偽マフティーとなってしまった。   作:連邦士官

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第37話

 演説台まで向かう歩数は七歩、七歩で演説を考えなければならない。どんな罪を犯したらそうなる。コロニー落としもしてなければ、コロニー落としから本拠地を守るために砲撃戦を仕掛けて軌道をずらしてもいないし、1会戦で数十万人戦死させるレビルみたいな精肉工場もしてない。

 

 ましてや、ジオンやギレンみたいな面白論も語ってない。ドゥガチやカガチみたいな事だってしてない。宇宙世紀はたいていデコ広はろくな事をしないのが基本パターンだからして、更に厄介なことに厄介なやつこそが行動力があり、1ターン2回行動で気力255みたいな所がある。絶望している割には行動力あり過ぎるんだよ。エネルギーがある絶望とは何なんだよ。

 

 意外とエンジョイしてそうなんだよな。復讐とか諦めとかでコーティングして闘争心をむき出しにして、やっぱり地球連邦や地球に居る人間を殺したかったけど死んでほしくなかったみたいなそういう部分も見受けられなくもない。

 

 ここまでで、2歩、あと5歩しかない。いや、5歩もあるというべきだろうか!何を言えばいいのだろうか?勝手に曲解したり翻訳してしまう宇宙世紀脳はどうなのだろう。動画サイトの自動翻訳程度の精度で視界より狭い角度しか見えない目しか持ってないのにバンバンプロセッサーにかけていったら、そりゃあ、そんなに変な文になるだろうが。何を言う?人類の可能性?地球連邦の継続性?ニュータイプ論?いや、待てよ。

 

 ここで何も言わなければどうなるのだろうか?適当なことを言ってハサウェイを持ち上げて、ブライトに投げる。アナハイムとサナリィとヤシマの3大財閥しか知らないが、たぶん資金繰りと指揮官はそれで事足りるだろう。臨時人事でブライト達に軍の階級を与えれば、この勝手に溜まったカリスマポイントは減るだろうか?やってみるだけの価値はある。

 

 ここで6歩、後1歩だ。いや待てよ、選挙も開いたらいい。どうせ他の勢力も睨み合って動けていないから、なんとかなるはずだ!俺が選挙で選ばれるはずもない。

 

 最後の一歩を踏み込み決めた。選挙を開く。閣僚は首相と副首相以外は選挙で選ばれなくてもなれる。なら簡単だ。おそらく、ブライトは勝つ。

 

 1分ほど直立不動で会場が静まるまで待つ。何故か20人以上が立って待ってるだけで倒れて運ばれた。校長の長話で起きた貧血か?端でマフティーダンスを踊るな!神経が苛立つ!

 

「皆さんに発表があります。軍を引退していた予備役のハサウェイ・ノアの現役復帰とブライト・ノア、ケネス・スレッグの大将就任です。ブライト・ノア大将はこの度、地球連邦軍総司令となり、ケネス・スレッグ大将は参謀総長となります。そして、旧エゥーゴ、ティターンズ、ジオンなどの軍人たちを緊急策としてマフティー市民軍に組み込みます。地球連邦軍とマフティー市民軍は別組織ではありますが、この人事を発表するに当たり、地球連邦市民に対して信任を問いたいと思います。参政権は木星から地球までの人類すべてです。インターネット投票も認めましょう。」

 そして、ここでイオリアとトレーズとフリットを足して、ワイアットを掛けて、中和をする為にマクギリスで割ってから頑固さを出す為にウズミを入れる。

 

「過去、人類は過去に囚われ、地縁に囚われ、人脈に囚われて地球は戦争を繰り返した。現在は地球に囚われて、コロニーに囚われ、木星や火星に囚われ、ニュータイプに囚われた。では、未来はどうなるだろうか?このままでは人類が人類に囚われて、最終核戦争とコロニー落としを行い、汚染された地球で食糧難に喘ぎ、人々が生き残るために共食いをしかねない。人も一皮剥けば獣である。しかし、一皮剥かなければ人は獣ではない。皮一枚の差なのだ。」

 聴衆は聞いている。お前らが争いすぎると月光蝶がやってくるんだぞ。フェネクスみたいだな。フェネクスは∀ガンダムだった?デビルガンダムみたいなもんだけど。フルサイコフレームが外宇宙の何らかの影響を受けて∀になった?イデと外宇宙の影響でなるとか有り得そうだが。破壊と創造をするからシヴァ神みたいなものだな。インド神話かな?

