小さな捕手と小さな強打者 ~最強のスラッガーを目指して! 外伝~ 作:銅英雄
朱里ちゃんと雷轟さんが来た翌日。今日は練習試合をするよ!
「和奈さんはもちろんベンチスタートです」
「もちろん!?」
うう……。朱里ちゃん達に良いところを見せたかったのに……。
「そもそも今日は川原先輩の初登板と、息吹さんの最終調整がメインですからね。これは前々から言っていたと思いますが……」
「そ、それはそうなんだけど……」
ちなみに今日の試合のオーダーは……。
1番 ファースト 希ちゃん
2番 セカンド 菫ちゃん
3番 サード 珠姫ちゃん
4番 センター キャプテン
5番 レフト 理沙先輩
6番 ショート 稜ちゃん
7番 ピッチャー 光先輩
8番 ライト 白菊ちゃん
9番 キャッチャー 瑞希ちゃん
……といった瑞希ちゃんがスタメンマスクを被るオーダー。ベンチは私と息吹ちゃんとヨミちゃんの3人。
「タマちゃんってサードの練習してたの?」
「芳乃ちゃんが私と瑞希ちゃんの両方を使いたいってなった時に、捕手以外のポジションも出来るようになった方が良いって話をしててね……」
「それで私は外野手の、山崎さんはサードの練習をそれぞれ行っていました」
「私はガールズの時にちょっとだけサードに入った事があるから、それを元に本格的にやってみようかなって……」
どうやら珠姫ちゃんはサードの経験も多少あるみたい。でも確かに投手陣は極力ベンチ温存した方が良いみたいだし、私達野手も出来るだけポジションのコンバートとか考えた方が良いのかな?
「あと息吹さんはいつでも投げられるように準備をしていてくださいね」
「そ、それはわかったけど……」
「あれ?息吹ちゃん、右投げに戻したの?左投げの調子良かったのに……」
「瑞希が言ってたのよ。私の右腕には左投げの時以上の球威が宿ってるって……。どういう意味か未だに理解出来てないんだからね?」
「私の見立てが間違いなければ、必ず右で良い投げ方が出来る筈ですよ」
「……ずっとこんな調子なのよ。こんなんで投げられるか不安だわ」
「で、でも瑞希ちゃんは意味のない練習は提案しないよ!」
「わかってるわ。だから私なりに精一杯考えてるのよ。瑞希の言う『左投げ以上の球威が宿ってる右腕』についてね」
左投げの時の息吹ちゃんは右投げの時よりもかなり球速が上がってた……。それを右投げに戻すという瑞希ちゃんのいきなりの判断に納得いかないのかな?
「……成程ね。二宮がやろうとしてるのはそういう事か」
「朱里ちゃん、今の説明でわかったの?」
「まぁ私も辿った道だからね」
朱里ちゃんは調整の為に左投げにしたり、右投げにしたりしてる時期があったみたい。怪我してたのが関係してるのかな……。
「早川さんも知ってるってなると、瑞希の言う事は正しいんでしょうけど……」
(左で良い投げ方を覚えたのに、それをわざわざ右投げに戻すって……あっ、そういう事ね?)
「……どうしたの息吹ちゃん?」
「なんでもないわ。ヨミ、キャッチボールに付き合ってくれる?」
「う、うん……」
(あの様子だと息吹さんは気付いたみたいですね。これは登板の機会が楽しみですね)
(ようやく瑞希の言ってた意味がわかったわ。でも試合で実践となると、緊張してきたかも……)
『プレイボール!』
試合が始まった……。皆頑張ってね!
『アウト!チェンジ!!』
川原先輩は6回投げて、6安打2失点……。初登板にしては悪くない結果でしたね。あとの1イニングは息吹さんにお願いしますが……。
「息吹さん、準備は出来てますか?」
「なんとかね……。でもぶっつけ本番で大丈夫かしら?」
「息吹さんの場合はこの方が効果的だと思います。それに武田さんとのキャッチボールで多少は感覚がわかったのではないですか?」
「そうね。早く投げてみたいわ」
「では最終回はお願いします」
カキーン!!
