偽マフティーとなってしまった。   作:連邦士官

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第40話

「なぜ、ジオンの名を騙り、こんなにも眠れるジオンの民を集めて何がしたい?コロニー共栄圏か?」

 フル・フロンタル扱いやめろよ。頑固だな頭ザビ家か?ザビ家だったな。ザビ家の悪い部分が出ているというか宇宙世紀人は誰かに誰かの幻影を常に見てるな。ブライトすらアレだからな。ハサウェイは環境テロリストでギギにサークラされてるし、絶対、宇宙世紀人はおかしいよ。未来とか人に可能性を求め過ぎてる。

 

「フル・フロンタルが求めたものに意味はない。サイド共栄圏だろう?それは歴史が遡る。極東の島国では名目上は資源地帯であるアジアがすべてブロック経済として活動したら、植民地は無くなっただろう。EUなる枠組みもそうだ。経済が強い内部の国が宗主国となる。終わらないループだ。それだと人類は所詮戦いというメビウスの輪から抜け出せない、終わらない円舞曲だよ。人類は愚かだと思うか?」

 うん?ミネバなんだその行動は?これは敵意か?銃を構える前に近づき、肩に手を置く。

 

「そうまでしてジオンの姫で無くてもいい。親の責任は子にはない。それを引き継いでいった結果、人はさまざまな情勢に縛られスペースノイド、アースノイドがやった事を引き継いできた結果が今だ。今ならまだ間に合う。それらを捨てて新しい人類の可能性を信じなくて何となる?」

 次に、バナージやリディを見ない。振り返ったらミネバに撃たれかねない。

 

「バナージくん、やめろよ。私は逮捕しようと思えばジオンの姫様を逮捕だってできる。」

 マジでさ、ハサウェイが暴発するかもしれないからやめろ。争ったところで何になるよ。連鎖爆発しそうなのやめろチェーン・マインなのか?ニュータイプって言うのは。

 

「そんな大人の理屈!」

 キレられても困る。一番逃げたいのは俺だよ。訳がわからない宇宙世紀の理屈でこうされたら怒る権利があるのはこっちだろうが!

 

「大人の理屈だよ。だからといって間違いでもない。理屈は間違えない。間違うのは人間だ。人間は間違う、間違うのは人間の特権だ。なってしまったなら‥やるしか無いだろう。そうだやってみせろよ。マフティー。」

 冴えわたり温かな光を感じる。そして、ミネバを触れている、手に触れている場所からそこを通して全身に熱を感じる。頭に広がるなんだ‥この感覚は緑の空間?いや、これはまやかしだ。

 

「な、何を‥。この光は‥。温かい。まさか、シャ‥。」

 知らんよ!ミネバ、お前から始めたんだろ!俺にはわからん。オールドタイプだからな。

 

「ミネバ・ラオ・ザビ。人間には、人間の可能性がある。これを見たまえ。この資料を。タブレットで資料を開いて今、渡す。」

 アナハイム、ルオ商会、ニュータイプ研究所、レビル派、ギレンのクローン研究などなどの情報をかき集めたものを見せる。ジオン、連邦の腐敗の象徴だ。

 

「こ、これは。なぜこんなものを?」

 地球連邦を安全に辞めるための次善策だ。これらの不正の情報を無修正で開示して人類の責任として辞任する。そうすれば嫌でもやめさせてくれるだろうさ。辞めるためには全人類の不正や陰謀を暴露させてすべての商会と国家やサイドを解体して再構築させる!もう、全弾開放だ。

 

「これらを公開する。すべて残らずだ。新しい枠組みに人間は新しく歩き始めるだろう。」

 引き金を引いたのは宇宙世紀人だからな!俺は知らん。混乱しようが知ったことか!知らんから知らんのだ!

 

「しかし、これは沢山の人の死を呼びます!」

 は?気が狂ったような情報のシャワーにより、動揺しすぎだろミネバ。いや、動揺しているなら押し切る!もっと叩きつけてやる。俺が救われるようにな!

