小さな捕手と小さな強打者 ~最強のスラッガーを目指して! 外伝~   作:銅英雄

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第40球 試合はまだ始まったばかりなのですから

「ご、ごめん。まさか初球からいかれるとは思ってなかった……」

 

「わ、私だってあんな簡単に打たれるとは思わなかったよ。しかも投げたのボール球だし……」

 

「……何れにせよ、あの4番打者を甘く見ていた部分はあっただろう。次からは全力で対応すれば良い。切り替えて行くぞ!」

 

「「はいっ!!」」

 

(それにしても彼女からは開会式で擦れ違ったような圧は感じられなかった……。感じられなかったから、今の一撃には私達全員が度肝を抜かれた事だろう。それに……)

 

「和奈さん、この調子で次の打席もお願いしますね」

 

「う、うん。頑張るよ!」

 

(新越谷の中でも1番小柄な彼女がチームで4番を打ち、そして届きにくい筈の外角の球をいとも簡単に捉え、ホームランにしてみせる力……。一体どれだけの練習を重ねればそんな事が出来るというのだ……?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カンッ!

 

 

(抜けろっ!)

 

 

バシッ!

 

 

『アウト!チェンジ!!』

 

「あぁー!キャプテン惜しい~!」

 

「でも打てないって程じゃなさそう……」

 

「吉川さんに対しては死ぬ程対策しましたからね」

 

吉川さんの決め球のスライダーは武田さんのナックルスライダーで擬似的な対策を、ストレートには朱里さんの球と、マシンの最高速度で徹底的に慣れさせましたからね。あとは梁幽館の鉄壁とも呼べる守備を越えるかどうか……でしょうか。

 

「よーし!張り切って投げるぞ~!」

 

「随分と楽しそうですね」

 

「うんっ!梁幽館みたいな強敵を相手に投げるのはワクワクするからね!」

 

『ゴーゴーレッツゴー梁幽館!ゴーゴーレッツゴー梁幽館!!』

 

「私達にもああいう応援がほしいねぇ」

 

「そうですか?私は静かな方が落ち着いてプレー出来ると思いますが……」

 

「そ、そうなんだ……」

 

先程のノックで藤田さんと川崎さんがミスをしたのは影森戦とは違って倍以上の観客が試合を観ている事……。それによる緊張とプレッシャーがのしかかって起こりうる事態でした。

 

「打たせて行こーぜ!」

 

「なんなら三振でも良いわよ!」

 

(……今の2人から緊張の色が消えてますし、和奈さんも、山崎さんも問題なさそうですね)

 

そうなるとあとは梁幽館の打線を武田さんが抑えられるか……といったところですね。

 

「…………!」

 

(打率6割越えの先頭打者である陽秋月さんは管理された梁幽館の中で自由に打たせてもらえる数少ない打者ですね)

 

彼女と4番の中田さんは梁幽館の監督からも厚い信頼を得ています。

 

(陽さんの苦手コースは外角低め、外角真ん中寄り、内角高めの3種と、五分五分の確率で打ち取れる内角低め……。このコースを投げれば痛打される……という事はないでしょう)

 

(公式戦……最初の1球は……!)

 

(外角低めのストレートをお願いします)

 

 

ズバンッ!

 

 

『ストライク!』

 

(陽さんは初球打ちが多いとデータにありますが、武田さんの実力が未知数なのもあって、簡単には手出しが出来ない……という訳ですか)

 

それなら次はカウントを稼ぐ意味合いも兼ねて……。

 

(先程と同じコースに……)

 

(ツーシームだね!)

 

さて、私の予想が正しければ、ここで食い付いてくる筈ですが……。

 

「……!」

 

 

カキーン!!

 

 

「!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ファール!』

 

「あ、危な……。入ったかと思っちゃったよ」

 

「ヒヤヒヤしたね……」

 

「まぁこれも二宮の想定内だよ」

 

「想定内?」

 

「あの陽さんの苦手なコースを徹底して攻め、陽さんの方は苦手なコースとは言え、段々と対応してくる……。それこそが二宮の思う壺って訳」

 

「という事は……?」

 

「少なくともこの打席で打たれる……なんて事は100%ないよ。バッテリーの勝ちだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(外角いっぱいの球をあそこまで運ぶのは流石……といったところですね)

 

(うひぃ~!ヒヤヒヤしたぁ……)

 

(ではまた同じコースに投げてください)

 

(ま、また!?打たれない……よね?)

