偽マフティーとなってしまった。   作:連邦士官

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第44話

『動け!オデュッセウス!これじゃああのときの!神経が尖る、尖るな!だけど、それでも!あぁ、だから!やるよ!やってみせるよ、クェス・パラヤ!チェーン・アギ!』

 ヨナの機体にビームが突き刺さる前に、デルフィニウムもどきが残した巨大なフィン・ファンネルもどきが動き出す。

 

「これは温かな‥‥いや、感じる‥‥この気配はまさかハサウェイか!」

 おそらく、ハサウェイがデルフィニウムのフィン・ファンネルをサイコミュで乗っ取り、それが三角錐の形となり、リ・ガズィ・カスタムを守った。

 

『クェス!これがあの時できなかった僕の答えだ!』

 そこだけを見たらアクシズでチェーンの直撃をアムロがフィン・ファンネルで守ったようにも見えるし、リタやミシェルの残留思念がサイコ・フィールドを駆け抜けてハサウェイを通してヨナを守ったようにも見える。

 

『これが僕の答えだ。クェス‥‥。僕には世直しのインパクトを世界に見せることは出来なかったが、世直しの手伝いぐらいは出来たと思うかい?アムロ大尉‥‥シャア・アズナブル‥‥憧れていただけじゃ駄目なんだ。それじゃ、貴方達が言う愚民ですよね。僕は子供だったんだ。大人になれたか?男になれたのか?教えてくれよ、クェス。』

 キャンキャンうるさいミントアイスみたいな色の頭をしたララァの出来損ないのハマーンの出来損ないにはわからないと思うぞ。アイツ、好き勝手にしてマシーンにもなりきれないクソガキだろ。カツのほうがまだ立派だろ。いや、同レベルだな。

 

 そういえば、ハサウェイの彼女はどうなったんだろうか?ケリアとは破局したのか?聞くほどのことでもないが‥‥聞いたら面倒事に巻き込まれそうだが、把握してないと後でハサウェイと同じくらいアレになっていたら嫌だし、ミヘッシャ達もどうなのかも把握しよう。ハサウェイの脳内の身構えてるときに来ない天パの死神も、身構えてる時には死神は来ないと言ってたから。

 

 敵の艦隊の離脱後に艦に戻るが。

 

「機械の不調か?宇宙が黒から藍に見える。いや、蒼いな。」

 どうだっていい事だ。今は目の前の爆弾を除去しなければならない。着艦をするとバーニアで進み、格納庫に機体をしまう。こんなデカブツをよく載せれるものだ。

 

 パネルでコックピットハッチを開けるとそこには、ハサウェイが待っていた。出待ちしていたのかコイツ。

 

「待ってましたよ。大尉、聞いてほしいことがあって。」

 いや、そんなのを言われても困る。ブライトに聞け、ブライトに。多分、今まで親らしいことをしてこれなかったと後悔している気配があるから。ハサウェイよりもバナージやリディとのほうが接しやすいみたいだからな。

 

 それもそうかも知れないが、だからって合間を見てハサウェイと話し合うときに同席してくれとか言われても困る。なんで、ハサウェイとの気まずさの緩衝材に俺を選ぶんだ。そんな情けない父親みたいなブライトは見たくはないぞ。

 

「あぁ、わかる事しかわからなくて良いのなら話を聞くぞ。」

 ハサウェイと二人で歩いていると角から人が来た。ナナイとかミネバやイリアとか女か?手に飲み物を持っている。

 

 ガタイは良く、顔を見るとガウマンだ。何、お前ヒロインポイントでも貯めてるのか?空からハサウェイの機体に乗り込む系ヒロインかよ。ヒロインならまだ、こう‥‥ジオン残党の娘とかさ、ミヘッシャとかさ。ミネバとかでもいいけどなんで筋肉質なおっさんに飲み物を貰うんだよ。

 

「ハサウェイ、大尉。あれは何だったんだ?」

 歩きながらガウマンはそんなことを聞いてくるが知らんよ。MAっていうのしかわからんわ。近付いてくる。

 

「あれがアナハイム製なのは私から見てもわかる。大尉、ハ、ハサウェイ、奇遇だな。食べるか?」

 いや、ブライト。そのハンバーガーとドリンクを手にして「奇遇だな」は無理だろ。なんでおっさんからばかり食べ物とか貰うんだよ。普通はかわいいオペレーターだ‥‥いや、トーストにされる男とサエグサだ。おっさんしかいないじゃないか!