 

「だからなんだと言うんだ!たかだか、不正の歴史、そんなちっぽけなものは人が押し返せるはずだ!人を信じて可能性を見ろ!じゃなければシャアやフル・フロンタルにゾルタンの存在理由がより無くなる!ミネバ、君が人を信じなければ誰が先に信じる?ラプラス憲章を公開してしまった君には責任がある。ニュータイプにはニュータイプの責任とやらがな。だから、紐解き始めて引き金を引いたなら、やってみせるんだ。君にはニュータイプの素養がある。ハマーン・カーン以上にな。」

 ハマーンの名前を出した時にミネバの瞳が揺れる。考える暇もなくゆさぶれ。じゃないとこの詭弁がバレてしまう。

 

「ハマーン以上に‥。」

 よし、効果は抜群だな。バナージやリディが話す前に、こんな無理な道理を俺の無理でこじ開けてやる!

 

「ハマーン・カーン。許せとは言わないが理解してやれ。彼女にも彼女の道理があったのだ。現に彼女はミネバ、君を守っていただろう?より狂っていったのはシャアを殺したと思った事と君が居なくなった事により、心を閉ざしたからだ。荒んだ心に武器は危険なんだ。後ろ盾がないハマーン・カーンにはああするしか無かった。しかし、君には優しかっただろう。ニュータイプの悲惨さというものだ。」

 ハマーンで揺さぶって行け!じゃないとロジックの矛盾に気が付かれたら大変なことになる。

 

「しかし、ジーク・ジオン、ジーク・ジオンと気味が悪かったぞ!ハマーンもやっていたネオ・ジオンというものは!」

 リディはカットインするなよ!お前そういうところだからなリディ!じゃあ、お前も抉るからな。

 

「箱の中身を知った上でコロニーレーザーでコロニーごと焼き払おうとした君の父も気味が悪いだろう。何かを守ろうとするとき人は一番、残酷になる。だから、連邦やジオンのような国家が生まれるんだ。だが、人間の可能性はそこで終わりはしない!人の可能性を信じて公開するんだ。」

 もう決めたからな、そうされたから決まったんだ。許す許さないではない。もう決めた。全部巻き込んでやる。その動乱で一気に俺は辞任して人は事件で忘れる。俺のことをな。

 

「人の‥人の可能性を?それは祝福にも呪詛にもなる!その結果、抗うこともできない弱者達はどうしたら良い?何人死んだんだ!答えてみせろ!」

 リディ、うるさいよなんでそんなにガーと言ってくるんだ。そんなに強くな。

 

「昨日まででマフティー動乱で死んだ人間は8661人だ。さらに言えば離職をさせられた人間は1万2821人、人材整理の対象になったのは8910人。下がった株価は平均で1万8261、サイドと地球間のレートは全体的に下った。農業コロニーは転作を余儀なくされ、水星や木星に資源衛星等に鉱夫として送られた人間も多数居る。だからこそだよ。」

 リディの顔がみるみる変わる。なんでそんなコウ・ウラキみたいな顔をしてるんだよ。吶喊でもするのかお前。

 

「マフティー!お前!」

 キレられても聞いてきたのお前だろうが。それにマフティー動乱を始めたのは俺じゃないぞ。俺は巻き込まれただけだ。だから、俺は悪くない。わからないけどお前大丈夫か?またニュータイプの悪いところとかサイコフレームの悪い部分がまた頭に共振してるんじゃないの?違うのかお前?

 

「これ以上は!これ以上は人類が持たん時にまで来ているのだ!だからといって、人類に絶望しちゃいない。温かな光が人を包む事もある。人類には人類が、人だ!人間がいる。100年程度でニュータイプに皆、覚醒して宇宙全体を支えられる理由があるか?ない、人類は宇宙に出て100年程度であるから仕方がない。だからこそ、君たちのような若い世代が必要なのだ。新しい世界を作るのは老人ではない!だから、人類のエゴだとしても、今一度、人を信じる機会を全ての人に与えさせてくれ。」

 ハサウェイが拍手をする。

 

