小さな捕手と小さな強打者 ~最強のスラッガーを目指して! 外伝~ 作:銅英雄
「向こう……捕手を代えてきたわね」
「山崎が引っ込んだのってまさか……」
「大島。今は罪悪感を持つな」
「で、でも大野さん。あのクロスプレーのせいで山崎は……」
「謝るのなら試合の後よ。それに捕手は最も怪我率が高いポジション……。彼女もそれがわかっていて今までやってきたの。あの時のクロスプレーも覚悟の上……」
「…………」
「今は試合に集中しましょ」
「……はいス」
「タマちゃんが怪我してて、その上無理していたなんて、知らなかった……」
「捕手は怪我をしやすいポジションですからね。それに武田さんの球を捕ろう……という気持ちが山崎さんを突き動かしていました。武田さんの球を捕れるのは自分しかいないから、多少無理をしても良いとの判断だったと思います」
「もう……タマちゃんとは野球出来ないのかな?」
「見たところ軽度の捻挫のようですし、3日程安静にしていれば今まで通りプレー出来るでしょう」
「本当!?」
「はい。山崎さんのあの症状は私が小学校の頃にした怪我と同じもの……。それを参考にしたまでです」
(尤もそれは私が小学校の頃を基準にしたものに過ぎません。山崎さんの場合はガールズ時代に捕手としての身体が出来ている分、あの時の私よりも回復が早いのかも知れませんが……)
それでも安静にするに越した事はないでしょう。
「そんな山崎さんの為にも、武田さんのベストピッチを見せましょう」
「……うんっ!」
6回裏の武田さんは朝倉さんに負けず劣らずのピッチングを見せ、三者三振に抑えました。
「…………」
「和奈ちゃん、どうしたの?」
「瑞希ちゃんのマスク姿を見るのが久し振りで、感動してたの。中学時代はずっと私に付きっきりで、マスクを被る事がなかったから……」
「3年もブランクがあるにしてはヨミちゃんの球を難なく捕ってるね?」
「多分それは瑞希ちゃんのイメトレと、バッセンでの成果だと思うよ」
「イメトレはわかるけど、バッセンって?」
私の言葉が気になったのか、珠姫ちゃんが尋ねてきた。
「瑞希ちゃんは中学時代にチームに入れなかった分、バッセンで捕球練習をしてたの」
「バッセンで捕手練習?」
「うん。ストレートから変化球までバッセンで投げられる全球種に対応してた」
「ヨミちゃんの投げるあの球はバッセンの変化球ゾーンにはない天然のもの……。そっちはイメトレで培った成果って事?」
「だと思うよ。それに瑞希ちゃんはヨミちゃんの中学時代のデータも把握してるし、昨日までのヨミちゃんの投球練習も瑞希ちゃんに頼まれて映像にしてたの」
「だからヨミちゃんの投球練習の時に和奈ちゃんはビデオカメラを構えてたんだ……」
瑞希ちゃんの役に少しでも立てるなら……って思ってヨミちゃんのピッチングを撮ってたんだよね。それのお陰で捕球出来てるなら良いんだけど……。
ズバンッ!
『ストライク!バッターアウト!!』
「三者三振……。ヨミちゃんの方も問題なく投げられてるね。良かった」
珠姫ちゃんじゃないと実力を発揮出来ないってなるかもとか不安に思ってたけど、そんな事もなくて良かったよ。
「私も……負けないように頑張らなきゃ」
(珠姫ちゃんが瑞希ちゃんをライバル視してる……)
多分瑞希ちゃんにとっても珠姫ちゃんはライバルになると思うし、お互いに切磋琢磨出来たら良いな……。
「最終回、しまっていくわよ!」
『はいっ!!』
向こうも気合が入っていますね。
「へ?最終回?という事は守備は……」
「この回に点が取れなかったらさっきのイニングで終わりね。この練習試合には延長戦がないし、あっても次まで」
「折角調子が上がってきたのに!」
この回は7番からですか……。武田さんは代えられないので、大村さんか、川口息吹さんのどちらかに和奈さんに代える必要がありそうですね。
「芳乃ちゃん、何とかして!」
「ヨミちゃん達の誰かが塁に出て、希ちゃんのヒットで1点か、和奈ちゃんのホームランで同点か逆転に賭けるしかないね」
「実質無策ですね」
「こ、こうなったら絶対に希ちゃんに回すよーっ!」
『おーっ!!』
「こい……!」
武田さんが意気込むも、あっという間に追い込まれます。
ズバンッ!
