偽マフティーとなってしまった。   作:連邦士官

53 / 67
第53話

 艦隊が宇宙の蒼い闇を切り裂いて進んでいく。そして約束の場所にたどり着いた。

 

「約束を守ってくれるか?どう思うブライト。奴らの艦隊は巨大だ。地球連邦よりは小さいが十分に地球を火の星にするぐらいは出来るはずだ。」

 グワダン級やらベクトラ級やらがいるのだ。ベクトラ級に積まれた核兵器だけで地球を滅ぼすことが出来るのだ。向こうにはデータを取るためにルナツーに封印してあったGP02が2機有るというのも集められた地球連邦内部資料で知った。

 

 アトミック・バズーカを使ってくる可能性もあるから本当に面倒くさい。GP02からアトミック・バズーカをパーツ取りして、ベクトラ級に乗っていたとされるプロトタイプΖΖガンダムに持たせて高速機動からのアトミック・バズーカをされたら洒落にならない。紅茶野郎はそんな事をしないかもしれないが、キンバレーがしないかは分からない。奴は情けないテロ組織鎮圧司令官からこの戦いを通して、ビームバリア戦法やルナツー占拠などの軍事能力のかなりの向上が見られている。

 

「戦いの中で成長するかキンバレー。ブライト、キンバレーが協定破りをする可能性は高いだろうな。」

 キンバレーは無能ではなかった。場数を踏み、それなりの指揮官にはなった。ガンダムシリーズ特有の艦長の成長みたいな事をしてくれた。無能であってくれた方がどれだけ良いか。

 

「確かにな。キンバレーならば、脇から忍び寄って刺すぐらいはするだろう。負けた時に敗戦の責任は自分が負うぐらいは理解しているだろうからな。」

 だから頑張るだろう。頑張らなくても良いのになぜそこで頑張る?お前はオエンベリと戯れるだけの‥‥まさか、原作の修正力か?オエンベリが強くなったからキンバレーも強くなったと考えられる。

 

 では、あの狂ったMAもマフティーは必ず負けなくてはならないから出てきたのか?シャア・アズナブルが人は流れに乗ればいいと言っていたが、流れに乗ったら俺は死んでいた。流れが出来てきたのならそれをも打ち壊せばいい。原作改変になったと思いきやマフティーは戦闘には負けるという概念を打ち壊せないのか。概念には概念をぶつける、カミーユとかをぶつければ良いだろう。それこそ、フェネクスをぶつける。理不尽には理不尽をぶつけてやる。

 

「マフティー・ナビーユ・エリンだとすれば何をするんだ奴らに?」

 ガウマンに聞かれたが、マフティーはハサウェイやらお前自体だろ。成り行きでマフティーにされただけで俺はマフティーじゃないぞ。

 

「奴らのあり方もまたマフティーさ。」

 適当にガウマンをあしらう。ガウマンもガウマンでスペックが違いすぎる。ペーネロペーを損傷させたんだ。いくら、パイロットがレーン・エイムと言えどもガウマンはグラハム・エーカー程度にはやってくれる男だと思いたい。原作の修正力が働くなら原作にあった運命の力がこれを切り開いてくれるはずだ。

 

 マフティーという単語はすべてを内包する幻想郷と総意の器と願望器が合わさり、市民が持つ無意識下のイデアすら内包するようになったんだろう。よくわからん。もうどうにでもなれよ。なるしかならないだろコレ。

 

「マフティーか。マフティーとは何なんだろうな。」

 いや、ブライト。お前が教えてくれよ。とりあえずマフティー、マフティーとマフティー認定してるが俺がマフティーとはなんぞやを知りたいわ。決済資料にサインをするとゼク・ツヴァイに強化パーツが加えられるそうだ。膨大な紙束に催促されているようだが、それでもいい。現実逃避には良いぐらいだからだ。

 

 強化案は強力なビーム兵器の追加と書かれていた。追加しても相手はIフィールドを持ってるんだぞ?まぁ、無いよりはマシか。ゼク・ツヴァイをコアにした特殊兵器宇宙のゆりかご?GP03のオーキスを装備したディープストライカーの制御に使い、更にそこにアクシズの技術であるジャムル・フィンのブースターを合わせてフルドドを合わせた兵器だと!大道芸でもしろとでも言うのか!

