小さな捕手と小さな強打者 ~最強のスラッガーを目指して! 外伝~   作:銅英雄

23 / 60
第22球 物事は上達中が1番楽しく、面白く感じるものですよ

6月初旬。今日は守谷欅台高校との練習試合です。

 

「さぁ、今日はいつもよりサインを沢山出して行くよ!」

 

「ええっ!いつもより!?」

 

「もう……。そんな露骨に嫌がらない」

 

「夏の大会まであと1ヶ月……。これまでの成果と問題点を見る最後の練習試合です。集中して行きましょう」

 

『はいっ!』

 

皆さん気合が入っていますね。それに……。

 

「川原先輩はこの練習試合が初陣ですね。今日は武田さんの完投予定ですので、投球方面では出番を作りませんが、打撃方面で期待しています」

 

「うん。期待に応えられるように頑張るね」

 

欅台戦のオーダーは私が考え、芳乃さんと藤井先生とも話し合い、その末に出来たものです。そこには芳乃さんの試したい事も含まれており……。

 

 

1番 レフト 川原先輩

 

2番 セカンド 藤田さん

 

3番 キャッチャー 山崎さん

 

4番 ファースト 中村さん

 

5番 センター 主将

 

6番 サード 藤原先輩

 

7番 ショート 川崎さん

 

8番 ピッチャー 武田さん

 

9番 ライト 大村さん

 

 

(4番に中村さんを添える事……ですか。安定性で4番に上り詰めた選手も少なくはないですし、和奈さん以外を4番に置くなら、中村さんもその適性はありますね)

 

それにチャンスの場面で4番に回る事が多い新越谷野球部では、現状チャンスに弱い中村さんを4番に入れる事で、その弱点を克服する方向に持っていく……。荒療治ではありますが、合理的でもあります。

 

「ところで息吹ちゃんはベンチで不満とかあるの?」

 

「全くないって言ったら嘘になるけど、瑞希が私の為に色々してくれているし、そのお陰で私の投手力もどんどん成長していってる実感もあるし、今が最高に楽しいわよ!」

 

「野球に限らず、物事は上達中が1番楽しく、面白く感じるものですよ」

 

「へぇ~。ちなみに息吹ちゃんは今どんな練習をしてるの?」

 

「ああ……」

 

「えっ?私変な事聞いた!?」

 

「いや、そんな事はないわよ?でも改めて誰かにこれを言うのってなんか可笑しい気がして……」

 

「息吹さんの練習メニューが気になるようですが、今は試合に集中しましょう。終われば息吹さんが話しますよ」

 

「わ、私が話すのね……」

 

「当然です。私が組み立てているとは言え、息吹さんの練習なのですから」

 

試合に目を向けると、川原先輩が四球で塁に出ていました。

 

「投手の山田さんは立ち上がりが極めて悪い……。つまり希ちゃんや和奈ちゃんみたいな強打者じゃなくても、少し粘ればあのように四球が狙えるよ!」

 

「あとはランナーを溜めて、今日の4番に回すだけですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ボール!フォアボール!!』

 

「よっしゃ!ノーアウト満塁だ!!」

 

「最高の形で希ちゃんに回ったわ!」

 

「打ってー!希ちゃーん!」

 

芳乃さん曰くチャンスの場面で打ち、打点を付ける事で、中村さんの自信も付く筈……との事。本当にそのようになれば中村さんの弱点を克服し、更なる成長に繋がるでしょう。

 

 

カンッ!

 

 

1球見逃してから、中村さんはストレートを捉える。その当たりはファースト正面のライナーですが……。

 

「弾いた!」

 

「やったーっ!」

 

川原先輩と藤田さんがホームに還り、2点先制。幸先良いスタートが切れましたね。それに……。

 

「今の……希ちゃんの初打点だよ!」

 

「えっ?本当に?かなり意外……」

 

「だよね?打ちまくってるイメージしかなかったよ……」

 

中村さんがヒットを打つ場面は主にランナーがいない時……。そもそも1番に入る事が多いので、新越谷での中村さんの役割はチャンスメイクが主になっており、皆さんはそれを頭の中で固定していたんですね。

 

 

カンッ!