『ストライク!バッターアウト!!』
「今のはSFF!?」
「朝倉さんのストレートと相まって良い感じですね。和奈さんは朝倉さんの球を打てそうですか?」
「……2球程見逃すと思うけど、多分何とかなると思うよ」
『ええっ!?』
流石は和奈さんですね。もう朝倉さんから打つビジョンが見えていましたか……。
『ストライク!バッターアウト!!』
大村さんも三振……。あとワンアウトで私達の負けですね。
「い、息吹ちゃん。私が行っても良いかな……?」
「え、ええ。もちろんよ」
(あんなの私じゃ打てないわよ……)
9番の川口息吹さんの代打として、和奈さんが右打席へ。
(打席に立った瞬間に冷静になる和奈さん……。そして空気がピリッとした事により辺りが静かになりましたね)
それ程皆がこの打席に集中しているという事でしょうか……?
(あの子は今朝の……。武田さんと言い、良い顔をしてるね)
(さっき出て来た捕手よりも小柄な上に特に凄みも感じない……。それが逆に怖く感じるな)
(朝倉さんの球種はストレートとSFFを主流にしているオーソドックスな速球派投手……)
速球派は私の得意分野だけど、対人戦は3年以上やってないし、少し不安かな……。
ズバンッ!
『ストライク!』
(初球で球速を確認……!)
ズバンッ!
『ストライク!』
(2球目でタイミングを確認……!)
朝倉さんのストレートとSFFはほぼ同速……。ヨミちゃんに投げてきたSFFのタイミングは頭の中である程度予測出来る。
(次ストライクゾーンにボールが来たら絶対に打つ……!)
「お、追い込まれたけど、大丈夫なのか!?」
「……問題ありませんよ。和奈さんは必ずここで打ちます」
誰かが私を心配しているのに対して、瑞希ちゃんは私を信用してくれている……。絶対にこの期待に応えたい!
(ツーナッシング……。落として決めるぞ)
(了解です)
3球目。私が相手投手の立場なら、ストレート2球を続けた場合、変化球を混ぜて、あわよくば三振させる方法を取る……。
(私は……それに合わせてバットを振るだけ!!)
カキーン!!
「打った!?」
「打球は!?」
「……上を見てください」
瑞希ちゃんの言葉で上を見上げると、私が打った打球はぐんぐんと伸びていき、そのまま場外へと消えていった……。
「ホ、ホームランで良いんだよね……?」
「う、うん……。和奈ちゃんが打った打球はセンター方向だったから、ファールって事はないと思う……」
な、なんか空気がシーンとしてるけど、私がホームランを打ったって事で良いんだよね……?
(これは完敗だ……。でも打たれたのに、気分は悪くないかな)
(ほっ、本当に川越まで飛んで行ったんじゃないでしょうね……。というか私の勝利投手じゃなくなったじゃない!)
『ゲームセット!』
その後中村さんが朝倉さんからヒットを打つものの、後続が続かず同点止まり、7回裏は武田さんの好投によって三者三振。
この練習試合は延長戦がない為、4対4の引き分けに終わりました……。
瑞希「柳大川越との練習試合は引き分けで終幕です」
和奈「引き分けだったんだ……」
瑞希「データがあるとは言え、和奈さんが初見で場外ホームランを放つせいで他に見所という見所がありませんでした」
和奈「私のせい!?」
瑞希「いえ、作者のせいです」
和奈「さりげなく希ちゃんが朝倉さんからヒットを打ってるのに、なんだかもったいないね……」
瑞希「ここから夏大会開始までは原作と比べて特に大きい変化はありませんが……」
和奈「が?」
瑞希「もしかしたら原作キャラが原作よりも大幅に成長する可能性があるかも知れません」
原作よりも数人が大幅パワーアップ!?そのメンバーは……。
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珠姫、息吹、詠深、理沙
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珠姫、息吹、稜、菫
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珠姫、息吹、希、白菊