小さな捕手と小さな強打者 ~最強のスラッガーを目指して! 外伝~ 作:銅英雄
6月初旬。今日は守谷欅台高校との練習試合です。
「さぁ、今日はいつもよりサインを沢山出して行くよ!」
「ええっ!いつもより!?」
「もう……。そんな露骨に嫌がらない」
「夏の大会まであと1ヶ月……。これまでの成果と問題点を見る最後の練習試合です。集中して行きましょう」
『はいっ!』
皆さん気合が入っていますね。それに……。
「川原先輩はこの練習試合が初陣ですね。今日は武田さんの完投予定ですので、投球方面では出番を作りませんが、打撃方面で期待しています」
「うん。期待に応えられるように頑張るね」
欅台戦のオーダーは私が考え、芳乃さんと藤井先生とも話し合い、その末に出来たものです。そこには芳乃さんの試したい事も含まれており……。
1番 レフト 川原先輩
2番 セカンド 藤田さん
3番 キャッチャー 山崎さん
4番 ファースト 中村さん
5番 センター 主将
6番 サード 藤原先輩
7番 ショート 川崎さん
8番 ピッチャー 武田さん
9番 ライト 大村さん
(4番に中村さんを添える事……ですか。安定性で4番に上り詰めた選手も少なくはないですし、和奈さん以外を4番に置くなら、中村さんもその適性はありますね)
それにチャンスの場面で4番に回る事が多い新越谷野球部では、現状チャンスに弱い中村さんを4番に入れる事で、その弱点を克服する方向に持っていく……。荒療治ではありますが、合理的でもあります。
「ところで息吹ちゃんはベンチで不満とかあるの?」
「全くないって言ったら嘘になるけど、瑞希が私の為に色々してくれているし、そのお陰で私の投手力もどんどん成長していってる実感もあるし、今が最高に楽しいわよ!」
「野球に限らず、物事は上達中が1番楽しく、面白く感じるものですよ」
「へぇ~。ちなみに息吹ちゃんは今どんな練習をしてるの?」
「ああ……」
「えっ?私変な事聞いた!?」
「いや、そんな事はないわよ?でも改めて誰かにこれを言うのってなんか可笑しい気がして……」
「息吹さんの練習メニューが気になるようですが、今は試合に集中しましょう。終われば息吹さんが話しますよ」
「わ、私が話すのね……」
「当然です。私が組み立てているとは言え、息吹さんの練習なのですから」
試合に目を向けると、川原先輩が四球で塁に出ていました。
「投手の山田さんは立ち上がりが極めて悪い……。つまり希ちゃんや和奈ちゃんみたいな強打者じゃなくても、少し粘ればあのように四球が狙えるよ!」
「あとはランナーを溜めて、今日の4番に回すだけですね」
『ボール!フォアボール!!』
「よっしゃ!ノーアウト満塁だ!!」
「最高の形で希ちゃんに回ったわ!」
「打ってー!希ちゃーん!」
芳乃さん曰くチャンスの場面で打ち、打点を付ける事で、中村さんの自信も付く筈……との事。本当にそのようになれば中村さんの弱点を克服し、更なる成長に繋がるでしょう。
カンッ!
1球見逃してから、中村さんはストレートを捉える。その当たりはファースト正面のライナーですが……。
「弾いた!」
「やったーっ!」
川原先輩と藤田さんがホームに還り、2点先制。幸先良いスタートが切れましたね。それに……。
「今の……希ちゃんの初打点だよ!」
「えっ?本当に?かなり意外……」
「だよね?打ちまくってるイメージしかなかったよ……」
中村さんがヒットを打つ場面は主にランナーがいない時……。そもそも1番に入る事が多いので、新越谷での中村さんの役割はチャンスメイクが主になっており、皆さんはそれを頭の中で固定していたんですね。
カンッ!
