小さな捕手と小さな強打者 ~最強のスラッガーを目指して! 外伝~ 作:銅英雄
西武秩父……。この駅から数分歩いた場所に影森高校があります。今日はその影森高校の偵察に……。
「お待たせー!」
「待たせちゃったかな……?」
「私も先程来たばかりですので、気にしなくても大丈夫ですよ」
芳乃さんと山崎さんが一緒に来てくれています。
「本当は息吹ちゃんも連れて行こうと思ってたんだけど、『光先輩と練習したいから』って断られちゃったんだよね……」
「最近息吹ちゃんは左投げの練習してるし、同じ左投げの光先輩の指導がほしかったのかもね。息吹ちゃんは伸び盛りだし」
「次の練習試合まで日がありませんからね。少しでも強くなりたいという気持ちは誰にでもありますよ」
川原先輩に息吹さんの進み具合を聞いてみて、それによっては最終調整といきましょう。
「影森高校のデータは瑞希ちゃんにもらった分しかないし、直接観て新しいデータがほしいよね」
「そのデータによると……ここ3年間は3回戦が最高で、柳大川越や椿峰に負けてるけど、全部ロースコアの試合なんだよね」
「去年の夏大会と秋大会はどちらも2回戦止まりですが、エースの中山さんと捕手の田西さんが編み出した戦術により、ロースコアな上に、試合時間も平均48分とかなり短めです」
「よ、48分!?」
「恐らくそれが影森のロースコアゲームの正体だよね……」
影森高校は試合を余り好まない……という話も聞きますし、データの方は然程変わらないとは思いますが、念の為に最新のデータをこの目で観ておきたいですね。
「ここは……公園?」
「ここからなら盗み見しなくても練習が丸見えだから、ありがたいね!」
「去年はもう少し近くで見れたのですが……」
昨今はそれで色々問題が起きかねないので、やむを得ずこの場所から観察します。
「線は細いけど、ちゃんと練習してるなぁ……」
「守備も上手いし、これもロースコアの原因かな?」
「今からエースの中山さんが投げますよ」
丁度中山さんが投球練習を行うみたいですね。
「アンダースロー……!」
「埼玉県内ではアンダースローの投手って少ないから、中々打ち辛い部分はあるかもね」
幸い球威は去年と余り変わりませんし、影森の守備力さえ乗り切れば、今の新越谷はそこまで苦戦する事もないでしょう。
「…………!」
「「!?」」
「…………」
中山さんとの距離はかなり離れていますが、目が合った可能性がありますね。芳乃さんも山崎さん体制を低くしていた事から、2人にも中山さんからプレッシャーを感じたと思います。
「き、気付かれてないよね……?」
「こ、この距離だし、大丈夫な筈だけど……。なに?今のプレッシャー?」
「他人に見られるのを嫌がっている印象がありますね」
去年に訪れたら時も同じ視線を感じましたし、自分達の空間に私達が見ているのが嫌なのだと思いますが……。
「と、とりあえずここを離れようか!」
「そ、そうだね」
「ではそろそろ食事の時間にしましょうか」
(瑞希ちゃんも中山さんのあの視線を感じてる筈……だよね?)
(去年も練習を観に行ったって言ってたから、もしかしたらそれで度胸が付いているのかも……)
「ちょっと不気味なところだったね……」
「瑞希ちゃんからデータから変わったようには見えなかったし、中山さんの球も苦戦する……って程じゃなかったし……」
「バックの守備を信頼した打たせて取るピッチングを中山さんはしており、攻撃はほぼ初球打ちをする事で、データに出ている試合時間になっています。勝ったチームも、負けたチームも影森の野球に付き合っているだけに過ぎません」
「影森の野球に付き合う……。初戦は瑞希ちゃんにマスクを被ってもらう予定だけど、影森を相手にどうするつもりなの?」
「わざわざ律儀に向こうに合わせる必要はありません。私は私の野球をするだけです」
(こちらの攻撃は最初の2球を見送るだけで中山さんが痺れを切らしてくれる可能性もありますし、向こうの攻撃にもこちらの投手の明らかなボール球でもない限りはバットを出してくれる筈ですからね)
影森の……中山さんの野球を利用して、こちらもこちらのやりたい事をさせてもらいますよ。
「う~ん……」
「どうしたの芳乃ちゃん?」
「この場に息吹ちゃんがいれば、中山さんのアンダースローをコピーしてもらって、それで練習しようと思ってたんだけど、こうなるとどうしようかなって……」
「アンダースローの投手ってうちは経験ないもんね……」
仮に息吹さんがこの場にいたとしても、今必死で練習してるフォームを変更する訳にもいきませんし、余り変わっていなかったでしょうね。山崎さんもガールズではアンダースローの投手とは対戦経験がないみたいですし、対アンダースローの経験を積ませるには……。
「……私の方で少し心当たりがあります」
「心当たりって……アンダースロー対策の!?」
「はい。一応駄目元で頼んでみますね」
スマホで私が小学校の頃にバッテリーを組んでいた人に頼んでおきましょう。向こうもこちらの選手データがもらえますし、決して悪い条件ではないと思いますが……。
「……私です。来週末にこちらに来る事は可能ですか?」
(瑞希ちゃんの知り合いと電話してるのかな……?)
(多分瑞希ちゃんと和奈ちゃんが小学校の頃に所属していたチームメイトだと思うよ)
「はい、ありがとうございます。では来週末によろしくお願いしますね。必要夏映像を送っておきますので」
通話を終えてスマホを仕舞う。まさか来てくれるとは思ってませんでしたので、ありがたいですね。
「……来週末にこちらに来てくれるそうですので、アンダースローの対策はその日にやっておきましょう」
「えっ?来てくれるの!?」
「向こうにもメリットはありますし、構わない……との事です」
問題は向こうから新越谷まで結構距離がありますし、交通費もそれなりに必要としますが、それも込みのメリット……という事でしょうか?
週末。私が頼んだ助っ人の紹介をするのですが、どうやら連れにもう1人いるみたいですね。
「こちら、私と和奈さんが小学校の頃に同じ野球チームに所属していた……」
「早川朱里です。2日という短い期間ですが、よろしくお願いします。それで私の隣にいるのが……」
「雷轟遥です!朱里ちゃんと同じ高校の野球部に入ってます!よろしくお願いします!!」
アンダースロー対策……という名目の筈でしたが、これはまた違った練習も出来そうですね。
瑞希「……という訳で、『最強のスラッガーを目指して!』の本編から朱里さんと雷轟さんがこちらの小説にも参戦します」
朱里「まさかこっちでも出られるとは思わなかったよ……」
遥「私は本家では出番少ないし、少しでもこっちで長く出たいよ!」
和奈「そ、それはどうなんだろう……」
瑞希「向こうとの差違を軽く説明しますと、朱里さんはこちらでは右肩を壊してはいたのですが、中学時代に完治……。その後親の都合でこの埼玉を離れました」
朱里「雷轟と出会ったのは引っ越し先で、慣れない土地で色々良くしてもらってたんだよ」
遥「朱里ちゃんが困ってたからね!力を貸すのは当然だよ!」
和奈「と、ところで朱里ちゃん達はどこの高校に所属してるのかな?」
朱里「まぁそれは次回のお楽しみ……という事で」
和奈「き、気になる……」
原作よりも数人が大幅パワーアップ!?そのメンバーは……。
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珠姫、息吹、詠深、理沙
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珠姫、息吹、稜、菫
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珠姫、息吹、希、白菊