個性婚……強い個性を持つ子供を産み出すための結婚、前時代的で現在では否定的な物である
ただ
「うちはちがうんよね~」
私達
この物語は八雲家4姉妹の末っ子八雲
「母さん姉ちゃん達今日もパトロール?」
「あれ? 率早いわね。学校半日だっけ?」
「今日近くでヴィランが暴れたから半日になった。外出は控えるようにだって」
「あらそう。じゃあ家事手伝って。テレビ見ながらで良いからそこの洗濯物畳んどいて。お姉ちゃん達はパトロール行ってるよ」
「ようやるよねー」
「ま、それが家のメイン収入源だから助かるわ本当に」
「昔は母さん大変そうだったもんね。水商売で貯蓄しながらここまで計算して子育てするってある意味尊敬するよ」
「誉めとして受け取っておくわね」
私の母八雲
【個性】選択妊娠
妊娠を自身の意志でできる個性で、避妊薬が必要ないってものだ
こちらも水商売で金遣いの荒い母親の下で幼少期を過ごしたらしいが、その時自身はひもじい思いと学校の虐めを受けていたらしい
何処にも居場所が無かった母親は中学生ながらバイトをしながら貯蓄し、高校に入学してすぐ母親を事故で無くした母さんは、少ないお金を何とかやりくりして高校を卒業
卒業後すぐに母さんはキャバクラで働き、ここでも貯蓄し、十分蓄えた22歳の時、お持ち帰りされた相手が強個性だったこともあり妊娠
長女
その後率の父親と愛人となり、率が産まれ、今に至る
「ただいまー」
「あれ率じゃん早いねー」
「おなかすいた」
私が服を畳んでいると皆帰ってきた
そのまま食事となり皆で食卓を囲む
『個性婚問題でおなじみの真心さんにお越しいただきました。真心さんよろしくお願いします』
『はい、よろしくお願いします』
食事をとりながらリビングのテレビではちょうど個性婚の話がしていた
姉妹全員の強個性でバラバラの個性だから世間では個性婚の代表みたいな風に見られている家だが、結婚してないから個性婚にすら当てはまらない
「そういえば率高校どうするの? 雄英行くの?」
「あー、記念受験はしようかな受かるかわかんないけど」
「そうしなそうしな、万が一でも受かったら家の事務所も箔が付くから」
お姉ちゃん達のヒーローチームプラウダは神奈川から東京で活動するヒーローチームで、代表は愛冠姉で、サイドキックとして緑姉と星姉、事務員数名の小さな事務所だけど、凶悪ヴィランを力で鎮圧できるパワフルなチームとして地元では有名だ
「雄英行くなら特訓しときなよ。せっかく私有地として海岸の一部使えるんだから」
「午後暇だし組み手でもしよっか」
「星姉マジ! やった!」
「はいはい、ご飯しっかり食べてからね」
星姉とは年が近いからよく組み手をするが、一番訓練時の相性も良い
星姉の個性は【重力】
その名の通り視界内の重力を自在に操る強個性だ
「いくよ星姉」
「こい!! 率!!」
「超人化……5倍!!」
私の個性は【肉体改造】
筋肉の量を増やしたり、視力を良くしたりと、某野菜星人的な超人にだっていつかはなれるかもしれない
今の限界は5倍までだが、ゆくゆくは数十倍、数百倍にしたいと思っている
「グラビティスポット」
星姉が私の周りの重力を変更する
踏み込もうとした足下をほぼ無重力にして、空かさせる
四つん這いになった私に今度は約5倍の重力をかける
「まだまだ!!」
体を捻り、超重力地帯から転がりながら脱出し、間合いを詰める
すると星姉は自身の重力をいじり、浮き上がる
砂浜の砂を持ち上げ、空から私にかかるように降り注ぎ、塩水を重力で操って更にかけてくる
水が染み込んだ大量の砂に潰されながら更に重力をかけて畳み込んでくる