 

(安心してください。ここで投げるのは武田さんの決め球です。同じコースではありますが、そこから変化させますよ)

 

(……!うん!!)

 

ツーナッシングで追い込みましたし、変に球数を稼ぐ必要はないでしょう。試合はまだ始まったばかりなのですから。

 

(なんか来る……!スライダー?カーブ?フォーク?シンカー?)

 

(行くよ……あの球!)

 

(えっ?ストレート!?いや、落ち……!)

 

 

ズバンッ!

 

 

(えっ……!?)

 

『ストライク!バッターアウト!!』

 

(やった……!三振取った!あの球で!!)

 

(まずは最初の山を越えましたね)

 

この調子で抑えられたら良いのですが……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゆ、友理、本当に無名なの?あの子……」

 

「は、はい……」

 

(新越谷の投手陣はデータが少な過ぎる……。川口さんも、川原さんも、1回戦で投げていた藤原さんも、そして今投げてる武田さんも……。影森を相手に初回コールドを決めた影響で、最小限のデータしか得られてない……。恐らく二宮さんがデータを極力見せないようにしているのでしょう。4番を打っている清本さんもそう……。この試合、今までの梁幽館の試合の中で1番苦戦する可能性が高いですね……)

 

「秋、あの投手の持ち球は探れた……?」

 

「ストレート、ツーシーム、スライダー……?和美の似てる。最後のは見た方が良いかも……」

 

「わかった……」

 

(それにしてもあの捕手……私の苦手なコースを徹底的に突いてきた。私がそれに対応してきてるのも視野に入れた上で……。それでいてあの投手の決め球の変化に着いて行けないように、同じコースを攻めてきた……)

 

「やられたな」

 

「奈緒……。うん、あの捕手の掌の上だった」

 

「そしてそれがわかった上で、掌に乗ってしまう……か。それがあの捕手のやり口なのだろうが……果たしてウチの打線がそれに対応出来る人間がいるだろうか」

 

「わからない……。でも当てる事さえ出来れば、内野安打は狙えると思う」

 

「そうだな……」

 

(恐らく……それすらもあの捕手の思い通りなのだろうな。下手したらこの試合は終始あの捕手の思うままに動きかねない。その前に手を打たないと……!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(2番の白井さん、3番の高代さんの2人は最近のデータは余りありませんが、武田さんのナックルスライダーを上手く打てる訳でもなさそうですね)

 

恐らく待球戦法を取ってくるでしょう。それなら敢えてそれに乗ってみましょうか。

 

 

ズバンッ!

 

 

『ストライク!』

 

(ストレートは平凡に見えるけど、制球力は良さそうだな)

 

 

ズバンッ!

 

 

『ストライク!』

 

(ツーシーム……。甘い球だと思って今の球に手を出すと、詰まらされるという訳か……)

 

これで追い込みましたね。ではここで1球試してみましょうか。

 

(ストレートなら打つ。落ちたら……見送る!)

 

 

ズバンッ!

 

 

『ボール!』

 

(ヨミちゃんのあの球が見られた!?もしかしてあの球を早々に捨ててきた……?)

 

(よし……!この球は捨てよう。打てる球は来るんだし)

 

(……とか思ってそうですね)

 

それこそが私の狙い通りですよ。では先程よりもボール半個分高めに投げさせましょうか。

 

(ボール半個分……これくらいかな?)

 

(また落ちる球……見送る!)

 

 

ズバンッ!

 

 

『ストライク!バッターアウト!!』

 

(なっ!?)

 

(これもやられたな……。白井の狙い自体は悪くない。武田の決め球を打てないと見切りを付けたのは良い判断だ。だがそれをあの捕手に漬け込まれたみたいだな)

 

連続三振……。白井さんが武田さんのナックルスライダーを早々に打てないと見切りを付けてくれたお陰ですね。

 

流石に梁幽館側も次の一手を用意せざるを得なくなったでしょう。和奈さんが放ったツーランホームランが効いてる筈です。

 

(今日の武田さんなら中田さんとも渡り合えそうですが……)

 

念の為にギリギリまで手の内を隠しておきましょう。

原作よりも数人が大幅パワーアップ!?そのメンバーは……。

  • 珠姫、息吹、詠深、理沙
  • 珠姫、息吹、稜、菫
  • 珠姫、息吹、希、白菊
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