 

 

「その皮を守ることこそが人類が人類として歩む条件であるが、人の歴史は歩み続けるなどとは人類の誇大化した妄想に過ぎない。勝者は歴史を書き換える。歴史はそれを繰り返してきた。なら、人類が負けたのなら歴史はフォーマット、初期化されるだろう。そして1からまた歴史を積み上げる。賽の河原だ。そうなってはいけない。」

 両手を掲げ、空を仰ぎ見る。市民たちがこちらを見ているがなんで俺ばっかりに頼るんだよ。もっとブライトとかを頼れよ。俺が何をした?ジェガンに乗ってただけだぞ?誰だって逃げたいことぐらいあるがシャアやアムロがなんとかしてくれるみたいな考え方は捨てろよ。

 

「だからこそ、手を取り合い、エレガントな生き方が必要なのだ。他者を必要とするという人類のあり方を認め、しかし、強調をする気もないが、他者を容易に虐げられるものは獣だ。獣にも獣の作法があるが作法すら分からないものがいる。それらと戦う時は殲滅戦になるだろう。だが、忘れてはならない。人は人であって、所詮人の範疇を越えられない。コールドスリープで数千年生きようが老化はやってくる。不滅や永久のものはないが、不断の努力により民主主義は終わらない。だからこそ、今、選挙なのだ。理性という意志の力を見せるときが来たのだ!宇宙を含め、人類ならば全てに選挙権がある。皆、投票に集え!私からはこれだけだ。」

 質問をしたそうな記者を他所に俺は去る。人気を落とすのが目的だからな。記者の静止の声を無視する。ビルから飛び降りたことがないやつが言えた義理か。そんなことするやつなんてヒイロしか知らないけど。

 

「待ってください!投票日は!?」

 確かに言うのを忘れていたが大概こういうのは一ヶ月ぐらいだろ。

 

「一ヶ月後、保護を解いて議会のメンバーを集める。それまでは暫定として我々がアデレードを統治する。それだけだ。本来ならば地球連邦軍の仕事ではあるが市民を撃つのに忙しくて治安が管理できていない。マンハンター達と変わらなくなった。引き金は引けば引くほど軽くなるものだ。記者が書く記事も書けば書くほどに、筆の重みは軽くなるのもそうだろう?」

 記者は言葉を詰まらせる。宇宙世紀だから銃も筆も軽いだろう。お遊び残党軍がアクシズやコロニーを確保できるんだから。治安が悪すぎるんだよな、ブルーコスモスだってこんなに無秩序じゃねーぞ。

 

「敗者になりたい。」

 選挙で敗者になりたい。もうこの地位を捨てたいんだよ。口に出てしまった。記者の目が点になる。ファイティングポーズは取って負けなきゃ後進にあとを譲るために負けたとか祭り上げられてしまう。

 

「そ、それは?言っている意味がわかりませんが?」

 トレーズ理論を言ってもいいけど、あれは俺にもわからん。公式怪文書だからな。漫画版だと少しは理解できるようになっているが意味不明なんだよ。Wは意味不明な人物の宝庫だったわ。結局マリーメイアはトレーズの意思を継ぐとか言ってトレーズを理解してないんだよな。理解していたら廃人になってそうだけど。

 

「私は敗者になりたい。」

 しかし、無理を押し通させて貰うぞ!マフティーマフティー言ってるだけで大満足な宇宙世紀人なら大丈夫だろ。ニホンのアイツみたいなアレを言っても支持されてるみたいだからな。いや、支持されているのかあれ?わからん。

 

「あぁ、はい。」

 やめろ、その答え方。俺が傷付く。

 

「幾千の敗者を人類は生み出してきた。選ばれた者が歴史を書き換えて、何回でも歴史を繰り返しやり直している。歴史は積み上げられるものであって、気に入らなかったら文明の歩みの証拠である負の歴史、黒歴史と呼称しようか、黒歴史を破壊や焚書で正しくないと消し去る。旧暦で言えばソ連やナチスドイツもやっていた。それに地球連邦政府もだ。消し去った忌まわしき過去はやがて忘れ去られ、また歴史は繰り返す。」

 ミラー動画とかの文化も負の歴史だから忘れられていたんだろ。ふざけんなよ。お前たちが情報統制をするから俺がこんな目にあってるんだぞ。許される許されないの話ではない。

 

「だからこそ、歴史を繰り返さないためには間違っていたとしても死んでいった戦士や間違った文化なども保存しなければならない。都合が悪いから消せば簡単だが、消した分だけ歴史は繰り返される。だから、勝者よりも敗者になりたい。勝者は歴史を書き直し修正する者がなるものだから。勝者を目指すと他が勝者と敗者に別れて分断される。ならばだ。」

