊すれば問題ない。マフティーが求められるのは、マフティーであるから行かねばならない。関係のないブライトが死ぬのをただ見るだけが、マフティーではない!」

とりあえずマフティーと言って行く理由をつけると、ケネスがカットインして来そうな顔をしている。いや!ギギがカットインしてくる。ピンと張り詰めた糸に触れるような鋭い感覚を覚えた。前世からそうであるが最近は直感がより良くなっている気がする。

 

「それじゃあマフティーは生贄にされかねないのに、なんで行くの!自分の命よりブライトが大切なの!?」

 いや、死なないし、シャンブロとかも引き連れていくから死ぬわけ無いだろ。シャンブロぶち抜けるとかバンシィかガンダムデルタカイに乗ってリディとか来ないと負けな‥‥いや、量産型ビグザムもあるから負ける要素がなかった。ジオン残党ってなんだよ。

 

「ギギ、黙れ。これが男の仕事だ!今は女は駄目なんだよ!」

 ケネスが吠えるとハサウェイと共に格納庫に俺は向かった。

 

 

 

 

 

 






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