更に主将が2点タイムリーを打ち、藤原先輩が意表を突いてセーフティバント、川崎さんが主将を還すタイムリーヒットを放って、5点獲得。更にノーアウト一塁・三塁で8番の武田さん。
「ノーアウト一塁・三塁……!」
「何でも出来る場面ですね!」
「次は8番の武田さんですね」
その武田さんは張り切って素振りをしていますが……。
(ヨミちゃん、ここは思い切って……スクイズで!)
(うっ……。そりゃそうだよね。私の打率じゃ……)
カッ!
「しまった!?」
『アウト!』
「うぅ……」
「これは特訓案件ですね」
「内容はマシンバントをメインにしましょうか」
「打順も一考の余地ありかも……」
武田さんはピッチングに専念してもらう為に、今後は9番で良さそうですね。
「さて……。白菊ちゃんには小技よりも一発を期待して……」
(了解です!)
ズバンッ!
『ストライク!』
(基本に忠実に、基本に忠実に……!良い球が来たら、逃さずに……打つべし!)
カキーン!!
大村さんの放った打球はセンターへ伸びていきますが……。
『アウト!』
ギリギリのところで、センターが捕球。その隙を突いてタッチアップを決めて、6点目。
「ナイス犠牲フライ!」
「もう少し伸びていたらホームランだったな!」
「次はいけるよ!」
「はい!次こそは!!」
大村さんもそろそろ実戦でホームランが期待が出来そうですね。
『アウト!』
打者一巡した事により、立ち直った山田さんが川原先輩を凡退に抑え、チェンジとなりました。
(このままリードで逃げ切れば、和奈さんを代打に出す必要もなさそうですね)
和奈さん抜きの打力がどのようなものか……川原先輩を代わりに添えて、改めて分析してみましょう。
「守備では相手がエンドランを高確率で仕掛けてきます」
「それで1番嫌なのはランナースタートによるベースカバーのせいで、広くなったヒットゾーンに打たれて一塁・三塁にしてしまう事……」
「それならランナーがスタートしたら、ベースに入るのは川崎さんだけですね」
「うんっ!」
(という訳でお願いねっ!)
(了解!)
カンッ!
「オーライ!」
「ボールペン1つ!」
「OK!」
『アウト!』
守備の方も練習の成果が出せそうですね。
イニングは進んで、5回表。6対2で私達がリードしているものの……。
ズバンッ!
『ストライク!』
「中々打ち崩せないな……。ストレートも走ってるし、変化球も切れてる」
「山田さんは立ち直りの悪さを克服すれば、埼玉でトップクラスの投手になりますからね」
「むしろ初回で6点取れて良かった……と。これは追加点は望めないかもね」
ズバンッ!
『ストライク!バッターアウト!!』
「決め球のシンカーも最高潮にキレてるし、これは打つのが中々難しいな……」
「でもこのまま勝てると良いよね!」
「「それは武田さん次第かと」」
「うっ……!そうですね……」
私と藤井先生の意見が同じだったのか、同時に声が出ましたね。
(武田さんが新しく覚えた球種……カットボールとツーシームは中々使えそうですし、磨けばピッチングの幅が更に広がるでしょう)
まぁ山崎さんなら既にその事に気付いてそうですが……。
『ゲームセット!!』
武田さんの好投と、それに感化された皆さんの打撃によって、9対3で私達新越谷が勝利しました。
(今日の試合のMVPは3打点をあげた中村さんですかね)
主将が2打点、川崎さんが1打点、大村さんが犠打による1打点、川原先輩が1打点、山崎さんが1打点……。和奈さんなしでもここまで打点を稼げるところを見ると、新越谷の打撃方面は問題なさそうですね。あとは守備方面の強化と……。
(息吹さんの練習の成果も、夏大会前に試しておきたいですね)
次の練習試合では川原先輩を先発に、リリーフを息吹さんに任せてみましょうか……。
原作よりも数人が大幅パワーアップ!?そのメンバーは……。
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珠姫、息吹、詠深、理沙
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珠姫、息吹、稜、菫
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珠姫、息吹、希、白菊