「砲弾!!」
砂を掴み、それを思いっきり星姉に投げる
時速250kmの水を含んだ砂の塊が星姉の腹部に直撃する
「かはっ」
星姉が落下したところにかけていき馬乗りになってチェックメイト
今回は私の勝ちだ
「砲弾って何よ砲弾って」
「咄嗟に叫びたくなって」
「もっと格好いい名前にしなさいよ。ただの砂の塊を投げるのでも十二分に凶器になるんだから」
「考えとく」
こうして今日の模擬戦は終わるのだった
愛冠姉率いるチームファミール
愛冠姉の個性【穢れた聖杯】は泥で自身の思い描く英雄を7人まで出せる強個性
泥のため黒く濁っている人形だけど、凶悪犯罪逮捕率が高いのは愛冠姉の死なない英雄達のおかげだ
緑姉の個性【植物を操る】は植物を操ってヴィランを捕縛したりする強個性
植物の成長をも操作できるから種と根がはれる場所さえあれば捕縛はお手のもの
中距離だと炎の個性持ち以外なら完封できる
星姉は【重力】で近距離から遠距離まで幅広くカバーできる
これに私が加われば超遠距離以外の死角が完全に無くなる
血で繋がれた縁だから裏切りなんかも気にしないし、誰も出し抜こうなんて考えもしない
おそらく偶然だけと、ここまで計算して子供を産み、育てた母である八雲鈴には敵わないなと心底思う
何より私達姉妹はひもじい思いをしなかった
これに尽きる
今では色々良くないことも勿論言われるが、ヒーロービルボードチャート25位まで上り詰めた名チームであることは間違いない
ここで10位以内に入るための最後のピースが私だ
凶悪犯罪撲滅に力を居れてきたお陰で担当している地域では姉達が抑止力となり事件数事態が減っている
活動範囲を広げたいが、いかんせん人数が足りない
私が入れば星姉や緑姉とタッグを組め、2グループに分けながら活動できると愛冠姉は言っていた
そうすれば事件解決数も上がりチャートも上がり、給料も上がる
八雲家のファミールはどこまでいっても職業ヒーローだった
ある日愛冠姉に私こと率は呼び出され
「率、本気で雄英狙ってくれない」
「え?」
唐突に言われた
「正確には雄英や士傑、聖愛学院を狙ってほしい」
「勿論狙うけど、記念受験じゃ駄目なの?」
「勿論それでも良いけど、私達が今最も欲しいのがコネなんだよ。ヒーローの上位陣は雄英や士傑が、聖愛学院はバックの財界のコネがある。なるべくなら雄英のサポート科と経営科とも仲良くしてほしい」
「コネが必要なのはわかったけどサポート科と経営科はなんでまた?」
「コスチュームとサポートアイテムの差ってのがある。今は地元の町工場の人と協定を結んでコスチュームやサポートアイテムを仕入れているんだけど、大型のサポートアイテムの仕入れができなくて、車なんかは市販のを使ってる有り様だから率には雄英に行ってほしい。その為の訓練を全力でこっちもバックアップするから」
「必死なのはわかったよ。でもコネって言われても……」
「友達を作る、仲良しグループに入る、派閥に入る。そんなんで良いんだ。3年間でゆっくりで良いから……ね」
「わかったよ。とりあえず試験内容をわかる範囲で教えてよ」
「勿論!!」
その日の夜から約9ヶ月間みっちり鍛えられた
愛冠姉の泥英雄と組み手をしたり、緑姉の新技植物動物(自動で動く動物の形をした植物 ドラえもんのキー坊が想像しやすい)と戦ったり、星姉に重量を上げた状態で訓練したり、時には雄英の試験に出てくるロボットのスクラップを町工場に持ち込んで直してもらい、何処を攻めれば良いか等の訓練もした
そして私は雄英の試験に挑む
鍛えぬかれた筋肉と特注の金属バットを片手に……