「大尉はシャア・アズナブルではない。大尉は大尉だ。親父だって大尉は大尉だと言う。なのに、シャア・アズナブルという固定観念で見るから大尉の正体がわからなくなるんだ。君たちは直接アクシズ・ショックを目の当たりにしてないからそうなるのも仕方がない。」

 えっ何?新興宗教かな?いきなりサンダーボルトみたくなるなよ。お前だってわかってないだろ。ニュータイプに覚醒したら言葉が通じづらくなると思うわ。なまじ表面上はわかり合えたつもりになれるんだから。ニュータイプの直感程度で相手とわかり合えるというのなら単純すぎる人間しかいない。

 

 悪意の中にも善意がちらついたりだってする。人間はそんなに簡単な生き物じゃない。“複雑過ぎるから簡単に見える”そんな奴らなんだ。

 

「お前ら、おかしいんじゃないのか?」

 初めて意見があったなプルシリーズ。俺もおかしいと思うぞ。サイコ・フレームは人類の手に余る物な以上に、サイコ・フレームでおかしくなる前にとうにおかしくなって、トチ狂ってる。なんで、こんな状態になるまでみんな理解できてなかったんだ。いや、みんな理解できてなかったからだろうな。ちょっとずつおかしくなっていて、それだと一見、日常でそれを繰り返してきたからみんな理解できてなかったんだろう。

 

「そんな事をしなくても、私達が旧人類を養うぐらい簡単な話だ。旧人類は何も考えずに暮らしていればいい。」

 お前もおかしいだろ。みんな狂ってるわ。えぇい。まともなのは俺しかいないのか?

 

「だが、決まってしまった。決めてしまったんだ。決めてしまえば簡単な話ではあった。仕方がないが…だからといって人の輝きは消えない!きっとより輝くだろう。人はどんな困難だって乗り越えられるはずだ!で無ければ人は宇宙の引力と地球の重力の狭間で殺し合い続けるだけの笑いものになる。正しいとか正しくないではない。人類の革新だよ。受け入れられるものを受け入れ、過ちを糧にする。その光こそがジオン・ズム・ダイクンが見た輝きだろう。宇宙移民とは名ばかりで鉱夫として死んでいった開拓者たちが欲しがった輝きだろう。だからこそ、人類はもっと輝かなければならない。いや、輝ける素質がある!」

 ここで言い切って、勢いで押しつぶす!深く考えられたら矛盾に気が付かれるかもしれない。そうなったらやってられない。俺は辞任して、また選挙をやり直し、後任にミネバを出す!それが正しい歴史の流れだ!地球連邦政府初の女性大統領にして、スペースノイドのニュータイプ!首相はリディにしてニュータイプが政権を握り、ハサウェイなども組み込み、内閣内をニュータイプだらけにすれば宇宙世紀もラプラス憲章も大喜びだろう。

 

「なぜ、先祖が輝けていたのに子孫が輝けないと思うんだ?夢は夢ではない!叶えるのだ!人類のエゴすらも乗り越えて、人々は輝きをもって人類史を先に進める!だから、この罪をもって俺は辞任する。誰かが罪を背負って、罰を受けねばならないのなら罰を受けて罪をなくすのがマフティー・ナビーユ・エリンと言うことだ!これは道化だよ!皆が笑える社会のためにマフティーが連鎖を断ち切り、世の中から居なくなる!そうすれば皆がマフティーとして個々に、マフティーとなり社会は少しだけ良くなるだろう。劇的に変えては皆が反動を受けて傷付く、涙を流す。そんなこと許せるか?悲しみの涙を喜びの涙に変えることこそが為政者の役目だろうに!政治は俺にはわからない。だから、政治ではなく行動で示すのだ。責任を取りたくない地球連邦政府が変わったところをな。」

 これぐらい言えば理解を示すか?ハサウェイは頷いている。お前なんでもうなずくけど赤べこか?バナージはこっちをずっと見ている。お前怖いよ。ミネバは斜め下に視線を下げている。

 

「そんなことをすれば、貴方は単なる人柱になります。それでもそれをすると言うのですか?何があなたを‥‥シャア・アズナブルを動かしているというのです!」

 お前、シャア認定やめろ。だから違うって言ってるだろ。シャア要素がどこにある?オレンジパイロットスーツを着て、アムロにしばかれるだけのおもしろ要素が無いだろ。俺に!