代打で出た和奈さんが場外ホームランを放ったので、新越谷が勝ち越しましたね。
「相変わらず清本は飛ばすね……。中学でも同じチームに入れたら心強かったのに」
「おおっ!和奈ちゃんもスラッガーなんだ!もしかしてライバル出現!?」
「そうかもね」
「これは私も負けてられないよ!」
「張り切るのは良いけど、雷轟はまずどうしようもない守備をなんとかしようね。清本は守備の方も一級品なんだから」
「うっ……!が、頑張るもん!」
雷轟さんの決意表明が現れたのと同時に、打線が止まりましたね。相手も簡単には流れを渡せない……といった感じです。
「では行きましょう。息吹さんの本格的投手デビューです」
「え、ええ……」
川口息吹の成長をとくと見てくださいね。
「7回だけ息吹ちゃんが投げるんだ……」
「うん!瑞希ちゃんと光先輩曰く、息吹ちゃんが大きくする瞬間を目撃出来るかも知れないよ!」
「つい最近の練習まで息吹ちゃんは左投げの練習をしてて、今は右投げに戻ってる……。それで瑞希ちゃんが言うには、息吹ちゃんの右腕には左投げで培った技術が宿ってるって話なんだよね?」
「そうだよ。瑞希ちゃんも凄い提案をするよねぇ……」
そんな息吹ちゃんの1球目……。
(私が左投げで練習した全てを……右投げで実践すれば良い!)
ズバンッ!
『ストライク!』
「い、今のが息吹ちゃんのストレート!?」
「わ、私も話に聞いてただけで、これは予想以上だよ!」
ヨミちゃんと芳乃ちゃんが驚いてる……。確かに1、2ヶ月でこの成長は凄いよ!
(仕上がりは上々ですね。今日の相手なら、これでも問題はないでしょう)
ズバンッ!
『ストライク!』
「ストレートのスピンもノビも、前までの息吹ちゃんの非じゃない……。息吹ちゃんがこんなに速い球を投げられるなんて……!」
「あのストレートはそれだけじゃないよ」
「朱里ちゃん?」
「川口さんが投げている球は真上から振り下ろす事によって出て来る純粋な縦回転で投げられてるんだ」
「純粋な縦回転……?」
「オーバースローによって発生する回転がストレートの威力になり、速度、回転が倍増するんだ。これを打席で見るともっと速く感じるかもね」
「ほぇぇ……」
(私にとっても他人事じゃなくなってくるんだろうね。武田さんも、藤原さんも、川原さんも凄い球を投げる。それに加えて川口さんのあのストレート……。今の新越谷高校の投手陣は全国トップクラスかもね)
ズバンッ!
『ストライク!バッターアウト!!』
三振に抑えた……。しかも息吹ちゃんが投げたのはストレートだけだし、これからも凄い成長をしていくんだろうなぁ……。
「昨日と今日はありがとうございました」
「ました!」
試合の方は新越谷の勝利で終わりました。息吹さんの成長が予想よりも上回りましたね。これからが楽しみです。
「今日の試合は凄く良かったです」
「観ていてウズウズしてました!」
試合が終わった後は朱里さんと雷轟さんの見送りに来ています。
「日の出島に帰ったら早速メンバーを集めようよ!夏大会には間に合わなかったけど、秋大会には出られるように!!」
「……そうだね。今日の新越谷の試合を観てたら、私もやる気が出てきたよ」
朱里さんにもやる気が触発されたみたいで何よりです。
「では……また会えたら」
「バイバイ!!」
そう言って朱里さんと雷轟さんは歩いて行きました。
「……あの2人はきっと強いチームを作ってくるぞ」
「そうですね。それは2人の実力からわかります」
日の出島は人口が少ないですが、島内に限らず、島の外から来た人達も合わせれば無限の可能性がありますからね。最悪朱里さんと雷轟さんだけでも県トップクラスの野球部に仕上がりそうです。
「朱里ちゃんの球……久々に打ってみたかったな……」
「また次の機会……という事にしておきましょう」
朱里さんには仮想中山さんとして投げてくれました。その代わりと言いますか、朱里さんは本来の球での1打席勝負を悉く断っていました。
(朱里さんとの勝負は日の出高校野球部が再建した時になりそうですね……)
でもそれはそう遠くない内に実現しそうです。
原作よりも数人が大幅パワーアップ!?そのメンバーは……。
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珠姫、息吹、詠深、理沙
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珠姫、息吹、稜、菫
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珠姫、息吹、希、白菊