 

 更に書かれていたのはジェガン強化案としてフルドドとGディフェンサーの再生産と装備、SFSとしてメガ・ライダーの再生産。再生産されたメガ・ライダーとヌーベル・ジムIIIやバーザムやネロなどの少数機体をドラッツェ方式で合体、メガ・ライダーを下半身にして、スターク・ジェガンの対艦ミサイルを装備させ、フルドドを背中につけることにより、旧式機体の再戦力化の提案が書かれていた。

 

 メガ・ライダーとヌーベルジムIIIやネロやらバーザムやらジェガン初期ロットを使ったドラッツェで対艦ミサイルを4発装備をして、フルドドを使ったロングレンジビームライフルとメガ・ライダーの余剰出力によってハイパービームサーベルを使えるとか簡易式GP03だろ!

 

 パブリクを使った簡易式も臨時採用してるみたいだし、パブリクを下半身にしてジムIIやジムIIIの上半身を使い、ジムスナイパーのライフルを装備して、ハイパー・バズーカを装備した一撃離脱用MSって紅茶が言っていたやつよりよっぽど凶悪化してるだろ。長距離用補助ブースターを短距離で吹かすことでヴァル・ヴァロとかよりも早くなるとか狂気の産物だろう。

 

 うん?オリヴァー・マイ案?武装コンテナのコアにこの簡易式GP03を使うことにより長大な航続可能距離が活かせるだと!?完成されたゼーゴック案辞めろよ。武装の一部にプラズマ・リーダー改&接触通信によるコンピュータウィルスの流し込みと強烈なフラッシュを出すビーム機構による目潰し、そして巨大なミノフスキー粒子を組み合わせたチャフミサイルの活用とか架空戦記作家か!お前!

 

 事後承諾でビグ・ラングの上の部分をシャンブロにして、リフレクター・ビットとリフレクター・インコムを組み合わせて完成された射撃間隔と射撃時間が直されたクーベルメ改を主砲にして、背中にヒルドルブの主砲が2門付いているらしい。

 

 おかしいんだよなぁ宇宙世紀。地上の時点でライノサラスやら空飛ぶギガンやドラッツェ、ギャン・クリーガーが出てきた時点で本当に宇宙世紀はおかしいと言うかジオン系が驚異のメカニズムをしている。その技術力を生かして低予算の車や宇宙船を作れば地球連邦の産業をおびやかせたんじゃないのか?

 

 だから駄目なんだよ。目的と手段が入れ違っているというかなんでもユニバーサル規格で許されると思うなよ。大体、アナハイムが悪いと思えてきた。

 

「マフティーはマフティーでしかない。それ以上でもそれ以下でもない。だから、みんながマフティーになれるんだろう。マフティーは考えられた仕組みだ。」

 ケネス・スレッグ!いや、お前怖いから近付くな。このヌルっと話に滑り込むあたりも怖いんだよ。ねっとりとムチを触るな。そして俺の座っている椅子の背もたれの後ろに立つな!嫌な威圧感がおまえからするわ。

 

「マフティーは何も考えてないかもしれないぞ?マフティーは俗物かもしれない。」

 なんにも考えずに大学カルトテロサークルしていたからビームバリアで焼かれたんだろ。実際には機体性能を引き出していたからハサウェイは無能ではないが。

 

「俗物がマフティーなら、それもマフティーだろう。マフティーは今や全部になった。すべてを合わせた形容詞こそがマフティーだ。マフティーには人類に光を‥‥人類を背負ったからにはマフティーと成らねばならない。男にしか出来ないあとの始末というやつさ。なら、俺もマフティーになるさ。虹に乗れなかったからな、あの頃は。」

 ブライトが頷く。いや、ケネス・スレッグはナチュラル人狼の狂人ムーヴなんだよなぁ。深読みし過ぎなんだよ。酒場で踊った人間とハサウェイのその騒動でしかないのにこんなにみんなが好き勝手フリー素材にしやがって。

 

 こないだ見たらブルーバックやグリーンバックやレッドバックで素材配布されてたぞ。宇宙世紀人に武器を与えたら駄目なんだよ。荒んだ心に武器は危険だってあんなに言われていただろ!ふざけんなよ。でも、俺はネットには弱くはない。規制もしなければ反対もしない。反応しなければネット民達は黙るだろ。

 

「アクシズ・ショックの光に目を焼かれて乗りたいなら、それはよしたほうが良い。虹の向こう側には寝かせてもらえない死人しかいないかも知れないぞ。ニュータイプがアクシズ・ショックを起こしたのではなく、人類の優しさがアクシズ・ショックを起こしたんだ。ブライト、ケネス。人類の優しさがそれを起こしたならば、まだ人類に絶望するには早すぎて、優しさがあるからこそ、期待するには早すぎるさ。人間はまだ成長する。成長を待つくらいには人類はまだ終わってはいない。」

