偽マフティーとなってしまった。   作:連邦士官

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第51話

 嫌な悪夢を見た。まったく、ガンダムの女は度し難いな。冗談ではない。なぜお前たちの好きな通りにやらねばならないのだ。ララァにリタにハマーンとかな、8割近く鳥だが鳥になりたいのなら鳥らしくしていろだ。

 

 ヨナによるガードを強くしなければならない。

 

「ヨナ・バシュタの機体データは?ブライト。」

 ブライトはなにか飲み物を持っていた。あぁ、なるほど。

 

「マフティー、どうしたんだ?ヨナの機体のデータなんか急に欲しがって。」

 ブライトのやりたいことがわかった。ヨナのデータは紅茶毒霧が得意な副艦長にしてもらうさ。

 

「ブライト、ハサウェイにそれを渡して親子の会話をしたかったんだろ?早く行ってやれよ。親父にぶたれたことも無かったやつもそういうのが見たいはずさ。父親とやらをうまくやれよ。」

 ブライトはやや苦笑しながらもハサウェイの下に向かった。いい傾向なのか?いい傾向だとか言ったグラサン赤いノースリーブはカミーユ破壊RTA記録保持者の私情でアクシズで石遊び坊やだからな。「坊やだからさ」とか言うやつが一番坊やだったってのがオチだ。

 

「オットー副艦長、ヨナ・バシュタの機体についてデータを出してくれ。」

 オットーはそそくさとデータを提示した。そのデータには‥‥。

 

「リ・ガズィ・カスタムが完全に壊れたからあのHi-νガンダムに乗っているだと!」

 しかもご丁寧にリフレクターインコムまで増設してある。その上で載せ替えられた新エンジンにより推進力と出力が上がっているらしく、ファンネルによるバリア機能も強化されアルゴスユニットを装着することでよりビームに対しての防御力を引き上げている様だ。人の力に過ぎたるサイコフレームらしいがどんどん量産されている。

 

 サイコフレームはオルファンの様に意思を持ち出したらサイコフレームの生殖活動に人間を利用し、機械が人間を支配しかねないのによくサイコフレームを量産するものだ。オルファンはそう言えば少女だったが少女がプレートを生み出して命を吸って大地から飛び立つのならば、それは少女が母親になるということか。そして、伊佐未依衣子はオルファンの母になることを求め、伊佐未勇を、弟を異性として求めてかつその母性によりアダムとイブになろうとしたのだろう。

 

 神話の方舟によるアダムとイブ、これすらも可能にするのがサイコフレームとやらだ。命を吸い尽くすなんてのもサイコフレームが出来るだろう。緑の輝きが人々の生命を捕らえてそれらが人々を縛り付けるとするならば、可能性が人を殺す。サイコフレームの輝きは何時しか希望の暖かさがある輝きから人を縛り付ける呪いとなった。ラプラス憲章の様に。

 

 ニュータイプがある種の呪いであるならばニュータイプを通して物質的に生まれた呪いがアクシズ・ショックやユニコーンのサイコフィールドでもあり、ナラティブの不死鳥フェネクスだろう。フェネクスはおそらくサイコフレームの生み出す物質により補給がなくても移動できることから、あれはミノフスキードライブが搭載されている。

 

 そして、ニュータイプや強化人間は鳥になり飛びたがるのを計算に入れればオルファンも強化人間人格AIだとかニュータイプ人格AIとして、少女が利用された末路かもしれない。

 

 御大は少女の無垢さと子供の残酷さと優しさに母性を求め見出してきた。シーラ・ラパーナは統治者として、母性はアナ姫、さらなる高みにいたりネジ曲がりラライヤを生み出したのだ。母性から逃れられない戦士たち、母性が生み出した恐ろしき存在、詰まるところ全てはコミュニケーションと人間関係、そして、母性によって紡がれるそういう話だったんだ。ならば、サイコフレームの輝きに目を焼かれた男たちは人類の優しさと母なる星である地球を守ろうとした母親に対しての感情もあったのだろう。

 

 だからこそシャアは情けないグラサン時代のアクシズで父性や兄や指導者を求めていた。また、ミネバの母親に母を感じていたのかもしれない。少女に自分を見出し、それがハマーンに対しての悪感情を生み出した。

 

 そしてその忌まわしき記憶とともにアクシズを地球に落とすことで母親を求める自分とハマーンの双方を母親となる惑星、地球に落とすことで自分の弱さ、母を求める気持ちすら破壊しようとしたのだろう。そうすることで完璧な大人の男になったアムロと対等になり戦えると考えたのかもしれない。

 

