小さな捕手と小さな強打者 ~最強のスラッガーを目指して! 外伝~   作:銅英雄

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第21球 適材適所ですね

川原先輩が入部した翌日。私は芳乃さんとこれまでの練習試合を見直しています。

 

「4敗3引き分けですか……。最終回まで和奈さんを温存しているとは言え、1勝も出来ないと不味いですね」

 

「そうだねぇ……。流石に私も1勝くらいはすると思ってたよ」

 

「夏大会まであと一月……。川原先輩も入部してくれましたし、次の練習試合は勝ちたいですね」

 

「光先輩のピッチングは昨日の練習で見たけど、バッティングはどんな感じか知ってる?」

 

「川原先輩は和奈さんや大村さん程ではありませんが、一発が狙える打者ですよ。小技のレベルも藤田さんと同格か、それ以上だと思います」

 

この辺りは直接見ていないので、不確定ですね。先日の軟式チームの試合では余り小技を見せていませんでしたし。

 

「瑞希ちゃんは光先輩をスタメンに入れるなら、何番に入れる?」

 

「そうですね……。新越谷の打力を考えると3番か5番になると思います。外野手も出来るので、問題なく出せる筈です。あとは選手達のコンディション次第でしょうか……」

 

「次の練習試合……欅台戦はちょっと試してみたい事があるんだけど……」

 

芳乃さんが次の試合で試したい事をポツリと話しました。

 

「……成程。それだと次の試合のベンチは私と和奈さん、息吹さんの3人で良さそうですね」

 

「やっぱり和奈ちゃんは温存?」

 

「はい。和奈さんを4番以外に入れる事を考えると、中々難しくなりそうですからね。和奈さんは小技も出来ますし、足も速いので、4番以外だと打順調整がより困難になります。逆に和奈さん以上のスラッガーを私は見た事がありませんので、和奈さんをスタメンにするなら、4番以外は考えられない……という結論にもなります」

 

「それって……和奈ちゃんはあの梁幽館の中田さんよりも上をいくスラッガーって事!?」

 

「もちろんです。梁幽館の練習は最近見てきましたし、直近の中田さんのデータを見ても、本塁打率は和奈さんの方が上だと確信しています」

 

パワー、スイング、威圧感……どれを取っても、中田さんよりも和奈さんが上回るという事実に私も驚いているくらいですからね。

 

(そんな和奈さんの成長を楽しみにしているんですよね。私は……)

 

「ほぇぇ……。瑞希ちゃんがそう言うなら、本当に和奈ちゃんをおいそれとスタメン起用しにくくなるね。データベースを見せたくないって気持ちもわかるよ!」

 

「まぁ今は目前の練習試合に向けて練習しましょう」

 

「うんっ!」

 

川原先輩のピッチングを実戦で試すのは……欅台の次で良さそうですかね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カキーン!!

 

 

「和奈もだけど、白菊もエグいバッティングをするわよね……」

 

「ふむ……。これなら、大村さんの打順を上げて良いかも知れませんね」

 

「そうだね~。そうすると誰を下げようかな~?」

 

芳乃さんの視線は山崎さん、藤田さん、川崎さんの3人に行っていた。成程、似たタイプの打撃能力ですからね。当の3人は打順降格の危機にギョッとしていますが……。

 

「そういえば打順番どうやって決めてるの?私と稜と珠姫って似たタイプだけど……」

 

打順を決めているのは芳乃さんでしたね。これは中々興味深いです。

 

「うーん……。例えば同点でノーアウト一塁の状況でサイン無しだったらどうする?」

 

その状況なら私は四球を狙いますね。直前で出たランナーの走力によってはエンドランも視野に入れますが……。

 

「四球を狙いつつバント……」

 

「同じく……」

 

「私は大量得点狙う為に打つよ!」

 

「だよね。3人はそれが理由だよ。瑞希ちゃんならどうする?」

 

「私は粘って四球狙いでしょうか。確実にチャンスを広げ、繋げたいです」

 

「ありがとう!フリースインガーの4番より後ろで、菫ちゃんと珠姫ちゃんは……経験の差で珠姫ちゃんを3番にしてるよ」

 

山崎さんが所属していたガールズチーム……美南ガールズは全国出場していたチームなので、同タイプでも経験豊富な山崎さんをクリーンアップに添えている……という事ですか。論理的です。

 

「まぁ打ちたい打順があればアピールしてね!」

 

「瑞希ちゃんは希望の打順とかあるの?」

 

「私がスタメンで出場するとしたら……相手投手の球筋をじっくりと見たいので、8番か9番を希望しますね。打撃能力に自信がある投手が先発ならば9番、そうでなければ8番です」

 

「相手投手の球筋を見る……成程」

 

(山崎さんからは私から何かしら吸収しようと試みているみたいですね)

 

まぁ同じポジションをメインとするライバルながらも、チームメイトの成長は頼もしいです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はいっ!ラスト!」

 

 

ズバンッ!

 

 

「顔面4分割にしてから、球の勢いが増したような気がするよ」

 

「本当に!?」

 

「そうね……。まるで死神……の鎌みたい」

 

「魔球デスサイズですか!?格好良すぎです!」

 

な、なんか禍々しい名前の魔球だね……。

 

「勝てなさ過ぎて遂に味方にまで死神と呼ばれるように……」

 

「球の軌道の事だよ。鎌で首を狩るような……」

 

「成程!」

 

……確かにヨミちゃんのあの球の変化は死神の鎌の形みたいな曲がり方をしてるね。

 

「それに勝てない事を言うなら、死神じゃなくて貧乏神だよね」

 

「……死神で良いです」

 

良いの……かな?

 

「そういえば……芳乃ちゃんどこ行った?」

 

「瑞希ちゃんもいないね……」

 

「斥候にでも行かれたのですかね」

 

い、今時斥候って言葉を聞くとは思わなかったよ……。白菊ちゃんって育ちの良さそうなお嬢様ってだけじゃなくて、古風な言葉とかも好きなのかな?

 

「芳乃と瑞希なら先生と会議だ。しばらく掛かるから、練習はいつもの時間に上がってくれと言ってたぞ」

 

今後の方針について話し合ってるのかな……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すっかり遅くなっちゃったね」

 

「ですが有意義な会議が出来ました」

 

「うんうん!今後の野球部が楽しみだよ!」

 

「もう皆帰っちゃったよね……」

 

 

カンッ!

 

 

「……まだ誰か残って練習しているみたいですね」

 

「誰だろ……」

 

 

カンッ!

 

 

「……希ちゃん?」

 

「ですね」

 

「っ!」

 

 

ブンッ!

 

 

(酷いスイング……!)

 

(何か思い詰めているようにも見えますね)

 

「ちょっと話してくるね!」

 

「……私も行った方が良いですか?」

 

「大丈夫だよ。希ちゃんの事は任せて!」

 

確かに今の中村さんを改善するには、私よりも芳乃さんの方が適任でしょう。

 

「……それならこの場は任せました」

 

「うん!また明日ね!」

 

「はい」

 

芳乃さんならきっと中村さんを立ち直らせる事が出来るでしょう。適材適所ですね。

 

(私は私で、夏大会に向けて入念に準備をしておきましょうか)

 

まずは咲桜や梁幽館等のシード校のデータの確認からですね。

原作よりも数人が大幅パワーアップ!?そのメンバーは……。

  • 珠姫、息吹、詠深、理沙
  • 珠姫、息吹、稜、菫
  • 珠姫、息吹、希、白菊
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