入試前夜、私は愛冠姉と緑姉の二人にリビングに呼ばれ、椅子に座っていた
星姉が呼ばれてないのはおそらく雄英に受験しなかったからだろう
愛冠姉は実技でポイント不足、緑姉は学科で落ちた経験があり、星姉は内申不足で記念受験すらできなかった
星姉から内申は大事だと口酸っぱく言われていた私は勿論雄英を受けるための内申は突破していたし、先生からも母校初の雄英合格をと期待されていた
愛冠姉が椅子に座り、話す
「率、学科が明日から始まるけど、緑みたいにそこで落ちる心配は私達はしてない。問題は実技の方」
緑姉が話し始める
「学科で落ちたけど実技もやったうちからもアドバイス。おそらくロボットの破壊以外の加点がある。あくまでも予想だけどレスキュー……救助ポイントがあると思われる」
「救助ポイント……となると誰か助ければいいの?」
「助けるだけじゃなく、即席のチームワークを見てる可能性もある」
愛冠姉が緑姉の言葉に付け加える
「毎年巨大ロボットが出現するんだけど、それを思いっきりぶっ壊して来なさい。私と緑は逃げたけど、それがたぶん隠しポイントだから」
「巨大ロボット?」
「そう。で、殴って率が怪我したらやだから特注の安全靴と特注の金属バットを持って会場に行きなさい。毎年実技は持ち物自由なハズだから」
「わかった。……明日から頑張るよ」
「頼んだよ率!」
「うちらの無念晴らしてきて」
雄英高校ヒーロー科
全国のトップヒーローを輩出し続け、現在のトップヒーローオールマイトを始め、ナンバー2のエンデバー、トップ5に必ず入るベストジーニスト等が有名だろう
雄英高校を通い、卒業することがトップヒーローの近道とされ、教師陣もヒーロー科は全員現役ヒーローに教わる厚待遇ぷりだ
しかし、入試倍率もとんでもなく高く、今年の偏差値は79とどれだけ人気かを物語っている(約1000人に1人合格)
……雄英でもこれまた名門ヒーロー科のある士傑高校ですらない一般ヒーロー科出身で上位30にはいっている姉達のファミールはやっぱり異常であることが伺える
今、私はそんな学校の正門に来ていた
「デカイ……金かけてんなぁ」
正門もデカイが中の校舎もデカイ
真っ正面から見るとビルが何棟も建ってるように見える
私は手元の受験通知を見ながらどのビルを目指せば良いか探す
もうすでに受験は始まっている
どの校舎のどの教室の指定された座席に座れるか
開始時刻までに座れなければ受験する資格さえない
私は開始1時間前に悠々と着席し、周りを見る
既に疲れはててる者、必死に最後の追い込みをする者、ゆっくりと瞑想をする者、えんぴつでなぜか儀式を行ってる者
開始時間まで私は英単語帳を見ながら時間を潰す
今さら慌てたところでどうしようもないのだから
学科が無事終了し、昼休みを挟んで議事会場に移動する
昼休み中に安全靴に履き替え、金属バットを片手に会場の指定された座席に座る
単純計算で約4万人が受験しているこの学校の議事会場は途轍もなく広く、そんな中たった36人しか合格できない仕組みに鳥肌がたった
私を含めこの中でヒーローを目指す者はここで凄まじい差ができる
受かれば天国
改めて雄英高校ヒーロー科の凄さを実感した
『今日は俺のライブにようこそー!! エヴィバディセイヘイ!!』
シ──ーン
『こうつぁシビー!! 受験生のリスナー!! 実技試験の概要をサクッとプレゼンするぜ!! アーユーレディ!?』
シ──ーン
試験官のプレゼント・マイク氏が場違いなテンションで実技試験の概要を説明していく
まず試験会場は7箇所、私はグループC
持ち物の持ち込みは自由、これも知っていたから準備してある
制限時間は10分間、これは知らなかったけど短期決戦は体に負荷が少ないから助かる
仮想ヴィランはポイント制の3種類、攻略難易度でポイントが変わる
他者への攻撃の禁止、これは勿論だ
そして4種類目の仮想ヴィラン、姉達と話してたお邪魔ヴィランは0ポイントと説明された
最後に校訓のPlus Ultraを説明されていよいよ試験が始まる
会場は小さな町だった
参加者は人グループ約5500人
学科の成績があまり良くなかった人は実技試験前に自主辞退したため人数が少し減ったが、それでもこの人数
ポイントを稼ぐにはスピード勝負と姉達から言われたことを思い出す
「スタートの合図はいきなりくるから気をつけて」
いきなりっていつなんだろうと思いながら特注金属バットを擦る
特殊合金製のとにかく折れないバットと町工場の人が自信満々に言っていが、とにかく重い
私みたいな純粋な強化系以外は扱えないバットだ
『スタート』
いきなりスタートの声が響き渡った
私は理解するのにワンテンポ遅れたが、それでも先頭で飛び出すことができた
仮想ヴィランは1ポイントは雑魚
2ポイントが空を飛び、3ポイントが硬い
私は飛び出した勢いそのまま町の中央まで行くまでに7ポイントを獲得して腕時計を見る
「残り7分……よし!!」
近くにいた1ポイントヴィランを破壊し、その壊れたパーツを思いっきり空にいる2ポイントヴィランに投げつける
接触した瞬間に鈍いゴンという音の次にドチャっと地面に2ポイントヴィランが墜ちてくる
これでプラス3ポイント
周りも騒がしくなり始めたので場所を移動する
「残り3分」
途中3ポイントヴィラン3体固まっていたのを金属バットでフルスイングして破壊し、飛び散った破片が運良く2ポイントヴィランに命中し11ポイント
破壊音に釣られてやって来た多数の仮想ヴィランも粉砕し、8ポイントで合計29ポイント
まだ足りない
「キツいか……ん?」
ドゴンと町の一角が盛り上がるとお邪魔ヴィランが出現した
「……デッカ!?」
周りはパニックだ
お邪魔ヴィランの逆方向に逃げまどうが、私はポイント的にこいつを倒さないと合格できない
「いくか」
私は覚悟を決めるのだった
「実技試験の総合成績出ました」
「八雲家の末っ子が1位か」
「レスキューポイント60にヴィランポイント29の89点だもんな」
「今年はアレ(お邪魔ヴィラン)を粉砕したのが2人もでるとはな」
会議室にて今年の実技入試の成績を先生方が話し合う
注目を集めたのは3名
レスキューポイント0でヴィランポイント77点を叩き出した爆豪勝己
対象的にヴィランポイント0でレスキュー60で8位通過の緑谷出久
そして
「個性超人化の超パワー!! 金属バットを投げ、機械にメリ込んで機能停止したところに超強力な蹴りよ!! 思わずYEAH
ーって叫んじまったよ」
「顔面部分の破片が隣の会場まで飛んだんだろ……素晴らしい完成度だ」
「オールマイト先生の後継者になり得るのでは?」
「いやははは」
(緑谷少年、入試で既にとんでもない子が出てきたぞ)
『必殺!! 15倍!! メガトンキッ──ーク』
『ドガシャ──ーン』
『しゃあ!!』
率は既に20倍まで個性を伸ばしていた