 記者がツバを飲み込むが大層な話をしてるつもりはない。過去に言ったことを矛盾が出ないように焼き直してるだけで、オウム返しみたいなものだぞ。なんで気が付かないんだよ?ちゃんと大学出ているのか?いや、まともな大学を出ていたら民間企業に勤めて記者なんか安定しない仕事しないよな。まして、瞬間湯沸かし器しかいないような宇宙世紀で記者とかすぐ殺されてそう。

 

「私は敗者になりたい。人類すべてが、ニュータイプやオールドタイプもすべて弱者であり敗者になれば、世の中は変わっていく。勝者は反省をしない。勝ちが当たり前になるから。成功は常に運が良いだけだが、失敗や敗北こそが真の実力を教えてくれる。学べるのは失敗や敗北した時のみだ。人間は弱いときしか学ぼうとしない。危機になってこそ学び始める。繰り返される歴史は恨みと復讐を繰り返し、誰かより良くなりたいと願う嫉妬や誰かから奪いたいと言う感覚が歴史を繰り返させるのだ。」

 正気かどうかは知らないがお前らは欲張り過ぎなんだよ。新天地を求めずに何百億もの人を地球圏だけで支えよう。地球がなんとかしてくれるとか考えなしがすぎる。

 

「貧乏が生み出す卑屈さや差別や被害者意識が、自分が勝者になってもその意識のまま、自分は被害者だと加害者になり正当化する。だからこそ、私は敗者になりたい。マフティーとは勝者になるよりも、マフティーとして反省をしたい。反省を促し続ければやがて誰もがマフティーとして省みるだろう。歴史の重みや未来のこと。それが現在として繋がる過去と未来は今現在にしか存在しないと理解するだろう。そうなれば容易にコロニーを落としたり、毒ガスを注入したり、特殊部隊を使ってコロニーを攻撃したりなどという倫理感が欠如した事にはならないはずだ。」

 地球連邦軍が正義とかジオンが正義とかどっちもクソだろ。よりよいクソの話よりもみんなクソだから良くしていこうねとか考えたほうがマシだ。

 

 ジオンくんは自分が毒ガスやコロニー落としをした記憶が欠如してるのか、地球連邦は地球を統一するために環境テロリストのマフティー紛いの環境のためとかいう理由で戦争を吹っかけた侵略国家だってのを忘れてるし。

 

「選挙についてはこれ以上は言えることはない。ただ、私は人類に光を見ている。緑色の光を。光が強ければ闇が生まれてそこで人々も眠れるだろう。何も全員が光になる必要もない。闇もまた自然なんだ。人間は自然の一部だからな。」

 そして、演説台を去る。やっと帰れるわ。なんだよ、意味わからん説明をさせられてさ。俺だけ負担大きいんだよ。ジャックと紅茶野郎はエンジョイしてる。なんで俺が付き合わなければならないんだよ。酷すぎないか?

 

 やっと部屋に戻る。選挙と言ってしまったがブライトは勝てるのだろうか?ブライトの人気は足りているのか?人気投票みたいなものだしなんとかなるのでは?蓋を開けなきゃわからないが。

 

 なんにせよ、俺が受かることはあるまい。

「これでは道化だよ。アムロ‥‥。」

 マジでアムロが生きてくれていればこうもなってないだろ。助けてくれよアムロ。シャアは良いわ。大事な時に馬乗って巴投げされて殴り合いになって満足そうなおっさんだろ。からし蓮根みたいなスーツを着やがって。アクシズショックのせいでこうなってるんだぞ。ララァにお母さんを求めるよりジオン軍には女が沢山いただろ。でも、優しいだけでも駄目だもんな。

 

 自分が導けるような感じで、かつ自分を怒ってくれて、だけれども優しくて踏み込んでくる感じで、ある程度自分をわかっているが全部はわかっていないようなのを求めているんだろ?

 

 アムロとララァしかいないじゃねーか!かまってちゃんかよ!SNSやっていたら炎上してそうだな。

 

 

 

 

 一ヶ月後、宇宙で増えるだけ増えて合流に合流を重ねたナナイやイリア達のレウルーラ艦隊が降下してくる日。テレビを点けて選挙特番を見ると圧倒的な得票で一位が決まっていた。

 

 『得票数、36億9873万4108票、マフティー・エリン。』

 ふざけんなよ!宇宙世紀人が!なんでだよ!

 

 

 

 

 




 異世界グエン、イズナリオと入れ代わりマクギリスの育成成功とかいうアイディアが出てきました。

 トレーズの演説を読み込むたびに何だこいつとなった。

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