 

「あぁ、ブライト、貰うよ。」

 うん?ハンバーガーが冷めている。ということは食堂の自販機から買ってから時間が経っているという事。ハサウェイに話しかけようかどうかを悩んでいたのか?思春期の子供を抱えた親か?ハサウェイは思春期の代わりにテロリストをしていたようだが。そこだけ聞くとヒイロとか刹那とかと一緒だな。ガンダム言語使いと一緒とか、不名誉だぞハサウェイ。

 

「ハサウェイは貰わないのか?ブライトの奢りだ。貰っておけ。親に頼れる内に頼っとかないと親は先にいきなり居なくなるからな。」

 俺はいきなりこっちに来たせいで、親に何も出来なかったからな。というかパソコンやスマホの中身はどうなったんだろうか。トップ画面が2つとも自作絵の好きなキャラクター詰め合わせだったんだが。憂鬱だな。プレミア付きの単行本や小説にDVDとかプラモや模型にゲームにゲーム機とかサインボールとかもあったが全部捨ててないよな?いや、妹はアホだから捨ててそうだな。アイツ、アホだし。

 

 アホでよく金を借りに来てたからなぁ、アイツ。甘やかしすぎたか。俺が元の世界で死んだとしたらアイツ生きていけているのか?まぁ、親父も生きてるしなんとかなるだろ。でも、冬場に旅行に行くから車借りてこいと言ったら、オープンカー借りてきたのは許さないからな。

 

「そうだな。大尉の親はな。」

 まぁ、居ないんだけどそういういないじゃないからブライト。だからオールバック芸人やガンダムを一番うまく使える男じゃないから。

 

「親父、ハンバーガー‥‥これって、俺がラー・カイラムに潜り込んだ時に怒った後に持ってきてくれたあの‥‥。俺はこんなにも気にかけてくれている親父がいたのに。」

 今更、自分がマフティーとか言わなくていいぞ。感動している感じにブライトがなってるのに環境テロの話はやめろ。

 

「いや、今までこんな父親で悪かったなハサウェイ。」

 いい感じになられても俺は邪魔だろこれ。ほら、ガウマンも困ってるよ。仕方がないからガウマンにハンバーガーを投げて渡して、ブライトに飲み物を渡す。

 

「ブライト、だから俺は必要ないと言ったろ。ハサウェイは真面目だからな。ブライトに似てな。」

 笑う二人を置いといて、手を振って俺は部屋に戻った。

 

 割と空調が効いた廊下、割り当てられた部屋に行き、パスワードを入れて部屋に入って、ベッドに座る。ひと息をついてから、頭に手を回し仮面を外した。

 

 髪の毛を手ぐしで整えてから、デスクに向かってゆったりと端末を起ち上げて、とりあえずケリアの名前で検索する。まぁ、マフティーの下層構成員だから出ないだろうが。

 

「出てきたな。うん?」

 おかしいな。いっぱい出てきた。なになに、記事の題名は平和を求めるマフティーの新生、ケリア・デース?

 

 記事によると、ケリア・デースは暴力に頼らないマフティー活動を展開するとして、様々なマフティーダンスを呼びかけており、メイクにより有名人のそっくりを作ってはマフティーダンスを意味がある場所で行っているらしい。

 

 議会前とかだけじゃなく未だに放置されたMSやスクラップの山、果ては支援が遅れている病院など、環境問題だけじゃなく社会問題や更に詐欺組織、交通事故現場、変わる前のマンハンターなどそれらの前でやる事により求心力が高く、最初のマンハンターに殺された少女たちのダンス集会を自ら計画してマンハンターの水平射撃により銃弾が体の数カ所に撃ち込まれながらも逃げて、治療のために秘密裏にニホンに渡ってニホンのマフティーと出会い、ニホンのマフティーのブレーンとして平和活動をしていたらしい。

 

 現在は地球連邦議会平和主義党(議席数16)の党首として、ルオ商会、アナハイム・エレクトロニクス、その他コロニーからの輸出入業の独占をしている寡占企業に対して、地球連邦の方にある反トラスト法を要求して、永続的な社会生活の継続によるすべての弱者救済と富の再分配、最低賃金の上昇、労働基準法の順守、サイドにおける税金の実態調査、空気税や水税などの弱者搾取の撤廃、地球連邦の戦時臨時税が79年以降ジオンとの軍拡合戦のときの臨時税、グリプス戦役の復興税と続いているので廃止を求め、マスコミなどの地球連邦政府に守られてる会社の自由化、天下りの実態調査など多岐にわたって要求しており、民衆からも人気が高い。

 