 なんで、こんなことで全員こっちを見てくるんだ。当たり前の話だろ。当たり前の話を当たり前に出来ないならそれこそが社会や政治の腐敗というやつだろうに。

 

「今、人類のために地球連邦‥‥いや、太陽系連邦が市民同士の争いを止めるために決戦をするんだ。考えたらわかることだが、地球連邦政府はシャアの決起をなんと言った?シャアの決起をシャアの反乱だと言った。つまり、シャア・アズナブルを、ジオン市民を地球連邦市民だと認めていた訳だ。その建前すら分からなくなってしまったのだから一年戦争は起こるべくして起きた。しかし、長く続く戦争が混乱を呼んだのだから人類は優しさを考えてアクシズ・ショックを起こせたんだ。なら、今一度人類が優しさを思い出すのは簡単だろう。」

 よく言っている意味がわからなくなってきたが、こっちの話を彼らが聞いてくれている限りは止まるわけにはいかない。あの目は裏切れねぇって言っていたのはこういう事なのか?

 

「俺に優しさがもっとあればミシェルを‥‥。」

 いや、なんでいきなりそうやってなるんだよ、ヨナくんはさぁ。黙っとけよ。そんなんだから金色の悪趣味な自己再生する鳥になりたい系微妙なニュータイプの彼女を引き摺って、魂が云々とミシェルを拗らせさせて殺したんだろ。ヨナは何時も引き摺って周りを殺して自分だけは生き残ってそうやって後悔して、ミシェルだって犬死だろ。いや、苛立ち過ぎた。言い過ぎたな。言い過ぎたがそうやってやってるからあんな強化人間のレスバで負けそうになるんだよ。ゾルタン流星群の臨界点突破ヘリウム3のほうがまだマトモだ。もっと感情を前に出さないからミシェルだってあぁなったんだよ。

 

「ミシェルのその優しさや後悔が君を救ったならそうやって引き摺らない事だ。死人を寝かしてやるのにもそうやって居たら寝るに寝られないだろう。」

 ヨナを前に向かせてやろう。死人と話すイタコ芸を出来るのなんて、アムロ、シャア、カミーユ、ジュドーとかだろ。悲しいけどヨナにはそんなニュータイプ能力はない。だが、ニュータイプにそうやってなれるっていう希望がヨナの価値だろう。

 

「だったら俺はどうして!こんなに何もかも失って!それも俺が引き金で!なんでこうやって!」

 知らんがな!そんなの脚本家に聞け!俺は知らん。でも、メンヘラ好きそうだなお前。いや、これも言いすぎだろうか。黙っていたハサウェイが口を開く。

 

「何時だって、そうだ。俺も同じだった。助けに来てくれたチェーンさんを、助けようとしたクェスを俺は‥‥。だから、わかる。それは考えても無駄な事だ。前を向いて歩いていくしかない。前に、その先には地獄しかなくても前に進んだ。死んでいった人間の意思を燃料にして命を燃やして進むしかない。俺もそうだった。」

 その割にはダバオでお楽しみとか、マフティーの中で一人だけ無双をしていい気分になったりとか、殺す相手の顔を見ておきたいとか、ロンデニオンに乗り込むとか、悩んでるのかお前みたいなところ多くなかったか?タクシーの運転手のレスバでボコボコに傷ついてからしか考えてないと思うが。

 

「ハサウェイ‥‥。不甲斐ない父親ですまない。」

 ブライト、よせよ。ほら、ブリーフィングルームが変な空気に包まれてるだろ。ハサウェイも話せなくなってるだろ。

 

「ブライトは不甲斐なくない。不甲斐ないのはアクシズと一緒に居なくなったあの二人だ。」

 モニターは地球を映す。そこはコバルトに光る、悲しみや優しさがそこに横たわる場所があった。宇宙の人々が求めた母星。そういう場所だ。

 

 決選の日、それが近いのがよく分かった。トンチキMAと戦いたくないんだよ。俺はなんであんなのと戦わねばならないんだ。

 

 地球の映像を見て、俺は立ち上がって俯いてから全員に背中を見せて、地球の映像を触る。俺は地球に近づく度にナイーブになっていた。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。