 ミネバがもし、母性を扱えているのならばリディを母性で包み込み、ラプラス憲章をマーセナスのリディが読むことで、ラプラスの箱の呪いを解除したかもしれない。しかし、ミネバにはそれほどの母性やシーラ・ラパーナやアナ姫ぐらいの気品やラクスほどの無鉄砲さが無かったのだから、ラプラス憲章はワイドショーのネタ程度で終わったのやもしれない。

 

 つまり、ガンダムとはブレンパワードとはダンバインもだが多くの作品の根幹は母親がテーマなのだ。故に人々は惹きつけられてきた自分を生み出した存在との対話だ。OOがなぜ対話なのか。ELSが花になったのは花は女性を表していて、人類の根幹の意識たる母性の海を見出したからだろう。花は女性のメタファーなのだ。つまり、巨大な母性が生み出されるのならばガンダムなどの世界では、それこそが人類を導く、いや導かれたいとされる行為になるのだ。

 

 母性が最大の武器になるのならば、父性もまた武器になる。マフティーをあの紅茶野郎が父性と言ってしまったがために人類がもつ、自分より高位の存在に導かれたいという潜在化の弱者の無意識、それが炸裂してマフティーに父親を求めたのならあの得票にも納得がいく。つまり、皆がまだ子供でいたいとか理想の子供時代を過ごしたかったとか、子供時代の後悔に、取り戻せない後悔に囚われていたのが宇宙世紀。

 

 それを表す存在こそがハサウェイや地球生まれの女の母性に焼かれたドゥガチ、カガチもマリア主義として母性に焦がされた。そして、父性として頼られるからこそシャアやジュドーはああなったのだろう。木星爺さんが誰かは知らないが木星爺さんが人類を嫌いになったのは誰も彼もが、木星爺さんに理想的な父親を押し付けて子供になろうとしたからだろう。

 

 スーパーロボット大戦とかでも、世界を包むほどの母性が現れたのならば悪党と言われるものでも屈服するだろう。真・女神転生ストレンジジャーニーの地母神に問われた存在のように。しかし、その地母神達ですら母性は足りなかったのだ。つまり、全てを包み込む母性と対となる全てを叱って守る父性こそが人類に対する特効薬なのだ!人類は便利にできてもいなければ欠陥だらけで生まれによって差別され、人は生まれながらに平等では無いからこそ、平等に接する父性や母性を求める。

 

 人は生涯誰かの子供である以上、親に囚われて生きるしかない。それすらも包み込み開放する父性と母性が強く人類を、人を人たらしめるのかも知れないが、多分与太話だ。単なる邪推に過ぎない。

 

 現実逃避は終わらせて現実に向かい合わねばならない。ヨナが違法改造Hi-νガンダム、ガンプラバトルでも出ないようなイカれた仕様になっている現実に。

 

「だ、大統領!いきなり何故驚いて‥‥。」

 オットーに声をかけられたので現実に戻ると困った顔をオットーがしている。トーレスやサエグサもいる。ブライトを慕って集まったオスカにマーカーなどもいる。死んでいなければアストナージも居たに違いない。ブライトの人望は侮れない。元エゥーゴ組が裏切ったのもブライト処刑というスイッチがあったからだ。

 

 地球連邦がブライトを警戒していたのもよく分かる。ブライトの為にエゥーゴ残党やら連邦軍の一部、ジオン残党の一部、ミネバ派などが集まったのだ。さらに言えば市民の中にもティターンズの中にもブライトを英雄視する者も居るのだ。そうした事情を考えれば、ブライトが政界に本当に出てしまったら、武力と政治を両方持ったジャミトフの再来と警戒したのだろう。

 

「いや、なんでもないさ。Hi-νガンダムは今はどうなっている?あと新聞も表示してくれ。」

 データを表示させる。ほほう、なるほど。ふざけんなよ!フルサイコフレームに更に増強を何故している!脳波による超反応とバイオコンピューターによる更なる反応向上と試作のヤシマのハニカム材をサイコフレーム化し、微弱なIフィールドを搭載し、それすらも脳波によって発現先を動かせるらしい。

 

 試作のビームシールドまで搭載された姿はまさにV2アサルトバスターさながらだ。大出力のバーニアとサナリィとアナハイムなどが合わさった技術で開発された新機軸のミノフスキー・クラフトにより少しだけの巨大化で済んだらしく、モスボール保存されていたサラミスやマゼランにも順次ミノフスキー・クラフトが換装されて大型民間船にもその技術が応用されつつあるらしい。早い話が政府のばらまきと軍事技術の開放によって普及され値段が下がるというのだ。

 

 やはり、地球連邦は軍事国家なんじゃないのか?軍事国家の割には治安維持費や軍備を下げたりしてるけど。

 

 