 

 

更に主将が2点タイムリーを打ち、藤原先輩が意表を突いてセーフティバント、川崎さんが主将を還すタイムリーヒットを放って、5点獲得。更にノーアウト一塁・三塁で8番の武田さん。

 

「ノーアウト一塁・三塁……!」

 

「何でも出来る場面ですね!」

 

「次は8番の武田さんですね」

 

その武田さんは張り切って素振りをしていますが……。

 

(ヨミちゃん、ここは思い切って……スクイズで!)

 

(うっ……。そりゃそうだよね。私の打率じゃ……)

 

 

カッ!

 

 

「しまった!?」

 

『アウト!』

 

「うぅ……」

 

「これは特訓案件ですね」

 

「内容はマシンバントをメインにしましょうか」

 

「打順も一考の余地ありかも……」

 

武田さんはピッチングに専念してもらう為に、今後は9番で良さそうですね。

 

「さて……。白菊ちゃんには小技よりも一発を期待して……」

 

(了解です!)

 

 

ズバンッ!

 

 

『ストライク!』

 

(基本に忠実に、基本に忠実に……!良い球が来たら、逃さずに……打つべし!)

 

 

カキーン!!

 

 

大村さんの放った打球はセンターへ伸びていきますが……。

 

『アウト!』

 

ギリギリのところで、センターが捕球。その隙を突いてタッチアップを決めて、6点目。

 

「ナイス犠牲フライ!」

 

「もう少し伸びていたらホームランだったな!」

 

「次はいけるよ!」

 

「はい!次こそは!!」

 

大村さんもそろそろ実戦でホームランが期待が出来そうですね。

 

『アウト!』

 

打者一巡した事により、立ち直った山田さんが川原先輩を凡退に抑え、チェンジとなりました。

 

(このままリードで逃げ切れば、和奈さんを代打に出す必要もなさそうですね)

 

和奈さん抜きの打力がどのようなものか……川原先輩を代わりに添えて、改めて分析してみましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「守備では相手がエンドランを高確率で仕掛けてきます」

 

「それで1番嫌なのはランナースタートによるベースカバーのせいで、広くなったヒットゾーンに打たれて一塁・三塁にしてしまう事……」

 

「それならランナーがスタートしたら、ベースに入るのは川崎さんだけですね」

 

「うんっ!」

 

(という訳でお願いねっ!)

 

(了解!)

 

 

カンッ!

 

 

「オーライ!」

 

「ボールペン1つ!」

 

「OK!」

 

『アウト!』

 

守備の方も練習の成果が出せそうですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イニングは進んで、5回表。6対2で私達がリードしているものの……。

 

 

ズバンッ!

 

 

『ストライク!』

 

「中々打ち崩せないな……。ストレートも走ってるし、変化球も切れてる」

 

「山田さんは立ち直りの悪さを克服すれば、埼玉でトップクラスの投手になりますからね」

 

「むしろ初回で6点取れて良かった……と。これは追加点は望めないかもね」

 

 

ズバンッ!

 

 

『ストライク!バッターアウト!!』

 

「決め球のシンカーも最高潮にキレてるし、これは打つのが中々難しいな……」

 

「でもこのまま勝てると良いよね!」

 

「「それは武田さん次第かと」」

 

「うっ……!そうですね……」

 

私と藤井先生の意見が同じだったのか、同時に声が出ましたね。

 

(武田さんが新しく覚えた球種……カットボールとツーシームは中々使えそうですし、磨けばピッチングの幅が更に広がるでしょう)

 

まぁ山崎さんなら既にその事に気付いてそうですが……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ゲームセット!!』

 

武田さんの好投と、それに感化された皆さんの打撃によって、9対3で私達新越谷が勝利しました。

 

(今日の試合のMVPは3打点をあげた中村さんですかね)

 

主将が2打点、川崎さんが1打点、大村さんが犠打による1打点、川原先輩が1打点、山崎さんが1打点……。和奈さんなしでもここまで打点を稼げるところを見ると、新越谷の打撃方面は問題なさそうですね。あとは守備方面の強化と……。

 

(息吹さんの練習の成果も、夏大会前に試しておきたいですね)

 

次の練習試合では川原先輩を先発に、リリーフを息吹さんに任せてみましょうか……。

原作よりも数人が大幅パワーアップ!?そのメンバーは……。

  • 珠姫、息吹、詠深、理沙
  • 珠姫、息吹、稜、菫
  • 珠姫、息吹、希、白菊
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。