 特にマンハンターに不法居住者として一度宇宙に送り返されて強制労働後にインドネシアデモでのリーダーとして大学生とダンスを行い、マンハンターに撃たれてもなお抵抗を続けて、ニホンという経済特区地で富裕層からの資金を集め再びマフティー活動を始めて、非暴力デモダンスでリモートではあるがサイドや地球を含めて560万人のデモ隊を集めて、エコーズに逮捕され軍法会議にかけられても支持者に非暴力宣言を行ったのが人気の理由らしい。

 

 宇宙世紀は暴力、暴力、暴力であったがテロリズムでなく、正当なデモ活動と30バンチ事件以降、デモも抗議活動も署名活動も衰退し、風刺すらしなくなった宇宙世紀でそれらを復活させた女性として持て囃されてるとあった。この写真、ケリアの後ろには秘書としてミヘッシャが映っている。

 

 大学生と年寄が主体の改革組織らしく、夢破れたインテリの世捨て人と若い熱意だけがある大学生が集まって集会を連日開いているらしい。

 

 テロ組織かな?ちょっとミヘッシャで怪しさがより出てるぞ。合言葉が愛、平和、平等、反省、総括、創造。治安出動が必要な組織なのでは?富の再分配として軍縮と社会保障を見直し、富裕層に課税をして、その得た予算を国家手動の成長計画に回し計画的な恒久社会の実現とか、共産主義者なのでは?

 

 ハサウェイ、お前の彼女どうかしてるよ。なんだよ、各大学に連帯サークルのダンス同好会やインド文化研究会や宇宙史研究会、一年戦争研究会に地歴勉強会などや学生用の格安の寮を設置してるって。どう見てもカルトだろ。お前がちゃんと面倒見ないから弱小大学環境テロサークルから大手大学生カルトテロサークルが生まれてるんだよ。

 

「一つ分かるのはシャアが悪い。」

 大体はシャアが悪い。シャアが石ころ遊びでハマーンとの忌まわしい記憶を地球に不法投棄しようとしなければこうなってない。だから、未だにパイロットでしか飯が食えないおっさんなんだよ。紅茶を飲んでる顎デカ偽物総意の器()おじさんに負けるんだよ。

 

 お前が強制キャスバルモノマネ芸人に勝てるのは面白さだけなんだから、私のケーキは?とかサボテンとかギュネイに大佐はロリコンとかレズンに少女趣味とか思われておけよ。

 

 なにが、スウィートウォーターだ!尻拭いをさせられるこっちの身にもなってみろ。MSの性能差が決定的な〜とか言ってみせるならザクでフェネクスを倒してみせろ!やばい気配をバンバン感じてるんだよ。誰のせいだ?

 

「シャア‥‥アズナブルっ!いや、アムロのせいでもあるか。」

 アクシズショックで頭の中身がパーティーバーレルになってるようなアホもたくさんいるからな。でも、それもシャアが石遊びしなければ問題なかった訳だしなぁ。

 

「やはり、シャア。」

 しょうがない。俺にはそれ以上の答えは出ない。4時間経過したので部屋の外に出るために再び、マスクをかぶりコートを着た。

 

 扉を開くとそこにはまたハサウェイがいた。

ハサウェイ出現率5倍とかバフでもかかっているのか?ブライト、ちゃんと面倒を見てやれよ。

 

「大尉、ブリッジへ。サイド3のバハロ議員から通信が来てます。」

 形勢が不利と見て降伏しに来たか。確かに今ならまだ間に合うな。我々は月しか目指して無いわけだから。

 

「あぁ、わかったよ、ハサウェイ。ところでだ。こっちはブリッジの方向じゃないぞ。」

 ハサウェイが歩みを止める。こいつ。直様、バックステップで距離を取ると身構えたのだが。

 

「大尉、僕にはあの時、緑に包まれたときに声が聞こえたんです。微かにね。それはシャア・アズナブルとアムロ・レイの声だった。ならば、今いる貴方は誰なんですか?少なくてもエゥーゴメンバーの筈だが、全員あなたとは違う。カイ・シデンでも無い。なら、貴方は一体、誰なんですか?どこにいたんですか?」

 ゆっくりと拳銃を構えるハサウェイだが、そもそも、俺は常日頃シャアでもアムロでもないって言ってきたよな?お前はそれを聞いてなかったじゃ無いか。今更、聞かれても答えは一つだ。

 

「私は、俺はマフティー・エリン。今はただそう呼ばれている。」

 

 ハサウェイの構えた銃は下がることはない。

 




 すべての魂が帰る場所、青い炎を纏った鳥が飛んでいく。

 鳥がやがては人となり、人がやがてはMSとなる。

 最後に残って立っているのは誰だろうか。


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