 

「シャア・アズナブルではない。私は古い名を持っているが今はマフティー・エリン。それだけだ。私は指導者の立場では荷が勝ちすぎている。こんなMSやMAしか乗れない男に人を導ける力はない。だからこそ、新しい時代を作るのは君たち、若者の特権だといった。大人の理屈、しがらみを乗り越えていけ。シャア・アズナブルもアムロ・レイも死んだんだ。あの戦場で虹となってな。だから、君たちが新しく作り直すんだ。新たな地球連邦政府ではない。太陽系連邦政府を。アースやスペースを乗り越えて、その手に掴むんだ!人類の輝きをな!」

 さっきから同じ話と訳のわからない話を繰り返している。バレないよな?多分大丈夫だろう。マジマジと俺をナナイが見ている。

 

「強くなられましたね。マフティー・エリン大佐‥。」

 はぁ?耳が搭載されてないのか?アイザックに乗り込まないと人の声も聞こえないぐらいの難聴系主人公なのか?ちょっと自分が働いていたニタ研で聴力関係を強化してもらってきたら?不味いなニュータイプ的な感性でヨナやカミーユたちに察知されたら殺されることを考えてしまった。脳内の自由すら確保されないとかオセアニアかな?ここは。いや、オセアニアだなオーストラリアだし。

 

「ナナイ・ミゲル、冗談はよせ。俺はシャア・アズナブルじゃない。大佐なんて大それた地位はブライトのものだよ。俺は単なる大尉さ。マフティー・エリン大尉だ。大佐になんてなれたのはブライトぐらいのものさ。」

 否定しておいて、解散を告げ、宇宙に登る準備を整えた。ニュータイプじゃ俺はない以上、強い機体じゃないと俺は死ぬだろう。そういえばエリオットが俺の機体ができたとか言ってたな。

 

 ヅダじゃないことを祈ろう。トリコロールカラーヅダも赤いヅダもダサいからな。

 

「赤や白じゃあ、ハマーンのキュベレイみたいな色にしかならないよな。なぁ、シャア。」

 草葉の陰からシャアが見ているならナイチンゲールをキュベレイカラーにして感想を聞いてみたいが思念体でネオ・ジオングを操って殺しに来そうだからやめておこうか。

 

 

 




 マフティーのプランBが発動。

 宇宙空間に木霊する地球降下作戦の暗号通信。

 そんなことより、開示されたアナハイムの悪行により、フル・フロンタルにゾルタン、リタとヨナにミッシェル、フォウなど歴代ニュータイプ研究所被害者のコスプレをした人々がアナハイム本社前で踊る。

 アナハイムの治安維持部隊を殴るあの地球連邦政府ビル前で踊っていたレビルのモノマネ芸人、ギレンのモノマネ芸人。

 アナハイム前で独立を声高に叫ぶ旧ツィマッド社労働組合とジオニック労働組合の職員たち。その中にオリヴァー・マイの姿はあった。

 旧軍人が治安維持と称してマゼラアイン、マゼラアタック、61式戦車を持ち出したときに、彼の中で声が聞こえた。

「非武装の人間を虐殺するために我々は武器を作っているのか?」
 シャハトの声だ。それに‥。

「宇宙移民は戦い続けてきた。こうやってな。お前には力があるだろう?」
 カスペンの声だ。

「そうか。分かった。やるべきことが。」

 そして月面にはドラム缶の親玉がまた起動し、人々の意思を乗せ、秘密裏に支援をくれたアルベルトの思いを乗せ、合流地点に赤い機体は疾走する。

 その内部にはボールなどもいた。

 人々の熱は木霊する。宇宙の彼方まで。

 何処かを青い光をまとったMSが飛んでいた。


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