「一番の問題は‥‥。」

 そして、今読んでいる新聞には大量に出た強化人間資料によりPTSDなどの精神疾患の研究や人工臓器の研究、義手義足、人工筋肉の研究が進んでパワードスーツの研究も進んだと書いてある。特に脳医学の分野が格段に進んだらしく新薬の開発も進んでおり、肝臓や腎臓、心臓の移植を待つ患者にも光が見えてきた。マフティー・ナビーユ・エリンは人類の光、人類は光に向かい走り続けなければならない。マフティー・ナビーユ・エリンは誰でもなく皆がマフティー・ナビーユ・エリンになれるのだから、マフティーとなりマフティー・ナビーユ・エリンのした事を市民は出来る。だから今日から君もマフティーとして、光を放ってマフティーが放った光に導かれてマフティー・ナビーユ・エリンになるのだ。マフティー性を示して前へ歩き続ける事こそが宇宙世紀なのだと書いて、あとがきにはラプラス憲章やニュータイプ論などを引用した怪文書がある。

 

 さてはクソ記事だな?コメント欄をみるとgoodが数百万を超えていた。宗教かな?こわっ。

 

「えぇぃ。冗談ではない!これでは本当に道化ではないか!オットー・ミタス艦長!いや、今は副艦長か。地球連邦がこう言う怪文書によって、宗教国家に成りつつある。おかしいよな。寒い時代だと思わんかね?本当に盛りおって猿どもが!ニュータイプやらマフティーやらと特別視をして変わろうともしないのを正当化して、明日やればなんとかなるとツケを105年も回し続けた結果がこれだ!宇宙が早くなりすぎたんだ。広大な地域を開拓するその精神がなくなり、自分の意志を他者に頼り過ぎた結果が子供のままに大人になり、ニュータイプやらマフティーやらに親の代わりを求めるものが増えた。これはエレガントではない!他者に求められたマフティー性やらニュータイプは本来の形ではない。ならば人が死ぬかもしれない中で、そうやって遊び続けるのは不健全だ!」

 あまりの理不尽に怒って思わず演説みたくなってしまったが周りがポカンとして‥‥‥オットーが手を叩いて拍手をするわけでもなくこちらを見据えていた。

 

「健康的な人間なら戦争はしませんよ。」

 オットーはそう告げた。いや違うな。

 

「そうではない、戦争とは原因があって社会の動きが起こすものであって健康的な人間なら戦争をしないなどと言うのは、あり得るのかな?許される、許されない等ではない。人々の感情を人が信じずにどうする?」

 新しい新聞記事データを開くと音声が流れた。これは‥‥‥逆襲のシャアの演説が流れた。

 

「シャアの演説に人々が付いていったわけでも、シャアの演説がフル・フロンタルなどを産んだわけでもない。人々がシャアやアムロを求めて、それの意思が人々の意思がそれらを産み出し、テロ組織の反地球連邦組織マフティーを育てた。アクシズの光がこの映像にある光が、人々の優しさを書き換え、光の本質は善なる感情だったのに光を求める亡霊を産み出したのだ。なぜそれがわからん!?オットー・ミタス、フル・フロンタルを見たのならそれらが理解できるだろう。人類にはまだ希望が必要なのだ。希望がジオンとか連邦ではない。それは開拓なのだ。」

 データを出す。火星や金星のデータをそこに出した。人類による大地を、新たなるフロンティアを得るための戦いだ。それに夢中になってくれれば、俺の存在を忘れてくれる筈だ。

 

「開拓?また新たなジオンが生まれる可能性が‥‥。」

 誰かがそう呟いた。だからそうしてあるから月光蝶でリセマラされるんだよ。

 

「ジオンが生まれようが関係はない。星や大地を得た市民がやがてはコロニー市民と地球市民という対立構造から脱出する。これが人間の歩みだよ。地域の違いが人を傷つけることもあるのなら、その違いが人を優しく慈悲深く育むこともあるはずさ。」

 アイリッシュ級がモニターに出てきた。やっとエゥーゴとの合流だ。その部隊から送ってきている使節は‥‥‥カミーユ・ビダン、ジュドー・アーシタ、そしてZZのガンダムチーム。そして極めつけは‥‥。

 

「ベルトーチカに、カイにジョブ・ジョン?セイラまでいる。」

 面倒くさいことになるかもしれないと俺は彼らが着くまで艦橋の椅子で眠ることにした。オットーが訝しげな目で俺を見るが無視した。髪の毛を毟るぞ!すまん、言い過ぎたな。毟るほど髪の毛もなかったもんな。

 

 そして、まどろみに落ちた。

 




 νガンダムは伊達じゃないらしいので、伊達じゃなくなりました。

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